※この作品はR-18です。

界乱のエトランゼ   作:宵月颯

7 / 40
帰還する次元将。

愛すべき者が消失した世界で何を思う?

御伽話は何を語る?

さあ、真実を求めよ。






全テハ幻デ偽リノ世界ハ崩レル

かつて仲間だった者達の伝手を使い、連星地球へと向かった。

 

嘗ての同志達は荒っぽい集団ではあるがそれなりに仕事はこなしている様だ。

 

このハイアデスもまた勝ち取った未来で彼らなりの旅を続けていた。

 

用心棒もしくは雇われ傭兵として重宝されている。

 

連星地球までのコースに乗り、到着までの間は今までの武者修行中の経緯を話していた。

 

そして彼らも記憶の喪失に巻き込まれていた。

 

俺が愛している恋人的存在がいると知ると初めて知ったかの様なリアクションを取っていたからだ。

 

ある者は瓶飲み酒を吹き出し、ある者は理解不能な表情を取ったりと端から見れば余りの光景だっただろう。

 

ちなみに彼らの大将を務める女性は腹を抑えて笑い転げていた。

 

失礼にも程があるが、元々自身が余り感情を出す事を控えていたせいもありそうなってしまった。

 

この真面目すぎる性格は次元将となった際に暴走しやすいかつての仲間達を抑える為に構築されていったものだ。

 

だが、ハスミはその性格や人柄を受け入れてくれた。

 

だからこそ俺は彼女を愛したのだ。

 

嘗て俺の右腕として仕える事をあの幼き身で誓ってくれたあの日を思い出す。

 

次元の狭間を彷徨い出会った幼き日の彼女を…

 

母親を殺され母親を殺した相手を義母として受け入れなければならなかった。

 

そして母親だけではなく己までも殺そうとする義母の所業に耐えていた。

 

その時の眼を俺は忘れない。

 

どの様な過酷な状況でも諦めないあの眼を。

 

例え絶望の淵に追い込まれ様とも起死回生の時を狙っていた。

 

俺はあの眼に惹かれた。

 

そして俺とハスミは契約を交わした。

 

いつの日か出会う時、ハスミは俺の右腕として仕えると約束を交わした。

 

彼女の話した正史には存在しない皇帝アウストラリスに仕える第四のサイデリアルの幹部として。

 

そして『御使い』を倒す為の『鍵』を揃える為に暗躍していた。

 

彼女自身もそれを補助する為にその力を持ち合わせていた。

 

それが『詩篇刀・御伽』だった。

 

それを復活させる為に何度も別次元に存在する世界へと足を運んだそうだ。

 

復活を終えた後、彼女は次元震に巻き込まれた演技をし記憶を失った素振りまで行った上で俺の右腕として彼らと一戦を交えた。

 

あの姿は今でも忘れられない。

 

そんな彼女が今度の敵に敗れ去った。

 

それを疑う事が出来ずにいるのだ。

 

だが、現実に彼女が消失した以上。

 

疑う事は辞めた。

 

俺は突き進む、真実を彼女を取り戻す為に。

 

 

******

 

 

「ヴィルダーク、我々を集めさせた理由を聞かせて貰いたい。」

 

 

ヴィルダークは連星地球へ到着後、銀河連合が会合を行っていた国際議事堂へ足を運んだ。

 

最早殴り込みに近い形ではあったが急を要する事態だった為、割合する。

 

そこで消失事件の発生と『御使い』を倒した『Z-BLUE』、『霊帝』を倒した『ネオ・αナンバーズ』、そして『蒼い睡蓮』が率いた『ホルトゥス』を緊急招集する様に話した。

 

困惑する周囲にヴィルダークは『詩篇刀・御伽』にて『黒曜の后』の放った『闇の衣』を断ち切った事でその違和感を拭い去った。

 

真実を知った銀河連合の首脳達はヴィルダークの発言通り、緊急招集を実施しかつて戦った仲間達を呼び寄せる事に成功した。

 

緊急招集によって呼び出された彼らからも『闇の衣』を断ち切った後で今回の事態を説明し始めた。

 

ヴィルダークが持ち出したのはとある記録媒体。

 

仲間達が緊急招集されている間、ヴィルダークは『詩篇刀・御伽』によってある場所に誘われ、この記録媒体を発見した。

 

そこに刻まれた記録は愚かにも『闇の衣』によって『記憶』を奪われた者達に多大なる罪悪を植え付ける事になった。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

これを発見した頃には私の存在は消失しているでしょう。

 

私はここに今までに消失事件に巻き込まれた人達の調査した結果を残します。

 

切っ掛けは真・統合歴001年の四月に視たあの夢から起こりました。

 

今でもおぼろげに残る記憶。

 

 

『黒曜の后』と『澱む結晶に封じられた品々』を夢で視た頃から失踪事件は始まりました。

 

それも誰の記憶からも認識されないまま。

 

 

最初は『アンジュ』の消失。

 

アルゼナルの人達は『アンジュ』の消失に気が付かないままそのその存在を忘れてしまった。

 

恋人であるタスクでさえもあの有様だった。

 

 

次は『アムロ少佐』と『シャア総帥』の消失。

 

英雄の記憶は人々の記憶から忘れ去られ、身近に居た人達でさえも気づく事はなかった。

 

認知度の高い人でさえ人々の記憶から認識が消えた。

 

軍の記録からもアカシックレコードからもその記録は虫食いの様に消されていた。

 

私が辛うじて憶えていたのは私が異質な転生者であるからだろう。

 

だけど、これだけは理解した。

 

この世界は物語の様に何者かの手によって組み替えられている。

 

人々の記憶から違和感なく、まるで最初から存在しなかった様に。

 

これは新たな高次元生命体の仕業かと思ったが…

 

今回は異なる存在がこの事件を起こしている。

 

私は『黒曜の后』が率いる組織を仮の呼称として『消去者』と呼ぶ事にする。

 

私は同じ様に消失に巻き込まれる可能性のある人達に接触し何とか防ごうとしたが失敗に終わった。

 

『キョウスケ大尉』や『ドモンさん』、『古代さん』、他の過去の記憶を持つ者達が次々に消失した。

 

その結果、私は孤立した。

 

消失した人達は何処かへ連れ攫われた事だけは知る事が出来たがその居場所が特定できない。

 

唯一の手掛かりは『詩篇刀・御伽』に刻まれた『指定した物を見つけ出す羅針盤の御伽話』の力が必要である。

 

そして認識を失った人達の記憶を取り戻す為に『刀』の力を使っていると思う。

 

それはその人達に『絶望』を与える事もなるかもしれないけど『希望』を与える事でもある。

 

忘れないで『思い出』は決して消える事は無い事を。

 

忘れないで『記憶』は繋がる事で強くなる事を。

 

忘れないで『絆』の意味を。

 

忘れないで『欠片』は貴方達の傍にある事を。

 

そして奴らの目的が分からない以上、油断をしないで。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

「これがハスミの残したメッセージだ。」

 

 

ヴィルダークがハスミのメッセージを語り終えた後、その場所は騒然と化した。

 

あるものは泣き崩れ。

 

あるものはその拳を握りしめた。

 

 

「本当なの?」

 

 

イルイは涙ながらにヴィルダークに話した。

 

 

「これが真実だ、敵によって記憶を奪われその認識すら失ったお前達にその罪はない。」

「姉さん。」

「だが、これ以上後手を執らされる訳には行かぬ!」

「そいつと戦うんだね?」

「その通りだ、既に奴の居場所は突き止めた。」

「OKさ!アタシらハイアデスはアンタの戦いに付き合うよ。」

「我々『銀河連合』も彼らの救出に手を貸す、これは君個人の戦いではない…この世界に生きる者全てに関わる事だ。」

 

 

ハスミ、この先の戦いにどんな困難が待ち受けているか分からない。

 

だが、必ずお前達を救いだす。

 

待っていてくれ。

 

=続=

 




<今回の登場人物>

※エルーナルーナ・バーンストラウス
ハイアデスをまとめ上げる大将。
辺境惑星で武者修行をしていたヴィルダークを連星地球まで送った。
『欲深な金牛のスフィア』のスフィアリアクターであるが、ある戦いの末にその力を失っている。
なお、副官ダバラーンとは夫婦関係だが彼女が尻に敷いているらしい。

※イルイ・ガンエデン
バラルを統べるナシム・ガンエデンに選ばれた巫女。
嘗ての戦いでナシムは消滅したがその地球を守ると言う志は彼女に受け継がれた。
現在でも念の力は健在でクロスゲートを制御する事も可能。
銀河連合の庇護下に置かれる筈だったが最も力の強いハスミが彼女の身代わりとしてその役目を受け入れたのである程度の自由は認められた。
戦いが終結した後はアイビスらと共に外宇宙調査船団に乗り込んでいた。
同じ巫女であるハスミの事は『姉さん』と慕っている。

※ハスミ・クジョウ
前回登場した異世界からの転生者。
かつてサイデリアルの皇帝アウストラリスの右腕として仕えていた。
その契約を交わした時期が若干5歳と言う異例の若さの時であったがその真実を知るのはヴィルダークただ一人のみ。
消失事件の経緯を記した記録媒体を残して『黒曜の后』によって消失させられている。


<今回の設定>

※闇の衣
『黒曜の后』が発生させた現象。
闇の衣によって消失させられた人物の記憶や概念が消失させられてしまう。
断ち切る力を持つ『詩篇刀・御伽』によって消失させる事が可能。

※銀河連合
真・統合歴に変更したのと同時に設立された新たな政府機関。
後の『三界事変』で出現した地球の政府も組み込まれたている。
今回は会合中にヴィルダークの殴り込みに近い謁見が行われた。

※詩篇刀・御伽
ハスミの持つ刀、現在はヴィルダークが所持している。
この刀は御伽話にまつわる話を具現化させ、概念を操る事が可能。
対『高次元生命体』への対抗手段としてハスミが転生時に所望した武器。
ハスミの『縁繋ぎ』とこの刀の力を合わせる事で本領を発揮する。
BF団の新生十傑衆の一員であるハスミの二つ名となっている『御伽語り』はこれが由来となっている。
持ち主を設定する事が可能で本来の所持者であるハスミともう一人の持ち主であるヴィルダーク以外には使用する事が出来ない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。