私はエステリーゼ・シデス・ヒュラッセイン、次期皇帝候補の皇女です。
知人に暗殺者が仕向けられたと知った私は、その知人へ会いに行きました。私の部屋の近くに居る騎士に、「騎士団の小隊長フレン・シーフォに暗殺者が仕向けられた恐れがあると、本人に伝えてください」……なんて言う訳には行きません。騎士を使ったとしても、きっと本人へ伝わる事はないでしょう。フレンに暗殺者を仕向けた者は、騎士団の内側にいるからです。
私は次期皇帝候補です。しかし、次期皇帝候補は一人ではありません。評議会の祭り上げた私と、騎士団の祭り上げたヨーデル殿下がいらっしゃいます。そしてフレンは、ヨーデル殿下を祭り上げた騎士団の小隊長です。暗殺者が仕向けられたのは、評議会に祭り上げられている私と仲のいいフレンを、こころよく思わない人がいたのでしょう……もしかするとフレンは、両方の勢力から命を狙われているのかも知れません。評議会は私に対して、お飾りの人形でいて欲しいと考えていますから。
私と対立する騎士団も、私を後援する評議会も、味方とは言えません。困ったことに、私の信頼できる味方と言える相手は、暗殺者に狙われているフレンくらいのものでしょう。それが理由でフレンは暗殺者に狙われているわけですけど……そんな訳で私は誰にも頼れなかったため、自分の足でフレンへ会いに行こうと考えました。お城にある自室から、同じお城にあるフレンの執務室へ向かいます。しかし途中で騎士に見つかり、部屋へ連れ戻されそうになりました。こうなれば戦うしかないと思った私はサーベルを抜き、全身鎧と分厚い剣で武装した騎士に刃を向けます。
「お止めになられた方が……お怪我をなさいますよ」
「致し方ありませんね。手荒な真似はしたくありませんでしたが……」
そう言って騎士は剣を抜きます。皇族である私に対して、剣を抜いたのです。これだけでも十分に、相手が私を如何思っているのか分かります。暗殺者に狙われている事を、私はフレンに伝えなければなりません。もしもフレンが死んだり、怪我を理由に下城させられたりすれば、お城の中に私の味方は居なくなるでしょう。それを防ぐためにも、ここで身を引くわけには行きません。
「最近の騎士団じゃ、エスコートの仕方も教えてくんないのか?」
「貴様、何者だ!」
私達の前へ突然現れた青年は、騎士達と戦い始めました……それは良いのですけれど、その青年は怪しい格好をしています。着ている服は色が薄く、あちこちに汚れた跡が薄く残っていました。靴は素材の質が悪く、使い古されて光沢がありません。こんな格好の人物を、お城の門番は通すのでしょうか。いいえ、通しません。騎士に見つかれば問答無用で拘束されるはずです。だとすれば青年は、お城に忍び込んだのでしょうか?
この青年こそ、フレンを狙う暗殺者なのかも知れません。フレンと親しい私の危機にタイミングを計って現れ、私を信用させてフレンの下へ案内させる気なのでしょうか。そうではなく特別な事情のある一市民だとしても、こんな格好でお城にいる理由がありません。汚れた格好のまま入城を許される相手なんて……そう思って、思い付きました。この青年は、お城の牢屋から脱走した犯罪者なのかも知れません。
暗殺者にしても犯罪者にしても、好ましい者ではありません。青年が騎士と戦っている間に逃げるべきでしょうか。悩んだ末に私は、近くに飾られていた壷を持ち上げました。ここで暗殺者を倒せば、フレンの身は安全です。犯罪者であれば倒しても構わないでしょう。何の関係もない一市民だとすれば……とりあえずサーベルと違って壷ならば、死ぬ事はないと思います。やらないで後悔するよりも、やってから後悔しましょう。そう思った私は、騎士を倒し切って気を緩めている青年の、その後頭部に壷を振り下ろしました。
「なにすんだ!」
その場から青年は飛び退きます。振り下ろした壷は、地面に叩き付けられました。壷は真っ二つに割れて、大きな音を鳴らします……これは困りました。外してしまいました。こうなれば戦って止めるしかありません。しかし目の前の青年は、重装備の騎士達を相手に勝利した強者です。戦うだけではなく逃げるのも手だと思い、青年の様子を探ります。すると青年は剣を納めて、敵意がない事を示しました。でも、それだけの事で信用はできません。
「……だって貴方、お城の人じゃないですよね?」
「そう見えないってんなら、それまた光栄だな」
『ユーリ・ローウェ~ル! どこだー!』
『不届きな脱走者め! 逃げ出したのは分かっているのであ~る!』
「ちっ、またあいつらか。もう牢屋に戻る意味、なくなっちまったよ」
「ユーリ・ローウェル? もしかして、フレンのお友達の?」
暗殺者でも一市民でもなく、犯罪者だったようです。しかし青年は、フレンのお友達でした。ユーリ・ローウェルという人の話は、フレンから聞いています。昔は騎士団に所属していたけれど退団して、今は下町に住んでいるそうです。ユーリさんは下町の用心棒なので騎士と衝突する事も多く、これまでに何度も捕縛されていると聞いています。おそらく今回も、そんな理由で囚人となっていたのでしょう。
私はユーリさんにお願いして、フレンの部屋へ連れて行ってもらいます。しかし、フレンの部屋は綺麗に片付いていました。それを見たユーリさんの推測によると、フレンは遠出しているそうです。私はフレンを追うために、ユーリさんに同行をお願いしました。そこへフレンを狙う暗殺者が現れたものの撃退に成功し、私とユーリさんはお城を抜け出すまで同行する事になります。
「着替えてきますので、少し待っていてください」
「わかった。手短にな」
水色のドレスを着替えるために、私の部屋へ寄ります。ユーリさんを扉の外に残し、私は一人で自室へ入りました。クローゼットを開けて、外出しても違和感のないような服を選びます。それでも透き通った上品な布が、上衣に装飾として付いていました……仕方ありません。装飾を外している時間は無いのです。この服に着替えましょう。そう思った私は髪を留めていた装飾品を外し、ドレスの紐を解きます。一人で脱ぐのは難しい服なのですけど、まさかユーリさんに手伝わせる訳にはいきません。
そういえばフレンから、「ユーリと会ったら用心するように」と言われていました。そこで私は背後をチラリと見ます。すると、ちゃんと閉めたはずの扉は開いていました。そこから扉の前にいる、ユーリさんの体が垣間見えます……その空いた扉の隙間から一つの目が、私の体を見つめていました。さきほどドレスの紐を解いたので布は開き、私の上半身は露わになっています。それを見られてしまいました。
「な……なにをしてるんですかっ!」
恥ずかしさと怒りで、カッと体が熱くなります。私は下へ落ちそうになる服を押さえ、サーベルを手に取りました。これは迂闊でした。着替えを覗かないように警告しておくべきでした。でも、今からでも間に合います。私は扉へ近寄り、サーベルをユーリさんに向けます。しかし、扉の隙間から伸びた手は素早く動いて、サーベルを持つ私の手首を掴みました。そのままユーリさんは扉の隙間に体を滑り込ませて、私の部屋に入ってきます。
「人を呼びますよ!」
「大丈夫、すぐ済むさ」
何がです!? まずいです。これはピンチです。サーベルを持った右手は掴まれ、左手はドレスが落ちないように押さえています。私の両手は塞がっていました。でも、まだ私には立派な足があります。そう思った私は片足を上げ、ユーリさんの下半身に叩き込む……その瞬間、私は軸足を払われ、体は宙に浮きました。そのまま後ろ向きに倒れ、床で後頭部をゴツンと強く打ちます。
「~~ぅっ!?」
とても痛いです。頭皮が削れてしまったのかも知れません。その痛みは長く続き、私を苦しめました。しかし、ドンッと両手を床に押し付けられ、私は正気を取り戻します。気が付くと目の前に、ユーリさんの顔がありました。横を見ると私の両手首はユーリさんに掴まれ、床に押し付けられています。下の方を見るとドレスのスカートが捲くれ上がり、ユーリさんの両脚に押し入られていました。つまり私は、ユーリさんに伸しかかられています。その事に気付き、私は体を震わせました。
「いやです! 離れてください! おねがいです!」
「そんなに大声上げたら、誰かに見つかっちまうぜ。そうなったら、あんたも困るんじゃねーか?」
「それは……困ります」
「ちゃんと外まで連れて行ってやるから、今は大人しくしてくれよ。これはオレに対する報酬の前払いって事じゃダメか?」
「勝手な事を……言わないでください!」
「……やれやれ、お転婆な姫さんだぜ」
私は自由な足を振り回して、ユーリさんの足を蹴ります。その時、私の落としたサーベルにも当たって、どこかへ蹴り飛ばして、しまいました。それでもユーリさんの腰から下は少しずつ迫り、スカートを押し退けながら私の両脚を開いて行きます。やがてユーリさんの腰と私の太ももは密着し、出っ張った物が押し付けられている事を感じ取りました……ああ、ダメです。それは、いけません。
イヤイヤと首を横に振って、私はユーリさんに意思を伝えます。でも、それをユーリさんは無視して、私の体に出っ張った物を擦り付けました。私は腰を引いて、それから少しでも逃れようと試みます。でも、出っ張った物は引っ付いたまま離れません。グニグニという感触を覚え、その感触に耐え切れず、私は唇を噛みました。顔を横に背け、ギュッと目を閉じます。私の体は、怖くて震えていました。
「止めてください……おねがいします」
「……ああ、分かったよ。そんな顔で泣かれちゃ、仕方ねーな」
そう言ってユーリさんは両手を放します。「えっ?」と私は驚きました……でも、今がチャンスです。私は両手を使ってユーリさんをドンッと突き飛ばし、さきほど蹴り飛ばしてしまったサーベルを探します。扉の前に落ちているサーベルを見つけると、それを目指して走りました。でも、サーベルを手に取る前に、私の体は床に倒れます。後ろからユーリさんに足を掴まれ、床に引き倒されました。
「なにを……」
「残念でした、と」
ユーリさんはドレスのスカートを捲り上げると、私の下着を引き下ろします。そして私の腰を両手で掴みました。サーベルへ手を伸ばす私の体は、腰を引っ張られる力で引き戻されます。そして再び、ユーリさんは腰を押し付けてきました。でも、さっきと感触が違います。さっきは服越しに出っ張っていて、今は細長い物が私のお尻に触れています。その正体に気付き、私は悲鳴を上げました。
「いやです! 誰か助け、イヤアアアアアア!」
助けを求める途中で、突き刺されました。ひどい……最低です。下腹部から痛みは全身に広がり、私はビクンビクンと身を震わせます。内側から突き刺されたような、ひどい痛みです。叫び声は勝手に私の口から出て、息が尽きるまで止まりません。肺の中の物を出し終わると、私は荒い呼吸を繰り返しました。そうして少し休めたと思ったら、ユーリさんは前後に動き始めます。ペチャリペチャリと、私のお尻を叩き始めました。
「やめて! 誰か助けて! いやぁ! おねがいです! 動かないでください! どうして、こんな事をするんですか! 私が何をしたって言うんです! 私は何も悪い事はしていません!」
ユーリさんは何も答えてくれません、荒い息を吐きながら、私に腰を押し付けるだけです。ユーリさんは報酬の前払いと言っていました。これが報酬? 私がお城を抜け出すための報酬? たった、それだけの事なのに、どうして……そうでした。フレン、ふれんです。私はフレンに会いに行かないと、そのために、こんな目に会って、危機が迫っている事を伝えるために……!
「ふれん……ふれん……ふれん……ふれん!」
「オレは、フレンじゃ、ねーって、よっ!」
痛いです。助けて、フレン――貴方のお友達は、とんでもない外道でした。よく、こんなお友達と付き合ってられましたね。おかげで、「ユーリと会ったら用心するように」という言葉の意味が、よく分かりました。ええ、よく分かりましたとも。貴方の忍耐力には、目を見張る物があります。今すぐ貴方に会って、その綺麗な顔を吹っ飛ばしてやりたい所です。だからフレン、今すぐ……たすけてください。
「おっと、姫さんが騒ぐから、誰か来ちまったみてーだな」
「はなしてください。もう、いいでしょう」
「こんな所を騎士達に見られたら大変だろ。早く隠れようぜ」
「いやです。あっちへ行ってください」
「あいつらに襲われたら、体が持たないんじゃねーか?」
「そんなこと……そんなの……」
このお城で、私の味方はフレンだけです。こんな私を見た騎士達は、私を如何するのでしょうか? 助けてくれるのでしょうか? それとも私を助けないで……私は歯をカタカタと震わせます。そんなのは嫌です。嫌だから、どうする事もできません。騎士達に助けを呼ぶ事も、ユーリさんと一緒に隠れる事も選べません。でも、身を硬くした私はユーリさんに引き摺られ、クローゼットの中へ引っ張り込まれました。そして、また後ろから突き刺されます。頭の天辺まで貫くような痛みに、私は顔を歪ませました。
「いたか?」
「いや……」
「これはサーベル?」
「なぜ、こんな所に?」
外から声が聞こえます。クリーゼットの中は真っ暗になっていました。それでもユーリさんは腰を動かしています。まるで、お猿さんですね。私は後ろから抱き締められ、ユーリさんの手で口を塞がれていました。密着している体から、ドキドキという鼓動を感じます。頭が熱くて、グルグルとしていました。騎士達に見つからないかを、私は心配しています。それなのにユーリさんは構わず、私の中を出たり入ったりしていました。
「……」
「……」
突然、騎士達の声が聞こえなくなります。不自然です。これは……気付かれましたね。ユーリさんが動いて、音を立てているから当然の結果です。それなのにユーリさんは動きを止めず、それどころか逆に出し入れは速くなりました。ユーリさんは勢いよく私のお尻を打ち、パンッパンッと大きな音を鳴らします。一方、クローゼットの扉は開き、外から光が差し込みました。私は眩しくて、こんな姿を見られるのが恥ずかしくて、顔を伏せます。
「なっ、姫様!?」
「貴様、何をしている!」
顔を伏せている私の耳に、騎士達の声が聞こえます。ああ、見つかってしまった。こんな姿を見られてしまった……これから私は騎士達に何をされるのでしょうか? そう思っていると、ユーリの動きが止まりました。ビクンビクンと震えて、何か違和感のある物を、私の中に残します……え? あれ? なんですか、これ? 何をしたんですか、ユーリさん? なんで、これ、気持ち悪い。
「姫様を放せ! 無礼者!」
「姫様、こちらへ!」
騎士に体を引かれ、ユーリさんから引き剥がされました。騎士は心配そうに、私に声をかけています。でも、私は騎士が怖くて、男の人が怖くて、その人の顔を見ることが出来ません。そうして顔を伏せていた私は、キラリと光る物を見つけました。私は騎士から離れ、それにフラフラと近寄り、片手で拾い上げました。私のサーベルです……そうです。これさえあれば身を守れる。ユーリさんに足を払われて倒れた時、これさえ手放さなければ、こんな事には成らなかったはずです。これさえあれば、もう二度と、こんな目には会いません。
私は乱れたドレスを整え、紐を結んで着直しました。その間、騎士達はチラチラと私の様子を探っています……レディの着替えを覗くなんて失礼な人達ですね。こっそり見ている事に、私が気付いていないと思っているのでしょうか? そして私はサーベルを持って、ユーリさんの下へ戻ります。ユーリさんは床に倒され、動きを封じられていました。騎士は剣を突き付けて、ユーリさんの身動きを封じています。
「どうして、まだ生きているんです?」
「え? しかし、聴取を行わなければ成りません。この者は今、この城を騒がせている連中の一味かも知れません」
「その人はユーリ・ローウェル、騎士団の元団員で、今は下町の用心棒をやっています。城内へ侵入しているのは、騒ぎに乗じて監房から脱走したからです――さあ、どうぞ」
「……いいえ、下民の血で姫様の部屋を汚すわけには行きません。この下民は騎士団まで連れ帰り、こちらで処分いたします」
「……貴方は誰に向かって意見を言っているんです? 貴方の意見なんて聞いていません――やりなさい」
「姫様は混乱していらっしゃいます。一度お休みになられてから、お答えを出した方が宜しいと申し上げます」
「……もう、いいです。貴方達は罪人を抑えておきなさい。私がやります」
私はサーベルを、床に伏したユーリさんへ向けます。そんな私に騎士達は、困惑した視線を向けました……イライラします。これは不安です。私の言葉に逆らう騎士達に対する不信です。この人達も私を犯すのではないのかと、私は恐怖しています。その恐怖を振り払うために、私はサーベルをヒュンッと一振りし、再びユーリさんに向けました。すると騎士達は視線を切り払われたかのように、私からユーリさんへ視線を移します……ああ、そうなんですね。私は、こうすれば良かったんだ。
「ユーリさん、何か言い残すことはありますか?」
「……誰かに伝えたい事はあるが、あんたに伝えるべき事じゃない」
「では……」
「最後に綺麗な姫さんとやれて良かった。そう思うぜ」
不意打ちの言葉が、私の耳を打ちます。後悔する事なんて無いように、間違っていなかったかのように、ユーリさんは言いました。唇の端を歪めて、苦笑いをするような、あざ笑っているかのような、そんな表情でした……なんで笑ってるんです? 命だけは助けてくださいって泣き叫ばないんですか? 今から貴方は死ぬんですよ? なのに何で笑ってるんです? もっと苦しんでください。絶望してください。そうじゃないと――、
「アアアアアア!! うるさい! 死ね! 死んでください! 貴方なんて! 貴方なんて! 貴方なんて!! 私はっ! だいっきらいです!!」
私はサーベルで斬りかかりました。何度も、何度も、斬りつけました。私のサーベルで、ユーリさんの体に浅い傷がつきます。その傷を何度も重ねて、ユーリさんを血まみれにしてやりました。すぐに殺してなんてあげません。痛みを感じて苦しんで、悲鳴を上げて泣き叫んで、私の受けた痛みと苦しみを理解してから死んでください。そう思って私は、サーベルを振り下ろしました。
「……死にました?」
コテンッと私は首を傾けます。騎士に視線を向けると、その騎士はビクッと体を震わせました。なんだか怪しい動きをする騎士は、ユーリさんの死を確認します。ユーリさんは血まみれな上に斬り傷だらけで、とても人には見えません。こうなっては、ただの赤い肉団子です。ユーリさんの顔は念入りに刻んだので、肉の剥れた場所に白い骨が見えていました。ユーリさんの周りは、飛び散った血と肉片で汚れています。サーべルに付いた血と油を取るために使った拭い紙も、赤く染まっていました。私のドレスも、スカートの部分は真っ赤です。
「ここであった事は秘密です。この事が明らかになれば、この場にいる貴方達に責任を取ってもらいます。なので、噂が広まらないように火消しを頑張ってください――分かりましたね?」
「……」
「……」
「返事は?」
「了解しました」
「謹んで、お受けいたします」
騎士達に死体の処理を命じて、私は休憩します。サーベルの切れ味が悪くなっていたので、ついでに手入れを行いました。騎士達は死体を布袋に入れ、運び去って行きます。お城の中で騒ぎが起こっていたのは幸いでした。おかげで、スムーズに事は進みます……そういえばフレンに暗殺者の存在を伝えに行く途中でした。思い出した私は、さっそく行動を開始します。血を隠す作業を行っていた騎士2人の隙を見て、その首をスパッと斬り裂きました。人体の斬り方はユーリさんで十分に練習できたので、とても上手く行ったようです。そうして私は邪魔者を暗殺しつつ、お城を脱出する事に成功しました。
――ふふふ、すぐに会いに行きますよ、フレン