※この作品はR-18です。

将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~   作:ガリアムス

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*前編の続きになります。一つ目の朱印をアキラ達は見つけられるのか?

そして華裏鎮守府の艦娘達は深海棲艦の艦隊を撃退し、迷える少女達を救えるのか?

*艦これイベント辛かった…燃料とボーキが尽きる前に新艦娘は全員保護出来たのは良かったけれども。

サミュエル…


将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。~集印走開始と一つ目の謎《後編》~

「深海棲艦共。私の鬱憤晴らしと共に沈んで貰うぞ」

 

「…随分ト、生意気ナ口ヲ…タタク、艦娘…ダ」

 

華裏鎮守府から北西13050mの沖合。開かれたゲートから飛び出し、間一髪の所で長門の到着が間に合った。

 

深海棲艦の砲雷撃を真っ向から受け、本来ならば無傷では済まされない。…筈なのだが、現に長門は掠り傷処か砲弾直撃による痣さえ無かった。

 

「長門!」

 

ゲートを越えて、陸奥・初月・綾波・瑞鶴・翔鶴、そして雪風が来た。

 

「いきなり飛び出して行って、びっくりしたわよ!何やってるの貴女!」

 

「すまん。…だが、今の私は虫の居所が悪い。翔鶴と瑞鶴、初月は対空を。雪風は対潜警戒。綾波は負傷し動けない艦娘を寄航してゲートへ直行してくれ。

 

奴等は…私一人で潰しきる」

 

少し後ろを向いた長門を見た時、陸奥の全身から血の気が引き、ゾッとする。長門(彼女)の瞳から感じる物は、かつて大切な戦友(春雨)を失った時と同じ、非力な自分を呪い、怨み、邪道に堕ちようと、仲間達を護れるだけの更なる強さと力を欲する、彼女の『暗黒たる決意』を現す、漆黒の焔。

 

こうなった長門を、嘗て誰一人とて倒す事は愚か、戦闘不能に追い込む事すら叶わなかった。喩え其れが、無敗王のニ之名を持つ磯風であっても。

 

「安心しろ、深海棲艦共。お前達は私が『五分』で片を付けてやる」

 

「ヤレル、モノナラ…ヤッテミロォ…!!」

 

暗黒の決意を宿し、単騎で深海棲艦の艦隊に突撃した長門。其れを迎え撃つ、深海水母棲姫率いる深海棲艦の艦隊。

 

この五分間を、私は今でも覚えている。

 

闇を宿した者(私の知らない長門)の戦いを。

 

其の果てに待つ、尋常成らざる景色を。

 

 

 

* * *

 

ヒトマルニーハチ、品川駅 新宿・池袋方面ホーム。

 

「一つ目の朱印。其れは中野区の犬屋敷跡の銅像の何れかだと、俺は睨んでいる」

 

地下鉄・大本営前駅から品川駅へ着き、JR山手線池袋方面行きの電車に乗った時、結紲は自信を以て言い放った。

 

「何か理由は有るの?」

 

「問題文の『囲いの中に眠る』とあるが其の昔、犬屋敷は『かこい』と呼ばれていた。さらに『一途なる者』というのは、かつて主人を待ち続けた『ハチ公』の事を言っている」

 

「じゃあ、ハチ公の銅像と同じ構えをした、かこいの銅像に一つ目の朱印が在るんだね」

 

クリスの声に、そういうことだと結紲は答える。

目指す場所は決まった。後は其処へ行き朱印を手にするだけである。

 

「皆…そろそろ時間だ」

 

真守が指差す先に見える、一つの時計。其の針がついにヒトマルサンマルを指した。大本営に残った提督達が自分達を追い掛け始める時間。

 

ホームに電車が滑り込み、ドアが開かれる。

此処からが本当の勝負だ。

 

* * *

 

ヒトヒトマルナナ。品川駅から新宿・池袋方面のJR山手線に乗り、代々木駅で中央・総武線に乗り換え、アキラ達は中野駅に到着。

 

徒歩で七分掛け、一行は犬屋敷跡地に在る『異なる姿勢をした五匹の犬の銅像』の前に辿り着いた。既に他の提督や艦娘達も数組到着しており、周辺は混雑していた。

 

「此処みたいですねぇ~♪けど他の人も居ますし、どうしますかね?」

 

「答えは最初から決まっているぞ、青葉。銅像の怪しい箇所を調べて、朱印を見付けて二つ目の謎を解く」

 

アキラと真守が混雑する人だかりに対して、左側から周り込み、クリスと楓は右に、結絆は正面から銅像へ近付く。青銅色に錆びた犬達だが、其の表情は柔らかく嬉しそうに見えなくもない。

 

━━牧園 アキラだ━━

 

━━嫌な奴が居るな━━

 

アキラの姿を見た提督が陰口を叩き、空気が嫌な気質を纏い始める。彼と同じ場所に居れば、厄介事に自分も巻き込まれると考えているのだろう。

 

「…で、何れかな?朱印を持ってるワンちゃんは」

 

「忠犬ハチ公の画像を見てるけど、何れも当てはまらないよぉ」

 

鈴谷がナイスタイミングで思考を切り替えてくれた。だがしかし、此処に来て難題が生まれた。

 

そう。アキラ達に立ちはだかった問題…『どの銅像も、忠犬ハチ公と同じ構えを取る物が無かった』のだ。これでは、先に進めない。

 

「ヤベェ、後10分しかねぇじゃねぇか!」

 

「どうしよう!カード持ってるから狙われる!」

 

刻一刻と迫る公開時間(タイムリミット)。必然、提督達は焦燥に駆られ、艦娘達にも伝播する。

異様な空気に支配されつつある此の場所。アキラ達も思考が滞り、普段とは程遠い心境になってゆく。

 

━━━━もしも、朱印を見付けられなかったら?

 

考えたくない『最悪の瞬間』が脳裏を過り、真守と結絆は思考を否定するかのように、ほぼ同時に頭を横に振った。

 

「アキーラ!見てみて、凄いでしょ♪」

 

が、そんな空気を読めなかったのか、はたまた読まなかったのか、華裏鎮守府に在籍するアイオワが『尻尾を円曲させ、お座りの姿勢を取る犬の銅像』の上に、自らの豊満な胸部装甲を乗っけたのである。

 

「ちょっ!?何してんの、アイオワさん!」

 

「うふふ♪元気が出たかしら?」

 

元気付けるどころか、彼女のたわわで圧倒的な胸部を見た一部の艦娘や、女性提督達を無意識に傷付けたのを理解して欲しい。只でさえ派手な格好なのに、派手な行動を起こすと、此方の首が危なくなる。

 

「アイオワ。アキラの言う通り、銅像で遊んではいけないわ。其れに周りが…ね?」

 

「…oh」

 

やっと自分が何を仕出かしたかに気付いて、しょんぼりと落ち込んだ彼女。だが、立ち上がり銅像から離れようとした時、アイオワは銅像の『尻尾を踏んだ』。

 

普通、銅像と言うものは型造りを終えた時点でガチガチの塊の様な物だ。本来なら、からくり仕掛けにでもしない限り『動かない』のが鉄則。

 

しかし、アイオワが踏み付けた尻尾は『地面へ』。それもパタリと着き、同時に其の銅像の眼からは『赤い光』が放たれたのである。

 

『『『『『『『『『は?』』』』』』』』』

 

提督も。艦娘も。一糸乱れぬ素っ頓狂な声を溢した。

 

「Wow! これってLasertec(レーザー) beam(ビーム)!?すっごいハイテクじゃないの!」

 

アイオワが興奮し、ジャンプする度に尻尾は元の位置へ戻ったり地面に着き、赤い光は点消灯を繰り返す。

 

《朱印…朱…赤?━━━━━━━━━あ》

 

アキラの直感が、たった一つの真実へと続く道を切り開く。

 

「…まさか!!アイオワさん、そのまま尻尾を踏んだ状態で待機して。出来るよね?」

 

「え、えぇ。任せてアキーラ」

 

アイオワを落ち着かせ、アキラは自分の朱印を納める色紙を取り出し、光へと近付いていく。

 

「アキラ?」

 

「真守、クリス。結絆、楓。…『朱印』ってさ、一体何なんだろうね?」

 

赤い光射す道へ。アキラは色紙を構え、光へと翳した。

 

「多分、俺達は判子だと何処かで決め付けていたのかも知れない。この一次予選は、そんな常識に囚われている者ほど、正解へ辿り着けなくしているのかもね」

 

光を浴びる色紙、其の囲いの一つに像が浮かび始めた。そして其処には『大きな錨の模様』を成す一つ目の朱印が、赤々と刻まれていた。

 

「どうやら、これが一つ目の朱印みたいだね」

 

アキラが掲げた瞬間、提督達が一斉に。我先にと銅像へと押し寄せた。

 

「アキラ…お前、すごいな」

 

「クリス達のお陰だよ。俺一人じゃ多分何日も掛かってた。それより急ごう、時間も無い」

 

時はヒトヒトサンマル。遂に『カード所持者の居場所を示す放送』が東京都内全域に響き渡ったのである。

 

 

* * *

 

同時刻、東京都内・新橋駅。

 

昼時、オフィスで仕事をするサラリーマン達が昼食を取るために立ち食い蕎麦屋へと繰り出す時間。

 

だが、その日。駅と其の駅前広場、そして周辺地域は。

 

 

悲鳴と混乱、そして血の跡が生々しく遺され、凄惨に支配されていた。

 

 

「…何ですか、甲染さん…。何なんですか此れは!?!」

 

善吉が叫ぶ。辿り着いた彼等が見たのは、多数の救急車が押し寄せ、担架に怪我人を乗せて搬送したり、他の警察官が現場検証や証言を取る。

一部はビニールシートに覆われていたが、其れでも尚隠し徹せない血痕が生々しく遺されており、此処で何が起きたかを想像させるには、容易過ぎていた。

 

「善吉、パトカーで聞いた通りだろうが。

 

『新橋駅で複数の無差別通り魔事件発生』ってよ。そして此処は其の『結果』が残されてるだけだ」

 

甲染もまた、帽子を深く被り手袋を着け直す。表情は鋭い目付きへ変わり、ふざけた雰囲気は其処には無かった。

 

「あ、甲染さん!善吉さん!」

 

捜査員の一人が、甲染達を見付けて駆け寄り敬礼すると、彼等も間髪入れず敬礼を返した。

 

「ご苦労。現在の状況は?」

 

「死者が現在16名、怪我人だけでも70名を超え、まだ増える可能性も…。

 

犯人はいずれも、逮捕前に首の動脈を自ら斬る、持っていた拳銃やプラスチック爆弾で自殺したため、動機等は一切掴めませんでした…」

 

「成る程…」

 

「ただ…犯人の一人の胸に、このような『刺青(タトゥー)』がありました」

 

捜査員は一枚の写真を甲染に手渡す。受け取り、それを見た甲染の顔から血の気が一瞬で引き、脂汗が額を伝った。

 

「甲染さん…?」

 

「善吉…今回の事件。かなり『ヤバイ組織』が関わってやがる…!」

 

刺青は『十字架に髑髏の首飾りが掛けられ、左目から涙を流している』。善吉もまた、其れを見て眼を丸くした。

 

「…『禍根の指輪(ダリアス・フェッチェル)』!!!!!なんで、コイツらが日本に居るんですか!?!?」

 

禍根の指輪(ダリアス・フェッチェル)。其れは、西アフリカやを中東地域を主拠点に世界各地で活動を続ける、巨大テロ組織。

其の活動は『戦争活動』や『テロ行動』、『麻薬の密輸と販売』に『人拐い』、そして『人身売買』と多岐に渡る。

 

『現在海外で起こる犯罪の八割に彼等が関わっている』とされる此の組織は、国際社会からも危険視され、近年社会問題として議論が交わされる程だ。

 

「…ヤベェ事が、起きようとしてやがるかもしんねぇ。善吉、直ぐに警視庁本部と他の警察車両に連絡。…禍根の指輪が出たと、直ぐに伝達してくれ。

 

ただし、焦らず迅速な対応を行うよう付け加えてな」

 

「了解しました!」

 

《アキラ…》

 

ビルの合間を抜ける隙間風は、生暖かく嫌な気質を帯びて、彼らを凪いでゆく…。

 

其れはまるで、嵐の前の静けさであるかのように、不気味な空気を放ち、東京を恐怖の竜巻へと巻き込もうとしているかのようだった。

 

* * *

 

 

視界が暗い…。電源が落ちた密室の中のような…。

 

全身が重い…。濡古着の束を乗せられたように…。

 

感覚が鈍い…。長時間の正座から解放された足のように…。

 

「う、うっ…うん…?」

 

重い瞼を開いて、少女は覚醒する。

 

最初に目に飛び込んできたのは、木目調の天井だった。彼女の母国では基本的に鉄が主流であり、こういった物は珍しい。少なくとも国外…一先ずは安心出来る場所であるのは間違いないだろう。

 

辺りを見渡すと、自分がベッドで寝ていた事を知り、同時に此所が医務室らしき場所である事が分かった。

少女は重い体を起こして、情報入手に乗り出そうとした。

 

「おや、目が覚めたみたいですね」

 

入口からピンクのショートヘアーの、同い年に見える女の子が歩いてくる。プラスチックの容器に氷水を入れた状態で抱えており、縁には新品のタオルが掛かっている。彼女が看病していたのだろうか。

 

「何処か痛いところは有りますか?」

 

「N,No…I'm ok(あ、私は大丈夫)」

 

他国の言葉を、私はある程度理解してはいる。

大丈夫と彼女に答えるが、首を傾げて変な顔をした。

 

何故?もしかして英語が分からないのか?

 

「あ、ぬいぬい~♪」

 

そんな疑問を覚えた矢先、また誰かやって来た。

ピンクのショートヘアー少女、ぬいぬいと呼ばれている娘にダイビングハグを決めた子…何だか髪や顔立ち、人懐っこい性格で仔犬に見えてしまう。

 

「時津風。彼女の看病をしているので、今は遊べませんよ」

 

「えー、ぬいぬいのケチ~」

 

「我慢してください」

 

仔犬少女…トキツカゼは膨れっ面でブーブーと、ぬいぬいに対して言うが、彼女は変わらず氷水にタオルを付けて冷やしている。

 

けれど、私が今やらなければならない事は、此所が何処で、どの国に属しているのかを知らなければならない。

 

「えっと…Where am I(此所は何処かしら)?」

 

ぬいぬいは、やっぱり私の言葉の意味が分からない様で首を傾げている。

 

《…まぁ、そうよね。『英国(イギリス)の艦娘(かんむす)』が着任(い)る鎮守府なんて、極一握りでしかないもの。ましてや、英語を習って理解してる娘なんてそうそう…》

 

「The place is Hanaura Zhenfe.(此所は華裏鎮守府だよ。) Correctly,(正しくは、)it's not good,(『はなうら』じゃなくて、)but it's not(『かうら』だけどね)」

 

…………英語を話した。しかも私より、ずっと発音綺麗だし。トキツカゼ、見た目によらず恐ろしい娘ッ…!

 

「えへへ~♪どぉ?時津風、香取先生のおかげで英語喋れるんだぁ~」

 

「…驚きました。時津風、いつの間に英語を?」

 

「毎日15分、香取先生と集中勉強~♪其れを四年間続けたの~♪」

 

「すごいですね…」

 

むっふんとドヤ顔して髪の毛パタパタしてるトキツカゼかわいい。

 

「ん~…ねぇねぇ金髪ちゃん」

 

なんて、のほほんと眺めてたらいきなりそんな事を言われてびっくりした。

 

「金髪ちゃん!?えっ…私の事、よね…?」

 

「そーそー、貴女の名前はなぁに?」

 

「えっと…こほん。My name i『あっ英語じゃなくて良いよ~』…え、良いの?」

 

「うんうん。私の妖精さんで和訳するから気ニしないで~♪」

 

「時津風、ありがとうです」

 

先ず此所が、華裏鎮守府と言うのは分かった。そしておそらく、トキツカゼの日本語発言から、此の鎮守府は少なくとも日本の中に在る事も予測出来る。…窓の外は青い海が見えるけど。

 

「…じ、じゃあ改めて。私の名前はJervis(ジャービス)。大英帝国海軍女王陛下直属の護衛艦隊に所属している艦娘なの。

 

今は訳あって単独行動中だったのだけど、途中で深海棲艦の艦隊に見つかって、此処まで逃げていたわ。

 

…あの時。貴女達にもし救助されていなかったら、今頃私は海の底に沈んでいた。…本当にありがとう」

 

紳士の国の一員として、礼儀を以て感謝を述べる。

mother(ママ)からも、感謝と謝罪の言葉は忘れぬようにと、よく言われてた。

 

「私達も自己紹介を。私は不知火と言います。此方にいるのは私の妹の一人、時津風です」

 

「よろよろ~ジャーちゃ~ん♪」

 

優しそうな人達で良かった。取り敢えず、艤装が直らない事には動けないので、暫く華裏鎮守府に留まる事になる。その間、私自身が出来ることを見付けて実践していこうと思う。

 

…この時の私は、まだ華裏鎮守府の事を何も知らかった。

 

 

だからこそ、私は知ることが出来たのだと思う。

 

 

華裏鎮守府の辛く悲しい現実と。

 

彼女達を護るために戦う人が居た事を。

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が全てを捧げると誓った、大切な人との出逢いを。




禍根の指輪(ダリアス・フェッチェル)…国際的に名を知られている巨大テロ組織。海外の犯罪行為に彼等が必ずと言って良いほどに関わっている。
組織としての強さと狡猾さ等は、過去に現れたありとあらゆるテロ組織を超えていると、専門家は断言している。

組織構図やリーダーは、現在も一切不明。
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