私の名前はトトゥーリア・ヘルモルト、皆からはトトリって呼ばれています。今日はお友達のジーノ君と一緒に、アーランド王国の首都アーランドへやってきました。生まれ育ったアランヤ村から馬車に乗って、15日間の長旅です。ずーっと馬車に乗っていたので、すっかり体が固くなってしまいました。
「おっし、到着っ!」
「はぁー、疲れたよー。ジーノ君は元気だねー」
「よし、トトリ! 早く冒険者ギルドへ行こうぜ!」
「えぇー!? もうちょっと休んでいこうよー」
「そんな時間無いって、ギルドの営業時間が終わったら、今日中に登録できないだろ?」
「馬車は明日の昼に出るんだっけ?」
「冒険者ギルドも何所にあるのか分かんねーし」
「それは、そうかも知れないけど……」
「仕方ねーなー。じゃあ、オレが運んでやるよ」
「えっ? それは――」
ジーノ君は、私の背中と両足に手を添えます。とつぜん触られたので、反射的に私の体はビクッと震えました。私の体が硬直している間に、ジーノ君は私を持ち上げます。これは「お姫様だっこ」という抱き方でしょうか。私の体はジーノ君の腕に抱き寄せられ、動けなくなってしまいました。
「ああああ、あのジーノ君!? 恥ずかしいから下ろしてくれない!?」
「大丈夫だって、ちゃんとギルドまで運んでやるからさ。じゃ、ちょっと走るぜ」
「私は全然、大丈夫じゃないよ!? きゃっ!」
私を抱えたまま、ジーノ君は走り出します。私を落とさないようにジーノ君は、私の体を強く抱き寄せました。私の体がジーノ君の体と密着して、ドクドクという心臓の音を伝えてきます。私の心臓もドクドクと鳴って、その音がジーノ君に伝わっているのかと思うと、なんだか恥ずかしくなりました。
恥ずかしくて、体が熱いです。でも、気持ちいいような感じもします。ジーノ君の負担を軽くするために、私はジーノ君の胴体に腕を回しました。ロロナ先生から貰った杖が、ちょっと邪魔です。しっかりと抱き着いて、ジーノ君と私の体が一つになるようにしました。こうすれば走りやすいんじゃないかな。ジーノ君が動いて上下に揺れると、私の体と擦れ合います。でも、なんだか其れが気持ちよくて、夢中になってしまいました。
「おーい、トトリ。冒険者ギルドに着いたぞー」
「えっ! あっ、ごめんね。すぐに放すから」
ジーノ君の声を聞いた私は、慌てて腕を放します。するとジーノ君は、私を地面に下ろしました。クスクスという笑い声に気付いて見ると、私達の様子を見ていた人がニヤニヤしています。ああ、見られてたんだぁぁぁ。そうだよね。街中だもんね。その事に気付いた私は大きなダメージを受け、恥ずかしくて思わず両手で顔を隠しました。
「あれ? ジーノ君、冒険者ギルドの場所って知ってたの?」
「そんな訳ないだろ。そこら辺にいた人から聞いたんだよ。聞いてなかったのか?」
どうやら私を抱えている間に、通りすがりの人から聞いたようです。そんな事にも気付かなかったなんて……私、何やってたんだろう。ジーノ君の体に抱きついて……あああああ、もうダメ、忘れよう。過ぎたことを悔やんでたって仕方ないよね。今は冒険者ギルドで登録しなきゃ。そのためにアーランドまで来たんだから。
「こんにちはー、冒険者って此処でなれますか?」
「そうよ。ここが冒険者手続き用の窓口、あんた達、冒険者になりたいの?」
「はい」
「そう。じゃあ、名前は?」
「オレはジーノ」
「トトリです」
「……あんた達、それって本名じゃなくて愛称でしょ。あと、家名も言いなさい」
受付にいた小さな人に案内されて、私とジーノ君は冒険者として登録します。名前や出身地を聞かれ、その情報を受付の人は紙に記入しました。それに顔写真を貼ると、冒険者登録証の完成です。すごく簡単だったので、ビックリしました。そうして出来た私の冒険者登録証には、錬金術士と書かれています。
「あれ? これって……?」
「ああ、それね。あんたロロナの弟子でしょ」
「ええ? どうして分かったんですか?」
「その杖、ロロナの杖でしょ。見たことあるのよ」
「見ただけで分かるなんて凄いんですね……ロロナ先生を知ってるんですか?」
「いろいろあってね。それよりもあんた達、アーランドには何のくらい居るの?」
「明日の昼には帰る予定です」
「そう……泊まる場所は?」
「宿屋に泊まろうかと思っています」
「予約は?」
「いいえ、今から探します」
「今の時間じゃ宿屋なんて空いてないわよ。空いてるとしても質の悪い場所だけね。そんな場所、子供だけで泊まるのは危険よ」
「えー!? そうなんですか!?」
「そんな事だろうと思ったわよ。あんた達、初めて都会に来ましたって感じなんだもの」
「えーと、じゃあ野宿しよっか。慣れてるから大丈夫だよね、ジーノ君?」
「余裕! 余裕!」
「あんた達……街の側で野宿するなんて自殺行為よ。質の悪い宿屋よりも悪いわ。街の周りは、けっこう治安が悪いんだから」
「……なんだよ。じゃあ、どうすりゃいいんだよ」
「ちょっとジーノ君、失礼なこと言っちゃダメだよ」
「ロロナのアトリエに泊まりなさい。鍵は貸してあげるから」
「えー!? 先生のアトリエで? いいんですか?」
「ロロナの弟子なら構わないでしょ。はい、これ鍵ね。明日、あんた達の見送りに行くから、その時に返してちょうだい」
受付のクーデリアさんから、私は鍵を受け取りました。ジーノ君は冒険者登録証を手に入れて大喜びしています。私達はクーデリアさんに御礼を言って、ロロナ先生のアトリエへ向かいました。鍵を開けてアトリエへ入ると、錬金術用の大きな釜が見えます。部屋の彼方此方に錬金術の道具が転がっていたので、踏まないようにソロリソロリと歩きました。
「おっ、なんだこれ」
「ジーノ君、先生の物なんだから勝手に触っちゃダメだよ」
「ちょっとくらい、いーじゃねーか」
「もー、ダメだよー」
「あれ? この部屋、ソファーしか無いな。隣の部屋は鍵が閉まってるし……どこで寝る?」
「そうだね。どうしよっか?」
「オレが床で寝るから、トトリはソファーで寝ろよ」
「いいの?」
「万が一の時に、ソファーじゃ危ないからな」
「ジーノ君、怖いこと言わないでよ」
私はジーノ君を睨みます。でもジーノ君はヘラヘラと笑って、私の視線を流しました。ジーノ君のせいで怖くなったので、私は戸締りを何度も確認します。ジーノ君が勝手に扉を開けるような事が無ければ大丈夫だよね。私はソファーで横になり、天井を見つめながら眠りました。
息苦しさを感じて目を開けると、真っ暗でした。空が曇っているせいか、月の明かりも頼りない物です。部屋は洞窟の中のように真っ暗でした。どのくらい真っ暗なのかというと、手探りで確かめないと何があるのか分かりません。眠る前に見た部屋の散らかりっぷりを考えると、部屋の中を歩き回るのは危険かな。
口に違和感を感じて舌を動かすと、軟らかい何かに触れました。「なんだろう?」と思っていると、その軟らかい何かはビクンビクンと震えて液体を放出します。まるで生き物のようです――っていうか、これは生き物だよね? モンスターの触手を連想して、私は気持ち悪くなりました。
「げほっ、げほっ」
生き物から放出された液体が、私の喉に貼り付きます。苦しくなった私は全身を震わせて、咳を吐き出しました。しかし、生き物に口を塞がれているので、上手く吐き出せません。その間にも生き物は、喉の奥へ侵入しようと試みていました。きっと私を窒息死させる気なんだ。
私は起き上がるために、体に力を入れます。でも、起き上がれません。私の顔に重い何かが乗って、私の行動を妨げていました。私の顔を太い何かが挟み、逃さないように捕らえています。私は怖くなって、脚をバタバタさせました。脚でソファーを叩いて、塞がれている口の隙間から、できる限りの声を上げます。
「うー! うー!」
「トトリ?」
私が声を上げていると、声が聞こえました。その声を聞くために、私は上げていた声を止めます。私を捕らえている何かから声が聞こえました。私の名前を呼んだような気がします。私の事を知っているのでしょうか……ああ、違う。そんな事は重要じゃないの。そんな事よりも、相手はモンスターじゃ無かったんだ。きっと人間なんだ。そう考えると私は怖くなって、バタバタさせていた脚を止めました。怖くて怖くて、体が冷たくなってきます。
「……トトリ?」
私の名前を呼ばないで。ジーノ君に似ている声で、私の名前を呼ばないで。助けてよ、ジーノ君。私を助けて。そこに居るんでしょ? 同じ部屋に居るんでしょ? どうして気付かないの? もう、お寝坊さんなんだから。早く起きないと、私怒っちゃうよ。こんな人、早く追っ払ってよ。
「……トトリ」
誰かの両手が、私の頭に触れます。髪に手を差し込んで、私の頭を掴みました。私の口の中に柔らかい物を差し込んだまま、頭部を掴んだ手を前後に動かします。そうすると、私の口の中では柔らかい物が前後に移動して、唇や舌を擦りました。さっき放出された液体が絡んで、グチャグチャと気持ちの悪い音を立てます。
強引に頭を動かされている私は、そのせいで頭がクラクラしていました。息苦しいのも重なって、とても苦しいです。苦しいから苦しいから、涙が出てきました。何度も何度も口の中で抜き差しされ、私は意識を失いそうになります。私を掴まえている人の、ハァハァと苦しそうな声が、とても近い場所から聞こえました。苦しいのなら止めれば良いのに、どうしてこんな事をするんだろう?
急に軟らかい物の動きが止まります。そしてビクンビクンと震えると、また液体を放出しました。今度は、さっきよりも少ないようです。こんな気持ち悪い物は飲み込みたくなかったけれど、重力に引かれた液体は、自然と私の喉に落ちていきます。そのままでは息苦しいので、仕方なく私はゴクンと、少しだけ飲み込みました。その味は思い出したくもありません。
口の中から軟らかい物が引き抜かれます。それは私の唇に、液体を塗りつけて行きました。私の顔を挟んでいた両脚が離れ、やっと自由になります。私は顔を横に倒して、口の中から液体を吐き出しました。そして、少しだけ目を開けて、ジーノ君の寝ている場所を探します。でも、やっぱり真っ暗です。何も見えません。ジーノ君の姿を確認できなくて、私は少し安心しました。
そう思っていると、窓から光が差し込みます。どうやらタイミング悪く、月の曇りが取れたようです。月の明かりは部屋を照らし、空っぽなジーノ君の寝床を露わにしました。空っぽです。空っぽでした。ジーノ君ったら、寝相が悪くて何処かへ行っちゃったのかな? そう思いたかった私はジーノ君の姿を探します。でも、私の視界にジーノ君の姿は見当たりません。でも、同じ部屋の中にジーノ君はいます……きっと顔を横に向ければ、ジーノ君の姿が見つかるのでしょう。でも、その姿を見る勇気が無くて、私は目を閉じました。
――あなたは、だぁれ?
私の下着が引っ張られます。そのまま捲られて、誰かの指が私の股に触れました。私はビクリと震えて、体を固くします。誰かの指は私の股を何度も撫でて、股に空いた穴を探り当てました。すると誰かの指は離されて、代わりに軟らかい物が押し当てられます。さっき口に入っていた物だと、私は分かりました。
軟らかい物と穴が擦り合わされます。そうされていると体が熱くなって、体中がムズムズしてきました。体を止めて居られなくなって、荒い息を吐きながら、私は体を揺すります。何が起こるのか、今から何をされるのか、少しだけ分かっていました。その事を考えていると、心臓がジンジンと痛くなります。
軟らかい物の先端が、私の口に当てられました。思わず、私は呼吸を止めます。右や左へ動きながら私の口を押し広げ、軟らかい物は中に入ってきました。自分の体の中に異物が侵入する感覚に対して、私は吐き気を感じます。止まって欲しい、それ以上進まないで欲しい。そう思っていたけれど、軟らかい物の動きが止まることは有りません。
軟らかい物は、途中で液体を吐き出します、これで3度目です。その液体を使って誰かは、私の中を滑りやすくしました。軟らかい物は少しだけ進んで、引き返して、また少しだけ進んで、引き返します。接着された肉を剥がすように、メリメリと音を立てながら、軟らかい物は押し進んで来ました。その痛みは耐え難いものです。私は歯を食い縛り、自分の腕に爪を突き刺しながら、その時間が終わるまで耐えていました。もう涙が止まりません。
やがて軟らかい物は全て、私の中に埋まりました。誰かの体が私の股に押し当てられ、太ももを擦ります。私の中で軟らかい物は前後に移動し、少しずつ勢いを増して行きます。軟らかい物に引っ張られて、私の体も揺れ始めました。唾を飲むのも苦しくなって、口の中に残っていた液体を飲んでしまいます。でも、それを気にする余裕も残っていません。
「んっ! んっ! んっ! んっ!」
「……トトリ、好きだ。愛してる」
聞こえない、聞こえない。私には何も聞こえない。聞きたくない。そんな言葉は聞きたくないよ。うそつき。なんで、そんな事いうの? ジーノ君の声で、そんな事を言わないで。その口で愛してるなんて言わないで。好きなら、なんで、こんな事するの? おかしいよ。ジーノ君、おかしいよ。
また軟らかい物の動きが止まる。これで4度目だから、私は液体が放出されると分かっていた。私は知ってるよ、赤ちゃん出来ちゃうんだよね。ジーノ君は知らないの? なんで中に出そうとしているの? ダメだよ、中に出しちゃダメ! やだっ、外に出してよ! 私の中に出さないで!
「ジーノ君、やめて!」
「トトリ!」
ビクビクと軟らかい物が震える。ドクドクと液体が放出される。軟らかい物は私の中で、液体を放出してしまった。私の全身から力が抜けて、空っぽになったような気がする。食い縛っていた歯も、腕に突き刺していた爪も、力が緩んで外れていく。なんでだろう? あんなに耐えていたのに、もう体に力が入らない。
でも、それで終わりじゃなかった。ジーノ君は、また私の中で動き始める。それに対して、もう私は反応しなかった。もう何も痛くない、もう何も怖くない。体から心が剥離するような感覚だった。でも冷たいよ、寒いよ、苦しいよ。そうして人形のようになってしまった私の体の上で、ジーノ君は動き続ける。
「そろそろ起きろよ、トトリー」
そんなジーノ君の声を受けて、私は目を覚ましました。窓から太陽の光が差し込んでいます。どうやら昼に近いようです。私はソファーの上で上半身を起こして、周囲を見回しました。すると、ソファーの側にジーノ君が立っています。ジーノ君は「やっと起きたのかよ。そろそろ起きないと、馬車に間に合わないぜ」と言って、荷物を纏め始めました。
「あれ? 夢だったのかな……?」
そうだよね。あんな酷いこと、ジーノ君がするわけないよね。なんて夢、見ちゃったんだろう。そう考えた私は気を持ち直して、ソファーから立ち上がりました。すると、股の辺りが濡れているような気がします。私は「漏らしちゃったのかな?」と思って、ジーノ君の見えない位置に移動して、指で触れて、その先に付いた白い液体を呆然と見つめました。ああ、なんだ。やっぱり夢じゃなかったんだ。
あれ? じゃあ、なんでジーノ君は、いつもと同じなんだろう。なんで何もなかったような顔で、私に話しかけて来たのかな? おかしいよね、ジーノ君。おかしいよ。なんで、あんな酷いことを私にしたのに、何も無かったような顔でいられるの? あの後、私が抵抗しない事をいい事に、何度も何度も何度も何度も何度も何度も、私を傷付けたのに? そんなの、おかしいよね?
「トトリー、まだかよー」
「ジーノ君、待ってよー。すぐ行くからー」
「しかたねーなー」
ロロナ先生から貰った大事な杖を汚すわけにはいかない。私はバッグの中からナイフを取り出した。倒したモンスターから、使える部分を取るためのナイフ。使った後は血を拭いて、油を塗らなければ、すぐにダメになってしまう。人に使うのは初めてだけど大丈夫だよね。だって人間も動物も変わらないもの。
「ねえ、ジーノ君」
「なんだ……ぐぇっ」
思わず、刺す前に声を掛けてしまった。そのせいでナイフは狙っていた首筋ではなく、ジーノ君の目に突き刺さる。慌てて引き抜くと、ジーノ君の眼球がナイフに刺さったまま、スポンッと抜けた。おかげでジーノ君は苦しんでいる。狙いは外れたけど、今がチャンスだった。私はジーノ君を突き飛ばし、床に倒れたジーノ君の腹部を、何度も何度も何度も何度も何度も何度も、突き刺した。
「失敗しちゃったなぁ、ロロナ先生のアトリエを汚しちゃった。馬車に乗る前に、ちゃんと掃除しないと。ジーノ君は如何しよう……錬金釜に入れてミートパイにすれば大丈夫かな?」
「トトリ……なんで……」
「えいっ」
「ぐぇ」
腹部を何度も刺したのに、ジーノ君は粘り強く生きていました。なので私はナイフを横に構え、そのまま振り下ろします。肋骨の隙間を抜けて、心臓を突き刺しました。そうしてナイフを引き抜くと、血がバシャーと噴き出して、私に降りかかります。ジーノ君の心臓がドクンドクンと鳴って、その音が私に伝わりました。ビクンビクンと震えるジーノ君の体から、赤い液体が放出されています。
私の時は、あんなに気持ちよさそうだったから、きっと今もジーノ君は気持ちいいよね。良かったねジーノ君、私も気持ちいいよ。体が、とっても熱いの。私もジーノ君が好きみたい。死んでいるジーノ君が好き。だからミートパイにして食べてあげる。ジーノ君を食べて私だけの物にしてあげる。だからジーノ君も嬉しいよね? 返事なんていらないよ。
――ジーノ君が愛してくれたように、私も愛し返してあげるから。