真夏の空で渚は歌う。
青い空、白い砂浜、揺れる波。
え?谷間の間違いじゃ?
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ある日の事。
「ハスミ、海行こうよ。」
「え?」
休暇中の高原の別荘に訪ねて来たエルーナさんとそれに対応する私ことハスミ。
私は唐突な発言に?マークを浮かべていた。
「急にどうしましたか?」
「いや~地球の何だったかな…CMだっけ?それ見てたら行きたくなっちゃってさ。」
「もしかしてビアガーデンのCMですか?」
「それそれ!」
ここ最近の事だが、海辺でビアガーデンが開催するCMがネットワークに流れていた。
恐らくキンキンに冷えたビールジョッキで一杯のCMに惹かれたのだろう。
このパターンからすれば犠牲者が後数名増える予定である。
「まあ、休暇中ですし…構いませんよ?」
「そうと決まったらセツコとスズネ達を誘って海に直行しようよ。」
「まさか…プレアデス・タウラを使う気じゃ?」
「…マズイかな?」
「はっきり言って公共の場に戦艦で突撃なんてすれば、近隣の治安部隊が焦って直行します。」
「あー」
「そんな事をすれば目的のビアガーデンどころの騒ぎではなくなりますからね。」
その顔から察するに冗談じゃなかったのですね。
諸に図星だったのですね。
嫌な予感がしたから念の為に話して置いて良かった。
「車はこちらで出しますから、普通に直行しましょう。」
「…そうするわ。」
「セツコ達はこちらで連絡して連れて来ますのでお待ちください。」
「よろ~」
と、言う訳で各所に連絡を取って都合が付くメンバーをテレポートで連れて来る事にしました。
まあ、お酒飲むし…今回は成人組だけでいいよね。
>>>>>>
その後、連絡で都合がついたのは二人。
休暇中だったセツコと久々に戻っていたスズネの二名である。
他は用事があったり勤務中との事で残念そうだったが仕方がない。
急な話でもあったので埋め合わせにプランでも立てて置く予定だ。
セツコら二名と合流した後、海へ向かう道中で水着を購入。
数か月前に出来たアウトレットモールが近辺にあって良かった。
資金は私の方で建て替えて置いた。
新作小説の印税が入ったばかりだったので水着四人分を購入した位では懐に痛手はない。
女性同士での買い物も久々だったので私にしてみれば結構楽しめた。
久々に水着を着るので念の為に測ったが…
やっぱり胸のサイズ増えたかな?
まあ、今回のメンツは爆盛、特盛、特盛、特盛だし…
私とセツコは相変わらずだけどスズネさんって着やせタイプなのかな?
あのAG趣味バリバリのパイロットスーツからでもかなりの量である事は明確である。
とりあえず、エルーナさんがダントツ一位って事で。
女性の店員さんも羨ましい表情で見てたし…
意外とね、これだけ大きいと夜のケアが大変なのですけどね。
小一時間程、買い物をし用事を済ませた私達は目的地へと向かった。
「いや~すっごい人だかりだね。」
爆乳ことエルーナが目的地の浜辺を堤防付近で眺めながら話し始めた。
後より特盛三人衆でハスミ、セツコ、スズネの三人も会話に加わった。
「今シーズンですし、目的のビアガーデンも混雑していると思いますよ。」
「…だよね。」
「混雑が落ち着くまで暇を潰しますか?」
「うーん、定番でビーチバレーかしら?」
「いや、それだと身体能力で差が出ると思うよ?」
「あ…」
「確かに。」
ビーチバレーを推薦したスズネに対しエルーナが理由を話して制止した。
理由を聞いたセツコとスズネは納得した表情で答えた。
ハスミもまた理由を聞いたものの人外級扱いされる羽目になっていた。
「誰の事で…?」
「ハスミ、アンタの事だよ。」
「…」
「このメンツの中でサシで生身のヴィルダークと戦えるのはアンタだけでしょうが。」
「…う。」
「記録でしか見てないけど一度目のラース・バビロン戦でも凄かったものね。」
「どうやったら刀一本で瓦礫を細切れに出来るのか謎だったし。」
「流石のアタシでも唖然としたわ。」
「梁山泊の人達も軽々としているし普通じゃないかしら?」
「「「…」」」
「とりあえず、混雑する前に場所取りでもしましょうか?」
気を取り直して数十分後。
各自、水着に着替え終えて場所取りをした場に荷物を下ろした。
「日差しが眩しいですね。」
「今日は40度近くまで温度が上がるって言ってたものね。」
「日焼け止め持ってきて良かった。」
「あれ?三人とも焼かないのかい。」
「痕が残っちゃうので。」
「ふうん、じゃあ私も焼かないで置くか…」
日焼け予防のビーチパラソルの下。
カラフルな水着姿の彼女達が日焼け止めクリームを塗り合いしていた。
エルーナは金髪の映える白の三角型ビキニ、結び目に金の金具の飾りが入っている。
セツコはピンクのビキニ、飾りで紫のレースとリボンが付いている。
スズネはオレンジと水色のビキニ、ビスチェ風になっている。
ハスミは青と黒のビキニ、レースアップタイプである。
肌を露出する面積が多い分、塗るのも一苦労。
日焼け防止にラッシュガードも人数分用意してあるが、使い時がなさそうだ。
「ハスミ、その腕輪外さないのかい?」
「ええ、特に何も起こらなければ使う必要もありませんけどね。」
エルーナはハスミの左手首に付いた腕輪を見て答えた。
紺の丸い宝飾が付いたシンプルな腕輪。
いつも付けているのをサイズダウンさせたものである。
使い時がなければ、唯の装飾品である。
「じゃあ、交代で泳ぎましょうか?」
準備を終えたので荷物番として二名、フリーで二名に別れて行動した。
折角の海なので泳ぐ事で決まった。
「気持ちいい。」
独特の潮風と海の程よい冷たさが足元を過ぎる。
一緒に行動しているエルーナより海水の掛け合いが始まったので便乗した。
******
一方その頃。
高原のハスミの別荘にて。
その別荘のクーラーの利いたリビングに野郎が四人程集まっていた。
「つまり、エルーナルーナの提案でハスミ達が海に行ったと?」
「はい、置手紙もありましたし。」
「エルーナルーナの奴…セツコを連れ出しやがって。」
「誠に申し訳ない。」
同じく家主であるヴィルダークを筆頭にヒビキ、バルビエル、ダバラーンの四名が話し合いを展開中だった。
事の発端を作ったエルーナルーナの代わりにダバラーンが謝罪していた。
特にダバラーンはサイデリアル時代の癖かヴィルダークに対して敬語が抜けないらしい。
「謝罪も何も四人で出かけただけの事だろう?」
「しかし、エルーナ様がお二人の休暇を邪魔したのは事実。」
「そんな事を気にする程、小さくなった覚えもないがな。」
「申し訳ありません。」
永続土下座はそのままに。
「で、これからどうする?」
「は?」
「セツコ達が海に行ったのなら僕らも行ってみようじゃないか?」
「いや、それは…邪魔になるだけじゃ?」
「じゃあ、君は自分の女性に変な奴がくっ付いてもいいのかい?」
「う!」
「ヴィルダークはどうする?」
「…」
「バルビエル、流石にそれは…」
「行こう。」
「は?」
「そうと決まれば目的の場所に向かおうか?」
「でも、どうやって?」
「セツコ達のスフィアの気配を辿ればいいだろう?」
Z事変後、ある事情によりスフィアは機体とパイロットに半々の形で取り込まれ封印される事となった。
封印状態とは言え、その気配は感じ取れるままになっている。
「バルビエルの考えに乗るつもりはなかったが…妙な胸騒ぎがする。」
「妙な?」
「ああ、恐らくは無限力のお遊びとやらだろう。」
ヴィルダークは胸騒ぎを告げた後、三人はスフィアの気配を辿りつつ目的の場所へ向かった。
残り一名はその後を追う様に追従した。
>>>>>>
同時刻、海では先の胸騒ぎが的中していたのである。
海辺に現れた巨大なペンギンが海水から氷の城を建造したと思ったら…
海に来ていた観光客に対し熱風を浴びせて来たのである。
「あれは…!」
「ハスミ、あれって!」
「ええ、あれはスノービー…国際窃盗団ピンク・キャットの戦闘用ロボよ。」
「あの人達って確か逮捕された筈じゃ?」
「Z事変で地球防衛に協力した恩情で組織解体後に仮釈放扱いになっていたのよ。」
「全く、アイツらも懲りないね。」
「兎に角、あのペンギンを止めないとビールどころの騒ぎじゃなくなりますよ。」
「それは勘弁。」
「勇者特急隊が未開惑星の鉄道網開発事業の不在中を狙うなんて。」
愚痴ってもしょうがないと悟った三人は機体を呼び出して応戦を開始する。
これもZ事変後の事情によりスフィアの呼応によって機体を呼び出せる様になっている。
スズネはスフィアリアクターではないのでエルーナの戦艦にテレポートで転移している。
「カトリーヌ様、少々問題が…」
「どうしたのよ、オードリー。」
「モニターをどうぞ。」
また暑いと言う理由で公共に迷惑をかけつつ氷の城で鍋焼きうどんを啜っていた首謀者のカトリーヌに部下のオードリーが緊急事態を告げる。
モニターの映像を見遣るとさすがのカトリーヌも顔面が蒼白となった。
映像にはエクリプス、バルゴラ・グローリーS、プレイアデス・タウラの姿があった。
「ちょ、ちょっと…何で国際警察機構がここに居るのよ!!」
「恐らく『御伽語り』の仕業かと。」
「きぃいいい!!」
ヒステリックな声を上げるカトリーヌ。
だが、間が悪いのはこれからである。
「スズネ先生!」
「ヒビキ君!」
戦闘開始と同時に現れた、ジェニオン、アン・アーレス、ヴィルダーク、バン・アルデバルの三機と一隻。
「バルビエル。」
「セツコ、無事で何よりだよ。」
「ヴィル、どうして?」
「胸騒ぎがしたのでな。」
「エルーナ様。」
「ダバラーンも来てくれたのかい?」
ヒビキはプレイアデス・タウラに機体を隣接させジェニオンにスズネを乗り換えさせた。
この場にスフィアリアクター機が五機と一隻にオマケ一隻。
それに対しスノービーが一機。
俗に言う勝敗は見えている状態である。
だが、負けじと同型機を数体出撃させたカトリーヌだったが…
相手がZ事変の立役者となった機体では太刀打ちすら不可能である。
「カトリーヌ・ビトン、折角の休日の邪魔をした礼はさせて頂きますよ。」
「えと…」
「仮釈放後、真面目に就職して生活していれば…こんな事にはならなかったのですから。」
「折角のビールの邪魔もされたんだ!駄賃替わりは受け取って貰おうかね!!」
「完全に八つ当たりじゃないの!」
「どっちがですか!」
「御蔭で楽しみにしていた女子会が滅茶苦茶よ!」
カトリーヌの反論も空しくスフィアリアクター女性陣の怨みの言葉は続く。
続けてハスミは腹癒せに火に油ならぬ火薬を注ぐ発言をしておいた。
「危うく、私達の水着もそちらの熱風騒動で吹き飛ばされそうになりましたからね。」
そんな爆弾発言に反応する男性陣。
「何だって!?」
「エルーナ様、ハスミ殿が話された事は本当ですか!」
「そうだよ、好きな相手以外に見せるつもりもないってのに。」
「お陰様で公共の場で裸になりかけました。」
「ハスミが買ってくれた折角の水着が台無しです。」
「ヴィルダーク、ちょっとばかりスフィアを使うけど問題ないよね?」
「奇遇だなバルビエル、俺もその件に関しては同意しよう。」
「オマケで私も便乗して命中率とかUPさせますね。」
怨嗟の魔蠍、立ち上がる射手、知りたがる山羊のスフィア三連コンボが発動。
これによりスノービー軍団は装甲低下、ダメージUP、バリア無効化と言う一発で即死の紙装甲へと変貌。
降参のこの字も聞かぬまま、スノービー軍団に強烈な迎撃が始まった。
ちなみに熱風で倒れていた民間人らは既に救助済みである。
「月牙葬雨!」
「この一撃、逃れられぬと思うな!」
「ジ・オーバーライザー・アーク!!」
「ザ・グローリースター!フルバースト!!」
「怨嗟の毒を喰らうといいさ!」
「ヒア・ウィ・ゴ――!プレイアデス・タウラ!」
「エルーナ様の為に!」
浜辺どころか海辺の地形崩壊まっしぐらな技がスノービー軍団に放たれた。
念の為、ハスミの結界魔法の『反転の月鏡』で地形崩壊は食い止めている。
それぞれの攻撃がスノービー軍団を破壊し沈黙。
首魁のカトリーヌ一味は脱出装置で撤退していった。
「結局、ビールに有り付けそうになさそうだね。」
「この惨状では…」
先のスノービーの熱風騒ぎで露店が壊滅。
お目当てのビアガーデンも機材が熱風でやられて使い物にならなくなっていた。
「とりあえず、後で旋風寺コンツェルンに直電入れておきますわ。」
「え?」
「あのビアガーデンは旋風寺コンツェルンが全極東海岸で主催している夏フェアですから。」
「そうだったのかい?」
「ええ、舞人君もきっと解ってくれると思いますし…今の内に機体を撤退させませんとね。」
流石に公共の場に機体を晒して置くのは拙いので各自指定ポイントまで撤退する事となった。
その後、ビアガーデンは二日間の休止後に再開したとの事。
******
その夜、海岸に止めた車を回収した後に別荘へと戻って来た一行。
浜辺でビールにはあり付けなかったが、近場の温泉でビールを堪能する事に決定。
「ぷっぱー、やっぱりビールは最高だね。」
「エルーナ様、追加のビールをお持ちしました。」
「おつまみも丁度いいですし…バルビエルはどう?」
「悪くはない。」
「ヒビキ君も成人したとは言え、飲み過ぎない様にね。」
「はい。」
温泉街の露店でビール三昧を始めた一行。
その端で浴衣姿のハスミとヴィルダークは静かにお酒を嗜んでいた。
「今日は散々でした。」
「そうだな。」
「…怒っている?」
「除け者にされた位で怒る事はない。」
「では、いずれ二人っきりで海にでも行きましょうか。」
「そうだな。」
こんな一日の終わり方も悪くないと思えてしまう。
夜風に吹かれながら私はビールを飲み干した。
=終=