猫の呪いは再び蔓延る。
それは一種の悪戯か?
誰にも判らない。
カーテンの隙間から覗く朝の光。
それに気づきベッドから起き上がるが…
傍に居たのは獣の耳と尾を付けた恋人だった。
******
「ハスミ?」
「ヴィル…あれ、どうしたのそれは?」
もしやと思い、自分の頭に触れてみる。
同じ様に耳の様なモノが付いて居るのが判る。
彼女とは少々大きさが違う様だが…
「どうして猫の耳が?」
「猫…確か地球に生息する愛玩動物の一種だったな?」
「そうだけど…これってまた例のアレかしら?」
「アレとは?」
ハスミから聞かされたのは数年前に太陽系全域で人類が猫化した事件の事である。
引き起こした存在は既に倒されており事件も終息したらしい。
「また同じ事が起こったと言うのは?」
「う~ん、回収されてないアークダーマがあれば話は別ですけど…」
「例のアレからは何と言っている?」
「特には何も。」
「そうか、兎も角…大人しくしている方が得策だろうな。」
確かに色々と問題があるので家から一歩も出ない事にした。
休暇中で助かった。
軍務中だったら眼にも当てられない…
そもそも威厳と言うか理性が総崩れしそうな姿なのでどうしようもない。
「ただ付いている訳ではないのだな?」
「同化している様な感じなのでこの耳も尻尾も動きますからね。」
「不思議なモノだ。」
己に付いた大型の猫科動物の様な尾を眺めるヴィル。
「…(前回は普通の家猫系が多かったのに今回は猛獣系が多い…どうしたんだろう?」
「どうした?」
「ヴィルの尻尾って豹って言う猛獣系の猫科の生物の尻尾に似てたから…」
「そうなのか?」
「ちなみに私のはヤマネコって言う普通の家猫より体格の大きい種の猫科生物の尻尾に似ているの。」
「話を察するにどちらも巨体だがどういう事だ?」
「どちらもペット向きではないの、気性の荒いけど狩猟本能に長けているわ。」
「成程な。」
「例外もあるけど一般では飼育されていないわね。」
「例外?」
「例えば…保護動物、それらの保護を目的とした保護機関とか専門の研究機関、動物園…違法でペットにしている所も探せばあるんじゃないかしら。」
「地球にも色々とあるのだな。」
「その話は置いといて、問題はどうして急に猫になったかって事ね。」
今回の事件を調べる為にUNで検索した所。
銀河連合各所にて同様の事象が起こっているらしい。
あるとすれば危険性がないのが救いだろうか?
今回の事件はエルンスト機関で行っていた研究で研究事故が発生。
原因は研究材料に猫の毛が混じってしまったのが原因らしい。
効力は今日一日だけなので次第に収まるとの事だ。
今日は二月二十二日、地球では猫の日と呼ばれる日でもある。
今回の事は猫祭りなどと称されて地域によってはお祭りとして騒ぎにならない様にしている所もある様だ。
「…と言う事だそうです。」
「害がないのなら気にする事もないだろう。」
「普通に終わればですけどね…」
「どう言う事だ?」
「今回の事件は銀河一帯で起こっています、恐らくはヒビキ君やエルーナさん達の所でも同様の事が起こっている筈です。」
「まさか?」
「こちらのこの姿を見る為に突撃する可能性があると言う事です。」
「彼女ならあり得るな…」
一瞬の沈黙の後にそれはやって来た。
「やっほ!ハスミ、ヴィルダーク、元気してる?」
「やっぱり。」
玄関を勢いよく開ける音と共に威勢のいい声が響く。
「久しぶりですね、エルーナさん。」
「元気にしてた?」
「久しいな、エルーナールーナ…それにヒビキ・カミシロ。」
「相変わらず見たいだね。」
「お、久しぶりです…ハスミさん、ヴィルダーク。」
「エルーナさんは判るとしてヒビキ君はどうして?」
「丁度、ソーラリアンの定期メンテの最中だったんです。」
「出航までしばらくこっちに居るって言うから連れて来たって訳さ。」
「あらスズネさんは?」
「ソーラリアンのメンテに立ち会っています。」
「そうだったの。」
玄関前に居させ続けるのも何なので上がって貰った。
「それにしても皆して面白い姿になってるね。」
「半分とは言え猫になるなんて…」
「確かに慣れてないと困るわね。」
「ハスミはなった事があるのかい?」
「Z事変の前に一度だけ同じ現象があったので…」
「かなり前とは言え二度も同じ事に巻き込まれると言うのも苦労しますね。」
「そうね、あの時はまあ色々と大変だったけどね。」
「それだけの事でここを訪ねて来たのか?」
「そう言う訳じゃないさ、ハスミなら何か面白い事を知ってないかな~って思ってね。」
「特にはありませんね、今回の一件も今日だけで終わりますし。」
「そっか、じゃ今日だけこの姿なんだね。」
「良かった。」
通された客間でコーヒーを飲むエルーナとヒビキ。
二人も猫科の動物の耳と尾が付いている。
「じゃあ、ハスミが飛ばされた世界の話をしてよ。」
「えっ?」
「確か、エンドレスフロンティアの事は聞いた事があるからアル・ワースだっけ?その世界の話を聞きたいな。」
「そうですね、あの世界でも色々とありましたから…」
「話しにくいのなら止めておきます。」
「ううん、私も久しぶりに思い出したし聞いて貰えると嬉しい。」
「判りました。」
戦いの最中に出遭った人達。
時間軸の違いで出会った人達。
いずれ戦いの中で出会う人達。
そう言った経緯で集まった彼らと共に戦った戦い。
魔法が織りなす智の世界アル・ワース。
あの戦いの後、再会する人々居ればそうでない人々も居た。
いつかどこかで会えると信じている。
ただ問題はそこじゃない。
私はヴィルの片腕としてサイデリアルとして動いていた時期に巻き込まれたのだ。
敵対していたとは言え…
ダブルグリリバことマサキとヒイロに銃口を向けられるわ。
アムロ大尉とシャア大佐の毒舌説得で胃が何度も悲鳴を上げるわ。
兎も角、散々な目に遭いました。
「魔法か…確かセフィーロ組やラ・ギアス、アースティアの面々はそれに精通してましたね。」
「ええ、私もセフィーロ組として活動していたし一部の魔法は行使出来たから。」
「確かアンタの機体…エクリプスがその産物だっけ?」
「普段は乗る機会が少なくなりましたが、私の大切な相棒に変わりはありません。」
「ハスミさんが敵対していた時は凄まじい力でしたね。」
遠き日の様に遠い目で思い出すヒビキ。
「あれでも御使いを騙す為に控えめにしていたのよ?」
「あれで控えめってアンタね……ヴィルダークが惚れ込むのも判るわ。」
「俺の片腕を務めるのだ、あの位出来ねば話にならん。」
「あー基準が全く遠い所だったの忘れてたわ。」
「…(ハスミさん、あれで抑え気味ってどれだけ修行を積んだんだ?」
同じく元サイデリアルとして活動していたエルーナもヴィルダークとハスミの基準に呆れていた。
「元々身近に居た人達が常識外れの人も多かったしそのせいもあるわね。」
「もう何も言えません。」
長い話を咲かせるも、時間は夕方を迎える。
「じゃ、またね。」
「お邪魔しました。」
「はい、さようなら。」
エルーナとヒビキが帰路へと向いたのを確認するとハスミは家の中へと戻って行った。
「すっかり話し込んでしまいましたね。」
「気も晴れただろう?」
「そうですね。」
猫は気まぐれだ。
猫の気まぐれは時々色々な出来事を運んでくる。
今宵も猫が鳴く。
艶やかな声と共に。
=続=
スーパーロボット大戦XのPV2で白熱しました。
発売まであと一カ月近くですが待ち遠しいです。
+フライング猫の日の話でした。