転校生がテレビの画面に手を突っ込んだ……そして抜けなくなった。何で突っ込もうと思ったんだろう。突っ込まなければ良かったのに……と思うものの、突っ込んでしまったものは仕方ない。とにかく抜かなければ転校生の体が、どうなるのか分からない。目の前で転校生の腕が千切れるのも、転校生が行方不明になるのも御免だ。
あたしと花村は転校生の体を引っ張った。でも、抜けない。むしろ、さらに引き摺り込まれている。転校生の腕の半分は、テレビの画面に飲み込まれてしまった。あたしと花村の2人で引っ張っているのに、こちらが力負けしている。テレビの向こうで誰かが、転校生の腕を引っ張っているのだろうか。そう考えると、ゾッとする。
ここはデパートで、その名をジュネス。その一角で、あたしと花村は大騒ぎをしている。それなのに客どころか店員すら様子を見に来ない。聞こえるのは、店内のBGMだけだ。誰も来ないことに不安を感じ、あたしは周囲を見回した。もしかして私達は、とっくに取り込まれているのかも知れない。
「ちょっと花村! ちゃんと引っ張りなさいよ! このままじゃ、転校生が食べられちゃうでしょ!?」
「ちゃんとやってるって! おい、これ、やべーよ! どうするよ! 大丈夫なのか、転校生!?」
「大丈夫だ、問題ない」
「意外に余裕だな、おい!?」
その時、ドンッと、あたしは背中を押された。その衝撃で一時的に、あたしの呼吸は止まる。何が起こったのか分からず、誰に押されたのかも分からない。見開いたあたしの目に、隣で花村が同じように驚いている様が見えた。いったい誰があたしを押したのか……それを知るために、落ちて行く視界の中で、あたしは後ろを振り向いた。
それは、あたしだった。家電製品を背景に、もう一人のあたしが立っている。口の位置に三日月形の線が見えた。笑っている、笑っていやがる。怒りを覚えると同時に、あたしは恐怖を感じた。あれは何だろう。あれは、あたしではない。あたしであるはずがない。だって、あたしは此処にいるのだ。あれがあたし(本物)だと言うのならば、あたし(偽者)は如何なるのだろう?
あたしは気絶していたみたい。目覚めると、そこは現実じゃなかった。濃い霧に満たされているため、1メートル先も見えない。ここに居ると自分の存在が崩れていくような、そんな不安を感じる。あたしは夢を見ていると思いたかった。一人ならば夢と思えたものの、花村と転校生の存在が、それを許さない。
「ねえ、花村。あたし達の背中を押した奴って見た?」
「……いや、悪い。見てねーな」
嘘だ。その反応は、あたしの貸したDVDを割った時と同じ反応だ。花村もあたし(偽者)を見たに違いない。けれども見なかった事にしている。見なかった事にしてくれている。それは、あたしを疑いたくないからか、この気味の悪い現象の犯人が横にいると思いたくないからか。どちらにしても、あたしはホッと安心して、それ以上、花村を追及する事はなかった……花村があたしと同じものを見たとは限らないのに。
「出口を探そう」
「出口って、あると思う?」
「入ってきた以上、入口はあるはずだ」
あたし達を導くように、転校生は先を歩き始める。纏い付くように漂う霧を、体で押して歩く、その背中は頼もしい。横にいるへタレ(花村)とは大違いだ。その背中に負けるものかと、あたしは転校生の横に並んで歩き始めた。ズンズンと歩くあたしの姿を見て、転校生は微笑む。それは、あたしを嘲笑うものではなく、温かく見守るものだ。やばい、ちょっと惚れるかも。
霧の世界は無茶苦茶だった。大きなライトやカメラに囲まれた撮影スタジオから移動すると、高層マンションの廊下に出る。さっきの場所はマンションの一室だったみたい。と思って隣部屋の扉を開けると、再び高層マンションの廊下に繋がっていた。さらに次の扉を開けるとエレベーターに繋がっていたり、どこかの部屋のベランダに繋がっていたりする。
この世界で空間把握は全く役に立たない。必要なのは何所の扉が、何所に繋がっているのかを覚える事だ。空間が捻じ曲がっているとしか思えない。扉を開ける自分達の姿を、開けた扉の先で見ることもあった。こんな事が続くと、頭が変になりそう。でも、転校生と花村が居るから……自分を認識してくれる他人が居るから、あたしは自分を保っていられた。
「うわぁ……」
「どうしたよ……げっ」
辿り着いた部屋は、これまでよりも、さらに異質だった。首を吊ってくださいと言わんばかりに、天井から縄が吊り下げられている。その下には御丁寧なことに、登るための椅子もあった。それを見たあたしは息苦しさを感じ、思わず自分の首を擦る。よかった……あたしの首に縄は付いていない。もしも一人で此の世界を彷徨っていたのならば、ここへ辿り着く頃には正気を失い、あたしは喜んで縄に飛び付いていたのかも知れない。
その部屋の壁を埋め尽くすように、何者かの写ったポスターが貼られていた。しかし、そのポスターの顔の部分は破り取られている。残っているのは首から下だけで、頭部が無いように見える。そんな部屋の中央にあるのは首吊り用の縄で……つまり、そう言う事なのだろう。死体や人形が吊り下がっていなかった分、マシだったと思う。
いったい誰が、こんな事をしたのか。少なくとも、そいつに好んで会いたいとは思わない。もしかして、こんな事をした奴が、この世界に居るのだろうか。いまだ出口の見つからない、閉ざされた此の世界に、そいつは居るのだろうか。そう考えると怖い、怖すぎる。早く出口を見つけなければ、あたし達は手遅れになるのかも知れない……それは嫌だ。あたしは、まだ死にたくない。生きていたいよ。
霧の中を歩き回ったものの、出口は見つからなかった。あたし達は来た道を戻りつつ、もう一度出口を探す。床に手で触れたり、タンスを移動させたりして、隠し扉を探した。出口が見つからなかった事に絶望したのか、花村は目に見えて落ち込んでいる。それに対して転校生は淡々と、カーペットを剥がしたり、ベッドの下へ潜ったりしていた。しかし、出口探しは全く進展しない。
転校生の持つ鋼の精神力を、花村も見習って欲しいものだ。そう思うあたしも、動きたくないほど疲れていた――もうダメだ。出口なんてない。閉じ込められたんだ――そう思いつつもあたしは、転校生の背中を追って立ち上がる。重い石を背負っているように体が重くても、転校生が立っている限り、無様に座り込みたくはなかった。
「もうダメだ。我慢できねー!」
あたしの後ろから花村の声が聞こえる。あたしの前を行く転校生は、その声に振り返った。しかしあたしに、振り返るほどの気力は残っていない。花村の事なんて、どうでも良いと思った。ただあたしは、「ああ、花村は諦めたんだ」と思う。もう花村はダメなんだ。それならば花村は置いて行こう。ここから先は、転校生とあたしだけで十分だ。
「きゃっ! 何すんのよ!」
そう思っていたあたしは後ろから押し倒された。押し倒したのは言うまでもなく花村だ。一人で置いて行かれたくないから、あたしを道連れにする気なのだろう。諦めるのは勝手だけれど、あたしを巻き込まないで欲しい。そう思ったあたしは怒りを感じ、自分の脚を後ろに跳ね上げて、花村を攻撃した。
「いてぇ! 暴れんなよ!」
「ちょっと花村、あんた何する気!?」
あたしは後ろから押し倒され、胸を下に倒れる。その胸に花村の手が伸びた。床と当たって潰れたあたしの胸部に、花村の手が滑り込む。花村の五指は、ジャージと下着と硬めのブラジャーを押し潰し、それらに守られた胸の感触を味わった。胸に触れた5本の指を、あたしは虫のように感じる。気持ちの悪い物が、あたしの胸を掴んでいた。
その感覚にカッと意識が覚醒する。心臓をギュッと握られたような感覚と共に、あたしの全身を血が駆け巡る。許さない。殺してやる。そんな絶対の殺意の下、あたしは花村に反撃する。あたしは両手の平を地面に付け、あたしに覆い被さる花村ごと、上半身を跳ね上げた。これまでの鍛錬の成果によって、あたしと花村は高く打ち上がる。
「両手でジャンプしただと!?」
続けて空中で体を捻り、あたしと花村の位置を入れ替える。そうして落下に任せ、花村の体をドンッと床に叩きつけた。その隙に花村の腕の中から、ゴロゴロと転がって脱出する。素早く肘で床を押して上半身を跳ね上げ、花村の状況を確認する。すると、まだ床に倒れてバタバタしていた。すぐに近寄って、その背中を容赦なく踏みつける。
「はーなーむーらー、なにか言い残すことはある?」
「この手に残る柔らかさを、オレは一生忘れない……!」
「よし、死ね!」
花村の背骨を折るつもりで、あたしは足を振り下ろす。ここで花村を殺しても、死体は見つからないはずだ。ここから一生出られないとしても、こんな奴と一緒には居られない。どうせ隙を見せたら、また襲ってくるに違いない。殺すのが早いか、遅いかの違いだ。ならば早い方が良いに決まっている。
「ちょっと待った」
背後から声が聞こえ、あたしの体は後ろに引かれる。花村に振り下ろす途中だった足は、バランスを崩して力を失った。何事かと思うと、あたしの両脇に腕が差し込まれ、体を持ち上げられている。あたしを止めたのは転校生だ。きっと、あたしが殺人を犯す前に止めてくれたのだろう――でも、ダメだ。こいつは許さない。ぶっころす。
「よくやった転校生! そのまま抑えててくれ!」
「ああ、わかった」
「え? ちょっと? なに言ってんの! それじゃダメでしょ、転校生!?」
転校生が両脇を持ち上げ、花村があたしの両脚を持ち上げる。転校生と花村によって、あたしは宙吊りにされた。そうして開かされたあたしの股に、花村の股が食っ付き、服の上からゴシゴシと擦り付けられる。すると、グニグニと動く妙な突起物を感じ、あたしは全身をゾワッと震わせた。震えそうになる声を、あたしは抑えて声を出す。
「なに食っ付けてんの!? 殺すわよ!?」
「一回だけ! 一回だけ! なっ!」
「なにが一回だけよ! 放せっての!」
「もう二度と、ここから出らねーかも知れねーんだぜ! だから頼む!」
「あたしの両脚を捕まえて、それが人に物を頼む態度!?」
「だって放したら暴れるだろーが!?」
「当たり前でしょ!? バカじゃないの!?」
「2人とも落ち着け」
「仲裁してもダメだから! あんたも同罪だから!」
花村が体を離したため、あたしは一息ついた。しかし花村の突起物は離れたものの、まだ両脚は持ち上げられたままだ。あたしは体を左右に揺らし、2人の手から脱出を試みる。その間に花村は、開いていたあたしの両脚を一つに纏めた。今のあたしは「く」の字型だ。花村は片腕を回してあたしの両脚を封じ、そして開いた手をあたしの腰に伸ばし、ジャージの縁を掴んだ。
「やらせるかー!」
あたしは激しく暴れる。すると、あたしの両脇を持ち上げていた転校生に動きがあった。上に立てていた両腕を横に曲げ、あたしの胸部を抱き締める。転校生と密着して、ドクンドクンと鳴る心臓の鼓動が、あたしに伝わってきた。転校生の腕と体に挟まれ、あたしの体は優しく潰される……でも、苦しい。少しずつ締める力が強くなってきた。苦しくなって、あたしは体に力が入らなくなる。ああ、ちょっとでも優しいと思ったあたしがバカだった。
花村によって下着ごとジャージが引き摺り下ろされる。ジャージの縁が、あたしのお尻を撫でる様に滑って行った。下を見ると、あたしの股が見える。ジャージを太股の位置まで下ろされて、あたしの割れ目が露わになっていた。きっと花村には、あたしの股は丸見えになっている。そう考えると顔が熱くなって、泣きたくなってきた。
「大丈夫、すぐに終わるよ」
「うるさい、バカ。死ね。あんたも同罪よ。そもそもやらなきゃいいでしょ。なんで、こんな事すんの? あんたらわっけ分かんない! 下ろして、下ろせ、下ろしてって言ってるでしょ!? 聞こえてんの!?」
「そっとしておこう……」
「覚えてなさいよ。あとでぶっ殺す。絶対殺すから!」
頭に血が上って叫んでいると、花村の指が私の割れ目に触れた。思わずあたしは「ひっ」と声を漏らす。目に涙が滲んだけれど、両手を封じられているから拭えなかった。涙が目から溢れて目の端を伝い、床へ落ちて行く。泣き始めたら止まらなくなって、あたしは自分の泣き声を止められなくなった。
「入れるぜ、里中。すまん! すぐに終わらせる!」
「謝るくらいなら、入れなきゃいいでしょ! ばかぁ!」
柔らかいけど固い突起物を感じる。その先端が割れ目にチョンチョンと触れる度に、あたしの体はビクビクと震えた。視界は涙で滲み、光がキラキラと揺れている。どうせ見えないのだから、あたしは目を強く閉じる事にした。心臓はジクジクと痛み、ドクドクドクと激しく鼓動している。緊張の余り、あたしは気を失ってしまいそうだった。
「あれ、おかしいな。入り口から、ぜんぜん入らねー」
「濡らさないと入らないぞ」
「マジか? オレ、水なんて持ってねーよ!」
「唾液でいいと思う。舌で舐めてもいい」
「いや、それは汚ねーだろ」
「だったら、そこを弄って濡らすしかない」
「おう、分かった……でも、お前やけに詳しいな」
「それほどでもない」
冷たい花村の指が、あたしの割れ目を押す。そうして、あたしの中に入ろうと動き回った。花村の尖った爪が表皮を傷付けたため、ピリピリと痛みが走る。「爪くらい切っておきなさいよ!」と、あたしは心の中で愚痴った。それを言葉にしようと思ったものの、喉を震わせて泣いているため今は形にならない。
「よし、行くぞ。今度こそ行けそうだ……ああ、入った! 入ったぜ、里中!
――やべっ、出る!」
「尿道を締める感じで我慢しろ」
「分かんねーよ!?」
あたしの中に花村の先端が入った。あたしの中に、熱い異物が侵入してくる。そう思った瞬間、花村の先端から熱い液体が溢れ出た。花村の先端がドクドクと脈打ち、液体を吐き出す。それは、あたしの外へ流れ出ると、お尻を伝って流れ落ちた。嫌悪感に蝕まれ、それを今すぐ拭いたくなる。しかし、捕らえられたままのあたしは、自分の顔を歪ませるくらいの事しか出来なかった。
あたしは涙を飲み込む。さっきよりも、ちょっとは落ち着いた。これはバカ2人の会話が原因だろう。さっきから緊張感の欠片も無いのは、いったい如何いうことなのか。あたしをバカにしている気がして、怒りが沸いてくる……うん、この調子だ。あたしは怒ってもいい。あたしは呼吸を整えて、口を開いた。
「……ちょっと、もう良いでしょ。放しなさいよ」
「まだだ! まだオレは行ける!」
「先っちょを入れただけで出たのに? 言っておくけど、中に出したら許さないから」
溜まっていた物を吐き出した後、花村の突起物は縮んだ。それを感じたため、あたしは高圧的に言い放つ。しかし、花村は諦めず、あたしの割れ目に突起物を擦り付けた。すると、縮んでいた突起物が、また膨らんで大きくなる……ああ、やっぱり、虫みたいだ。そして、あたしの割れ目に、再び先端を突き付けた。
「もう、いい加減にして! 何度出す気!?」
「いっぱいだよ! いっぱいだ! これで最後かも知れねーだろ! だったら最後までしてやるぜ!」
「ちょっと! まさか中に出す気じゃないでしょうね!?」
「ああ、これで人生終わってもいい! 今ここで、俺のありったけを、里中の中に出す!」
「やだっ! 止めてよ! いやっ! 赤ちゃん出来たらどうすんの!?」
「そん時は責任を取る! 好きだ、里中! 愛してる!」
「あんた昨日、小西先輩が好きって言ったばかりよね!?」
ツルリと、もしくはヌルリと、あたしの中に異物は押し入った。さっきまで拒んでいたのが嘘のように、あたしの中に異物は入ってくる。さっき花村の出した液体が、あたしの中を滑りやすくしていた。ゾゾゾと悪寒を感じ、あたしは体を捻る。寒さを感じる私の体とは対照的に、お腹の中の異物は高い熱を持っていた。あたしの体は反射的に異物を締める。それでも異物は止まらず、あたしの中を擦りながら奥へ進んだ。熱い、熱い、熱くて痛いよ。
「いたい! いたいって! 離れなさいよ! あっち行け!」
あたしの悲鳴と共に、異物は前進を止める。そして後退を始めたと思ったら、また前進した。あたしの体が異物の形を捉え、その形を理解させる。あたしの体と温度の違う物が、はっきりと感じ取れた。知りたくも無かった形を、あたしは知ることになる。異物は前後運動を繰り返し、少しずつ私の奥へ進んで行く……こんなのは嫌だ。なんで、こんな事をするんだろう。
「もう止めてよ……さいあく……」
異物の全てが、あたしの中に入る。すると、あたしのお尻に、花村の股が食っ付いた。花村が腰を動かす度に、ペチペチと打ちつけられる。いったいあたしの割れ目は、如何なっているのか。そう思ったものの、あたしは目を開ける事は出来なかった。ひたすら早く。早く終わって欲しい。そう願い続けていた。
「里中、出る……出るぞ!」
「もう勝手にしなさいよ……!」
異物が動きを止める。それで来るのだと、あたしは分かった。歯を食いしばり、どこかへ飛びそうになる意識を保つ。負けるものか。あたしは負けないんだ。あんたなんかに負けてやらない。あんたなんか愛してやらない。殺してやる。こんな事をした報いを受けさせてやる。その一瞬は、とても長く感じた。
ビクビクと異物が震えて、熱い液体が飛び出る。あたしの奥で液体を垂れ流した。歯を食い縛ってはいたのだけれど、耐え切れない絶望感があたしを襲う。自分でも思っていた以上に、精神的なダメージを受けていたみたい。嫌だ嫌だ嫌だと、あたしは思う。死にたい死にたい死にたいと、あたしは思う――ああ、心臓がジクジクと、痛くてたまらなかった。
何の反応もしなくなった私の体を、花村は突き続ける。ぼんやりと、私は天井を見上げていた。花村は何が楽しいんだろう。何の反応も返さない人形を突いて楽しいかな。分からない。理解なんて出来るはずが無い。私は考えるのを止めて、真っ暗な闇の中で終わりの時を待っていた。
それから花村は3回ほど、あたしの中に液体を出して、ようやく突起物は使い物にならなくなった。そうして突起物は、あたしの中からズルリと引き抜かれる。それでも、まだあたしの中に入っている感覚が残っていた。あたしの体が、花村の跡を覚えている。それが気持ち悪くて吐き気がした。それに出された液体も、あたしの中に残っている。早く掻き出さなければ……花村の子供を妊娠するなんて冗談じゃない。
液体を出して、花村は気が抜けていた。その隙を見ると、あたしは脚に力を入れて、花村の拘束から抜け出る。そのまま花村の頭に、あたしの足を叩き落した。花村は「うげっ」とか言って床に倒れる。そうして、ようやく、あたしは床に着地できた。すると、後ろからあたしを抱き上げていた転校生が、その両腕を放す。あたしが振り返って見ると、転校生は何処かへ全速力で走り去って行く所だった。
……後で殺そう。それよりもあたしは、自分の中に指を入れ、液体を掻き出す。立ち上がろうとしていた花村の体を何度も踏み付けて、逃がさないように確保することも忘れない。殺す気で踏み付けたから、内臓の一つか二つは破裂しているかも知れないけれど……まあ些細なことだ。どうせ生きて返すつもりはない。ついでに、あたしの中から掻き出した液体を、花村に向かって振りまいてやった。
――先に一つだけ言っておくわよ。あんたが死ぬまで、私は蹴るのを止めないッ!