多少の紛争と平凡な平穏の間を行き来する私達。
だが、ある一報が私達の元へ送られてきた。
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ここ、スコート・ラボの一室にてスフィア・リアクターと関係者一同が勢揃いしていた。
理由は先の一報より公開された記録が原因だった。
「惑星エス・テラン……行方知れずだったのにまた発見されるなんて。」
「次元修復の関係で再生した可能性もあるかもしれねえな。」
「…でも、それは完全って訳じゃないみたい。」
「どう言う事だ?」
「正確に言うなら断片と表現した方が正しい。」
セツコとクロウの会話に始まり二人の疑問に答えるハスミ。
「断片?」
「次元修復が行われたのなら完全な姿でエス・テランも復活している筈でしょ?」
「確かに記録を見ても…このエス・テランは崩壊した頃のままね。」
「可能性があるとすれば別次元のエス・テランが紛れ込んだと解釈も出来ると思う。」
「何かややこしいな。」
「私も直視した訳じゃないから、はっきりとは言えない。」
ハスミ自身は今回の件が見た事も無い事例だった為にあえて解っている範囲で答えた。
「トライア博士が我々を集めたのはこの件に関する事で?」
「その通りだよ。ユーサー王…いや、今は唯のユーサーだったね。」
「申し訳ない、一国の君主が介入する権限を越えているのでね。」
「仕方がないさ、スフィアリアクターが全員揃って何かするとなれば政府も黙っちゃいないからね。」
「念の為に理解のある方々には話は通してあります。」
「ハスミ中尉、毎度の後処理ありがとうね。」
「いえ、こうでもしないと突かれる時は陰湿ですから。」
「そうだね、あのZ事変を経験しても頭の固い連中ってのはどこからでも湧いているもんさ。」
ユーサーは話の話題を戻す為にトライアに質問したが、茶番の様な話も含めてしまっている。
「さてと、話を戻すけど…今回は極秘裏にこのエス・テランモドキの残骸を調べるのが目的だよ。」
「極秘裏ですか?」
「上の連中も流石にZ事変の原因だった連中の古巣がまだ存在しているって事だけでも頭のタンコブらしいからね。」
「あの、調査なら政府の方でも動きがあったんじゃないんですか?」
「ヒビキの言う通り先遣部隊が調査に向かったのだけと…その先遣部隊が尻尾巻いて逃げて来たのさ。」
「えっ?」
トライアが今回の件に関して説明を入れつつ、ヒビキが質問。
だが、予想も出来る回答が帰って来たのである。
「先遣部隊の連中が戻って来たのはエス・テランに侵入出来なかったからさ。」
「入れなかったって事ですか?」
「そう言う事、戻って来た連中の話だと鍵の様なモノが必要じゃないかって話も出ているんだ。」
答えに納得したエルーナと雑用扱いに苛立つバルビエル。
尸空に関しては無言のまま、ガドライトは皮肉めいた発言をしていた。
「な~る、それでアタシらスフィアリアクターに白羽の矢が立った訳かい?」
「ふん、僕らは雑用扱いかよ。」
「…」
「ま、しょうがない…上の連中も本当なら俺らに頼みたくもなかっただろうさ。」
トライアは先遣部隊からの調査資料を調べた結果。
エス・テランモドキには扉の様なモノが設置されており鍵の様なモノが必要ではないかと推測に至った。
だが、その鍵がスフィアであるかははっきりとしていない。
ハスミの『知りたがる山羊』の力で調べた結果。
扉を開ける事は可能だが、その先にあるモノが何なのか調べる事が出来ないと答えた。
「調べる事が出来ないと?」
「正確に言えば何かに阻害されていると表現した方が正しいですね。」
「スフィアを阻害するって事はその門もZONEみたいなもんか?」
「可能性はありますね。」
「どちらにせよ、その門とやらに向かわなければならないのだろう?」
「ええ、何かが起こる前に対処した方が良いのは変わらずですね。」
スフィアを以ってしても調査する事が出来ないと答えたハスミに対し。
アイム、ランド、ヴィルダークらが答えた。
「ま、とりあえず各自の準備が整い次第…今日中には出発するよ。」
トライアが話に区切りを付けて、各自は出発準備に取り掛かった。
使用する母艦はソーラリアン、プレイアデス・タウラ、バン・アルデバルの三隻。
政府からの極秘裏の任務の為に他からの協力が受けられない状況だ。
正にスフィアリアクター関係者による少数精鋭と言っても過言ではない。
ハスミも『天ノ鳥船島』から援軍を出そうとしたが、政府からの警戒が強固になって居た為に断念した。
理由はガンエデンの私物化厳禁とスフィアリアクター達の行動監視が関わっている。
Z事変後、ハスミが制御化に置いている天ノ鳥船島は現在政府の管理下に置かれ私欲で稼働させる事を禁じられている。
そもそもハスミはL5戦役より天ノ鳥船島を私物化していた訳ではない。
Z事変における御使いとの戦いに備えて混乱する戦線を一刻も早く収拾させる為に動かしてきたに過ぎない。
だが、頭の固い連中は先史文明の遺産を独占していると横槍を入れたのだ。
結果的に他のスフィアリアクター達にも飛び火があったので政府議会との話し合いの結果。
他のスフィアリアクター達を自由にさせる代償としてハスミ自身が引き続き政府軍に身を置き、次元震級の緊急事態に於いて彼らに収集を掛けられる様にするのが条件となった。
以前、ヴィルダークがハスミに対して『温室の花』と揶揄した件の真実がこれだ。
少しでも出来る事は支援物資の補給程度である。
事前に調査に必要な物資の供給は前以って申請しているので叩かれる事はないだろう。
だが、各々が何か嫌な予感を脳裏に過ぎらせた。
余りにも出来過ぎていると…
>>>>>>
数日後。
カオス・コスモスと呼ばれた宇宙。
銀河の中心地・天柱。
その中心惑星エス・テランが存在した座標に一行は辿り着いた。
Z事変の最終決戦の最中、その名残でもあるかの様に崩壊したエス・テラン跡に浮遊する巨大な門。
門は仮称として『アステリアス・ゲート』と呼ばれる事となった。
門に接近し扉が開くのは確認する為にスフィアリアクター機が全機出撃。
三隻の戦艦の前に出撃し終えていた。
「本当にエス・テランにまた来たんだね、ダーリン。」
「ああ、あの時以来だぜ。」
ガンレオンよりメールとランドの会話が始まり。
「もう一度、ここを訪れる日が来るなんて…」
「星の巡り遭わせにしても冗談じゃないけどね。」
バルゴラ・グローリーSよりセツコ、アン・アーレスよりバルビエル。
「どうも静か過ぎて嫌な予感しかしねえな。」
「…」
「尸空、よけーに静か過ぎるから何か喋ってくれよ。」
「特に言う事もないだろう。」
リ・ブラスタTよりクロウ、相変わらず無言のままの尸逝天より尸空。
「思い出すわね、あの御使いのアドヴェントと最後に戦った場所。」
「はい、ですが…もう誰も居ない場所です。」
「主無き星って奴か、元々死の星だったのが御使いが消えた事で更に静かになっちまったけどな。」
「人も星も命が無ければ何もかもが無くなるのね…」
ジェニオンよりヒビキとスズネ、ジェミニア・ビスケアよりガドライトとアンナロッタ。
「静かと言うよりも寒気の方が酷く感じますけどね。」
「あの御使いと言えど死者の眠る地、それを私達が荒らす様なモノだからね。」
アリエティスよりアイム、ジ・インサーよりユーサー。
「ま、開けてみなきゃ何が出て来るか分かんないし…さっさと開けてみようよ。」
プレイアデス・タウラよりエルーナルーナ。
「ハスミ、扉の気配はどうだ?」
「外側は兎も角、内側がどうなっているのか見当もつかないわ。」
「やはり、スフィアの阻害が?」
「いえ、私自身の力でも判らない事よ。」
「…」
次元将の姿のヴィルダークとエクリプスよりハスミ。
「じゃ、手っ取り早く終わらせようか…各自、スフィアの起動をよろしくね。」
トライアの号令もあり、各自スフィアを発動させる。
偽りの黒羊、欲深な金牛、いがみ合う双子、沈黙の巨蟹、傷だらけの獅子、悲しみの乙女、揺れる天秤、怨嗟の魔蠍、立ち上がる射手、知りたがる山羊、尽きぬ水瓶、夢見る双魚。
それぞれ十二のスフィアが呼応し輝きを増した所で扉に異変が起こった。
閉ざされたアステリアス・ゲートが開閉したのである。
だが、扉の先から出て来たのは予想もしないモノだった。
「!」
「どうした!」
「全員、扉から離れて!!」
扉の開閉と共に危険を感じ取ったハスミは全員に退避を促したが…
まるでスフィアを引き寄せるかの様にゲートはスフィアリアクター機を吸い込んでしまったのである。
そして十二のスフィア機を取り込んだ扉は深く閉ざされてしまった。
「な、何だいあれは!?」
「エルーナ様!」
「待ちな、無暗に扉に近づけばアタシ達も同じ目に遭うよ。」
「しかし…」
「今はこの事を地球に伝えなきゃならない。」
「そうです、私達がここでやられたら真実を伝えるモノが居なくなりますよ。」
「…了解した。」
助けに向かおうとしたダバラーンを制止させるトライアとサルディアス。
状況が状況なだけに無謀と悟ったダバラーンはトライア達の制止の言葉を受け止めた。
「あの扉、様子からしてスフィアに反応して開閉したって事か…」
「でも、如何言う事なんですかね?」
「判らないね、今は情報が少ない以上…この事を地球へ伝えないと。」
ソーラリアンのブリッジで不安なまま答えるエスター。
トライアは自分達が取れる最善の行動を取る為にバン・アルデバルと共にその場を撤退していった。
後、この事件は真・多元世界の存続に関わる騒動となる事をまだ誰も知る事はなかった。
=続=
<今回の用語>
※アステリアス・ゲート
天柱の中心地、カオス・コスモスの宇宙に存在した惑星エス・テラン跡に出現したゲート。
形状はサークル型の光る魔方陣型、内側に崩壊した星屑を繋ぎ合わせた様な文様が刻まれている。
それは『星群』とも捉えられる形だった為に命名された。
門内部に関してはアカシックレコード経由でも調べる事が出来ない異空間へと繋がっている。
星座を模したスフィアの力が使えない事から『星群無くして星座は形成されない』とも視野されている。
※ジェミニア・ビスケア
ある事情により『夢見る双魚』のスフィアを制御する為に再改修された機体。
いがみ合う双子のスフィアを持つジェニオンと同様に複座式にパイロットシートが改装されている。
スフィアと同様に魚座を模した広域型射撃兵装『フォーマル・ハウト』が追加された。
パイロットはガドライト・メオンサムとアンナロッタ・メオンサム。
※温室の花
月酔廻想の「ある日の恋人達」より。
ヴィルダークがハスミに対し『温室の中で咲く花』と揶揄した言葉。
ハスミが一部政府との黒い取引から他のスフィアリアクター達の自由を勝ち取る為に行った行為の現れである。