瞼を閉じても貴方の心音を感じる。
それは一つの安らぎ。
暦は夏を迎えた。
もう梅雨入りをしたかと思ったが…
じりじりと焼け付く暑さと中途半端に降る雨の湿気で気怠い。
これから寝苦しい夜になると思ったら逆に肌寒い風が肌を過ぎった。
「んっ…」
私はふと目が覚めた。
気怠さと口元か嫌に乾く。
日中の暑さを忘れる為に夜風に当たり過ぎたのかもしれない。
連日の疲れが溜まっていたのも考えられる。
「…(何か飲んでこよう。」
私はベッドで眠る彼を起こさない様に静かに寝室を後にした。
「…」
ダイニングルームで常温の経口補水液を飲み干した。
冷水では胃を冷やすし寝付きを悪くしてしまう。
温めた物でもいいが、用意する気力もないのでこれで済ませた。
甘くて柑橘の香りがするスポーツドリンクは夏の常備飲料の一つだ。
「三日月か…」
中途な天気で外は肌寒い夜風と強めの風で空が透き通る様に晴れていた。
窓越しからでも月の光はうっすらと見えていた。
気象条件が良ければ満月の日には赤い月が見えるのだ。
前回のブラッドムーンとは異なり今回のはストロベリームーンと呼ばれている。
効能は恋の成就など囁かれている。
「…(もう少し見ていたいけど今日は眠ろう。」
私は彼の眠る寝室へ向かう為にダイニングルームを後にした。
******
寝室へ戻ると彼は眠ったままだった。
気配に敏感なのは相変わらずだが、危険性のない場合はほぼ無防備である。
起こさない様に私はベッドに潜り込むと指先で彼の胸に触れた。
「…(どうしたらこんなに硬くなるんだろう。」
目立たないが彼の皮膚にはうっすらといくつもの傷跡が残っている。
いつも見ている頑丈な胸筋。
抱きしめられる時はここが私の特等席だ。
「…(堅いのに何処か安心するんだよね。」
寝ぼけていたのか彼の腕が私を包み込んだ。
引き寄せる様に胸元に押し付けていた。
堅いのは仕方がないがとても安心する。
「…(温かくて眠くなりそう。」
私はその温もりを感じながら再び眠りに就いた。
「…眠ったか。」
暫くの後に再び眠りに就いた彼女の変わりに彼が眼を覚ました。
腕の中で眠る彼女の寝息と柔らかさを感じながら彼女の髪を梳いた。
「…(無防備なのはどちらも変わらんと言うのに。」
腕の中の彼女に軽く口付けをした。
深く眠りに就いて居いるのか微動だに動く口元。
その柔らかさに変わりはない。
「…(だが、無防備だからこそお前の見れぬ一面を見れるのだな。」
彼女の衣服越しに彼の手が触れた。
無意識に彼女は彼の指先から感じる暖かさと感触に反応した。
「ん…」
逆に彼は加減を損ねると傷つけてしまう彼女の身体に触れ続けた。
戦う事しか知らなかった無骨な掌で撫でる様に触れた。
薄い服越しから彼女の肉体の輪郭を理解した。
何時しか彼は彼女の身体を自身の前に移動させていた。
「っ…」
前開きのボダンを全て外すと彼女の白い素肌が見えて来た。
首筋に赤い跡を複数付けながら彼女の胸に顔を埋めていた。
近くなればなる程に彼女の心音が聞こえた。
「これは一時の夢だ、今は…眠ろう。」
彼は彼女の意思を尊重し彼女を抱きしめ直して眠りに就いた。
=終=
力尽きて未遂です。