※この作品はR-18です。

将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~   作:ガリアムス

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*今回から特別作戦之章になります


牧園 アキラ、特作参加之章 ~艦娘と誇りと出逢い~
将来を有望視された青年が、冤罪で鎮守府に着任されました。 ~作戦準備其之一(龍驤&霧島)~


五包囲電光石火作戦発令…大本営が発令した其の作戦は一夜にして鎮守府全てに知れ渡り、皆それぞれで準備に勤しんでいた。無論アキラ達の華裏鎮守府も例に漏れず、資源資材運搬の無茶な命令で失われた備蓄を緊急遠征部隊と絡めながら、特別作戦に向けての着々と…

 

「嫌にゃし」

 

どうやら上手くいっていないらしい。

 

「ちょっ…睦月ちゃん!?」

 

「睦月達は緊急時なら力は貸すけど、普段は駄目。忙しいもん」

 

典型的な駄目娘のタイプじゃねーか…とアキラは心中でツッコミを入れた。現在、アキラは緊急遠征部隊の睦月からストライキを貰ってしまい、作戦に必要な資源・資材の収集・備蓄が思うように進んでいなかったのだ。

 

「…なんで忙しいのか、理由を教えてくれないか?むt「嫌です」………」

 

「あの…コントしてる場合じゃ、ないんですけど…」

 

キッパリ断られ、吹雪も困惑しながらツッコミ。拉致が開かなくなりそうだと考えていたが、アキラはある事を思い出し、不敵に笑い、こんな言葉を呟く。

 

「…うーん。困ったなぁー睦月の髪のサラサラした感触が恋しいなぁー」

 

ウムム…と表情を少し捻り、棒読みで言っていると睦月の髪の毛の一部がピコンと跳ねる。

 

「遠征頑張って成功させてくれたら、ナデナデしてあげられるんだけど…ふむ」

 

チラリ…横半目で彼女を見ると、鍋では定番の十字切にした椎茸のような目で、自分に期待の視線を送る睦月の姿があった。

 

「頭ナデナデ…本当にゃしぃ?」

 

「ああ、もちろ」

 

『睦月行ってくる!絶対、約束守ってよ!』

 

頭ナデナデを餌にされた睦月は大発三つを抱え、執務室の近くを歩いていた駆逐艦娘を三人、半ば強制的に引き連れて、防空射撃演習に出発して行った。

 

彼女は欲望に忠実と言うか、それとも単に此方をからかいたいのか、どちらなのだろう?

 

「やったぜ。取り敢えず他の皆にも協力して貰わねば、何時また申請の電話が来るか分かったもんじゃないしな」

 

「はい、アキラ司令官!」

 

吹雪の笑顔は癒される。彼女達の居場所、何としても守っていきたいところだ。アキラは決意をより強く、固い物にした。

 

* * *

 

「五包囲電光石火作戦…命名から察するに速力は高速の艦が必要になり、大本営の通書に記された説明欄には夜戦を想定した編成を心掛けるべし…との事です」

 

「出来れば高速統一で、夜戦に強いとなると…。天龍や木曾に江風(バトルジャンキー)、制空と索敵を両立出来る利根さん達の力が必要だ。だが…」

 

彼にはまだ不安要素が残っていた。それは『昼戦時の火力不足』に他ならない。雷巡の木曾や航巡の利根姉妹、夜戦を華とする駆逐艦では昼の内に敵を倒しきるのは難しく、それを可能にするためには、『ある艦種』の存在が欠かせなくなったのだ。

 

「大淀さん。今の華裏鎮守府にいる『高速戦艦』と『軽空母』で、俺が指揮権を要求しても大丈夫そうな艦娘は居ますか?」

 

「高速戦艦と軽空母…ですか。高速戦艦は金剛四姉妹、イタリア組、ビスマルクさん。軽空母ならば信頼における艦娘が一人、私の知り合いにいます」

 

派閥がある高速戦艦から、今回アキラは金剛型をチョイス。理由は特に無く、何を根拠にしていたのかは今でも分からない。

 

* * *

 

「ほっほぉーん…ウチに直接頼みに来るって、君も物好きなんやね」

 

ツインテールの髪に黒潮と同じ関西弁、赤い服とミニスカート、サンバイザー、そして首には勾玉のネックレスがキラリと光る小柄な女の子が窓枠に腰掛けて、アキラを見ていた。

 

「大淀さん、この人が知り合いの軽空母の方ですか?」

 

「はい、軽空母の龍驤(りゅうじょう)さんです。私と同じ元大本営所属の艦娘で、私や今の中将クラスの提督達に艦隊指揮・艦隊運営のいろはを徹底的に叩き込んだ大先生でもあります」

 

大淀さんは兎も角として大本営の中将達を育て上げたと言うのは事実らしく、現在の基盤を創ったと言っても過言ではない。そんな大物に何があり、どうして華裏鎮守府(こんなばしょ)に居るのか、全く分からない。

 

寧ろ大罪を犯すような人にも見えないし、自分の実績を公表すれば別の鎮守府にも行けた筈。

 

「君ぃ…今ウチが何でこんな場所に来たのか、ちぃと考えてたやろ?ん?あと、ウチは天下りするつもりはないで。悪代官は嫌いやしな」

 

…『心を読まれた』。今のは何だ…?

 

「何で、俺の考えていた事が…分かったんです?」

 

恐る恐る質問すると、彼女は陽気にタネを明かした。

 

「簡単な話やて。ウチはなぁ~…人間やら艦娘やらの『観察』が好きなん。仕草や癖に目の動き、喋り方やら諸々。んで、ソイツを続けてく内にな、呼吸とな瞳孔のブレで、そいつが『何を考えてるんか』が、ほんのちょーとだけども『分かるようになった』、それだけやね」

 

…貴方は女性版ジョセフ・ジョースターか。いや、あれは『天才』だから何か違う。

 

「アッハハ。ジョジョ好きなん?」

 

「友達が教えてくれたのを、自分が知ってるだけです。それより今日は、大淀さんから次の作戦で龍驤さんに御協力戴きたく参りました」

 

彼女が此方の目を見ている。冷静な視線だ。一瞬でも視線(それ)を逸らせば、協力は絶望的になりかねない。俺はこの人の力を信じたい。

大淀さんが信じた人なら、俺はそれを信じたい。

 

「ほぉ…、疑わずに信じてくれるんやね。素直な子、ウチは嫌いやないよ?」

 

穏やかな表情でアキラの前に立ち、彼女は右手を差し出してきた。

 

「改めてよろしゅうな、アキラはん?」

 

「不甲斐ない所も多々有るとは思います。なのでその度に、御指導よろしくお願い致します」

 

こうして俺は、大先生の軽空母・龍驤さんから指揮を振るう事についての同意を得る事が出来た。後は高速戦艦金剛型の皆さんの中から一人、同意を得られれば、今日は十分だと思い、気合いを入れ直す。

 

* * *

 

艦娘宿舎二階廊下…甘い焼き菓子と香り高い紅茶の匂いが充たしている。甘い物が好きでない者からしたら、目眩を起こしかねない。そんな濃密で、濃厚な匂い。

 

「うっぷ…相変わらず此処の姉妹は自重せずに毎日毎日、ティータイムティータイム…」

 

「《大淀さんがキレてる…確かにこの匂いはよっぽど甘い物が好きじゃ無きゃ近付けもしないな》…まぁ、入らなきゃ何も始まらないし…」

 

青筋を多く浮かべながら、鼻を摘まみ、胸を押さえ、怒りを抑えている大淀を、アキラは横目に見ながら並列で歩く。

 

「…あー、金剛御姉様もいい加減にして欲しいですねー…。比叡姉さんも、榛名姉さんも、御姉様絶対君主だとか、ふざけてやがりま…ん?」

 

と、向かい側からブツブツ文句を垂らし、此方に歩いてくる女性がいた。金色のカチューシャと白の神巫女服、ダークグレーのスカート、そして緑のフレームの眼鏡を着用し、大人でインテリ系の雰囲気を纏う。

 

「大淀ですか…何でしょう?今、金剛御姉様達は午後のティータイム中で話も聴いちゃくれませんよ…」

 

「この人が金剛四姉妹の方ですか、大淀さん?」

 

「はい、彼女は金剛型高速戦艦の四番艦霧島さん。私と同じ作戦対策で力を振るう頭脳派の艦娘の一人。因みに二之名は『金剛粉砕(ダイヤクラッシャー)』。

 

『単純な力比べ』は現在、華裏鎮守府に在籍する艦娘の『頂点』に立つ艦娘です」

 

大淀さんによる紹介終了後の刹那、廊下に迸るプレッシャー…まさに嵐の如し力の中心に霧島さんがいた。

 

『毎日…毎日…毎日…

 

甘ったるいティータイムを乗りきらなきゃいけない時に、私の過去の詮索や、二之名呼びしやがる無粋な奴等は…

 

ゼンインマトメテブッツブス』

 

虎の尾を踏まれてぶちギレ寸前の霧島さんに、自分の過ちに気付いて脂汗がナイアガラの大淀さん。そんな状況下でアキラはあるものを彼女に差し出した。

 

「あの!霧島さん、もしよければこれを!」

 

『ア"ァ"?』

 

ア"ァ"?のたった一言で全身が恐怖に震え、体が後ろへ本能的に進もうとしている。だが本来の目的をほったらかして、逃げる事は出来ない。

彼は勇気を出して一歩、霧島に踏み込んだ。

 

「甘ったるいのに嫌気が指すなら、この『深海悽艦も裸足で逃げだす!ゲキゲキカラガラマカロン』を食べてみてくださいッ!!」

 

彼が差し出したのは、赤い光沢に塗られ、赤い炎を吐きながら涙目になった二等親のヲ級がデザインされたお菓子の袋だった。

 

「ゲキゲキカラガラマカロン…?

 

はぁ…ただの子供のパーティで使う宴会芸でしょうに…。まぁ無下にも出来ませんし、頂きますけれど」

 

袋を破り、其の中から一つを手に取り、おもむろに口に放り込む。其の瞬間、彼女の口の中で爆発が起き、耳と頭から蒸気を放出。一拍置き、口からどでかい火炎放射をぶっ放す。その威力たるや凄まじく、アキラと大淀をものの数秒で真っ黒焦げの粗大ゴミに変えてしまうほど。

 

どうやら、ゲキゲキカラガラと名付けられるだけの辛さは有るようだ。炎を吐き終わり、眼と姿勢がシャッキリとした霧島が何やら呟き出した。

 

「アーアー…。

 

マイクチェック、マイクチェック…。

ワン、ツー…ワンツーワンツー…よしっ。改めまして、私霧島です。アキラ司令、戦術などお困りが御座いましたら何時でも助けになります」

 

「うん。よろしく…お願い、します…」

 

咳き込み、アフロ頭になったまま霧島さんと握手を交わすアキラ。この人だけは怒らせたらただでは済まないと、改めて判断したのだった。

 

* * *

 

その日の夜、甘味処:間宮…

 

「霧島さんと龍驤さん…どっちも一癖有りそうだが、仲良くやっていけそうだ。はむ…うん!肉じゃがも旨い!」

 

和食定食を食しながらアキラは自分に指揮権を託してくれた艦娘のリストを眺める。現状、彼が実際に動かせる艦娘は緊急遠征部隊を除くと駆逐艦八名、軽巡二名、雷巡・重巡各一名、航巡二名、軽空母一名、高速戦艦一名の合計十六名。一応、鎮守府として何とか機能するには至った。

 

《だが、特別作戦を考えるとまだまだ戦力不足は否めない…。

 

ここは念を入れて、軽巡、重巡、軽空母、戦艦からそれぞれ一名ずつ指揮権を承認して貰おう…》

 

作戦に向けて段取りを整え、彼は鰯の蒲焼きを頬張る。アキラの提督生活はまだまだ続く…!




龍驤…元大本営直属の艦娘。大淀とは旧知の仲であり、師でもある。現在の大本営直属の中将クラスの提督達に戦術のいろはを叩き込んだ過去があるが、とある理由で華裏鎮守府に来た。二之名は『先導者(せんどうしゃ)』

霧島…元タウイタウイ泊地出身の艦娘。戦闘と作戦対策両方で手腕を振るう二刀流だが、誰かを犠牲にする前提で作戦を組み立て続けたため、華裏鎮守府に左官された。二之名は『金剛粉砕(ダイヤクラッシャー)』
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