※この作品はR-18です。

習作及び短編集   作:もっち~!

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笑えない俺 Part4

 

---来生茂樹---

 

「兄さん、お客さんだよ」

 

珠雫に起こされた。

 

「民子?」

 

「違うよ~。東雲ちゃんだよ」

 

嬉しそうに言う珠雫。はぁ?東雲?なんで?どうして?

 

珠雫の介護で、リビングに行くと、私服姿の東雲がいた。白のブラウスに、ジーパンにジージャン…結構、普段はラフのようだ。

 

「どうしたんだ?」

 

俺専用のソファに腰掛けた。足が伸ばせるように、右にだけ足置きがあるのだ。

 

「家庭訪問よ」

 

それは担任がすることでは無いか?

 

「何を知りたいんだ?」

 

「どうやって、勉強をしているの?」

 

ストレートな質問である。だが…

 

「最近はあまりしていない。バイトもあるし、妹が一人増えているし」

 

珠雫がケーキと紅茶を俺と東雲の前に置いた。

 

「バイト?」

 

「仕送りが無かったから…珠雫と二人でバイトをして、しのいでいたんだよ。次美が住むようになって、仕送りが来るようになったけど」

 

「次美ちゃんは別格なの?」

 

「父親のお気に入りの子供だ」

 

「ふ~ん…で、どうやって、試験勉強しているの?」

 

う~ん…特にはしていないのだが、そんな言葉を言えば、余計に怒らせてしまいそうだ。

 

「珠雫、ノートを持って来てくれ」

 

「はい」

 

珠雫が俺の部屋から、俺のノートを持って来てくれ、東雲に手渡した。

 

「これは…」

 

「通信教育のノートだよ。小学校の時、入院生活をしていて、通信教育を受けていたんだ。で、退院後もねぇ」

 

退院してリハビリをして、それから学校へ復帰した。復帰するまで、家で通信教育三昧だった俺。家から出ることが出来なかったからだ。旅行中の障害ってことで、保険金が入ったので、それで食いつないだ。でも余分な出費である通信教育費は母親が出してくれた。

 

「これって、どこの通信教育?」

 

義務教育は通信教育に無いので、その後の学校である。どう言うかな。

 

「海外の学校のだ。だから、日本語が書かれていないだろ?来生家の公用語は英語なんだよ。家の中の会話は英語だった。で、家の中のメモはドイツ語だったんだよ」

 

小さい時に語学を覚えると一生物って、父親の考えで、そう育てられていた俺達。まぁ、海外勤務の多い父親が、日本語を忘れたというか…

 

「スゴい…ノートがドイツ語なのか…」

 

「まぁ、語学の勉強はそんな感じだ。国語は努力の末と言うか…」

 

俺と珠雫で暮らすようになって、来生家の公用語は日本語オンリーにしたのだ。

 

「後、数学は、通信教育だよ」

 

算数は習っていない。俺と珠雫の習ったのは数学であった。小学生の時点で…

 

「中学に入った時に、通信教育の方も入学試験を受け直して、ステップアップしたんだよ」

 

中学時代に物理、化学、数学は高校生もしくは大学生レベルの通信教育になっていた。飛び級は、この国には無い上、中学の通信教育も無いから、海外の大学の通信教育に行き着いたと言う。

 

「中学の3年間で、高校3年間分を学んだの?」

 

目を点の様にしている東雲。俺と珠雫が頷いた。

 

「だから、今、特にしていない。珠雫と次美のわからない問題を、一緒に解く程度だよ」

 

友達がいない俺は、普通遊ぶ時間に勉強をして、普通勉強をする時間にバイトをしていた。まぁ、浪人中に、民子達に色々な遊びを習ってけど…今考えると民子って、その当時教師では無かったのか?

 

「勝て無い訳ね…いいわ。4位キープか、2位を狙うわ」

 

笑顔の東雲…クラッと堕ちそうだ。かわいい…

 

「で、来生君の部屋を見たいなぁ」

 

俺の部屋?確か、まだ寝ているのでは?

 

「次美が寝ているが…」

 

「妹と添い寝?」

 

「いや、妹が夜這い。あぁ、そうだ。東雲、スーパーブラコンって、どうやって治せばいいんだ?」

 

「あぁ、次美ちゃんって、そうなんだ…」

 

ピンポン♪

 

また、客か?珠雫が応対に向かって、直ぐに客と戻って来た。民子だ…相変わらずの皮のツナギだし…

 

「あれ?東雲が何でいるんだ?」

 

「先生…ワイルドなんですか?」

 

「いや、休みの日は、バイクでツーリングして、シゲの家で休むのが定番なんだよ」

 

東雲の前なので、何時もののように、ツナギのジッパーを下ろせない民子。ノーパン、ノーブラで来たのか。一応、教師と生徒だぞ!

 

「シゲ、飯!昼飯の時間に合わせてみた」

 

生徒の家で飯を要求って、どうなんだ?

 

「いま、作る。東雲も喰っていけ」

 

「うん」

 

◇

 

珠雫とキッチンへ向かい、昼飯を作り始めた。冷凍庫からスープストックを凍らせた物を出し、鍋で暖めていく。冷蔵庫からはカレーのルゥを取りだして、少しずつスープに馴染ませていく。

 

珠雫はバイト先と同じ手際で、野菜を刻んでいく。サラダ担当である。

 

「兄さん、ドレッシングはどうする?」

 

「タマネギを微塵切りにしておいて、オニオンドレッシングにしよう」

 

「了解」

 

俺達の手際を民子と東雲が眺めていた。オープンキッチン状態だな。冷凍庫から、煮込んだビーフシチューの肉を人数分取り出して、カレーの中へ入れて、味を馴染ませていく。

 

「スゴい…プロみたい…」

 

って、東雲。

 

「あぁ、この二人はプロだよ。バイト先がそっち系だし」

 

バイト先の常連客である民子が説明している。

 

「珠雫、チェンジだ」

 

「うん」

 

珠雫の用意した食材を人数分のサラダ皿に盛りつけて、ドレッシングを調合していく。珠雫は、三品目に取りかかった。味噌汁である。これも冷凍庫にだし汁を冷凍保存してあるので、鍋に入れ、火に掛けて、具を入れて、火を止めてから、味噌を溶けば完成である。

 

出来たので、珠雫が、配膳をしていく。俺は、次美を起こしに向かった。後から東雲が付いて来ている。押し倒したいが、この足では無理かぁぁぁぁぁぁ~!残念…

 

部屋に入り、ベッドで寝ていた、何故か俺の枕に顔を埋めている次美を起こした。

 

「兄さん…え!なんで…東雲さんが…兄さん、どういうこと!」

 

寝ぼけているようだ。

 

「民子も来ているよ。飯だよ」

 

「げっ!」

 

次美が自分の部屋へ戻っていく。ノーメイクはダメなのだろうか?

 

「ふ~ん、ベッドと机と、通信機材だけなの?」

 

「奥に本棚がある」

 

大学のテキストと参考書、後、料理関係の本ばかりである。

 

「え!通信教育って、ここの?」

 

大学のテキストを手にして、驚いている東雲。頷く俺。

 

「大学じゃない…これって…」

 

東雲の手が震えている。怒りで震えているのか…

 

「スゴい…勝て無い訳だ」

 

何故か笑顔である。怒りで震えていたのでは無いのか?女心はわからない。

 

「さぁ、飯だ」

 

「うん」

 

俺の右腕を肩にのせて、アシストしてくれている東雲…うっ!心拍数が…マズい…

 

「なるほど…表情が変わらないでも、脈の変化でわかるんだね」

 

バレた…終わった…

 

「私の片思いで無いのが嬉しいよ、来生君♪」

 

chu

 

俺の頬に東雲の柔らかな物が…パニック状態の俺は、みんなの待つリビングへ着いた。俺は東雲の手から珠雫に渡されて、俺の席に座った。足を伸ばしているので、東雲が遠い…

 

「うぅぅぅぅまい!」

 

民子が喜んでいる。まぁ、店でカレー味のシチューは無いからな。

 

「美味しい…」

 

東雲が嬉しそうに食べてくれている。

 

「あぁぁぁぁ~、もう食べているんだ」

 

白いTシャツを裾で結んで、ジーパンの短パンスタイルで登場した次美。それは東雲に対抗しているのか?

 

 

 

---来生次美---

 

部屋から出ようとして見てしまった。東雲が兄さんの頬に…負けている。どうやって、取り返せばいいの?兄さんの腕に抱きつく。

 

「は?ノーブラか?垂れるぞ!」

 

ノーブラアピールが裏目に…垂れるのはマズい。まだ15だよ。う~ん、ここで席を立つわけにいかない。食事中はむやみに立ってはいけないから。

 

「次のシフトはいつだ?」

 

先生が訊いた。

 

「明日だ。日曜は仕込みの日だし」

 

「あれは、有るのか?」

 

アレってなんだ?

 

「どうだろうな…仕入れがあれば、月曜には出せるとは思うけど」

 

なんの料理のことだ?

 

「そうか。なら連絡をくれ。お前が担当だ?」

 

「珠雫だよ。俺は、肉のクリーニング作業と、油を作らないとダメだから」

 

油を作る?肉の選択?う~ん、意味が分からない。

 

「厨房で働いているんだ?」

 

東雲が訊いてきた。

 

「あぁ。食いっぱぐれないだろ?まかない料理が食えるし」

 

「そうだ!今度、まかない料理を作ってくれよ、シゲ」

 

先生とはどんな関係なんだ?

 

「無理だよ。家庭用は火力が弱いし」

 

火力?

 

 

 

---来生茂樹---

 

東雲と民子が帰っていった。

 

「お兄ちゃん♪」

 

二人がいなくなって、次美が甘えん坊を演じ始めた。

 

「何だ?」

 

「私の胸じゃ満足出来ないの?」

 

どこへ連れて行けば、コイツのブラコンは治るのだ?

 

「実の妹はダメだ」

 

「じゃ、戸籍を変えればいいの?」

 

「そうじゃない。血の繋がりがあるからダメなんだよ。海外の方が、そういう教育って進んでいるだろ?」

 

「昔の王室とか、近親交配は当たり前だったらしいよ」

 

「来生家は王室では無い。貴族でも無い。だから、ダメなんだよ」

 

「お兄ちゃん!どうして、拒否をするの…私は、お兄ちゃんの為に何でも出来るわ」

 

「そうか…じゃ、ブラコンは卒業しろ。いいな!」

 

「ブラコンって?」

 

そこからか…どうするよ、コイツ…

 

 

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