風は相反する感情に揺ぎ無き意志の元で愛情を捧げる。
地は全てを欲する事が悲しいと分かっていても全てを識る事を求める。
水はその憎しみを虚無にて受け止め理想の夢を見る。
アステリアス・ゲートでのスフィアリアクター達の消失から数週間後。
真・多元世界は異次元からの侵略者・オーバーロード帝国による宣戦布告を受けた。
政府所属のスフィアリアクターのアラートが使用不能により戦線は混乱する事となった。
所属のスフィアリアクターや他のスフィアリアクター達を敵視していた上でその力を求めた上層部に非がある事は明白。
逆にスフィアに頼らずとも敵の侵攻推測し反撃の一手を行おうとする英雄達。
遊撃部隊ノードゥスとZ-BLUEもまたその部隊の一つだった。
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銀河連合軍・地球政府内極東エリアの基地の一つ伊豆基地。
そのグリーフィングルームにて。
伊豆基地に集まった極東エリアに在住する遊撃部隊メンバーと民間協力者達。
その多くが既に成人し、民間協力者の学生も数える程度になっていた。
しかし、収集を掛けた大半は既にオーバーロードからの宣戦布告もあり各方面銀河の前線基地に散らばっていた。
間の悪い事は続き、待機命令の出ていた数名が集まっただけである。
そしてロアアーマー経由でモニターに映し出された戦士ロア。
事情を聴き、ロアよりオーバーロード復活の件について話し合いが行われた。
『そうか、再びオーバーロードが復活したか…』
「ロア、オーバーロードはぶっ倒したはずだろ?今更何で出て来やがったんだ?」
『可能性とすれば次元修復後にこの並行世界の何処かで復活に必要な暗黒のエネルギーを得たとしか思えない。』
「何でだよ、オレンジダルマとあの弁当野郎がややこしいもん全部持って行っただろう!」
「…AGとアドヴェントね、お兄ちゃん。」
毎度のコウタの間違え発言を訂正するショウコ。
相変わらず名前を適当に呼び捨てする癖は治っていないらしい。
一応、コウタもオマケで高校は卒業出来たらしい…
現在は祖父キサブローの跡を継ぐ為に必死に勉学中との事。
ショウコも今は花の女子高生だがこの夏を終えると受験が待ち構えていた。
引き続きロアとの会話に戻り、カイ中佐とギリアム中佐が応対していた。
『それにスフィアリアクター達の消失も気になる。』
「トライア博士からの通信で惑星エス・テラン跡地に出現したゲートの調査中に行方不明になったと連絡が入ったそうだ。」
『…そのゲートが一体何なのか、俺にも皆目見当が付かない。』
「そうか…」
『だが、オーバーロードの復活とスフィアリアクター達の消失に何かの関係性はあると考えたが…』
「関係性?」
『オーバーロードが以前のスフィアの力を欲したとしたら消失の原因も奴の仕業と考えられるが…今のスフィア自体が奴の求める力とは真逆の性質を持っている以上、その可能性は低い。』
「振り出しに戻る…か。」
同じ様に話を聞いていたテンペスト中佐にカイが話しかけた。
「テンペスト、ハスミは何か話してなかったか?」
「…気になる事が一つある。」
「気になる事?」
「一時期、アカシックレコードからの声が聞こえなくなったと話していた。」
「何だと…!」
「だが、それも一時的な事でその後は必要あれば声は聞こえていたと話していた。」
「…」
「ハスミは『少し疲れが出たのかもしれない』と話していたが…気のせいとは思えん。」
「光龍氏からは何と?」
「数週間前の失踪後から気配が辿れないと話していた。」
「では、ハスミ中尉を含め他のスフィアリアクター達は我々が居る世界にいないと推測しても?」
「引き続き、ハスミが彼らと同行しているのであればその可能性もある。」
「無事に居てくれればいいのですが……あの、テンペスト中佐?」
ギリアムの心配を他所にテンペストの背後に禍々しいオーラが出始めていた。
「ヴィルダークめ、ハスミにもしもの事があったら地の果てでも追い続けて…!」
「お、落ち着け、テンペスト!!」
「止めるな、カイ!」
毎度お馴染み義娘の心配をする義父の暴走。
これにより娘の婿に八つ当たりが勃発するが何とか不発に終わるものの。
今回は行方不明から数週間経過している為、ストレス値は凄まじい事となっている。
もしも、もう一人の義父と実父が居たら更なる泥沼になっていただろう。
「はぁ、クスハ中尉…テンペスト中佐に速攻性のドリンクを頼めるか?」
「は、はい、ハスミが居なくなった心配でお疲れの様ですしね。」
「ああ、早急に頼む。」
「判りました。」
ギリアムは泥沼と化す前にクスハドリンクUDXをクスハに注文した。
UDXとはウルトラデラックスの意味である。
つまり、回復力が倍増した分…その味と卒倒率が急激に上がっていると言う事である。
ちなみにZ事変時に事情を知らないスフィアリアクター達全員が試飲した所…全員卒倒した代物だったりする。
「お待たせしました。」
数分後、クスハドリンクUDXを持参して戻って来たクスハ。
そのドリンクはブクブクと炭酸の様なモノが噴き出し、この世の色とは思えないほどにカラフルで何かのオーラが放っていた。
その透明な器の中で何かがギョロっと動いたような姿も見受けられる。
「テンペスト中佐、お疲れの様なのでドリンクをお持ちしました。」
「…」
「ハスミの事は私も皆も心配しています、これでも飲んで落ち着いてください。」
「…分かった。」
流石の義娘の幼馴染の気遣いを無下にする事は出来ないので潔くクスハドリンクUDXを飲み干したテンペスト。
飲み終えた後、案の定…数秒で卒倒。
「やっぱり、お疲れの様でしたね。」
「…(ぶっ倒れる速度が倍増してやがる。」
「…(こ、怖い。」
その一連の出来事を見ていたアズマ兄妹は青ざめた表情でテンペストの散り様を見る事となった。
「ギリアム、俺はテンペストをメディカルルームに運んでくる…後の事は頼んだぞ?」
「了解しました。」
気絶したテンペストを支えたカイとクスハを見送ったギリアムは引き続きロアとの会話に戻った。
「ロア、もしやと思ったのだが…」
『何かあったのか?』
「今回出現したオーバーロード帝国はハスミ中尉が識る物語の存在なのかもしれない。」
『まさか…!』
「ああ、今回のオーバーロード帝国軍の襲撃規模に関しても合致する部分がある。」
『では、敵の規模も解ると言う訳だな?』
「但し、彼女の残したデータベースから情報を引き出す必要がある。」
『それは何処に?』
「一部はこの伊豆基地で管理している、今から検索する所だ。」
打開の兆しが見えていた所で謎の爆発音が基地内に響いた。
「な、何だ!?」
「今のって!」
「何処かで爆発が起こったらしい、コウタ君、ショウコ君、君達は!」
『待ってくれ、この気配…間違いない基地内にオーバーロードの軍勢が侵入している!』
「何だと!」
「ギリアム少佐、俺達が奴らを足止めする。」
「少佐達は早く機体に!」
「判った、だが…無茶はしないでくれ。」
ギリアムは格納庫に向かいつつ通信機を取り出すと指令室へ基地全体に警戒態勢の指示を仰いだ。
コウタ達もファイターロアとファイターエミィに変身し気配の場所へ向かった。
>>>>>>
伊豆基地内・資料管理室。
室内の機材の全てが破壊され、基地内に収められていたデータベースは全て消失してしまっていた。
データベースを破壊したと思われる三人の人影。
「これで情報は抹消済み…このまま撤退した方がいいです。」
「では、奇襲部隊と合流しますか?」
「…待て、奴らが来るが?」
「一戦交えたいのは山々ですが、今こちらの姿を晒しては今後の活動に支障が出ます。」
「分かった。」
一人は目的を果たしたので撤退を推奨、もう一人もその提案に乗ったが…
先の騒ぎを聞きつけてこちらに向かってくる存在に対して応戦すると主張する一人。
最初の一人の制止もあり、一行はその場より撤退した。
同時に資料管理室に入ってくるロアとエミィ。
「ロア、どうだ!」
『残念だが気配はない。』
「くそっ、遅かったか!」
「ここって確か基地のデータベースじゃ?」
「まさか!?」
『敵の目的は基地への損害、我々を足止めするのが目的だろう。』
「そんな…!」
『コウタ、カイザーへ急ぐんだ!敵の目的が基地の陥落なら二度目の追撃が予想される!』
「ああ!」
所変わって伊豆基地の外。
基地周辺には既にオーバーロード帝国軍の機影が姿を現していた。
出撃を開始したグルンガスト参式、ヴァルシオンⅡ、量産型ゲシュペンストMk-II改、ゲシュテルベン・RVカスタム。
クスハ達の機体である真・龍虎王に関してはZ事変後に眠りに就いてしまった為、手元にない状態だ。
出撃を終えた五人だったが、敵の奇襲攻撃により伊豆基地は使用不能状態までに陥っていた。
「伊豆基地が…!」
「くそっ、俺も早く戻って居れば!」
伊豆基地の惨状に悲痛の声を上げるクスハとブリッド。
「各機、司令からの通達で伊豆基地を放棄する…脱出艇の安全を確保するぞ!」
「「了解。」」
「ギリアム、コウタ達は!」
「続けて出撃準備中…もう間もなくです。」
後追いで出撃してきたGコンパチカイザー。
「ギリアム少佐済まねえ、奴らを逃がしちまった。」
「基地内部もほとんどがやられてしまって…」
「いや、人員の無事だけでも幸いだ。」
「カイ、ギリアム、拙い事になった。」
ヴァルシオンⅡに搭乗するテンペストより新たな情報が入った。
「ここを含めて四か所の基地が同様の奇襲を受けている。」
「何だと!」
「場所はアビアノ、ラングレー、シドニーの三か所だ。」
「よりにもよってキョウスケやゼンガー達が居る基地か!」
「カイ少佐、敵の目的は恐らく我々の力を封じるのが目的かと。」
「!?」
「先程、戦士ロアより基地内のデータベースが破壊された事を聞きました。」
「ここまで用意周到に!」
「…(ピンポイントによる敵の奇襲、そしてデータベースの破壊…もしや!」
「カイ、ギリアム…この戦術に覚えがある。」
「恐らくこれは点と線による戦術、そして仕掛けて来たタイミングの良さ…それを行えるのは!」
「最悪のピースが揃ってしまったと言う訳か。」
オーバーロード軍の奇襲部隊が伊豆基地への侵攻を開始。
それに対し一行は迎撃を始めた
同時刻、オーバーロード軍の侵攻部隊を出撃させた強襲艦のブリッジにて。
先程の三名が撤退を終えて戦況を見つつ話し合いをしていた。
「どうやら連中…こちらの意図を掴んだようですね。」
「あの人達の頭の回転の速さは昔から人外級ですから。」
「だが、俺達の仕業だと言う事が向こう側に知れ渡ったのでは?」
「確かに敵に塩を送りましたが、確固たる確証がない以上は模範と誤認されるでしょう。」
「だといいがな。」
「まあ、もしもバレたとしてもそれは彼らにとっての絶望の始まりですから。」
「悪辣ですね。」
「ええ、私は悪辣ですから。」
「茶番はここまでだ…更なる絶望を奴らに与えるとしよう。」
号令と共に強襲艦周囲に展開された艦隊のカモフラージュが外された。
そして更なる追撃を始めるオーバーロード軍の兵器群。
この物量ならば奇跡でも起きなければ勝てる見込みはないだろう。
「さあ、盛大に絶望してくださいな…その絶望が皇帝陛下のお力となるのですからね。」
その後、伊豆基地は基地としての機能を失った上に壊滅。
同時刻にアビアノ、ラングレー、シドニーもまた陥落。
陥落地にはオーバーロード軍による前線基地が設営された。
そしてこの基地を足掛かりにオーバーロード軍による地球制圧作戦が開始された。
打開策の無いまま伊豆基地の一行は基地を脱出。
一行は地球防衛軍の拠点の一つであるオービットベースへと向かう事となった。
=続=