将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~ 作:ガリアムス
そして華裏鎮守府の艦娘達は深海棲艦の艦隊を撃退し、迷える少女達を救えるのか?
*艦これイベント辛かった…燃料とボーキが尽きる前に新艦娘は全員保護出来たのは良かったけれども。
サミュエル…
「深海棲艦共。私の鬱憤晴らしと共に沈んで貰うぞ」
「…随分ト、生意気ナ口ヲ…タタク、艦娘…ダ」
華裏鎮守府から北西13050mの沖合。開かれたゲートから飛び出し、間一髪の所で長門の到着が間に合った。
深海棲艦の砲雷撃を真っ向から受け、本来ならば無傷では済まされない。…筈なのだが、現に長門は掠り傷処か砲弾直撃による痣さえ無かった。
「長門!」
ゲートを越えて、陸奥・初月・綾波・瑞鶴・翔鶴、そして雪風が来た。
「いきなり飛び出して行って、びっくりしたわよ!何やってるの貴女!」
「すまん。…だが、今の私は虫の居所が悪い。翔鶴と瑞鶴、初月は対空を。雪風は対潜警戒。綾波は負傷し動けない艦娘を寄航してゲートへ直行してくれ。
奴等は…私一人で潰しきる」
少し後ろを向いた長門を見た時、陸奥の全身から血の気が引き、ゾッとする。
こうなった長門を、嘗て誰一人とて倒す事は愚か、戦闘不能に追い込む事すら叶わなかった。喩え其れが、無敗王のニ之名を持つ磯風であっても。
「安心しろ、深海棲艦共。お前達は私が『五分』で片を付けてやる」
「ヤレル、モノナラ…ヤッテミロォ…!!」
暗黒の決意を宿し、単騎で深海棲艦の艦隊に突撃した長門。其れを迎え撃つ、深海水母棲姫率いる深海棲艦の艦隊。
この五分間を、私は今でも覚えている。
其の果てに待つ、尋常成らざる景色を。
* * *
ヒトマルニーハチ、品川駅 新宿・池袋方面ホーム。
「一つ目の朱印。其れは中野区の犬屋敷跡の銅像の何れかだと、俺は睨んでいる」
地下鉄・大本営前駅から品川駅へ着き、JR山手線池袋方面行きの電車に乗った時、結紲は自信を以て言い放った。
「何か理由は有るの?」
「問題文の『囲いの中に眠る』とあるが其の昔、犬屋敷は『かこい』と呼ばれていた。さらに『一途なる者』というのは、かつて主人を待ち続けた『ハチ公』の事を言っている」
「じゃあ、ハチ公の銅像と同じ構えをした、かこいの銅像に一つ目の朱印が在るんだね」
クリスの声に、そういうことだと結紲は答える。
目指す場所は決まった。後は其処へ行き朱印を手にするだけである。
「皆…そろそろ時間だ」
真守が指差す先に見える、一つの時計。其の針がついにヒトマルサンマルを指した。大本営に残った提督達が自分達を追い掛け始める時間。
ホームに電車が滑り込み、ドアが開かれる。
此処からが本当の勝負だ。
* * *
ヒトヒトマルナナ。品川駅から新宿・池袋方面のJR山手線に乗り、代々木駅で中央・総武線に乗り換え、アキラ達は中野駅に到着。
徒歩で七分掛け、一行は犬屋敷跡地に在る『異なる姿勢をした五匹の犬の銅像』の前に辿り着いた。既に他の提督や艦娘達も数組到着しており、周辺は混雑していた。
「此処みたいですねぇ~♪けど他の人も居ますし、どうしますかね?」
「答えは最初から決まっているぞ、青葉。銅像の怪しい箇所を調べて、朱印を見付けて二つ目の謎を解く」
アキラと真守が混雑する人だかりに対して、左側から周り込み、クリスと楓は右に、結絆は正面から銅像へ近付く。青銅色に錆びた犬達だが、其の表情は柔らかく嬉しそうに見えなくもない。
━━牧園 アキラだ━━
━━嫌な奴が居るな━━
アキラの姿を見た提督が陰口を叩き、空気が嫌な気質を纏い始める。彼と同じ場所に居れば、厄介事に自分も巻き込まれると考えているのだろう。
「…で、何れかな?朱印を持ってるワンちゃんは」
「忠犬ハチ公の画像を見てるけど、何れも当てはまらないよぉ」
鈴谷がナイスタイミングで思考を切り替えてくれた。だがしかし、此処に来て難題が生まれた。
そう。アキラ達に立ちはだかった問題…『どの銅像も、忠犬ハチ公と同じ構えを取る物が無かった』のだ。これでは、先に進めない。
「ヤベェ、後10分しかねぇじゃねぇか!」
「どうしよう!カード持ってるから狙われる!」
刻一刻と迫る
異様な空気に支配されつつある此の場所。アキラ達も思考が滞り、普段とは程遠い心境になってゆく。
━━━━もしも、朱印を見付けられなかったら?
考えたくない『最悪の瞬間』が脳裏を過り、真守と結絆は思考を否定するかのように、ほぼ同時に頭を横に振った。
「アキーラ!見てみて、凄いでしょ♪」
が、そんな空気を読めなかったのか、はたまた読まなかったのか、華裏鎮守府に在籍するアイオワが『尻尾を円曲させ、お座りの姿勢を取る犬の銅像』の上に、自らの豊満な胸部装甲を乗っけたのである。
「ちょっ!?何してんの、アイオワさん!」
「うふふ♪元気が出たかしら?」
元気付けるどころか、彼女のたわわで圧倒的な胸部を見た一部の艦娘や、女性提督達を無意識に傷付けたのを理解して欲しい。只でさえ派手な格好なのに、派手な行動を起こすと、此方の首が危なくなる。
「アイオワ。アキラの言う通り、銅像で遊んではいけないわ。其れに周りが…ね?」
「…oh」
やっと自分が何を仕出かしたかに気付いて、しょんぼりと落ち込んだ彼女。だが、立ち上がり銅像から離れようとした時、アイオワは銅像の『尻尾を踏んだ』。
普通、銅像と言うものは型造りを終えた時点でガチガチの塊の様な物だ。本来なら、からくり仕掛けにでもしない限り『動かない』のが鉄則。
しかし、アイオワが踏み付けた尻尾は『地面へ』。それもパタリと着き、同時に其の銅像の眼からは『赤い光』が放たれたのである。
『『『『『『『『『は?』』』』』』』』』
提督も。艦娘も。一糸乱れぬ素っ頓狂な声を溢した。
「Wow! これって
アイオワが興奮し、ジャンプする度に尻尾は元の位置へ戻ったり地面に着き、赤い光は点消灯を繰り返す。
《朱印…朱…赤?━━━━━━━━━あ》
アキラの直感が、たった一つの真実へと続く道を切り開く。
「…まさか!!アイオワさん、そのまま尻尾を踏んだ状態で待機して。出来るよね?」
「え、えぇ。任せてアキーラ」
アイオワを落ち着かせ、アキラは自分の朱印を納める色紙を取り出し、光へと近付いていく。
「アキラ?」
「真守、クリス。結絆、楓。…『朱印』ってさ、一体何なんだろうね?」
赤い光射す道へ。アキラは色紙を構え、光へと翳した。
「多分、俺達は判子だと何処かで決め付けていたのかも知れない。この一次予選は、そんな常識に囚われている者ほど、正解へ辿り着けなくしているのかもね」
光を浴びる色紙、其の囲いの一つに像が浮かび始めた。そして其処には『大きな錨の模様』を成す一つ目の朱印が、赤々と刻まれていた。
「どうやら、これが一つ目の朱印みたいだね」
アキラが掲げた瞬間、提督達が一斉に。我先にと銅像へと押し寄せた。
「アキラ…お前、すごいな」
「クリス達のお陰だよ。俺一人じゃ多分何日も掛かってた。それより急ごう、時間も無い」
時はヒトヒトサンマル。遂に『カード所持者の居場所を示す放送』が東京都内全域に響き渡ったのである。
* * *
同時刻、東京都内・新橋駅。
昼時、オフィスで仕事をするサラリーマン達が昼食を取るために立ち食い蕎麦屋へと繰り出す時間。
だが、その日。駅と其の駅前広場、そして周辺地域は。
悲鳴と混乱、そして血の跡が生々しく遺され、凄惨に支配されていた。
「…何ですか、甲染さん…。何なんですか此れは!?!」
善吉が叫ぶ。辿り着いた彼等が見たのは、多数の救急車が押し寄せ、担架に怪我人を乗せて搬送したり、他の警察官が現場検証や証言を取る。
一部はビニールシートに覆われていたが、其れでも尚隠し徹せない血痕が生々しく遺されており、此処で何が起きたかを想像させるには、容易過ぎていた。
「善吉、パトカーで聞いた通りだろうが。
『新橋駅で複数の無差別通り魔事件発生』ってよ。そして此処は其の『結果』が残されてるだけだ」
甲染もまた、帽子を深く被り手袋を着け直す。表情は鋭い目付きへ変わり、ふざけた雰囲気は其処には無かった。
「あ、甲染さん!善吉さん!」
捜査員の一人が、甲染達を見付けて駆け寄り敬礼すると、彼等も間髪入れず敬礼を返した。
「ご苦労。現在の状況は?」
「死者が現在16名、怪我人だけでも70名を超え、まだ増える可能性も…。
犯人はいずれも、逮捕前に首の動脈を自ら斬る、持っていた拳銃やプラスチック爆弾で自殺したため、動機等は一切掴めませんでした…」
「成る程…」
「ただ…犯人の一人の胸に、このような『
捜査員は一枚の写真を甲染に手渡す。受け取り、それを見た甲染の顔から血の気が一瞬で引き、脂汗が額を伝った。
「甲染さん…?」
「善吉…今回の事件。かなり『ヤバイ組織』が関わってやがる…!」
刺青は『十字架に髑髏の首飾りが掛けられ、左目から涙を流している』。善吉もまた、其れを見て眼を丸くした。
「…『
其の活動は『戦争活動』や『テロ行動』、『麻薬の密輸と販売』に『人拐い』、そして『人身売買』と多岐に渡る。
『現在海外で起こる犯罪の八割に彼等が関わっている』とされる此の組織は、国際社会からも危険視され、近年社会問題として議論が交わされる程だ。
「…ヤベェ事が、起きようとしてやがるかもしんねぇ。善吉、直ぐに警視庁本部と他の警察車両に連絡。…禍根の指輪が出たと、直ぐに伝達してくれ。
ただし、焦らず迅速な対応を行うよう付け加えてな」
「了解しました!」
《アキラ…》
ビルの合間を抜ける隙間風は、生暖かく嫌な気質を帯びて、彼らを凪いでゆく…。
其れはまるで、嵐の前の静けさであるかのように、不気味な空気を放ち、東京を恐怖の竜巻へと巻き込もうとしているかのようだった。
* * *
視界が暗い…。電源が落ちた密室の中のような…。
全身が重い…。濡古着の束を乗せられたように…。
感覚が鈍い…。長時間の正座から解放された足のように…。
「う、うっ…うん…?」
重い瞼を開いて、少女は覚醒する。
最初に目に飛び込んできたのは、木目調の天井だった。彼女の母国では基本的に鉄が主流であり、こういった物は珍しい。少なくとも国外…一先ずは安心出来る場所であるのは間違いないだろう。
辺りを見渡すと、自分がベッドで寝ていた事を知り、同時に此所が医務室らしき場所である事が分かった。
少女は重い体を起こして、情報入手に乗り出そうとした。
「おや、目が覚めたみたいですね」
入口からピンクのショートヘアーの、同い年に見える女の子が歩いてくる。プラスチックの容器に氷水を入れた状態で抱えており、縁には新品のタオルが掛かっている。彼女が看病していたのだろうか。
「何処か痛いところは有りますか?」
「
他国の言葉を、私はある程度理解してはいる。
大丈夫と彼女に答えるが、首を傾げて変な顔をした。
何故?もしかして英語が分からないのか?
「あ、ぬいぬい~♪」
そんな疑問を覚えた矢先、また誰かやって来た。
ピンクのショートヘアー少女、ぬいぬいと呼ばれている娘にダイビングハグを決めた子…何だか髪や顔立ち、人懐っこい性格で仔犬に見えてしまう。
「時津風。彼女の看病をしているので、今は遊べませんよ」
「えー、ぬいぬいのケチ~」
「我慢してください」
仔犬少女…トキツカゼは膨れっ面でブーブーと、ぬいぬいに対して言うが、彼女は変わらず氷水にタオルを付けて冷やしている。
けれど、私が今やらなければならない事は、此所が何処で、どの国に属しているのかを知らなければならない。
「えっと…
ぬいぬいは、やっぱり私の言葉の意味が分からない様で首を傾げている。
《…まぁ、そうよね。『
「
…………英語を話した。しかも私より、ずっと発音綺麗だし。トキツカゼ、見た目によらず恐ろしい娘ッ…!
「えへへ~♪どぉ?時津風、香取先生のおかげで英語喋れるんだぁ~」
「…驚きました。時津風、いつの間に英語を?」
「毎日15分、香取先生と集中勉強~♪其れを四年間続けたの~♪」
「すごいですね…」
むっふんとドヤ顔して髪の毛パタパタしてるトキツカゼかわいい。
「ん~…ねぇねぇ金髪ちゃん」
なんて、のほほんと眺めてたらいきなりそんな事を言われてびっくりした。
「金髪ちゃん!?えっ…私の事、よね…?」
「そーそー、貴女の名前はなぁに?」
「えっと…こほん。My name i『あっ英語じゃなくて良いよ~』…え、良いの?」
「うんうん。私の妖精さんで和訳するから気ニしないで~♪」
「時津風、ありがとうです」
先ず此所が、華裏鎮守府と言うのは分かった。そしておそらく、トキツカゼの日本語発言から、此の鎮守府は少なくとも日本の中に在る事も予測出来る。…窓の外は青い海が見えるけど。
「…じ、じゃあ改めて。私の名前は
今は訳あって単独行動中だったのだけど、途中で深海棲艦の艦隊に見つかって、此処まで逃げていたわ。
…あの時。貴女達にもし救助されていなかったら、今頃私は海の底に沈んでいた。…本当にありがとう」
紳士の国の一員として、礼儀を以て感謝を述べる。
「私達も自己紹介を。私は不知火と言います。此方にいるのは私の妹の一人、時津風です」
「よろよろ~ジャーちゃ~ん♪」
優しそうな人達で良かった。取り敢えず、艤装が直らない事には動けないので、暫く華裏鎮守府に留まる事になる。その間、私自身が出来ることを見付けて実践していこうと思う。
…この時の私は、まだ華裏鎮守府の事を何も知らかった。
だからこそ、私は知ることが出来たのだと思う。
華裏鎮守府の辛く悲しい現実と。
彼女達を護るために戦う人が居た事を。
そして…
私が全てを捧げると誓った、大切な人との出逢いを。
組織としての強さと狡猾さ等は、過去に現れたありとあらゆるテロ組織を超えていると、専門家は断言している。
組織構図やリーダーは、現在も一切不明。