※この作品はR-18です。

おま〇こエルフ三姉妹 同棲生活はじめました♡   作:お互いがお互いのために

20 / 120
お弁当と迷子4

 あんな狭い部屋だけど、やっぱり自分の部屋のほうがいくらか楽だ。こんなところで寝ていると、一秒も楽に息ができない気がする。

 

「本当だったら、あの三人がいてくれたはずなのに」

 

 そんな後悔が、ぐるぐると渦巻き、泣きたくなった。

 

 ソフィにあんなことを聞いたら、いけなかっただろうか?

 

 「忘れてる」っていうけど、いったい何を忘れてしまってるんだろう? 僕が、ばかだから忘れてるのか?

 

 ソフィの泣く姿が、思い出される。

 

「泣かせちゃってごめん……。でも、やっぱり……僕は」

 

 同僚が近くで寝ているので、聞こえないように、ほんの小さい声でつぶやいた。

 

「僕は、何を忘れてるんだ? 思い出せるものなら、思い出したいよ……こんな人生以外に、何かあったっていうなら、さ……!」

 

 ぼそぼそ、ぼそぼそ、と、僕は、ゴキブリの足音みたいに独り言を言い続けた。

 

「本当に、忘れてるだけ? だたら……とっとと、思い出させて、くれよ。ソフィ……っ!」 

 

 僕は、いつの間にか眠りについていた。

 

 

 夢の中で、僕は、思い出させられることになる。

 

 その夢は、昨晩見た夢と同じだと、すぐに気づいた。

 

 けれど、昨晩よりもはるかに鮮明で、何がどうなってるのかよく分かる。それはこんなのだ。

 

 いちめん白い雪原の中に、村があって、僕はそこで暮らしている。

 

 今みたいに、独りぼっちじゃない。

 

 母や父(今世のとは違う)はもちろん、姉と妹が三人もいる。

 

 どんな仕事をしてたとか、どんな物を食べてたかとかは、あんまり覚えていないんだけど、一番覚えているのは姉や妹達のことだ。

 

 外に吹雪が吹いているある日、部屋の暖炉の周りに、僕たちと、数名の友人が集まった。

 

「……お前はうらやましいなぁ。こんな美人が、お姉さんや妹にいてさ!」

 

 と、ある時、友人がバンバンと八つ当たり気味に僕の肩を叩いた。

 

「……あ、あはははっ」

 

 と、困り顔で答える僕。

 

 たしかに、姉も、妹達も、村でいちばんの美人で、やたらにみんなに好かれていた。特に、もちろん、男性には。

 

「でも、そんなに良い物でもないよ」 

 

 ――という台詞を周りで聞いていた姉と妹たちは、ちょっと泣きそうな顔になり、あるいは「は?」という顔になった。

 

「ええ!? わがままなやつだなぁ、どうしてだよ」

「だって血がつながってるから、美人でも結婚できないしね。あ〜残念残念」

 

 冗談めかせて言うと、友人たちは「なるほど」「その発想はなかった」「お前気持ち悪いな」と口々に言い始めた。

 

 一方、姉と妹たちは……

 

「弟くん……♡」

「あ、兄貴……!」

「お兄ちゃん……♡」

 

 微笑んだり、あるいは頬を染めたりしていた。 

 

 ……そんな風に、平和に過ごしていたある日。村に、ロシア兵が数人、隊を組んでやってきた。

 

 背中に銃を抱え、おおかた、最初から略奪目的だったに違いない。けれど彼らは、村に入る前に、もう行動を起こした。

 

 村はずれにいた、僕の姉や妹達の腕をつかみ、連れ去ろうとしたのだ。

 

「いやっ……!」

 

 悲痛な叫びをあげる妹。

 

 もし連れていかれたなら、どういう目に遭うか――火を見るより明らかだった。

 

「マリア!」

 

 僕は、姉の名を叫んで、彼、彼女らの間に割って入った。

 

 姉の名前だけ呼んだのは、妹は大事でないから――というわけではなくて、たまたま背の高い姉の姿が一番目に入ったのと、一瞬のことだったので、全員の名前を呼んでられなかったからだ。

 

 本当に、すべてが一瞬の事だった。

 

 僕は、胸に銃弾を撃ち込まれて倒れた。

 

 ほんの一瞬、するどい痛みが走ったかと思うと、僕は思い切り倒れた。

 

「弟くん!」「兄貴!」「お兄ちゃん!」

 

 彼女たちは、倒れた僕に殺到する。僕が流しているいっぱいの血を浴びて汚れ、三人が三人とも、大泣きしていた。

 

 けれどもはや、僕はその体にはいない。

 

 僕は霊? 魂? になって、脇でみんなを見下ろしているのだ。

 

「ぼ、僕は、死んだのか……?」

 

 目も見えるし、音も聞こえる。

 

 あまり死んだという感覚はなかったけれど、とにかく僕は死んだらしい。

 

 姉と妹たちは、無事村に戻っていったけど、僕が死んだせいで、毎日悲しそうに泣いていた。

 

 僕はずっと、死んだのに、生きているみたいに村にいて、みんなに気づいてもらえず、黙ってみんなの事を観察するしかない。

 

 姉と、妹たちの手を握ってあげたくても、むなしく手がすり抜けるだけ。

 

「なんで……なんで気づいてもらえないんだ?」

 

 僕はがっくり肩を落として、

 

「皆を、こんなに泣かせて……もう、僕は、二度と……!」

 

 その言葉を最後に、僕の魂はその地上世界から消え失せた。

 

 

「……っ!」

 

 僕は会社のオフィスで目を覚ました。

 

 体をもぞもぞさせると、確かに、寝袋が体に当たった。別に、どこか遠い村にいるわけじゃない。

 

 僕は、居ても立ってもいられなくなり、すぐに寝袋を脱いだ。

 

 オフィスをそっと抜け出て、建物の外に走る。

 

 外は大雨だけど、構やしない。

 

「ソフィ、ごめん……! 僕はなんてことを……っ」

 

 もし、さっきの夢が本当だというなら。

 

 僕はどれだけひどい事をしたのだろう?

 

「妹じゃない」なんて、そんな事をソフィに言うとか……。ソフィは、僕が死んであれほど泣いていたのに。本当なら、慰めなきゃいけなかったのに。

 

 僕は……僕は! 

 

 時計を見る余裕がなく、今何時かも分からない。電車が止まっていることは確実だろう。

 

 僕は、雨の中を走った。自分家を目指して、まだ、あの三人がいるはずだから。

 

「ごめん、ソフィ! ごめん、みんな……!」

 

 僕はとんでもない馬鹿らしい。

 

 タクシーでも使えばよかったんだろうけど……。

 

「あ、あれ……? ここ、どこ?」

 

 暗い中をムリに飛び出して走ったせいで、自分がどこにいるのか、分からなくなってしまった。

 

 その辺の電柱に手をつき、僕はうなだれる。

 

「ま……迷った!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。