※この作品はR-18です。

将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~   作:ガリアムス

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*今話で『牧園 アキラ 挑戦之章』は終了し、次話から新章『牧園 アキラ 集走之章』になります。

*令和初の投稿です。これからもよろしくお願いいたします。

*ハスさんからの指摘をいただき、加筆訂正を行いました。ありがとうございました


将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。~開幕宣言と仕組まれた罠・其之漆~

「此方が多目的ホールの横幕に続いている扉です。普段は関係者以外入れませんが、貴方はスピーチを行う役目がありますので許可します」

 

時刻はマルキュウイチゴー。演作に案内されて辿り着いた場所は『|関係者通路につき、立入禁止』の札が吊るされる、白ペンキで塗られた扉であった。

近くの棚には南京錠と鎖が外されて置かれ、既に他の者が通った後を伺える。

 

扉が嫌な金切り音を立てながら開くと、奥の方にオレンジの淡い光に、誰かがマイクに向かって話す声が聞こえた。

 

「このまま奥へとお進みください。係の者が袖幕で待機しておりますので、その者に『スピーチの代表者に選ばれた』と御伝えください」

 

富豪の家系に仕える紳士の様に横に下がり、道を開ける。アキラは演作の表情を見つつ、未だ何か此方に対する不利益をやりかねないと心中思いながら、奥に見える光へと歩みを進めた。

 

* * *

 

多目的ホール東側横幕…

 

「失礼します。荒垣中将から、今年度開会式のスピーチ代表者に選ばれました、牧園 アキラと言います」

 

「此方でも話は聞かせていただきました。代表者スピーチはマルキュウサンマルより五分程度を予定しております。またスピーチが終わりましても、小笠中将よりこの後の予定についての御話がありますので、終了後は今と同じ場所に待機していてください」

 

ステージ横に着くと、一人の白軍服と眼鏡を着けた女性が立っていた。既に状況を理解しているらしく、自分を近くにあるパイプ椅子を持ってきて、座れるように展開してくれた。其れを見て、「ありがとうございます」と礼を述べ、着席しつつ話すべき事を考える。

 

《華裏鎮守府の事を話しても、大本営(奴等)は其れを既に想定している筈だ。…とするなら、半端なスピーチじゃ駄目だ。

 

そうなると…『アレ』しかない、か》

 

遅かれ早かれ、自分は『言わなければ』ならない運命(さだめ)に在ったのだろうと悟る。

其れがこれから先、自分自身の道を『決めてしまう』ことも。

 

《…真守、クリス、楓(かえで)、結紲(ゆずな)…スピーチを聞いた後、皆は俺をどう思うだろうな》

 

思考とは別の場所…ポツリポツリと脳裏に浮かび上がるのは、自分が友と認め、気を許せる数少ない仲間達の顔。

自分が華裏鎮守府の提督と知って、どんな顔をし、どんな想いを抱くのか。

 

『…ありがとうございました。続きまして、最強鎮守府決定戦への抱負と致しまして、今年度代表提督によるスピーチを行います』

 

そうこうしている内に、自分の出番が回ってきた。

パイプ椅子から立ち、今一度軍服の襟や袖を見、靴紐を結び直し、呼吸を整える。

 

『其れでは御願いします。今年度代表、華裏鎮守府。牧園 アキラ』

 

名を呼ばれ、マイクがポツンと置かれたステージ中央の台に向かって歩く。

ざわめきが耳に響く中で、中央まで歩き、静かに正面を向いた。一礼と共に顔を上げると、見知った顔が所々にちらほら見え、その中には二階堂 真守や西村 クリスの姿も在った。

 

…静かに、ゆっくりと。呼吸を調え、緊張で強張った身体を解す。

 

さぁ…始めよう。

 

今まで好き勝手に蝕まれ、無慈悲に奪われ続けてきた華裏鎮守府(艦娘達の誇り)を。

 

大本営に喰い潰され、無念と懺悔、後悔と絶望に消えていった数多の提督達(名も知らぬ者)の。

 

『全てを取り返す為』の戦いを。

 

「…初めまして。先程紹介に挙がりました、華裏鎮守府の提督。牧園 アキラと申します」

 

未だ、ざわめき収まらぬ中、アキラのスピーチが始まる。後に『日之國の英雄』として後世に語り継がれる譚(はなし)の一つとなった、其の『スピーチ』が。

 

「…私は三ヶ月前、身に覚えの無い冤罪で華裏鎮守府に着任しました。皆さんは御存知かと思いますが、華裏鎮守府は『提督の墓場』という名の終焉の場所として存在しています。

 

私は其処で『地獄』を…人間の『悪意の本質』というものを見(み)。そして、其の現実に打ちのめされました。

 

人とは、こんなにも恐ろしく、怖い存在(もの)だと」

 

アキラは知った。華裏鎮守府という最底辺の世界(暗黒と地獄)で。

 

人間の中にある根深く巣食い、胎動し、膨大し。

 

弱者を掌で転がし、人形の様に玩ぶ。

 

権力という不可侵と圧で屈服させ。

 

我儘という豪鎚で願言(がんげん)を叩き潰し。

 

嘲笑と暴力の刃で心に深く傷を付け。

 

情報と世論の鎖で巌字絡めに縛り付ける。

 

大本営の使者や他の提督達の見せた人間の『闇』を。

 

「華裏鎮守府に着任した私は、其処に在籍する艦娘達の現実を知りました。

 

ある艦娘は『戦闘力が同艦種の艦娘よりずっと劣っている』と、鎮守府から追い出され。

またある艦娘は『演習相手の空母艦娘の艦載機を全滅した』だけで、華裏鎮守府に左官させられました。

 

華裏鎮守府は『犯罪や命令違反で落ちた艦娘が押し込めれた鎮守府(場所)』とされています。

 

しかし、私から言わせれば。

 

華裏鎮守府は『提督(我々)によって名もない悪意という迫害を受け、居場所を失くした艦娘達(彼女ら)の、残された最後の場所』だと考えております」

 

三ヶ月…激動でありながら、永遠とも言える僅かな時間の中で、アキラが出した一つの『答え』だった。

 

痛みを抱え、罪の意識に捕らわれながら、それでも『生きたい』と願う彼女達の『希望』。

華裏鎮守府の存在する理由…アキラは華裏鎮守府(其の場所)を『牢獄』ではなく『希望郷』としたのだ。

 

『華裏鎮守府風情が喋るな!』

 

不意に一声がホールに響いた。

 

『華裏鎮守府の提督に人権なんかありゃしねぇんだよ!』

 

『底辺の人間は俺達に従ってりゃいいんだ!』

 

『そうだそうだ!』

 

『今すぐ黙れ!そして消えろ!』

 

『だーまれ!だーまれ!!!』

 

だーまれ!だーまれ!!!だーまれ!だーまれ!!!

だーまれ!だーまれ!!!だーまれ!だーまれ!!!

だーまれ!だーまれ!!!だーまれ!だーまれ!!!

 

《…なんだよ、これ》

 

《ホールが…震えてる》

 

罵声や詰る言葉が続き、終いにはアキラの発言を沈黙させんと黙れコールが始まる。真守やクリス、そして一部の提督や将校達は、この異様な光景に、胸底から湧いてくる於曾間しく、気持ち悪い感覚を味わっていた。

 

これが、華裏鎮守府の提督(牧園 アキラ)が言った『人間の闇』なのかと。

 

* * *

 

「うわぁ…何これ…」

 

「あぁ…私もこんな現象は見た事はない、理解に苦しむ」

 

ホールの上階にある特別展望室…其処で式の様子を与市(よいち)等、他一部の将校達と観ていた芳子(よしこ)は惨状に表情を崩し、仁(じん)も奥歯を噛み締め拳を握る。

本来、このような事態になれば進行役が直ぐにでも止めるべき筈だが、そんな気配が全く無い。

 

「ふん…華裏鎮守府と牧園一族は大本営では『嫌われて当然』なんだ。奴にはそれが相応しい」

 

「悠(ゆう)少将。其の発言、此処では相応しくないと思うぞ?」

 

赤髪を人差し指にクルクルと巻いては放し、そっぽを向く悠の態度を見て、剛毅(ごうき)は其の大きな手で肩を叩く。端から見ればこの二人、圧倒的な身長差で父子に見えてしまわなくもない。

 

「…私は鎮守府で過ごす内に、其処で生きる艦娘達から、ある一つの『確信』を得ました」

 

だが、そんな状況にも関わらず。アキラは冷静に、己の言葉を紡いでゆく。

 

「彼女達の演習は私の想像を遥かに越えていました。

 

海を走る筈の魚雷が空を飛び、砲塔が融解して溶け落ち、空が硝煙で真っ暗に変わる…其れは神々の終末戦争の様に美しく、阿鼻叫喚の地獄絵図の様に恐ろしい。

 

私はそんな彼女達の姿に『驚愕』と『畏怖』をし、同時に『可憐』で『美しい』と思うようになったのです」

 

日々激化し、刹那に全てをぶつけた彼女達の『演習』は、アキラの心を掴んでいた。

彼女達は相手へ殺意を込め、一手一手確実な詰めを行い、自らの判断の誤りによって、己や艦隊が瞬く間に壊滅、最期は死に直結する…そんな戦いを幾度となく、終わりなく続け、今に至っている。

 

そして皆、現状維持(今の自分)に満足等していない。

昨日より一歩(前へ)、現在(今)より一歩(前へ)。

歩みを止めず、成長と進化を(前へと歩み)続ける

 

彼は言う。演作を含めた大本営の将校、真守やクリスのような一般提督達が、全く予想だにしなかった言葉を。

 

「華裏鎮守府の艦娘達は今。此の場に集った全ての鎮守府の艦娘達よりも『遥か』に。そして格段に『強い』。

 

度重なる逆境の中で、今を生き残る為に藻掻き、足掻きながら生きる彼女達は、我々よりもずっと『高潔な人間(いきもの)』だと。

 

故に…『宣言』します」

 

艦娘は自分達と同じ『人間』である。学生時代の授業で言われた『艦娘は兵器』とする考え方を真っ向から仏陀切る。希望の炎を瞳に灯し、右手人差し指を天に向かって伸ばした彼は、決意と覚悟を帯びた声で言い放った。

 

「私達華裏鎮守府は、今年度最強鎮守府決定戦において…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『優勝させていただきます』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上。…そう話を締めて、アキラは静かに一礼する。

彼の発言に対し、提督達は唖然となり言葉を失っていた。

 

静寂…だが、其れも一瞬。

 

『ふ…ふふふ…』

 

ふざけるなぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!!!

 

はぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!!!

 

『何言いやがったゴラァ!!!』

 

『優勝だとぉ!?嘗めとんのかテメェ!』

 

『ぶっ殺す!ぜってぇぶっ殺してやる!』

 

核弾頭とも言える『優勝宣言』。其れに対する提督達の殆どが大ブーイングと、手持ちのパンフレットをぶん投げ、ワーワーギャーギャー騒ぎ立つ。

『静粛に!静粛に!』と進行役の女性の声がスピーカー越しに、彼等を必死になって宥めようと試みているが、全く鎮まる気配が無い。

 

これでいい。アキラは自分が言った事を理解している。此のスピーチは提督達に、延いては大本営に対する『宣戦布告』。

 

自分は『大本営を叩き潰す』と決意した。

 

なればこそ、このくらいの台詞を吐けなければならない。自分で選んで決めた事…『後悔』の無い『最良の選択』が出来た。

胸の内がスッと晴れ渡り、自然とアキラの口角は上がる。

 

《アキラ…お前は『いつだって』そうだ…!何で『そうゆう事』を言うんだ…!》

 

《…どうして。どうしてアキラは『いつもそうなの』…?》

 

真守とクリスは、彼のあまりにも見え透いた宣戦布告から、『彼の言葉の意味』を理解していた。

 

真守は『怒り』と共に拳を握り、歯を噛み締め。

クリスは『悲しみ』を抱きながら、視線を足元へと落す。

 

多目的ホールはアキラに対する一部提督達の怒号と騒ぎ声で騒然となり、更にはぶん投げたパンフレットが別の提督に当たった事で、殴り合いの喧嘩に発展し、収集が付かなくなってしまう。

 

* * *

 

「牧園 アキラ…って言ったっけ?」

 

「大森中将…どうした?」

 

展望室で事の本末を見届けた芳子が、不意に言葉を漏らしたのを聞き、仁は問う。

 

「私はさ、今回の決定戦。正直パスしようと思ってた。大本営の仕事も有るし、艦娘達の育成だってやらなくちゃいけない。決定戦参加は万全の態勢で挑むつもりだった」

 

だけどさ、気が変わったわ…。

 

彼女は黒い笑みを浮かべていた。それも付き合いの長い仁や他の将校達が見たことのないような、とびっきりの笑顔で。

 

「あんな『宣言』されたらさ…無性に『叩き潰したく』なったのよね。あぁゆう『裏表の無い、真っ向から喧嘩を吹っ掛けにくるタイプ』の提督。

 

私が『一番大好き』なヤツだわ」

 

「大森中将、君は優秀な提督だ。が、時折感情的になりやすい。彼がああ発言したとして、我々は大本営の将校である自覚を忘れてはならないぞ」

 

そんな彼女を剛毅は諌める。安心してホッと息をつく仁…『そうなれば』何れ程良かった事か。

 

「まぁ『立場を弁えて』そう言いたいところだが…

 

私も君と同じ意見だ。ああも堂々と恐れることもなく言われたのなら、彼を『排除』するよりも『戦ってみたい』と思ってしまったよ。

 

…久方振りだ、こうも血潮が滾るのは」

 

突然の掌返しに対し、仁は絶句。もう何も言えない…頭を抱えて椅子に座るしかなかった。

 

「そう落ち込むな…見てみよ眞船中将。私達は寧ろ、牧園 アキラ(あの男)に『感謝』する事になるかもしれん」

 

彼がホール内に指を指す。相変わらず騒然としている提督達。だが『そうではない』者達も居た。

 

「牧園 アキラ!お前に優勝はさせねぇぞ!」

 

「俺の鎮守府の艦娘達こそが最強だ!!!」

 

アキラのスピーチに触発された提督達が、最強鎮守府決定戦で優勝する意欲を見せている。

十人十色…皆が同じわけではない、皆各々が違う価値観や感覚を持ち、生きているのだ。

 

「これは………」

 

「彼に対する感情は一つではなかった。華裏鎮守府の差別意識に囚われる者も未だ多いが、こうして『対等の相手』として見ようとする者も居るという事実。

 

だからこそ…面白くなるのだ」

 

《不思議な男だ…君が『ジュウゴさん(あの人)』に重なって見えてしまったよ》

 

騒然収まらぬホールを見下ろし、剛毅は心中でそう呟く。

 

その時…不意に背筋が凍り付き、全身の毛と言う毛が一瞬で逆立った。一人の男性…小笠中将がステージ中央へと歩き、マイクに向かい、一言述べる。

 

『静粛に』

 

瞬間、電気を流されたような衝撃が全身を襲い、騒然となったホールの雰囲気が、声と殺気だけで瞬く間に鎮圧された。

 

「先ずは皆、元の位置に戻るように。これからの予定を発表する」

 

圧倒的威圧感。震え青ざめる者、泡を噴いて気絶する者、言葉に従い素直に戻る者…様々。

 

三分と持たずして、ホールはスピーチ開始前の静寂を取り戻し、小笠はゆっくりと話を始めたのだった。

 

「先程の代表提督のスピーチを聞き、どう思うかは個々人の判断に任せるとしよう。それでは、これからの予定を発表する。

先ず、大本営に到着した際に正門入口横のテントで貰ったであろう二枚の色紙を見てくれ。そして先程の騒動で、パンフレット共々投げた者は近くの提督に見せてもらうように。

 

…君達にはこれから、最強鎮守府決定戦の『第一次予選』に挑んでもらう」

 

ざわざわ…ざわざわ…

 

ざわざわ…ざわざわ…

 

「ルールを説明する。二枚の色紙の内、一枚には我々が用意した『朱印(スタンプ)の在処を示すヒント』。もう一枚には『朱印を押す為の物』だ。

 

朱印は『東京都内の何処か』に『五つ』存在し、壱・弐・参・肆・伍の『五つの問いの答え』が在処となっている。

前以て言っては置くが、五つの問題は我々大本営の『頭脳派の精鋭達』が作った問題だ。

 

…が、しかし。私はこの場に出席している提督諸君ならば『解けて当たり前』と思っている。

 

制限時間は開会式終了後、10:30から19:30までの『九時間』。そしてスタート地点、並びにゴール地点は『大本営正面正門』だ」

 

提督達のざわめきが止まらない。それもそうだ。

 

開会式に出席したと思いきや、華裏鎮守府の提督に優勝宣言を食らって激昂に駆られ、其処から東京都内を舞台にしたスタンプラリーに巻き込まれたのだから。しかも、其の問題も練り込まれた代物ときた。気分は大きく沈み、暗く重い、嫌な空気がホールを満たし始めていた。

 

「…そして。ここからが『最も重要』な話しになる」

 

今度は何を言い出すのか…不安が過る中、小笠が放ったのは『とんでもない言葉』だった。

 

「君達の中には電車や飛行機、バス等の乗り物に乗る際に『一枚のカード』を貰った者が居るだろう。谷折に折られ、糊付けされている。其れを開いてみてくれ」

 

一枚のカード…アキラ、真守。そしてその他の提督達もまた、ポケットや軍帽の裏、定期入れ等に仕舞っていた其れを徐に取り出し、小笠の言う通りに開く。

 

折られたカードが開かれる。中から現れたのは『金色』または『銀色』に輝く星の模様』だった。

 

「今、開いたカードの中には『金』か『銀』の星が在ると思われる。この星のカードは、朱印を制限時間以内に集められなかった場合。

 

『銀星のカードを三枚』もしくは『金星のカードを一枚』。これを所持していたなら…」

 

 

 

 

 

 

『第一次予選を突破したものとして扱う』

 

 

 

 

 

 

 

『予選免除』という名の『救済措置』に多くの提督達の目付きが変わる。

 

「尚、カードを一番最初に手にした者には、色に関係無く『30分の早期スタート』が出来る。

因みにカードには『位置情報発信器』が取り付けられており、1時間経過毎に東京都全域に所持者の現在の位置が伝達される。

 

また、カードを破いたり、燃やしたり、棄てるといった破壊行為を行ってはならない。行えば理由の有無に関わらず『即失格』とする。

 

もし所持者からカードを手に入れようとするならば、一対一の『腕相撲』に勝たなければならない。審判は公平を期すため、我々大本営の職員が行うものとする。

 

さぁ…提督達よ。

 

己の知識と脚で朱印を集めるか。

はたまた、自らの腕力でカードを茂木取るか。

 

楽しみにしているぞ。

 

これにて、最強鎮守府決定戦の開会式、全プログラムを終了する!」

 

小笠の一礼。そして起こるは拍手拍手の大喝采。

轟々と鳴り響き、ホールの防音壁に反射し、先程の騒動とは比べ物にならないほど、盛り上がっていた。

 

《こりゃ、不味いかもな…》

 

アキラはパイプ椅子から立ち上がり、一足先に正門に向けて移動を開始した。理由は一つ。早い段階で行動し、自分の逃げ場を無くさないため。

 

何故ならば。彼の持つカードには『金色の星』がキラリと光輝いていたのだから…。

ヘイトをこれでもかと集めた上に、位置情報までも知られるというディスアドバンテージ。

 

アキラは自分が、圧倒的窮地に立たされたという事実を否応なしに理解し、現実として受け入れるしかなかった…。

 

斯くして、開会式というプロローグは幕は引かれ、仕掛けられた新たなる戦い…『大本営・選抜集印走』が切って落とされたのだ!




用語紹介

最強鎮守府決定戦…年に一度、大本営主催で行われる紅白歌合戦と並ぶ、年末一大イベント。『深海棲艦と最前線で戦う日本の艦娘達の力を証明する』名目の元に開催され、各国首相や重鎮が視察に訪れる程。

厳しい予選を勝ち抜いた、全64の鎮守府による三日間の壮絶なトーナメントを行い、優勝を決める。
優勝した提督と鎮守府、艦娘達には素晴らしい名誉と莫大な賞金が授与される。

其の起源は、三十年前『白夜の魔女討伐作戦』に於ける、艦娘達の練度の低さを危惧した牧園 ジュウゴと彼を慕う提督達の働き掛けによって興されたとされている。
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