おま〇こエルフ三姉妹 同棲生活はじめました♡ 作:お互いがお互いのために
「え……?!」
ソフィは目を見開いた。
緩んでいた顔が、一気に固くなる。
けど、聞かずにはいられない。このまま、もやもやしたままなんてムリだ……。
「やっぱり……君たちと僕じゃ、ぜんぜん見た目が違うし」
「……女と男なんだから、当たり前でしょうが」
「いや、そういう話じゃなく、髪も、肌の色も、目の色も違うし。第一、エルフなんでしょ? 義理のきょうだいってならまだしも、それで本物のきょうだいなわけないじゃないか」
「……っ!」
ソフィは、ぎゅっと手を握る。フォークが折れそうだった。
「き、君たちが悪い人、というか悪いエルフじゃないのは分かってる。けど……いや、だからかな。ちゃんと、君たちの事を知っときたくて」
「……ずいぶん殊勝な心掛けね」
ソフィは、苦虫をかみつぶしたような顔をしながら、下を向いた。
「き、君たちは、誰なんだ? 本当は、僕の……何なの?」
「……はぁっ!」
ソフィは大げさに、両方の手のひらをあげた。飽きれたように首を振っている。
「……本当に、嘆かわしい。人間は、何も見えない。何も覚えていないのね。どれだけ助けてやっても、気づくこと一つない。それでいて、勝手に判断して、勝手にくだらない方向に突っ走る……情けなくなるわ」
「え? あの、言ってる意味がよく――」
僕は、さらに尋ねた。
「文字通りの意味よ、兄貴……私だって、かつては盲目で、川に流される木の葉の一枚だったんだのよ」
「……はい?」
「私も、かつては人間だった……ってこと」
「……はい!?」
い、今、何て言った?
人間だって……だって!?
ソフィは、エルフじゃなかったのか……? と、僕は首をひねる。
「私は以前、人間で……兄貴の妹だった。今ここで、ではなく……前世で、ね」
「ぜ、ぜんっ……!?」
ソフィは、ちょっと寂しそうな顔でこくんとうなずいた。
「前世」だなんて、そんなふわふわした言葉、最近あまり聞かない。
まるで何かの宗教みたいだ。僕は、ちょっと、ぞっとしてしまう。
「いや、そういう設定を知りたいんじゃなくて……」
「! せ、設定なんかじゃない! 本当の事よっ……兄貴は、兄貴は……私の事を、助けてくれたじゃない! それとも、その事さえ……忘れちゃったっていうの……!」
みるみるうちに、ソフィは涙声になる。目の端に、
きらっとしたものが溜まっていた。よく見なければ見逃してしまうくらい小さく、肩を震わせている。
「お、覚えてるとか、そそそそういう話じゃないような……?」
僕の顔が、あからさまに引きつってしまう。
「前世」だとか、そういうオカルティックな言葉はあまり好きじゃない。
僕の母だった人は、そういうのに騙されたのだから。
前世なんてものがあるとすれば、それは詐欺師の言葉の中にだけだと思う。
――その言葉がソフィの口から出てきたことに、僕は胸がチクっとするような痛みを感じる。
「そんな話は、あんま聞きたくないよ……。僕は、ほんとに。君たちの――」
「そんな話……ですって!」
ソフィはもう、誰が見ても分かるくらい、肩を大きく震わせた。勢いよく顔を上げる。
その眼には、涙がぼろぼろ溢れていた。
「あ……っ」
僕は、思わず体を引いてしまう。もしかして、大変な事を言っちゃったんじゃ……。
「兄貴は……兄貴は……っ
! 私を助けてくれた! 嘘なんかじゃないっ! 兄貴は私にとって、最高にかっこいい兄貴なの! なんで、なんで……忘れちゃってるのよっ。この、このっ……バカ兄貴!」
「う゛ぁっ!?」
顔面に弁当箱をぶつけられ、僕は、二の句が継げなくなった。
お米やらおかずやらが飛び散り、僕のズボンを汚す。
「うぶぶっ、ぷ……! あれ!? ちょ、ちょっと……待って! 待ってくれ、ソフィ!?」
ソフィは、即座に空中に浮かび上がった。
涙が落っこちてきて、一瞬、雨が降ってるのかと錯覚してしまう。
「うるさいっ! 黙れ、だまれっ……この、バカ! あんたなんか、あんたなんか……死んじゃえ!」
「うわっ!?」
突然、突風が巻き起こる。
僕の髪やスーツをしわくちゃにしてしまう。目にゴミが入りそうで、とっさに目を閉じてしまい……
気づいた時には、ソフィはどこか遠くへ飛び去っていった。
「あぁ、ソフィ……!」
汚れたスーツで、僕はしばらく呆然と立ち尽くしていた。
「はぁ……っ」
寒いオフィスの中で寝袋にくるまり、僕はため息をついた。
悪い事ってものは、どうやら、重なるものらしい。
いま、時刻は、深夜の1時。
昨日なら家に帰れていた時間だけれど……いつもいつも、そんな甘っちょろい時刻に帰れるはずがない。
今日はいつも通り、会社に泊まり込みというわけだった。