02/22 誤字を修正
それは高校のクラス会で判明した。
大都会で行われた10年振りのクラス会。皆、地元を出て都会で就職し、家庭を持つ者がちらほらと出始めた。私も今の旦那と家庭を持ち、子供も得て、幸せな暮らしをしている。
だけど…聞かなければ良かった。知らなければ良かった。今更である。
「高校卒業当時はギスギスしていたよな」
今回の発起人である和人が声を上げた。和人はクラスメイトの百合恵と、先月結婚したそうだ。
「あの当時には、和人と結婚するとは思わなかったよ」
って、和人に身体を預けている百合恵。
卒業時のクラスで問題が起きたのだ。和人の親友と百合恵の親友が、その当時の私の彼氏により、地獄に堕とされたのだった。
「今、考えると、摩利と彼氏が一番の被害者だったなぁ」
和人から、耳を疑う発言が飛び出した。加害者では無く被害者って?
「あぁ、摩利は驚くよね。私達も真相に辿り着いたのは、結婚する直前だったもの」
百合恵が笑顔で話している。どういうこと?真相って何?
和人の親友の彼女である百合恵の親友に、私の彼氏がストーカー行為をして、二人を自殺に追いやったはずだ。そのことで、彼は追い込まれて、卒業をせずに退学をした。
「実際のストーカーは和人の親友の方。摩利の彼氏は、私の親友の相談役で、調整役だったのよ」
そんな…10年だよ。今更言われても…
「俺の親友を説得したんだけど、バカだから、逆恨みして、アイツが二股をして、ストーカーもしたと噂にしたんだ」
二股…されたと思って、私は彼を突き放した。
『そうか…お前も信じてくれないんだな』
そう一言残して去って行った彼。あの時の寂しそうな顔は、今も忘れられない。その上、ストーカーされたクラスメイトは自殺した。彼が死に追い込んだと思っていた。今まで…
「あのバカ、相手が自殺したのを知り、摩利の彼氏のせいだと、遺書を残して後を追ったし…本当にバカだよ」
そう…彼が二人を殺したと、私を含めた全員が、彼を憎み、忌み嫌い、学校から追い出したのだ。
「アイツ、元気かな?摩利は連絡を取っていないのか?」
「取れる訳ないでしょ?あんなことがあったんだよ。和人達の話を聞くまで、彼が悪いと思っていたし」
「だよな…今日、アイツが来たら、謝ろうと百合恵と話していたんだよ」
謝罪?10年経つんだよ。遅いと思う。私は、彼の親友と結婚しているし。
帰宅して旦那に、和人から聞いた話をした。旦那は仕事で、クラス会を欠席したのだ。
「うん?あぁ、あの話か。知っているよ」
知っている?
「なんで、話してくれなかったの?」
「君が混乱すると思ってな」
私を抱く彼。更に訊こうと思ったのだが、唇を重ねて来て、身体を重ねて来た。そして、今宵も彼と一体になり…やがて夢の世界へ…
◇
10年振りに故郷へ。彼に謝るために。手遅れだと思うけど…彼の住んでいた家はもう無かった。近所の人に訊くと、10年前のストーカー事件で収監されたそうだ。やっていないと一貫して、罪を認めない為に、反省無しと見なされ、反省させる意味で、大人の行く刑務所へ収監されたそうだ。そして、そこで暴行を受けて…
彼の墓に花を手向けた。墓石の横を見ると、彼の名前と没年月日は何かで削られて、消えていた。お寺の住職に訊くと、彼のデータは紛失して、何時死んだのかは、わからないと言う。
地元の警察に勤めているえっちゃんを訪ねた。
「彼の命日?警察ではわからないわ」
「え?なんで?刑務所で暴行されて死んだのでしょ?」
「そうなの?ちょっと待ってね」
えっちゃんが資料課に、調べに行ってくれた。
「わかったよ。確かに逮捕されている。でも、ここの県警では無いの。警察庁で処理されていて、命日まではわからないわ」
「どういうこと?あのストーカー事件で逮捕でしょ?それって、所轄の署じゃ無いの?」
「そのはずなんだけど、彼の場合は、特殊みたい。関係者に警察庁の関係者がいたみたいで…」
え?警察庁の関係者?旦那の祖父が確か…まさか…彼を売って、私を手に入れたの?まさかなぁ…
「そうだ。和人達からも減刑の嘆願書が来たんだけど…」
それは、収監されていた事実を知っていたってことだ…なんで、言ってくれなかったんだ?
「後、被害者の関係者には警察庁の関係者はいないわ」
そうなると…旦那が濃厚だ。
◇
百合恵達の新居を訪れた。
「どうしたの?顔がこわいよ」
故郷で得た情報を話した。
「え?!死んだの?うそっ!」
「住職の話だと、間違いないって。でも命日がわからないって」
「そんなはずは…あなたの旦那が昨年、面会に行ったって…」
え?!
「聞いていないよ」
「うん、出所したら、教えるって…収監中だと、あなたが混乱するからって、本当に彼は優しいよね。でね、あのクラス会の日に出所だったらしんだよ」
和人が帰ってきたので、三人で話を擦り合わせていく。すると微妙に話が合わない。どうして?
「あれ?あのバカじゃないのか?本当のストーカーは…」
「彼女は誰にストーカーされていたのかな?」
私の記憶では、和人君の親友は彼とつるんでいた。私と彼をからかっていた記憶がある。とてもストーカーをする時間があるとは思えない。
「他にいるのかな…」
時間も遅いので、その日の考察はそこまでだった。私は家へと帰宅した。旦那は夜中遅くに帰宅し、いつもよりも激しく私を求めて来た。
翌日、目が覚めるとお昼を回っているし。寝過ぎだよ。旦那は既に仕事へ行ったようだ。タフだな…
昼過ぎのワイドショーをテレビで見ていると…和人君、百合恵の文字が、画面で躍っていた。二人とも行方不明のようだ。昨晩、会ったばかりの和人君と百合恵…どうして?
昨晩、私の会ったばかりの人達が消えたって…おかしいでしょ?
◇
冷たい…全身に冷たい物が掛かっている。
「もう10年も前のことだ。忘れれば良かったんだよ。まったく…」
旦那が、私を四角い箱に入れて、コンクリートを掛けている。
「そうだよ。俺があの時のストーカーだよ」
そうだ、帰ってきた旦那に、疑問をぶつけたら、いきなりスタンガンで…これで、彼の元へ行ける…耳が埋まったようだ。音が聞こえない…口に冷たい物が…鼻でしか呼吸が出来ない。助けて…達彦君…
◇
目が覚めると、えっちゃんがいた。
「よかった。目が覚めたのね」
「死んだんじゃ…」
「助けて貰ったんだよ。彼にね…」
彼?誰に?
えっちゃんによると、旦那は殺人未遂及び、誘拐殺人で現行犯逮捕されたそうだ。
「彼って誰?」
「達彦君だよ。元カレのことを忘れたの?」
「だって、獄中死って…」
「収監されたって噂は、あんたの旦那の流したデマだよ。墓の方は、別人だったらしい。住職が耄碌していて、檀家衆が気づいて、墓石を削ったそうだよ」
「で、彼は?」
「今更、逢えないって…仕事に戻った」
「仕事?」
「身分も顔も出せない仕事って、言っていたよ」
生きているんだ…いつか逢えるかな。
---悦子---
県警の捜査一課に立ち寄った。そして、目当ての奴に近寄り、声を掛けた。
「これでいいの?達彦…」
「あぁ、まさか高校を中退して、悦子のヒモになり、旦那になったなんて言えないだろ?それこそ、今更だよ」
「あぁ、混乱すると思うな」
「あの時、信じてくれたのは悦子だけだ。俺は、悦子だけがいればいい」
私の肩を抱いてくれた、私の優しい旦那様。