おま〇こエルフ三姉妹 同棲生活はじめました♡ 作:お互いがお互いのために
僕には「辛い事」なんて何もなかった。
ただ、何もなかった事が、辛かっただけだ。
僕は、いたって普通の、とある会社の従業員。
昨晩、会社からアパートに帰宅したのは、たしか深夜1時ごろのことだった。
くたくたの体をひきずるようにして、ドアを開ける。
なんとか鍵だけは閉めて……という、気くらいは回った。けど、いざ鍵を閉めると、そこで一気に、張りつめていた緊張が溶けてしまう。
何日も敷きっぱなしの布団の上に、ばたっと倒れ込んだ。
「くはぁ~~~~~っ! あぁ、良かった……!」
スマホで時間を確認し、うれしい吐息を漏らす。
だって、こんなに早く帰れたのは久しぶりだった。なにせ、終電で帰れたんだから、早いに決まってる。
終電を逃してタクシーで帰らざるを得なくなったり、そもそも会社に連泊するよりは、百倍もマシだ。
僕は毎日、いろんな人の家々を回って物を売る仕事をしている。今はピアノだ。
もちろんピアノを持ち運べるほどムキムキではないので、持っていくのはカタログだけだけど。
一日に何百軒という家を回るのだから、最後の方は足が棒のようだ。
はぁっ……と、ため息をつく。
口がゆるんだのか、独り言がどばっと流れ出た。
「『こんな時間にインターホン押すなんて、何考えてるの!?』だって……? それは、僕じゃなくて上司に言ってくれよな……」
あれ?
僕は、こんなことを考えていたのか――と、僕は、その独り言で、自分の頭の中身を知った。
もちろん、その仕事は午後8時くらいまでには終わる。が、その後もなぜか、オフィスで別の仕事を手伝わされたりし、毎日、気づけばこんな時間――じゃなくて、これよりもっと遅い時間なのだった。
それは「残業」とは言わない。そのはずだ。だって僕は、残業代金なんてもらったことはないから。
僕は、布団の上で意識を失った。
おしっこがしたくて、ある時、目を覚ます。
電気をつけた。
部屋の中は、そこそこ整理されていた。
もともと物がないというのもある。あと僕は、別に整理ができないわけじゃない。ただ、時間がないから、物をほっぽってることがあるだけ。いくつか、洗濯してない服が部屋の北の隅に、あとはみかんの皮がちゃぶ台の下に落ちていた。
それは朝、家を出る前に見たのと、まったく同じ配置だった。
そしてさっき、眠りにつく前に見たのとも、まったく同じ。
この部屋には、僕以外誰も住んでいないのだから、当然だ。
僕以外、誰も入らず、誰も歩かず、誰も過ごさない……そんな、すっきりした部屋だ。
便座に腰かけて、僕はスマホを開いた。時間は、午後三時だ。メールボックスには、会社の人からのメールばかり来ていた。
友達とか家族とか、ましてや恋人なんて、そんな差出人はいない。
授業料が払えなくなって大学を中退して以来、ずっとそんな感じできている。
仕事のことか、それか、無礼きわまりない迷惑メール以外に、僕にくる連絡なんて何ひとつない。
こんな目に合うなんて、僕はいったい、前世でどんな悪いことをしたんだろう――と、時々、不思議に思うことがあった。
今が、ちょうどそれだった。
トイレでおしっこをしながら、僕は目からもぼとぼと涙を流した。
「僕は……!」
僕は、もう一生ひとりなんだ。
僕はこれからずっと、たった独りで、友達も、恋人も、家族もなく、童貞のまま、奴隷みたいに働かされるだけ――どうせ、そんな酷い人生なんだろう。
楽しいことが何一つない人生だった――なんて、悲劇のヒーローぶるつもりはない。楽しいことだって、たぶんあったはずだから。
けれど、最後にお腹の底から笑ったのはいつだったのか。思い出せない。そんなのは、ひょっとしたら、中学生くらいの頃だったように思える。
僕は、苦しむために生まれてきたんだ――
頭を抱え、頭を下げて、僕は、お漏らしみたいに、パンツに涙を落とした。