おま〇こエルフ三姉妹 同棲生活はじめました♡ 作:お互いがお互いのために
あんな狭い部屋だけど、やっぱり自分の部屋のほうがいくらか楽だ。こんなところで寝ていると、一秒も楽に息ができない気がする。
「本当だったら、あの三人がいてくれたはずなのに」
そんな後悔が、ぐるぐると渦巻き、泣きたくなった。
ソフィにあんなことを聞いたら、いけなかっただろうか?
「忘れてる」っていうけど、いったい何を忘れてしまってるんだろう? 僕が、ばかだから忘れてるのか?
ソフィの泣く姿が、思い出される。
「泣かせちゃってごめん……。でも、やっぱり……僕は」
同僚が近くで寝ているので、聞こえないように、ほんの小さい声でつぶやいた。
「僕は、何を忘れてるんだ? 思い出せるものなら、思い出したいよ……こんな人生以外に、何かあったっていうなら、さ……!」
ぼそぼそ、ぼそぼそ、と、僕は、ゴキブリの足音みたいに独り言を言い続けた。
「本当に、忘れてるだけ? だたら……とっとと、思い出させて、くれよ。ソフィ……っ!」
僕は、いつの間にか眠りについていた。
夢の中で、僕は、思い出させられることになる。
その夢は、昨晩見た夢と同じだと、すぐに気づいた。
けれど、昨晩よりもはるかに鮮明で、何がどうなってるのかよく分かる。それはこんなのだ。
いちめん白い雪原の中に、村があって、僕はそこで暮らしている。
今みたいに、独りぼっちじゃない。
母や父(今世のとは違う)はもちろん、姉と妹が三人もいる。
どんな仕事をしてたとか、どんな物を食べてたかとかは、あんまり覚えていないんだけど、一番覚えているのは姉や妹達のことだ。
外に吹雪が吹いているある日、部屋の暖炉の周りに、僕たちと、数名の友人が集まった。
「……お前はうらやましいなぁ。こんな美人が、お姉さんや妹にいてさ!」
と、ある時、友人がバンバンと八つ当たり気味に僕の肩を叩いた。
「……あ、あはははっ」
と、困り顔で答える僕。
たしかに、姉も、妹達も、村でいちばんの美人で、やたらにみんなに好かれていた。特に、もちろん、男性には。
「でも、そんなに良い物でもないよ」
――という台詞を周りで聞いていた姉と妹たちは、ちょっと泣きそうな顔になり、あるいは「は?」という顔になった。
「ええ!? わがままなやつだなぁ、どうしてだよ」
「だって血がつながってるから、美人でも結婚できないしね。あ〜残念残念」
冗談めかせて言うと、友人たちは「なるほど」「その発想はなかった」「お前気持ち悪いな」と口々に言い始めた。
一方、姉と妹たちは……
「弟くん……♡」
「あ、兄貴……!」
「お兄ちゃん……♡」
微笑んだり、あるいは頬を染めたりしていた。
……そんな風に、平和に過ごしていたある日。村に、ロシア兵が数人、隊を組んでやってきた。
背中に銃を抱え、おおかた、最初から略奪目的だったに違いない。けれど彼らは、村に入る前に、もう行動を起こした。
村はずれにいた、僕の姉や妹達の腕をつかみ、連れ去ろうとしたのだ。
「いやっ……!」
悲痛な叫びをあげる妹。
もし連れていかれたなら、どういう目に遭うか――火を見るより明らかだった。
「マリア!」
僕は、姉の名を叫んで、彼、彼女らの間に割って入った。
姉の名前だけ呼んだのは、妹は大事でないから――というわけではなくて、たまたま背の高い姉の姿が一番目に入ったのと、一瞬のことだったので、全員の名前を呼んでられなかったからだ。
本当に、すべてが一瞬の事だった。
僕は、胸に銃弾を撃ち込まれて倒れた。
ほんの一瞬、するどい痛みが走ったかと思うと、僕は思い切り倒れた。
「弟くん!」「兄貴!」「お兄ちゃん!」
彼女たちは、倒れた僕に殺到する。僕が流しているいっぱいの血を浴びて汚れ、三人が三人とも、大泣きしていた。
けれどもはや、僕はその体にはいない。
僕は霊? 魂? になって、脇でみんなを見下ろしているのだ。
「ぼ、僕は、死んだのか……?」
目も見えるし、音も聞こえる。
あまり死んだという感覚はなかったけれど、とにかく僕は死んだらしい。
姉と妹たちは、無事村に戻っていったけど、僕が死んだせいで、毎日悲しそうに泣いていた。
僕はずっと、死んだのに、生きているみたいに村にいて、みんなに気づいてもらえず、黙ってみんなの事を観察するしかない。
姉と、妹たちの手を握ってあげたくても、むなしく手がすり抜けるだけ。
「なんで……なんで気づいてもらえないんだ?」
僕はがっくり肩を落として、
「皆を、こんなに泣かせて……もう、僕は、二度と……!」
その言葉を最後に、僕の魂はその地上世界から消え失せた。
「……っ!」
僕は会社のオフィスで目を覚ました。
体をもぞもぞさせると、確かに、寝袋が体に当たった。別に、どこか遠い村にいるわけじゃない。
僕は、居ても立ってもいられなくなり、すぐに寝袋を脱いだ。
オフィスをそっと抜け出て、建物の外に走る。
外は大雨だけど、構やしない。
「ソフィ、ごめん……! 僕はなんてことを……っ」
もし、さっきの夢が本当だというなら。
僕はどれだけひどい事をしたのだろう?
「妹じゃない」なんて、そんな事をソフィに言うとか……。ソフィは、僕が死んであれほど泣いていたのに。本当なら、慰めなきゃいけなかったのに。
僕は……僕は!
時計を見る余裕がなく、今何時かも分からない。電車が止まっていることは確実だろう。
僕は、雨の中を走った。自分家を目指して、まだ、あの三人がいるはずだから。
「ごめん、ソフィ! ごめん、みんな……!」
僕はとんでもない馬鹿らしい。
タクシーでも使えばよかったんだろうけど……。
「あ、あれ……? ここ、どこ?」
暗い中をムリに飛び出して走ったせいで、自分がどこにいるのか、分からなくなってしまった。
その辺の電柱に手をつき、僕はうなだれる。
「ま……迷った!」