桜は散り。
春の終わりと夏の始まりを告げる風。
ただ違うのは真夏の様な暑さの日中と肌寒い風の夜が交差しているだけ。
これで油断すると体調を崩す事がある。
特にこの時期は忙しいから余計に…
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「今日も綺麗。」
五月の満月。
春の名残り風に揺れて木々が音を上げる。
時折吹く風でカーテンが揺れ動いた。
「また月見酒か?」
「少しだけね。」
本来、寝酒は余り良くないと言われるが…アルコールが少ない甘酒を用意した。
シンプルにインスタントをお湯で割るがお好みで豆乳や牛乳で割るとまた違った味わいになる。
昔ながらの味わいで不思議と落ち着く味だ。
「ヴィル?」
「少しやつれたな。」
「ここの所、激務だったから…」
春先から続く激務を終えて五月の黄金期間に休暇を取れたので再び別荘へと訪れた。
疲れが溜まっていたらしくまだまだ怠さが抜けない。
彼の暖かい手が私の頬に触れる。
少し風に当たり過ぎた様だ。
「何か飲む?」
「ああ、頼む。」
月見をする時は必ずと言ってもいい程、傍に持参している。
保温ポットとインスタント飲料一式のセットをお盆に完備。
夏は気候によって冷やしたモノが多いが肌寒い夜の為に今回は暖かいモノがメインだ。
ちなみにリクエストされたのは昆布茶である。
「「…」」
静かな夜に飲み物を啜る音が響く。
「静かだな。」
「うん、本当に。」
「こうしてお前と共に静かに過ごすのは何時振りだろうか?」
「簡単に言うと数か月ぶりですね。」
「そうか。」
平穏になった世界に降りかかる様々な戦い。
それは大なり小なり規模は違えと戦う事を強いられてしまう。
私達は未だ武器を捨てる事は出来ない。
「ハスミ。」
「ヴィル、どうしたの?」
「お前はこのままでいいのか?」
「えっ?」
「お前はかつての戦いに置いて、俺に自由と明日を与えてくれた。」
記憶に蘇る世界が滅亡する戦い。
そして新たに生誕した新世界で今を生きている。
「今のお前は温室の中で咲く花に思える。」
「どうして、そう思うの?」
「お前の姿を見て思った。」
「…」
ただ淡々と任務をこなす毎日。
そこには自由はない。
明日を創る為とは言え、自らの自由を失った姿を見るのは辛い。
「少し働きすぎたから?」
「…俺が言いたいのは自分を大切にしろと言う事だ。」
抱き寄せられ抱き占められる。
彼の温もりが心地よい。
「ヴィル。」
「せめて、この時だけでいい。」
耳元で囁かれる。
『お前はお前のままでいてくれ。』
何度も言われる言葉。
私はまたやらかしてしまった。
不安にさせてゴメンなさい。
今度は仕事量を加減する。
『うん、ありがとう。』
囁かれた声に対して囁く事で声を返した。
その言葉の後に笑みが見えた。
触れる唇の感触。
塞がれた唇は熱を帯びていた。
=終=