次美が悪い奴になりすぎないように、構成を変えました。クッションとして、姉を実在の人物にしています。
タイトルは、甘酸っぱい青春の味ってことで…(^^;;
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俺には姉妹がいる。姉の華代、妹で双子の次美と珠雫。俺の父は小説家で、母は料理研究家である。幼い頃から、俺は料理に興味を持ち、母の料理姿を見て、時に手伝い、時には指導を受けていた。
末の妹の珠雫も料理に興味を持ち、よく二人で母の背中を見ていたものだ。姉の華代は、読書好き、妹の次美は姉好きであった。まぁ、それなりに幸せな家庭に生まれて良かったと思う。
小学校に上がった頃、父は売れっ子の小説家になり、「缶詰」という生活に入った。母もそれなりに有名になり、全国を駆け巡るようになっていった。子育ては一段落着き、俺達だけでも生活出来ると判断したようだった。決して、子育て放棄では無く、生活費を稼ぐ為だと、俺は思った。
姉は1つ上、妹達は1つ下で、俺は真ん中に位置していた。そのせいかは分からないが、いつしか姉と一緒に勉強し、妹達に勉強を教えるポジションになっていた。
ある日、姉が難しい顔をしていた。
「どうしたの?」
「うん…父さんはアホのAで、母さんは、大らかなOなのに…シゲはアホで、私達はバカなの…これって…う~ん…」
「姉ちゃんはバカで無いよ」
「そうなんだけど…なんでかな…」
その日を境に、俺を遠ざけるようになった姉さん。何故なのか、血液型の法則を知らなかった当時の俺には分からなかった。
◇
姉が小学校へ上がった頃だろうか、冬休みは毎年スキーへ行くのが恒例になっていた。母と父が好きだと言う理由で。姉にスキーを教える父、俺は妹達とソリ遊びである。
俺が小学校に上がると、今度は俺が父にスキーを習い始めた、妹達は、母と姉が交代で見ている。
そして、妹達が小学校へ上がると、姉と母がスキーを教え、俺と父は中級コースを楽しんでいた。それは、楽しい想い出であった。姉が俺を妙に意識しているのが、気がかりではあったけど。
俺が小学4年の時…俺も姉も上級者コースを滑れるようになっていた。妹達は中級コースを滑っている。
「お~い!飯にするぞ」
父の声。
「後1本、行って来ます」
姉がリフトに向かい、俺も後に続く。その時俺達は、妹の次美が付いて来たことを、その時はまだ、気づかなかった。
その日のコンデションはアイスバーンだった。直下降だとスピードのコントロールは難しそうで、でこぼこな斜面をリズミカルに滑るのには良かった。姉が滑り始め、俺も続いた。その時、後方で声がした。
「お姉ちゃぁぁぁぁぁ~ん!いやぁぁぁぁぁ~!」
次美の声だ。咄嗟にコースを外れる姉。俺も続いた。平坦な氷面を背中で滑っている次美。姉が助けようとして、巻き込まれた。姉の頭が氷面でバウンドした。まずい。二人の前面に斜滑降で出て、制動を効かせて行く俺。次美をでこぼこな面へ放り投げ、姉を止めようとしたとき、足に激痛が走っていた。次美のストックが足を貫通していたのだ。その為、制動が緩み、姉と共に俺は、氷面を滑落していった。
◇
目覚めたのは病院のベッドの上…次美は打撲だけで済んだらしい。姉は頭を強く打ち、昏睡状態らしい。そして、俺は…
俺の身体がクッションになり、姉は頭部の強打だけで済んだらしい。姉の身体の柔らかい感触が残っている。まぁ、役得があれば、損もある。姉の身体のクッションになった俺は、全身を強打したそうだ。とはいえ、全身打撲程度で済んだのは幸運らしい。
問題は、救出する迄に時間がかかり、俺の右足は壊死してしまった。ストックが刺さった部分から下はダメだったらしい。血流が行き届かなかった為、体温の維持が出来ずに…
右頬の骨も砕けたそうだ。姉の肘が叩きつけられたらしい。俺と姉は長期入院を余儀なくされた。
姉は半年ほど経ち、意識が戻った。徐々にリハビリをして、日常生活へ復帰を目指していた。
「シゲ…ゴメンね。私達姉妹の為に…」
毎日、リハビリを終えると、俺の元へやって来る姉。ベッドから動けない俺の頭を撫で、右の頬をなぞっていく。俺は顎が動かせずに、姉に言葉を掛けられない。
『問題ないよ』
って、言葉を掛けたいんだけど…
◇
俺の右頬には人工の骨が入った。まだ、成長期な為、1年ごとに調整が必要になるらしい。右足には義足が付けられた。これも成長記故、1年ごとに調整しないとダメらしい。今後、毎年夏休みは入院期間になることが決まった。
退院すると、姉が寄り添ってくれた。
「シゲの傍にずっといるから…」
「俺の事、嫌いだったんじゃ…避けていたし…」
「逆よ。意識しちゃって…」
頬を赤らめる姉。
「そこ!くっつきすぎよ!」
次美が姉と俺の間に入り、姉に抱きついた。
「お姉ちゃんは、私の者なのよ!」
シスコン…だから、あの事故が起きたのか?俺と姉を二人きりにしたくなくて…
「兄さんには私がいるわ」
って、珠雫。こっちはブラコンか?
◇
姉が中学校へ上げる時、姉は中学に行かず…俺の面倒を見てくれた。
「シゲと同じ学年で入学したいの」
って。義務教育って、そんな柔軟だったっけ?だけど、出席に日数不足で、姉は中学で留年したようだ。そのおかげで、奇しくも、俺と同じ学年になれたようだ。
俺の顎はうまく動かない。基本筆談に近い。そんな俺に寄り添って、姉が俺のサポートをしてくれた。
「お姉ちゃん、甘やかしたら、その男はダメになるわよ」
って、次美。もっと、姉に構って欲しいようだ。珠雫は黙って、俺のしたいことを、姉と一緒にサポートしてくれた。
「兄さん、味見は私がしますから」
舌の機能は問題無いが、口がうまく開かない俺。作った料理の味見を珠雫がしてくれた。
そんな兄妹関係を見ていた母が、次美を留学させると言い出した。
「次美…反省していないの?」
「反省することは、していません。寧ろ、あの男が出て行けば良いと思います」
次美にとって、俺は「あの男」であり、姉を巡るライバルらしい、
「母さん、俺…どこか、養護施設に行くよ」
次美がジャマ者では無く、俺がジャマな気がした。
「茂樹は、いて良いのよ。華代も珠雫も、茂樹にはいて欲しいって言うのよ。次美、あんたって子は…茂樹をあんな身体にした責任を感じていないの?」
「あの男がドジなだけよ。それに、あの男は、私を投げ飛ばしたのよ!」
あぁ、投げた。それが最善だと思って。だけど、その行為自体を恨みに思っている次美。
「そのおかげ、あんたは助かったのでしょ?あんたは留学決定よ。もっとワールドワイドに、色々なことを学んで来なさい!」
「え!お姉ちゃんと別れ暮らすなんて、有り得ない…」
母の怒りを買い、どこかの国のスクールに入れられた次美。高校生になるまで戻って来ないらしい。
◇
中学生にもなると、異性を異性と認識してしまう。だけど、俺にはハンデがある。顎には人工の骨が埋め込まれて、口を開くことが苦痛である。それに伴い、表情筋がイカレていて、無表情である。その上、頬には深い溝のような傷跡が刻まれている上、右足が不自由なのだ。右足には補助装置付きの義足が取り付けてあり、足の筋肉と神経をサポートしてくれているので、日常生活はどうにか出来る程度である。恋愛なんか出来る余裕は無い気がするのだ。いや、姉妹がいるので、その必要性も無い気がするのだが、異性って者は意識してしまうようだ。姉妹は姉妹であり、異性では無いというか…
「兄さん、好きな子が出来たの?」
「ねぇ、ねぇ、どんな子かな?」
妹と姉が興味深そうに訊いてきた。
「黒髪が似合うクールビューティー系かな」
姉がそうだし…う~ん、比較基準が姉なのは、どうかと思われそうだ。俺ってシスコンかな?
「民ちゃんよりも?」
民ちゃんとは、レディースの総長であった民子のことである。街で目が合って、ガンを付けたと思われて、人気の無い場所に連れて行かれて…まぁ、アレコレあった女性である。
「民子は姉御枠だよ」
「民ちゃんがライバルかな?姉としては」
姉と姉御枠では勝負にならないと思う。そもそも恋愛枠では無いし。
「民子はサラサラなアンダヘアーがかわいいけど、姉さんは固めだよね?」
「固めは嫌いなの?わかったわ、努力します」
努力でサラサラになるものなのか?それは、それで興味があるけど。
「兄さんは、サラサラのアンダーヘア好きなの?」
珠雫に訊かれた。
「いや、想い人の全裸は見た事ないし…分からない。全裸を見たことあるのは、民子と姉さんと珠雫だけだから…どうなんだろうな?」
「う~ん…どうなんだろうね」
姉も民子と、珠雫、次美、母親くらいしか全裸を見ていないから、分からないようだ。
「その子は姉さんに似ているの?」
「似ていない…」
いや、似ているとも言え無くもない。黒髪ロングのクールビューティー系だし。
「ねぇねぇ、その子の名前は?」
姉と妹がワクワクして俺の答えを待っている。名前を出せば分かってしまう。姉と俺は同じクラスだし。確か彼女は、珠雫と同じクラブの先輩だった気がするし。
「同じクラスの東雲詩織だよ。話したことは無い。遠目から見ているだけ」
「あぁ、あの子かぁ」
「東雲ちゃんかぁ…」
姉も珠雫も知っている。
「あれ?小学校の時も、兄さんと同じクラスでなかったかな?」
って、珠雫。
「そうだったけ?色々あって、覚えていないや」
異性として意識し始めた頃、入退院を繰り返していたから…周囲をあまり見ていなかったかもしれない。
◇
中学に上がると同時に、アルバイトを始めた。母の紹介で、近所のレストランである。母は将来、ペンションを家族で経営したいようだった。父の缶詰部屋を用意して。
その為に、料理屋さんで修行をして欲しいということのようだ。まぁ、リハビリも兼ねているのだろうけど。
近所では有名なお店で、規模も大きめなお店であった、俺と珠雫は皿洗い、姉はウェイトレスとして、働きだした。学校へは母が交渉して、アルバイトと言う名の修行を認めさせたそうだ。そこは名の知れた料理研究家の強みと言うか。
「よう!シゲ、働いているな」
って、民子。民子はこの店の常連だった。いや、近所に住む者は、ほぼ常連な気がするが…それほど、近所では有名なお店である。
「民子は、就職したのか?」
総長を引退して、勉強をしていると聞いたんだけど…
「あぁ、高校の教師だよ」
え?!俺と妹が絶句した。レディースの総長だったよな?つい、この間まで…
「引退パレードもしたよ。新しい人生は、教職の道だ!一人でも多くの奴を、更正させるんだ」
「民子が教職かぁ」
感慨深そうにシェフが呟いた。この人も昔、族の総長だったらしい。民子の知り合いって、そっち系が多い。まぁ、それがあるので、俺も、姉も、妹も虐めの対象にはならなかった。俺達のバックがヤバい系で、それもトップクラスだった者がいるからだ。たまに、そっち系では無いいじめっ子がいる場合、後でソイツらはヤバい系な人達にボコられたとか…我が家では、都市伝説である。
「で、シゲ、珠雫、華代は慣れたか?この仕事にさぁ」
「あぁ、真面目に働いてくれているよ」
って、シェフ。経営者は別にいて、雇われシェフであるが、経営者はシェフの舎弟だったらしい。なので、俺達のことを見守ってくれる側らしい。
「最近では、まかないもまかせている」
シェフの好意で、まかない料理をまかせられた俺達。皿洗いからステップアップする為、料理の勉強もしていた。珠雫は野菜の処理に特化し始め、俺は調合や精製などを学んでいる。各種ソースの調合方法や、ラードの精製方法、肉のクリーニング技術など。
母には悪いが、将来は俺と珠雫と姉とで、喫茶店を目指している。ペンションはのんびり出来そうもないし…力仕事は無理だし。
◇
中学校生活は、それなりに楽しめていた。体育が見学であることを除けば…走れない、泳げない、飛べない…などなど、体育は無理であった。ぼぉ~っと、眺めるだけである。遠くで東雲が体育をしている。体操服にブルマ…う~ん、かわいい…その横で姉がVサインを送ってきた。姉と東雲を見比べてしまう。胸は姉の方が、現時点で形も大きさも良い塩梅であるが…将来に期待だな。
だけど、無表情である俺に、女子は近寄って来ない。姉以外、誰も話し掛けてこない。東雲…有り得ない。俺を真面に見ていないと思う。が、何故か姉さんと仲良さそうに話している。羨ましい…
無表情の上、頬には傷跡がくっきり…そっち系と思われているんだろうな。結局、中学3年間、話した女子は、姉と後輩である妹の珠雫と、そのクラスメイトの上原スミレ程度である。
俺の青春は終わったと思う…それとも、高校へ行けば変われるのだろうか?
救われないテイストの話も有りかな?
2話目を書いたのだけど、救われ無さが1話よりも濃い…