※この作品はR-18です。

将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~   作:ガリアムス

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・今回のお話は、和歌月 楓達の視点の話から始まり、次に大本営、最後に華裏鎮守府の順に話を展開していく事になります。

・さらに様々な視点から、色々な事が明かされます。


将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。~禍根の指輪と最凶最悪の事件 其之陸~

「悠さん。シェルターに案内して頂いて、ありがとうございます」

 

「ありがとうね…」

 

「Thank You…」

 

東京都内某所…和歌月(わかつき) 楓(かえで)と立花(たちばな) 亜衣(あい)達は、白百合(しらゆり) 悠(ゆう)の案内で避難場所に設定された、特殊シェルターを目指して進んでいる。

 

皆、悠に礼の言葉を述べ、其れに続いて坂井 健太郎が「…助かった」と一言遅れながらに言った。

 

「ううん…御礼を言わなきゃいけないのは私の方。私一人じゃ怖くて心細かった。本当にありがとう…」

 

悠はそう言って、深く頭を下げて礼を述べる。東京都内は、禍根の指輪による侵攻と謀略によって、大きく傷付き、都心にも関わらず閑散とした世界と、静寂の風が吹き荒ぶのみ。

 

そしてシェルターに向かう途中…ビルの細い路地や、裳抜けの空になった店内に転がる死体達を、彼女達は胸を締め付けられるような思いで見る。

 

ある者は頭や胸、背中から血を流して、既に黒ずんだ溜まりの中で、仰向けや大の字、身体を丸めて倒れていて。

 

ある者は四肢の一部が千切れ飛んでいたり、何処に行ったのか欠損したり、身体は縦や横、斜めに切られていたり、真っ二つにされて死んでいて。

 

ある者は子供や赤ちゃんを、己の身体で庇い、守るようにして覆い被さり、其れでも、子供や赤子共々銃弾の豪雨の前に絶命し。

 

ある者は衣服を剥かれ、身体中の穴という穴から白濁と赤の液を流し、其の表情は絶望を浮かべながら蹂躙され、殺された事を容易に想像(イメージ)出来てしまうほどに、凄惨な惨劇として、其処に遺されていたのである。

 

だが、楓には今それ以上に心配な事がある。

 

「アキラ君、クリス君、無事で居て欲しいな…」

 

禍根の指輪が催した投票ゲームによって、運命を決められる事になってしまった、二人の友…牧園 アキラと西村 クリスの身を案じている。

 

残された時間は48分40秒、まだ制限時間(タイムリミット)まで余裕は有れども、気を張らなければ一瞬の間に過ぎて消えてしまう…そんな長さだ。

 

「楓ちゃん、健太郎さん、亜衣さん。此処です」

 

悠の足が、一つの大きな扉の前で止まる。扉は真っ赤なペンキに塗りだくられ、縁には危険を知らせる黄と黒のストライプ、其の中央には三角と!のマークが大きく描かれて、其の横の壁には小さなモニターと電卓の数字達が羅列し、其処に在る。

 

「待っててください」

 

モニターに視線を合わせると、赤い光が彼女の虹彩を認証する。同時に『カチッ』と数字ボタンから、ロックが解除されたような音が鳴る。

 

『白百合 悠様の虹彩認証を確認。続いてパスワードの確認に移ります。パスワードを入力してください』

 

彼女はスマフォの画面を開き、数字ボタンを次々と叩いて行く。

 

『パスワード確認、扉のロックを解除致します』

 

ガコン!の後に、ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!と重々しい音を響かせながら、扉が開く。

 

「御待たせしました。此処が緊急避難用のシェルターです。手前に階段が有るので、降りるときは気を付けてください」

 

悠が鞄から小さなライトを取り出して、明かりを灯して先頭を歩く。続いて楓・健太郎・亜衣、そして艦娘達が後に続いて降りる。

 

長く、地下へと辿る道を、十数人の男女が静かに下り、其の度に階段はコツコツコツコツと不規則な音を響かせた。

 

「取り敢えずは一安心出来そう…」

 

「楓ちゃん、油断しちゃ駄目よ。大本営が私達を嵌めようとした以上、気を抜いたら━━━『パーン』━━━━ってなに!?銃げ━━!!」

 

その時、全員の後頭部を強い衝撃が襲い掛かる。其の直後、意識を失い、倒れ落ちる身体を何かに支えられ、肩や脇に抱えられて行く。

 

『━━━%*#:┗^┗?━━…・#$¥([+])』

 

『|+"/¥$%━………・#^┗┫┫/:』

 

『・%$━┗┫┣┃\\*::/……[(│)]++%━…*』

 

暗闇で黒ずくめの数名の兵士達が無線を使い、会話を交わしながら階段を降りて行く。彼等の二の腕に巻き付いたバンダナには『十字架に掛けられた血の涙を流す髑髏の首飾り』のマークがある。

 

禍根の指輪…本来ならば入ることも不可能な筈のテロ組織が、シェルター内部に居るという、絶対に有り得ない、絶対にあってはならない異常事態(イレギュラー)。

 

何故、奴等が此処に居るのか?

 

そして、銃撃が響いた理由とは?

 

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

 

「私の本名は、牧園 セイシュウ。我が一族の希望である、牧園 アキラの命を救う為、こうして貴殿方に御願い申し上げたのです」

 

大本営内・地下牢獄地帯…。汚泥と汚物に汚れ、不潔と不衛生な床から額を上げ、鈴宮(すずみや) 清秀(せいしゅう)…否、『牧園(まきぞの) セイシュウ』は牢屋の中から自分を見る、大本営内最高の地位に身を置く、三帝と呼ばれる艦娘の一人である『富士(ふじ)』と、其の妹である『八島(やしま)』に向けて言い放った。

 

「君が…」

 

「牧園…一族の、一人…」

 

二人の姉妹は驚きを隠せない。牧園一族が多方面における圧力を受けていたのは知っていた。だが彼等の杭は━━既に大本営の中枢権力たる九聖天にまで打ち込まれ、其の目で謀略や暴威を見続けながら、護国の為に戦っていたのである。

 

「待っていてください。今、外します」

 

ポケットから金具を取り出し、牢屋の鉄錠の穴へ入れ、手慣れた、素早い手つきで其れを解錠。牢屋内部に侵入して、足元に注意を払いながら、ゆっくりと近付き。

近くに転がっている白骨で、彼女達の手首を拘束する錠を二・三度、叩く。

 

バチリ!と音が鳴り、骨が黒く焼けた。

 

「…案の定か」

 

彼は直ぐ様、手袋を填める。絶電導体物質で構成されたそれは、どんな超高圧電流であろうとも、装着者を感電から守りきる優れ物。

電気を気にする必要も無くなった状態で、彼は八島の錠から先に外しに掛かる。

 

「造りは…旧世代の物か。このくらいなら問題はない」

 

細やかに外し、八島を解放したセイシュウは富士の解錠へと掛かろうとした時、富士が口を開いて言った。

 

「セイシュウ…君は『華裏鎮守府』が何故、日本から離れた場所に在るのか。其の『理由』を知っているか?」

 

「華裏鎮守府が在る…理由?」

 

「………………知らないか。無理もない、もう『百年』も昔の事だからな」

 

問い掛けに?を浮かべながらも、ガチャガチャと手首に付けられた施錠を解除するセイシュウに、富士は静かに語り始めた。

 

「……百年前だ。当時、世界中の海に深海棲艦が現れては、人々は其の恐怖に怯え続けていた時代。対深海棲艦撃滅組織として、大本営は創られた。

 

日本の一流の技術者達、表裏問わず戦闘のエキスパートを召集し、軍備を強化して来る日も来る日も、奴等と戦った。それでも奴等には効果は無く、犠牲者を出す形で追い払う事以外、何も出来なかった。

 

そんな暗黒と絶望の日々の中、二人の男女が挙げた戦果…『我等 深海棲艦の 初撃破に 成功せり』の一報が、人類に希望と言う光をもたらした。

 

…名を『牧園 カザフミ』と『牧園 シュナ』。人類史で初めて深海棲艦の撃破に成功した者達。後に『提督と艦娘』として、其の名を歴史に刻むことになった」

 

牧園 カザフミ、牧園 シュナ。父親の親戚から聞いた、正体不明の深海棲艦との戦いに、大きな転換をもたらした、二人の英雄の名。

 

「当時を知る者は、今や殆ど居なくなってしまったが…彼等の活躍は、多くの人々に勇気を与え、メディアも挙って深海棲艦を倒した秘密を取材し、感謝の言葉が絶え間無く響いた。

 

そんな中、カザフミとシュナの二人の元に、其の年のノーベル平和賞を獲得した事を告げる、一通の手紙が届いた。今までと全く異なり、『戦いによって平和をもたらした事』による前代未聞の受賞だったが、彼等は其れを辞退。

 

代わりに、深海棲艦を倒した秘密を全世界に向けて公表して、人類に深海棲艦の驚異に打ち勝つ為の技術の粋を、余すこと無く与えたのだ」

 

富士が語る、カザフミとシュナの二人。権力や名声よりも、日本と言う国を、延いては世界を守る為に、其の力を後進に繋ぎ、自分達の戦いと生きた足跡を刻み付けたのである。

 

「二人は大本営と同盟を結び、其の直後に日本から『島』を買い取った。

 

其れは、深海棲艦との戦いの為。そして…深海棲艦の、日本への侵攻を阻止する為に。本土から離れた領海範囲内の、限界地点ギリギリに在った『小さな孤島』を『深海棲艦と戦う為の最前線基地』として改造したんだ。

 

今現在まで存在する数多の鎮守府の中で、『最も古く』。そして『最も長く現存』している唯一無二の鎮守府。…創設以来、日本本土近海に『姫級や鬼級の深海棲艦』が現れていない『最大の理由』が、其の鎮守府が奴等の侵攻に歯止めを描け、撃滅・撃退しているに他ならない」

 

「まさか……」

 

「そうだ。其の鎮守府の名が━━━━━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━華裏鎮守府

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セイシュウは言葉が出なかった。否、出せなかった。牧園一族の英雄たる二人が、華裏鎮守府を創り、日本を守っていた事実。そして華裏鎮守府に送られた提督達、艦娘達が人知れず、過酷な環境の中で深海棲艦と戦い、それによって国民は平和でいられた事に。

 

「━━━だが。二人が華裏鎮守府を創り、世界が深海棲艦と戦いを始めてから数年後。大本営は『余りにも愚かな選択』をしてしまった。

 

そして其れは…『大本営の闇』として、今も尚隠蔽され続けている」

 

富士は目を閉じて、苦悶の表情を浮かべていた…だが、何かを決意して目を開く。其れは、自分の人生を左右し、同時に『死の運命を受け入れる』…そんな覚悟を決めた目だった。

 

「姉…まさか━━━!」

 

「八島…すまない。私は…彼の━━━━『牧園 ジュウゴ』のように、『自分の正義』に殉じる覚悟を決めた」

 

「駄目だよ!御願い、姉!そんなことしたら姉は!」

 

今にも泣き出しそうな敷島の制止を振り切り、富士はセイシュウに自分が知った大本営の闇を伝える。

 

「………大本営にとって、牧園一族の存在は『到底許されない』ものだった。今迄自分達が、犠牲を出しながらも深海棲艦と戦い、退け続けてきた。

 

其れをぽっと出の…只の人間達に戦果を取られた挙句に、英雄視されている。本来、讃えられるべきは我々大本営だと…トチ狂った思考と持論で、カザフミとシュナに牙を剥いた。

 

彼等は…大本営は。カザフミとシュナを…否。牧園一族を一人残さず、歴史諸とも、この世から『完全に抹殺』する為に━━━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本来倒すべき筈の深海棲艦と、密約を交わしてしまったんだ。自分達が陸で牧園一族を殺す、深海棲艦には海で奴等を殺すようにと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『敵は味方のふりをする』…余りにも愚かで、救いようの無い現実に、セイシュウは一瞬目眩に襲われた。

 

大本営…彼が嘗て抱いた正義の城は、塵と化して跡形もなく崩壊し、暗黒の闇のみが広がるだけの虚無へと成り果てる。

 

だが、セイシュウは同時に。一つの希望を見出だしてもいた。

 

「━━━━━話を聞いて、よく分かった。貴女は生きなければならない『人間(ひと)』だ…この先の大本営が、膿を取り除ききった先で再生してゆく為に、欠かしてはいけない人間なんだ」

 

ガチャンと錠が外れ、富士が解放される。駆け寄り抱き付く八島を抱擁し、一瞬安堵の表情を浮かべた後、決意と共に声を発する。

 

「…セイシュウ。これを」

 

解放された富士はコートの右内側ポケットから、あるものを取り出し、自身の掌に乗せるとセイシュウへと差し出す。彼女の手に乗っていたのは小さな、純白の外装を纏い、日の丸をイメージした赤が刻まれるUSBメモリである。

 

「其れを持って、私達に構わず、今すぐに此処から逃げろ」

 

「何故ですか!?私は貴殿方を助ける為━━『良いんだ!それで!』ッ!?」

 

富士の怒声にセイシュウがビクつく。そして彼女は優しい表情で全てを悟り、死の運命さえ受け入れている人間の様に、彼にこう言った。

 

「私と八島の体内には。『爆弾』が仕込まれているんだ。大本営の闇を、他の誰かに口外した場合に『命を壊せる』よう。

 

━━━『自我を持って、この世に生まれた瞬間』に、取り付けられている」

 

「なッ…!?」

 

「姉ッ…!姉ッ…!」

 

大粒の涙を溢して泣き出した八島。大本営に対する反逆を行った瞬間に、自らの命は終わりを告げる。富士にとって何時の日か━━━自分の信じる正義を貫けるような、立派な存在になりたいと願っていた。

 

だが、現実はそう簡単にいく程に甘くは無く、日々自身の地位と責務に押し潰されない様に、踏ん張り続ける事しか出来なり、何時しか自分は『成りたい自分』を忘れていた。

 

あの日、『牧園 ジュウゴ』と出会うまでは。

 

「さ…早く」

 

覚悟を決めた『女性』を、誰が止められよう。セイシュウは無言で頷き、彼女の手からUSBメモリを回収し、そのまま牢屋から出る。

 

『やはりでしたか、富士』

 

其の直後、暗闇から響いた一声がセイシュウの足を止めさせる。彼が此処に降りてきた道から、一人の艦娘が降りてきたからだ。

 

其の者の名は三笠。だが、彼女から放たれるものは普段の落ち着きのある気配とは、まるで真逆。殺意を全開に、瞳には船錨の紋章が浮かび上がっている。

 

『貴女も自ら死を選ぶとは、其処まで堕ちたと言う訳ですか。更には九聖天の一人は我々が処分するべき、牧園一族の人間と…成程成程。

 

これで、後顧の憂いを断ち切り、私も新たな一歩を踏み出せる…というものか』

 

腰に付けた日本刀に、利き手である右手の指先を添えて、ゆっくりと握りつつ、一歩…また一歩…セイシュウとの距離を積めて行く。

 

セイシュウには武器は無く、戦力差は圧倒的。

更には地下で、周りは開けた牢屋以外で逃げ場のない直線通路。

迫り来るのは…護国の存在ではない、命を狩り取る死神。

 

『残念だ。貴方ならば、九聖天を変えられると思ったのですけど━━━ねッ!!!!!』

 

轟ッ!!と空気が震撼し、次の瞬間。

 

暗闇の中で、真っ赤な雨が降り注いだ。

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

 

其の頃、華裏鎮守府…

 

「何で…!嘘よ…!そんな事、あるわけない!

 

何で『クリスティアル王女』が、禍根の指輪の人質に捕らわれているのッッッッッッッ!」

 

ジョンストンの持つ、スマフォに写る二つの画像…其の内の一つ、西村 クリスのものを見たジャービスは、絶望の表情を浮かべ、狂乱じみた声で叫び、座り込んでしまう。

 

「!?」

 

「Whats!?」

 

「Really!?」

 

「え?なに、なになに、どーゆーこと?」

 

時津風以外の三人は前代未聞の衝撃に襲われ、時津風は現在の状況が全く読み解けず、身体と首と頭を左斜めに傾けて、???を浮かべていた。

 

「西村 クリスが大英帝国王室の王位継承権第一位の王女…。言われてみれば、確かにメディアで取り上げられていた写真とよく似ている…気がするな」

 

長門は自身の朧気な記憶から、先の記憶を結び付け。

 

「彼女が現在、英国『最重要人物』の王女である…どうやら『あの噂』は『本当』だったという事になりますね。ジョン」

 

「もし、彼女が殺されれば…欧州全域に甚大な影響が現れるのは確実。━━━不味い所の話じゃ決して済まない事態よ。姉さん」

 

フレッチャーとジョンストンは真剣に。今後、確実に世界で起こりうるであろう影響を議論し。

 

「ねー!ねー!ねーてばー!ねー!」

 

一人だけ話を共有出来ていない時津風は、構って欲しそうに叫んで、頬袋一杯に向日葵の種を大量に取り込んで、膨らんだハムスターのような顔をする。

 

「………ん?ジョンストンよ、つかぬことを聞くが、あの噂とはなんだ?」

 

長門が問うと、彼女はこう答える。

 

「あの噂?あーそうね…最近、英国内で不穏な動きが有ってね。何でも『王室内の誰かが、王座を手にしようと画策している』とか…」

 

「ジョン?!貴女、国の『秘匿情報』を開示してるけど、大丈夫?!」

 

フレッチャーが叫び、静止を呼び掛けるも時既に遅く。

数秒の静寂の後に、ジョンストンは己がやらかした過ちに気付いて、「……あっ」と小さな言葉を漏らした。

 

「フム…では、フレッチャー、ジョンストン。詳しく話を聞かせて頂けるかな?」

 

「教えてよー!私一人だけ、話が分かんないんだからー!」

 

時津風がプリプリと怒り、長門は其れは其れは悪い顔をして宣った。どうすることも出来ない、フレッチャーは妹の尻拭いをするために意を決し、言葉を切り出す。

 

「…私達は『アイオワとサラトガの両名の身柄引取』以外にもう一つ『任務』を受けていました。其れは英国王室から米国政府への直々にして、極秘の依頼。

 

『英国王室内に潜む、次期王位を狙う『逆賊』の捕縛に協力して欲しい』…というものです」

 

「逆賊の捕縛…どうゆうことだ?」

 

「それについて…詳しく事は、私が話すわ」と、名乗りを上げたのは、それまで座り込んでいたジャービスだった。

 

「英国は今…国民を巻き込んだ自爆テロや暴動が多発していて、治安が嘗て無い程悪くなっている…。低く見積もっても『暗黒の百年』以上の惨状とも言われてるの…」

 

暗黒の百年とは、英国国内で数多の事件が発生していたとされ、其の要因が『法が定められていなかった』事が原因とされている。更には、貧富の差が激しかった事等の様々な要因が重なった結果、国民の『十人に一人が犯罪者』という極めて危険な国になっていた。

 

其処から時間を掛けて、警察や法を制定し、治安回復・維持を行いながら、現在に至ったという。

 

「英国は。私達は独自に、様々な視点から調査を始め、暫くして『ある情報』を入手したの。

 

其れが…『王室内に『裏切り者』がいて、其の者が『王位を狙っている』。国内で起こっている暴動とテロは、其の者が仕組んだ可能性が高い』…というね」

 

フレッチャー、ジャービスの話を聞き、長門は小さく「フム…」と呟く。どちらも嘘を言っている様子がない事から、少なくとも此の話は本当である事が伺える。

 

権力争い…何時の人の世も絶えず起こる、反吐が出る醜く、長門が一番嫌いな物だ。

 

と…出入口の扉が数回ノックされ、誰かが入ってくる。

 

「長門さ~ん、ちょっとコイツを見て欲しい…んだけど……あの~…どちら様、で?」

 

黄色の虹彩と黒フレームの眼鏡、茶色いロングの髪に黒のセーラー服を纏う少女、望月。

其の後ろから、やる気のない半目に青と白の制服を着る少女、初雪が続いて入ってきた。が、初雪は直ぐに望月の後ろに隠れ、小さく震えている。

 

「外国人…いっぱい…アメリカの人…いっぱい…」

 

「うん、そうだねぇ…ハッツー」

 

初雪の頭を撫で、望月は落ち着かせる。

 

「それで、望月。話は何だ?」

 

「あ~…それの事なんですが…。

 

この中に『英国の艦娘』って居ます?」

 

惚け気味に。

だが、何処か真剣に。

彼女は問い掛ける。

 

「あ…ジャービスは英国の艦娘…よ?」

 

「…ジャービス、ね。今からちょっとヤバい映像流すんだが…マジで気絶する可能性あるから━━━━覚悟して?」

 

彼女がポケットから取り出したのは、一本の細長い筒状の物体。其の中のボタンを一つ押した時、筒から白い光が壁に投影され、画面が映し出される。

 

其れを見た瞬間━━━━ジャービスは再び絶望の表情と、光を失った瞳を共に膝から地面に落ちて。

 

フレッチャーとジョンストン、長門は目を見開いて撮された映像を脳に焼き付け。

 

時津風も事態の深刻さを漸く理解するに至った。

 

 

『貴様が参加を拒めば…コイツらが死ぬだけだ』

 

『御父様ッ!御母様ッ!』

 

 

白い空間の中、正面のモニターに映る二つの玉座に座る二人の姿と、其の周りで銃口を突き付ける無数の黒ずくめの連中達。

 

其れは英国現国王夫妻を人質に取る、禍根の指輪の兵士達の存在と、クリス…クリスティアル王女が現状は無事である事実を写す、確かな証拠だった。

 

「そんな…私達が、何を…したの…?

 

私達、何もしてないのに…!!!どうして…どうしてッ━━━━━!!!!!

 

うっうあぁ……あああぁあぁぁぁぁぁ……!!!!!」

 

ショックの連続に、ジャービスの心のダムは遂に決壊。

時津風が近寄ると胸に飛び込んで、子供のように泣き出した。

 

「禍根の指輪…此程の外道共だったとはな…!!」

 

長門の瞳は再び漆黒の焔が燃え、自分の歯を砕いてしまうほどの怒りを宿している。

 

だが━━━━━━━

 

「…あれ、ちょっと待ってください」

 

ある小さな『違和感』…僅か一ミリ単位の誤差…そんなもどかしい其れに、フレッチャーは気付いた。

 

「Ms,モチヅキ。この映像は『誰が』…いいえ。『貴女』が撮っているのですか?」

 

「え…姉さん、どうゆうこと??」

 

テクテクと前に出て、彼女が指を指したのは…映像の右下にある『日付』だった。

 

「この映像…日付が『今日のもの』となっています。其の上、今の時間から『数分』程度の誤差しかない」

 

彼女の指摘を受け、皆が其の場所に目をやった。

確かに日付は今日であり、同時に時間も其処まで経っていないのが分かる。

 

「そして何よりも…まるで誰かに『撮らせている』ように感じました。

 

そうですね…此の映像の奥行や高さから察するに、『衣服の第二ボタンにカメラを設置して、隠し撮りした映像の見せている』…そんな所でしょう。

 

━━━━違いますか?」

 

フレッチャーの推理…そして指先は望月を指し示す。

 

「……………ふっ。やるじゃん、アンタ」

 

小さく微笑し、望月は呼吸を調え、種明かしをした。

 

「そ。実は、アキラ司令の軍服の第二ボタンに『隠しカメラ』を内蔵しておいた。何かあった時に備えた、録音・録画・再生やらなんやら出来ちゃう、超高性能の優れ物んだよ。

 

おまけに特殊波長で、特殊な受信機構を備えた奴じゃなきゃ、コイツの電波は検知不可能。あらゆる通信傍受機器も意味無しな特製さ」

 

フフンと自慢気に語り、望月は更にこう言った。

 

「長門さん。どうやらアキラ司令は、私達が思ってた以上に『とんでもない人』みたいだよ」

 

「…どうゆう意味でだ」

 

「コイツが…華裏鎮守府の運命さえ変えられる。そんな気がするのさ」

 

望月はボタンを押す。画面は早送りで流れて行き、彼女がボタンを再度押して、再生する。

 

 

其処には━━━━━━━━━━━━

 

 

『なぁ…死ぬ前に、一つだけ教えてくれないか?禍根の指輪の頭目さん。

 

アンタ等…『誰に依頼されて』、日本にやって来たんだ?どうにも知りたくて…やっぱり、モヤモヤを残したくないんだ』

 

『…ほぅ、知りたいか?まぁ…どの道、お前と王女の死は確定済、時間もまだある…教えてやろう。

 

今回私達、禍根の指輪に依頼をしたのは━━━━━』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━『大本営だ』━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━奴等も『牧園一族の排斥と抹殺』に関して『利害が一致していた』。

 

『増えすぎた提督と艦娘を振るいに掛け、真の精鋭艦隊を編成する』。代わりに『殺した提督の艦娘達は此方にくれてやる』…とな。

 

フフフ…つくづく組織と言うのは、馬鹿で愚かな者共しかいないと見受けられる。哀れ哀れ…貴様達も運がない』

 

 

其処には、牧園 アキラという一人の軍人が。

 

東京で起きた、テロの根幹を突き止めた。

 

決定的で、絶対的な証拠映像が記されていたのだ。

 

 

「大本営…奴等こそが、真の元凶!!!!!」

 

長門が叫ぶ。時津風は震え、フレッチャーとジョンストンはアキラという、一人の男の勇姿を見た。

 

「…此処に落ちた瞬間から、私達に未来なんて無かった。差別・侮蔑・心ない嘲笑や鬼畜な支配…その連続でしかなかった。

 

けれど、今は違う…こいつは華裏鎮守府(わたしたち)が大本営を倒せる、最強にして唯一無二の、究極の『切札』。

 

既に『VDF』にカメラの特殊波長は送ってある。もう数分で確実に決着が着くだろうね」

 

「…え?望月ちゃん、今VDFって…言わなかった?禍根の指輪の撃滅掃討を掲げる、特殊武装組織の…」

 

「━━━━━━━━━━あ」

 

「………………オワタ」

 

口が完全に滑った。望月は完全に凍り付き、初雪は顔に掌を当てて空を仰いだ。

 

「望月、初雪。お前達は一体『何なんだ』?」

 

長門が圧を纏い、問い掛けてきた。最早二人に隠し徹すことは不可能。

 

「長門さん、今までずっと黙ってた事…申し訳無かった」

 

「…ごめんなさい」

 

深々と、頭を下げ。再び顔を上げて、彼女達は自分達の隠してきた『秘密』を明かす。

 

「……………私は望月。けれど私には『もう一つの顔がある』んだ。そして、其れは初雪にも」

 

「………うん」

 

「私達二人は━━━━━『VDFの最高戦術予報士』。今まで華裏鎮守府から『全世界のVDFに予報を送っていた』んだ」

 

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