将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~ 作:ガリアムス
*オリジナルのメカが登場します。元ネタを知っている人は多分同世代。
*小説の最後に、ある人物の本名が明かされます。
* * * * *
昔の話だ。思い返せばとても遠い、昔の話。
四十一か、二年くらい前になる。
今となりゃあ…それが俺が覚えている、家族との記憶だろう。
俺には家族がいた。親父と御母、そして二人の弟の計五人家族。親父と御母は共働きで仕事が忙しく、家に帰って来れるのは三ヶ月に一回程度。長けりゃ一年は当たり前。俺達三兄弟は両親が居ない間は、親戚の家に預けられ、学校に通い、育てられていた。
『悪魔の一族』…『厄災の忌み子』…『呪われた血筋』…と、そう近所や学校で、俺達は呼ばれていた。
そんな中でも学校内外で弄りにきたり、兄弟に手を出したムカツク連中共には、授業だろうが関係無しに教室に殴り込むと、先生に取り押さえられようが御構い無しに、半殺しになるまで伸してやった。元々腕っ節は自分でも無茶苦茶強いと自負しており、学校どころか中高生を相手や、一対多数だとしても、俺は負けた事が無かったので、当然と言えば当然の事だ。
其の度に生活指導の先生に呼び出されて、説教を食らったが、殆ど聞かずに耳で流し、鼻で笑い飛ばして。
喧嘩を売られりゃ高く買い、弟達が泣かされたなら倍返しにソイツの家に殴り込む。まさにクソガキに相応しい生き方をしていた。
……今思えば、両親に会えない寂しさや空虚な心を潰すために。或いは、俺を叱る為に戻って来てくれるかもと、そんな淡い期待を抱いてやっていたのかもしれないと。
だが、親父も御母も。
学校に顔を出すことは、無かった。
裏切られた気がした。中学に上がり、悪友とつるみ、夜な夜な悪さを働いたりもした。
分かっていた…こんなことをしたとして、仕事が忙しい上に、帰ることさえ出来ない親父が来てくれる訳がないと。
ある時の夜、俺は悪友達に嵌められて、盗難の罪を被らされ、警察に補導・交番に連れていかれた。
其れまで信じていた連中に裏切られて、何もかもが嫌になった俺は、逮捕されるために今までしてきた事を全部、聞き取りをしていた警官に白状した。
自暴自棄…我ながらアレは、今も思い出すだけで死ねたねマジで。
『そうか、よく言ったな坊主。後は任せておけ』
…初めてだった。警官があんなにも優しいと思ったのは。その日は其の警官の電話で親戚の人が呼ばれ、俺に対して厳重注意をしたと言い、俺は家へと送り返された。
後日、彼が俺を嵌めた連中達を全員捕まえて、事情聴取を行っていた事を知った。何故、見ず知らずの。それも会って一時間もしないような悪ガキの為にそんな事をしたのかと。
そんな俺に、彼は小さく笑ってこう答えたのが、今でも記憶に焼き付き残っている。
『俺はあくまで、自分の正義に従っただけのこと。真実をハッキリさせたい…その信念を貫く為に、警察官になった。これまでも、これからも、其の心は変わらない』
其の警官と出会い、其の言葉が有ったからこそ、俺は自分の『夢』を見つける事が出来た。
彼のような『自分の正義』を貫き通す、最高にカッコいい…そんな『警察官』になりたいと。
* * * * *
東京都・新橋駅周辺…
ドガガガガガガ!!!
ドガガガガガガガガガガガ!!!
「あぐっ…!」
「負傷者は下がらせろ!無理だけはすんな、生き残る事を考えるんだ!!」
禍根の指輪による東京侵略。各部で同時多発的に起きた其れは、瞬く間に東京二十四区を戦火に巻き込み、恐怖と狂気の渦に巻き込んだ。
罪も力も持たぬ者達は、彼等の持つ銃火器の武力を前に成す術もなく蹂躙され、一人…また一人と命を奪われ、アスファルトの地面や建物の壁に赤い血の花を咲かせてゆく。
そんな非人道の連中を相手に、現在新橋駅で少しでも被害拡大を食い止め、奴等の足止めを試みているのが、
だが、警官隊が持つ武装は拳銃と警棒に対して、相手はピストルに機関銃、ロケットランチャー、手榴弾に果ては戦車と圧倒的なまでの火力差。おまけに人数も彼方が上、何処にいるか解らない狙撃手が狙いを定め、獲物を待っている…正直に言えば甲染達がやっている事は、焼け石に水である。
「甲染!どーすんだ、こんままジリ貧なって奴等に擂り潰される何てのは御免だぞ!!」
「わーとるわボケ!」
シリンダーに弾丸を再装填し、牽制射撃を謀る甲染。しかし其の動きが読まれているのか、体を物陰から出す前に彼が向かおうとした場所は、機関銃の弾丸が雨となって襲い掛かった。
「うおおぉ!?あっぶね!」
禍根の指輪に一泡噴かせてやると意気込んでも、現実はあまりに非常である。地力は此方にあるとしても、人手が足りない、足りな過ぎる。
何れにせよ、そう遠くない内に俺達は奴等に殺される。
…そんな空気を悟ったのか、一部の警官達は絶望の表情を浮かべ、手に握った対抗手段を落とし始める始末。
《どうする…『アイツ等』からの連絡はまだこねぇ…!持ち堪えるのも、苦労してるってのによ…!》
心中焦りを覚える甲染。冷や汗が頬を伝い、呼吸が荒くなり始める。だが━━━━━━
甲染さん!と善吉の叫び声が、彼の耳に木霊した。
「今さっき、見馴れない電話番号から電話が!」
「アァ電話番号!?最初の三桁は!」
「三桁は━━『777』です!」
《━━━『アイツ等』…メチャクチャ遅ェよ!何分待ったと思ってやがる!…だが、これ以上に無く『最高』のタイミングだ!》
「善吉!無線で電話を繋げ!」
「了解!」と緊急時下にあっても善吉は落ち着き、冷静に電話を無線で繋ぎ、応答器を甲染へと投げ渡した。
「俺だ!!」
『其の声…タートル!無事か!?』
タートル…其れが組織の。VDF━『
「ったりめぇだ!…と、言いてぇが所だが、生憎
正直に言うが、状況はかなりキツい。家の警官も鍛えに鍛えた精鋭だが、相手との相性が『
現場の状況を読み取り、自身の経験から適正な
『状況は把握した!タートル、今そちらにソウルの小隊が飛行挺で高速で急行している!更には、我々の『新兵器』も一緒に輸送中だ!
これから、スマフォに其の新兵器を降下させる位置情報を送信し、三分後に目標地点に兵器を落とす!尚、新兵器は『爆弾』ではない!』
「OK、直ぐに目標地点に向かう!てか、爆弾載せようとしてたのか!?『デミウス』の馬鹿!後で俺直々に説教してやるから、覚悟しとけこんにゃろうが!!」
若干キレ気味になりつつも、無線を切り、俺は善吉に告げる。
「悪いな。今から少し…此所を離れるぜ。だが、安心しろ。耐えきれたら、このくそったれな状況は一瞬で逆転する。
だから、善吉よぉ…其れまでの間、此処の馬鹿共の指揮を頼むぜ?」
んじゃな、と物陰から抜け出そうとした時だ。警察服の袖を善吉の手が掴み、握っている。
「………分かってる。貴方は言うことを聞かないし、止めても無駄なのは分かっています。
だけど…これだけは言わせてください。
必ず。絶対に。…帰って来てください」
━━━━━━━━━━━『兄さん』
…何十年振りに、コイツの。
『牧園 センキ』の口から『兄さん』と言う。今にも折れてしまいそうな、か弱い言葉が出たのは。
俺がやんちゃしていた頃から、三兄弟の中でも一番背が低く、一番の泣き虫だったセンキ。虐められたりすれば、必ずといって良いほど俺に泣き付いていた。
俺が警察官になると決めた時も、コイツは『危ない事ばかりしている兄さんを止める為に、僕も警察官になる』なんて言ってたっけか。
今じゃ随分立派になったと思っていたが、まだまだ可愛げがあるじゃねーの。
「阿保ォ、心配すんな。…ちゃんと帰って来てやる」
そう言い残して、俺は意を決して車体の影から裏路地へと走り出す。
機関銃の連射音が響く。
足や身体に銃弾が当たれば、一巻の終わりだ。
絶対に当たるわけにはいかない。
細い道へ飛び込み、スマフォで位置を見る。
ビルの屋上には、奴等の狙撃手が居る可能性も高い。
大通りを避けつつ、鉢合わせせずに、目標地点に辿り着く。そして五体満足で生き残り、センキ達の元へと帰還する。
…正直言って、かなりムズい。
「だが、まぁ…やるしかねぇよな…!」
覚悟は決めている。
走れ、走れ、走れ。
裏路地から出て、最短距離を縫いつつ走る。
時折、自分の居た場所から爆発音や悲鳴が響き、脳裏に其の映像が過り、否応無しに嫌な結果を想像させてきた。それでも、自分は彼等を信じている。ならば最後まで、自分を信じている彼等を信じよう。
* * * * *
甲染は走る。自分が居ない間、耐え続けている仲間達の為に。
時間は無いが、目標地点まで漸く半分近い距離。
「━━━━━て…!」
「━━━…!!!」
走るビルの谷間から、人の声が聞こえてくる。進行方向と逆側からだ。静かに様子を覗くと、暗闇の中に蠢く影がちらほらと。目が暗闇に順応したところで、甲染は此の場所で何が起きたのかを知った。
服と下着を破かれた女が一人、禍根の指輪の兵士達に囲まれ、今にも強姦に巻き込まれようとしている。近くには男が仰向けで倒れ、頭や胸には弾丸で開けられたであろう、赤い無数の斑点が服に染み付き、地面には血の池が出来ていた。
観ているだけで虫酸が走る。しかし、新兵器を手に入れる為に目標地点へ急がなければならないのもまた事実。甲染は一瞬の間に頭の中で思考し━━━行動を取った。
ドウン!!
「!?」
禍根の指輪の兵士達が発砲音の方へと視線を向ける。機関銃に取り付けたサイレンサーで照らした先には、片手に拳銃を握る甲染が立っていた。
「おい!此方だ!!」
奴等が機関銃の引き金を弾くより速く、サイレンサーの光から『銃口の位置』を予測、一発放つ。銃口にドンピシャとも言える射撃が直撃し、機関銃が爆ぜ、持ち主の手が爆発によって破壊された。
「おら、悔しかったらブチ殺してみな!」
一目散に逃げ出した甲染にキレたのか、禍根の指輪の兵士達が女を置き去りに、彼を追い掛ける。
《さて…どうするか》
甲染は再び思考する。拳銃の弾丸は補充分も含めて十四発、警棒、そしてスタンガンのみ。
現状で使える武器を用いて、目標地点まで逃げ切らなければならない。敵は機関銃と手榴弾、ピストルも持っているだろう。
《やれやれ…女の子を助けるためとはいえ、奴等にケツを追われるたぁなぁ…。つくづく、救いようがねぇ》
悪態を心中で吐き捨てた矢先、機関銃の連射音。直ぐに角を曲がり、難を逃れる。だが奴等もまた、別方向に兵士を分散させ、挟み撃ちを狙うべく動き出した。
《だよなぁ…そうするだろうぜ。ソイツを利用させて貰おうじゃねぇの》
土地勘だけが奴等に対して勝てる要素。甲染は機関銃を持った兵士達に追われながら、ビルの角を右へと回る。そして素早く、窓枠と窓屋根を利用して、兵士の頭上へと逃げ仰せた。
甲染を追っていた奴等は、彼が突如として消えた事に驚き、周囲を見渡すが何処にも居ない。その間に彼は窓屋根板の上を次々に飛び移り、ビルに固定された雨樋をジャングルジムを使って遊ぶかのようにスルスルと降り、音も無く着地。そのまま目標地点へと全速力で走り出す。
走り、走り、走り続け。
彼は遂に目標地点付近に到着したのであった。
《時間も良い感じ…そろそろだな》
其の時だ。キィィィィィィィィィ!と離陸前の飛行機のような高い爆音がビルの隙間に轟き、雷の如く大音量で鳴り響く。
来た。何度も聞いてきた、VDFの輸送飛行挺の飛行音。
某SF人形劇に出てくる、飛行挺に似たコンテナを内封する緑のカラーと独特のフォルム。
其の飛行挺が空中で止まると、後ろ側が開くや黒いウイングスーツを纏った十人程の人が降下し、そして最後に『一台の戦車』がバックしながら、飛行挺から落ちてくる。
「おいおい、おいおいおいおいマジかマジか!?!?」
飛行挺が離れた直後、徹甲弾の着弾にも負けない重音がアスファルトの大地を砕き割り、爆風と砂塵を撒き散らす。
風で晴れた其処には、小型戦車。其の機体の砲塔部…右側にはパイルバンカー、左側には中口径ガトリング砲がアームで接続されていた。更に車体後部には空中を睨む、二問の高角ガトリングが備え付けられ、真正面の戦車が戦車足り得る巨大な砲口がどっしりと構えている。
『タートル隊長を確認しました!ソウル、至急護衛に着いてください!』
『此方ソウル、任務了解した』
ウイングスーツとマスクを纏った者達が甲染を発見し、駆け寄ってくる。胸にはVDFのロゴマーク、一部は既にバックパックから武器を取り出して装備、輪形態勢で周囲を警戒していた。
「ソウル、あんがとな」
『問題は無い。これよりタートルの指揮下に入る。既に他の地域にも我々の部隊が到着し、禍根の指輪との交戦、及び救護活動に順次している。
此方の指示を頼む』
敬礼しつつ、ソウルはスーツとマスクを甲染に手渡す。彼は上から其れを羽織るとスーツは自動で甲染の身体に合わせるように、警察服の上から被さるように纏った。マスクを身に付けつつ、駆け足で新兵器の戦車に近付きつつ乗り込み、マスクに搭載されたマイク機能を通じて仲間達に指示を出す。
『お前ら!これより、新橋駅周辺で戦っている警察隊の救援を行う!禍根の指輪共に俺達の力を見せてやれ!』
『了解!!!!!』
行動を開始したVDFの仲間達。ソウルを先頭に新橋駅を目指して行動を開始。靴に触れると、底からローラーが飛び出し、彼等はスケートでもするかのように、高速で移動してゆく。
「システムオールグリーン…各武装及び間接駆動、並びオートマチック機構に異常無し…。
コイツの名前は…成程。『アイアンスラッガー』ってのか、良い名前だな!よっしゃ、
エンジンが高らかに唸り、キャタピラがアスファルトの地面を削り取るように、音を鳴らして走り出す。
機動力は中々有るようで、右左折する時もまるで車を動かしているかのようにスムーズ。ビルの谷間を縫い、新橋駅へと向かい、先を走っていたソウル達に追い付いた。
『タートル、どうだ?新兵器のアイアンスラッガーは?』
『最高だ!一番良い出来じゃねぇか?コイツは!!』
『そうか。だがソイツの力は、まだまだこんなものじゃない。マスクにアイアンスラッガーの取説データをインプットしてある。時間は限られているから重要部分を絞っておいた、目を通してくれ』
『OK…んじゃ、禍根の指輪をブチのめすとするか!』
* * * * *
新橋駅周辺…
ドガガガガガガ!!!
ドォォォォ……ン!
「うわぁああああ!!」
「皆、負けるな!戦線が崩れたら…《ボコォォォ!》くううぅ!?」
味方の警官達が、禍根の指輪の兵士達に一人、また一人と倒されてゆく中で、私は一人、蟻地獄のように逃れられぬ、終焉という名の
一秒という…普段なら当たり前に過ぎる筈の時間が、一年のように長く、永い時間のように感じる。
きっと其れは…今こうして、命懸けで戦っているから。
死にたくないと。
生きたいと。
そうして必死に、生き物として足掻いているから。
「皆、耐えろ!必ず…必ず甲染━━━」
其の言葉が紡がれる前に、壁として使っていたパトカーが、中型戦車の砲撃で破壊され、爆発の衝撃で私は吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられてしまう。
「あっ…が……」
声が出ない…頭が軋み、視界が霞んでいる。
叩き付けられた時に、頭と肺が衝撃にやられたのか。
「善吉さん!!」
「うわぁああ━━━━!!!!!」
声がする、仲間達の悲鳴だ。
機関銃の銃撃音が、つんざくように聞こえてくる。
立たなければ…仲間達を守らなければ…。
約束したのだ。あの人に…兄さんに。
仲間達を守ってやれと。
このままでは、約束を守れない。
彼に…顔向け、出来ない。
私は立とうとした。
しかし、後頭部に銃口が突き付けられる。
仲間達の静止を求める声が聞こえた。
《………どうすれば、この状況から…勝てる━━━》
直ぐか。一秒後か。確実に私は死ぬ。
脳裏浮かび、風のように過る走馬灯。
意識がゆっくり、遠退いてゆく。
《……どうすれば━━━》
私が死を覚悟し、それでも考えた。機関銃の引き金が引かれ、銃口から無数の弾丸が放たれる。そうなれば、私に救済の余地は無い。
人間の死体が一つ出来上がるだけだ…。
ドガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!
『━━━━━!?!!』
『$¥%#+~!?』
《━━━……え?》
禍根の指輪の兵士達が次々に倒れてゆく。動揺と困惑…抵抗しようと銃を構えても、それより速く撃たれて倒れる。
《………あ》
遠退いていた意識が、其の存在を視認した事で覚醒を果たす。一台の小型戦車と十数名程の人数という、誰が見ても援軍とは言えない戦力。
だが…其れに関わらず、次々に敵を打ち倒し、負傷者達に手を差し伸べ、治療を手馴れた速度でこなしている。
善吉…いや、センキは。其の組織を知っている。
名をVDF…日本のみならず、世界の主要都市に配備されている、特例武装自衛組織。
彼等は『
そして、其の最終目的は『禍根の指輪の首謀者を捕縛し、組織を完全に滅ぼす』事である。
《……兄さん。…VDFを呼んでくるなんて…。本当に…凄いよ……》
コウゼン、ユウスケ、センキ。
『努力し続ける者や、絶対に諦めない人間には、必ず幸運が舞い込む』んだ。
何でも良い。自分の好きな事、やりたいと思った事。其れを最後まで、納得いくまで。やりきるんだ
神様や人は、そういう努力を決して。絶対に見逃さない。父さんがそうだったようにな。
『父さん』の言葉を思い出し、心の中で
* * * * *
『オラオラオラオラオラァ!!』
同僚の警官達は絶望的状況から、俺達VDFの援護による大逆転で雄叫びを挙げている。
『装甲車両と中型戦車は俺が潰す!付近の狙撃手は任せたぞ!』
『
だが、其れが敵の作戦だった。
敢えて片翼を囮とし、戦車の狙いに要する時間を稼ぎつつ、誘い込む。完全にしてやられた。
中型戦車の砲塔の照準が、アイアンスラッガーへと定められる。
やられると…警官達は思ったろう。
獲ったと…禍根の指輪の兵士達は思ったろう。
『ところがギッチョン!』
『アイアンスラッガーがスラスターでホバリングし、砲撃をジャンプで躱わす等と』、VDFのメンバー以外、誰も予想だにしなかった。
続け様に『オラァ!』と、甲染は車内のレバーを『戦車のマーク』から、『二足歩行のマーク』がある場所に合わせるようにし、前へと倒す。
刹那、アイアンスラッガーのキャタピラ部分と車体部分が超変形を果たして、下半身を形成。両側に取り付けたパイルバンカーとガトリング砲は、下半身の変形と同時に両腕の武装として稼働。
瞬く間に小型戦車のアイアンスラッガーは、二頭身の二足歩行型小型戦車ロボットへと、一瞬で姿を変えたのである。
「エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!?????」
敵味方共に、ある者は驚愕を。ある者は無言に。
またある者は、其の浪漫溢れる機構に称賛と憧れの声を挙げる。
『ハッハッハァ!!!!!』
高らかに笑い、ホバリングで使用したスラスターをブースターに転用。機動力を上げながら、ガトリング砲と戦車砲塔で敵装甲車両二台に風穴を開けて爆散、スクラップに変えた。
『最後にコイツを喰らいやがれ!』
右腕を大きく引きながら突貫、激突の瞬間に一気に突き出す。衝撃がバンカーのセーフティを解き、射出された
同時に内部の燃料へ、火花による引火が起きて、鋼鉄の塊は爆発。燃え盛る一台の廃車を背に映る、一機の機士は目撃者に絶大な衝撃を与えた事に違いない。
『禍根の指輪の連中に告げる。死にたくなけりゃ、武装解除し、大人しく投降しな』
アイアンスラッガーのガトリング砲を、仲間達は機関銃を構えて、禍根の指輪の兵士達に狙いを定める。
今まで自分達は狩る側の者、弱者を踏みにじり、蹂躙する側であった筈。
其れが何故、今は狩られる側に。何処で間違えた、どうしてこうなったのかと、彼等は思っているだろう。
『重火力の武装は、俺達VDFの隊員が破壊し尽くした。お前らは、きっとこう考えているだろう。
『屋上に配置した狙撃手が、必ず。お前達を撃ち殺す』…とな。だが…残念。うちの狙撃手は『そーゆー』のに滅法強いし、勘が効くんだ。
今しがた『禍根の指輪の狙撃兵の殲滅を完了した』…との連絡も来たぜ』
『心理の先読み』を利用し、禍根の指輪の兵士達の戦意を、根刮ぎ、しっかりと減し折った。
これで終わる…そう『思っていた』。
「……ハハハハハハハ」
「ハハハッ!ハハハハハハハ!」
「ハハハハハ!アハハハハ!!!」
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
笑い出した。其れも突然に。しかも不気味に。
まるで壊れた
神話的異郷生物と対面し、発狂と狂乱したように。
「我等の目的は既に達成された」
「故に我等の命は不要の長物」
「死して遺志を同志に託す」
禍根の指輪の兵士達が、口の中…奥歯に当たる部分を自分達の奥歯で押した。
『禍根の指輪に栄光あれ!我等の同志に勝利あれ!』
其れは万歳に等しい声で、狂信者に近い眼力で、彼等は言い放つ。其の直後、其の身体はブクブクと膨張し、ミチミチと肉や健が千切れる音を響かせ始める。
『全員伏せろォ!!!』
甲染の声に、VDFのメンバーは警察官達を次々に押し倒し、地面に伏せさせた瞬間。兵士達の身体が爆裂し、血肉をぶちまけ、駅周辺に赤い雨を降らせた。
其のあまりにも凄惨で、刺激の強すぎる光景に、警察官の一部は胃の中の物を吐いてしまったり、意識を手放し泡を噴いて気絶してしまう。
『奴等の事だ!血液中にウイルスを仕込んで、空気感染や血液感染を狙っている可能性がある!全員至急ワクチン注射!!!医療組、慎重にいけ!』
テキパキと事後処理の指示を出し、アイアンスラッガーから降りた甲染。「目的は既に達成された」…其の一言に疑問を抱きながら、彼は医療担当の隊員が処置に当たり、一先ず応急処置を終えた善吉の元へと駆け寄る。
「あ…ありがとう、ございました。VDFの皆さん…この御恩は、生涯忘れません………」
細々とした声で、仰向けのまま礼を述べた善吉に対して、甲染は複雑な気持ちになる。スーツの下には警察官の服を着ている。マスクとスーツを外せば、自分の正体は白日の元に晒される。
しかし、其れは出来ない。自分には『目的』がある。其れを成し遂げるまでは、善吉…いや『
故に━━━━
『我々は凶悪なテロ組織から日本を守る為、自分達の戦いをしたまでです。我々の到着まで、奴等の侵攻を食い止めていただいた事、感謝致します』
━━━━俺はそう。淡々として、今の自分の役柄に徹し、彼にそう言い切るしかなかった。
* * * * *
ここは何処だろう…?
目が覚めたとき、視界は暗黒の中に居た。
耳も聴こえない、口もガムテープらしきもので塞がれ、声も出ず、手足もロープだろうか?…そんな頑丈な物で縛られている。
《確か…そうだ。何かに撃たれて、気絶して…それから……駄目だ、思い出せない……》
突如、視界が明るくなった。恐る恐る目を開けた時、白い空間の中に、一脚の椅子に拘束された状態で、座らされていた事に気付いた。
奥には中くらいのモニター。そして何よりも…目の前には、禍根の指輪の兵士が二人、機関銃を構えて立っていたのだ。
「━━━━」
『━━━━━。━━━、━━━━』
「━━━」
《何をいっているんだ…?聞こえれば、何か分かるはずなのに………えっ!?》
兵士達が誰かと話をし、耳に触れてくる。暴れれば撃たれると考えて大人しくしていると、両耳から音が聞こえてくる。ゴオォォォォォォ…という重低音が。
まるで『トレーラーのコンテナの中に居る』かのような音に、不安を覚えるアキラ。しかし、彼が右に視線を向けた時。其処には『居る筈の無い人間』が、自分とほぼ同じ状態で拘束されていたのである。
《クリス…!?なんで、なんで此処にクリスが居るんだ!?》
悠との再会で、俺は仲間を置いて、自ら逃げ出した。なのに何故、此処に友が居るのか?
クリスも此方に気付いたようで、潤んだ今にも泣き出しそうな目で、アキラを見ている。
『ザザザ…━━………フム、起きたようだね』
真正面のモニターから声が響き、点灯して現れる禍根の指輪のシンボル。
『同志よ、二人の口縄を外してあげなさい』
「ハッ。ボスの仰せのままに」
二人の兵士は動く。しかし、クリスの口縄は優しく丁寧に外したのに対して、此方は脛に貼ったガムテープでも引き剥くかのように、荒々しくひっぺがしたのだ。
「~~~~~~~~~~~~!!!!!?????」
「あ、アキラ!大丈夫!?」
何とも言えない痛みに悶絶するアキラに、クリスが心配して声を掛ける。
『おやおや、他人の心配をしているとは。随分と余裕ですね』
「ボク達をどうする気!楓達は無事なの!?」
『言葉を謹みたまえ』と一言で、兵士達が一斉に銃口を此方に向けてきた。
『君達二人の運命は、私の機嫌一つで呆気なく決まる。其れを自覚したまえ。…まぁ、どのみち君達はそう長くない内に『死ぬ』のだがね』
寒気が走る。声だけで分かる。
本気だと。声の主がその気になれば、俺達二人を何時でも殺せるのだと、自分の直感が警告音を鳴らしている。
だが。俺はモニターから聞こえる声の者が放った、とんでもない爆弾発言に、全身の血の気が引くことになってしまう。
『牧園一族!…我が組織に大打撃を与え、一度は再起不能の寸前までに追い込んだ、忌まわしき血筋の人間達!!
そして
…許さぬ。決して許さぬ…。
だが。今日という日を私達は感謝する。二つの禍根の血を絶やせる…何と甘美な事か!
牧園一族の血統を継ぎし者、牧園 アキラァ!!
そしてェ!!!!!!!!!!
大英帝国、王位継承権第一位の…『エリザベス・エリーゼ・クリスティアル』…『王女』よ!!!!!!!!』