---リムル・テンペスト---
気が付くと、あの円卓のある部屋にいた。あれ?俺はどうしたんだ?床に倒れていた。他の奴らも、魔王達もだ。全員、身体から煙が立ち昇っているし…まるで、焼き殺されたようだ。
「助けてくれ…」
クレイマンは生きている様だ。声のした方を見て…固まる俺…こんなおぞましい死刑はあっただろうか?生きたままのクレイマンに群がるゴキブリの集団。そして、生きたままのクレイマンを喰っているし…その光景を微笑ましい顔で眺めているアイツら。
「よぉ、生き返った感想はどうだ?」
アイツに訊かれた。俺は死んだのか?
「不燃属性、耐火属性、炎によるダメージ0でも、死んだ事が不思議か?」
「あぁ…」
「電子レンジだよ」
あっ…体内に水分があれば、沸騰する。外皮は不燃、耐火、耐熱属性である。体内に溜まる水蒸気…水蒸気爆発かぁ…
「そういうことだよ。不定形なヤツは、体内が液状化している場合が多いからな」
こいつ、殺戮のプロか?
「単なる通り縋りのエロ好きだよ」
って、心が読まれているし。
「読心術なんか、初級クラスだぞ」
コイツも、チーターなのか。
「チータではない。エロ好きだよ」
あくまでも、単なるエロ好きと言い張るアイツ。そして、アイツの後では、ラミレスとミリムが、何故か涙目で正座をさせられていた。躾られたのかな。
「しかし、この世界の魔王って、弱いなぁ」
弱い?
「主様が強すぎルのよ!」
って、ミリム。
「リムルの前で、ヤルか?」
「ごめんさい…反省しています」
こんなに素直なミリムは初めて見る。魔王なんかでは勝て無いのだろうか。
「連帯責任はやめてください…」
ちびっこ魔王二人は、完全にアイツを怖がっていた。
「なぁ、お前は敵か?味方か?」
「僕か?単なる通り縋りのエロ好きだよ。ただ、売られたケンカは、全量買い取りしているだけだ」
仕掛けないと、手は出さないってことか。
「まぁ、そんなところだ。じゃ、引き上げるぞ!って、まだ、喰っているのか?アインズ、そのエサごと転移しろ」
「わかった」
そして、アイツらは姿を消した。
◇
瀕死な状態だけど、とりあえず全員生きているようだ。俺の持っている薬で回復させていく。
「何、あれ?魔法一発で全員即死って…」
女性の魔王が声を上げた。
「アイツ、危険過ぎる」
一番上座に座っている魔王が、虚ろな視線で呟いた。実際、危険である。取り扱いに注意を要する。あの自由奔放なちびっ子魔王ですら、躾けて大人しく調教って、有り得ない能力だし。
その後、俺は魔王として認められ、順調に国作りをしていた。だけど、アイツのことを忘れていた。すっかりと…シュナやミリム達を置いて行ってくれたから。そして、第二波が襲い掛かって来た。
◇
それは建国祭でのイベントである武闘会トーナメントであった。トーナメントは俺の配下達で誰が一番強いかを競う為のものであったが、一般枠を1つ作っておいた。誰にでも開かれた国を印象付ける処置であったが、それが裏目に出たのだ。
一般枠を掛けた戦いはバトルロイヤルであり、その優勝者が決勝トーナメントに進めるルールになっていた。その優勝者の名前を見て固まる俺とベニマル。
『優勝:通り縋りのエロ好き』
って…
「これって、アイツだよな?」
震える声の俺。
「たぶん…」
ベニマルの顔から血の気が失せていく。すっかり忘れたのに、このタイミングで来るのか?いや、既に来ているのか…
「シュナとシオン、後ソーカ、ミリム、ラミリスの所在を確認してくれ」
「わかりました」
ベニマルが出て行った。あれから新戦力が出来た。我が戦力の新しいツートップであるゼギオンとディアブロだ。コイツらがいれば…ふふふ。
---シュウ---
勇者クロノア問題は解決した。その勇者から能力を総て『強奪』し、封印してお蔵入りさせてある。
帰ろうと思った時に、建国祭のことを知った。祭りと言えば、焼きもろこしと、今川焼きである。立ち寄らないとなぁ。
そして、トーナメント戦の参加者募集の張り紙。優勝者には欲しい者を一つくれるそうである。頑張らないとなぁ。
で、この世界は比較的安全であるので、リザ達とサトゥーを連れて来た。
「祭かぁ」
「おいしそう?」
「おいしそうなのです」
タマ、ポチコンビも嬉しそうだ。たまには、休日も必要だと思う。
「欲しい人材がいるのか?」
サトゥーに訊かれた。
「あぁ、そうだ。どうしても欲しい人材だ。教師の経験があり、子供達の教育に最適なんだよ」
その為に、この世界のラスボスは既に消してきた。アイツを連れ出す為にだ。
「商人が必要ならサトゥーがいるし、剣士はミトとヒナタで十分だ。テンちゃんはミトとセットだしな。魔法ならディアブロ、ヤバい系はアインズ達がいる。だけど、子供達の教育が出来るヤツがいない」
「なるほどなぁ。今後を見据えたスカウトか」
「あぁ、ここには娼館は無い。行くなら王都へ行けよ」
「分かった。今夜行ってみるよ」
サトゥーと別れ、久しぶりにミリムの元へ…
---リムル---
ベニマルによると、全員の所在は確認したそうだ。じゃ、どこにいるんだ?近くにいそうである。さっきから大賢者が出て来ない。ヴェルドラですら、気配を消しているし。
「リムル様、幹部会のお時間です」
シオンがやってきた。いつもの秘書スーツでなく、バドスーツに着替えているし…やだなぁ。幹部会にアイツがいたら…
「あぁ、今行く」
幹部達のいる会議室に入った。アイツはいないようだな。あれ?
「なぁ、ミリムは?」
「先程、じゃあ又って言って、飛んでいかれましたよ」
アイツ、逃げたんじゃ…最強の魔王が逃げるなよ~!
---シュウ---
ミリムが服従のポーズである。自ら全裸になり、正座をしている。ミリムの配下の者2名は既に、意識が無い。
「どうか、フレイとカリオンを殺さないでください」
ミリムが土下座をしている。
「この程度の戦闘力じゃ、いずれ戦死だぞ」
「うっ…ですから、私だけ付いて行きます。二人は、この世界に置いて行きますから、お願いです」
泣き声のミリム。
「わかった。旅立ちの準備をしろ。テンペストの町に滞在しているから」
「はい…」
次はどうするかな。ラミリスは戦力外だし…ソーカは欲しいかな。いや、シュナも捨てがたいか。
---リムル---
「とにかく、トーナメントでは正々堂々戦い、優勝を目指して欲しい」
ベニマルの顔色が優れない。アイツが参加することを知っているからな。アイツの初戦の相手がディアブロか、ゼギオンなら、勝てるのか?
コンコン!
ドアがノックされ、ミリムが入って来た。いつもの自由奔放さは無い。躾されたみたいだ。
「リムル…どこの世界にいようと、マブダチだからな。また、いつか会おう」
涙目のミリム…この世界から旅立つのか?なんでだ?
「どこへ行くんだ?」
「主様が行く先に追従していく。リムルのことは、フレイとカリオンに頼んで来た。だから…わぁぁぁぁあぁぁぁぁ~」
俺に抱き付き号泣している最強の魔王のミリム。う~ん、なんらかの教育的指導なんだろうな。なんかやらかしたのか?
「よしよし」
と、頭を撫でてあげた。どうするよ。このミリムの行動で、アイツを知る者達の顔から血の気が失せていき、シュナとシオンとソーカの顔が嬉しさで満ち溢れていく。
「まさか、アイツが来たのですか?」
ソウエイの質問に頷く俺。ミリムを号泣させるヤツは、アイツしかいないし。そんな中、ゼギオンとディアブロは余裕の笑みだ。勝てるんだよな?信じているぞ、お前ら…
◇
そして、トーナメント1回戦第一試合。出場者を抽選で決める。
「第一試合の対戦は…おぉぉぉぉぉ~!いきなり決勝戦です。ディアブロVS主様です」
シュナの実況…嬉しそうだ。おい、ディアブロを応援しろよなぁぁぁ~!う~ん…アイツを知る観客達は固まっている。そして、試合は開始されたのだが…期待はしていなかったが、予想はされていた。ディアブロが瞬殺され、灰にされていく。マジかぁ…
「聖属性の僕に悪魔系は犬死だよ。まったく、抽選とは運の無い奴だ」
試合の後、蘇生されたディアブロ。だが、以前のような自信に満ち溢れる態度は、微塵も感じ無くなった。灰化されたことが、余程ショックだったのだろう。
そして、トーナメント2回戦第一試合。出場者を抽選で決める。
「今回の主様の相手は、ゴブタ&ランガのゴブリンライダーズです。影殺法は主様に効くのでしょうか?」
煽るような実況のシュナ。ゴブタを応援する観客達。実際どうなんだ?結構行けるのでは?って、期待をしていたのだけど、惨い殺し方だった。影移動したランガは、闇属性攻撃の前に犬死にだった。闇に覆われてしまうと、影は出来無いから…そして、ゴブタは目の前で圧搾された。ゴブタはトマトが潰れた状態になった。悲鳴を上げる観客達、失神する者が多数。ランガはリングアウトで退場扱いになった。まぁ、ゴブタも修復、蘇生されたからいいけど。
次は決勝戦である。相手はゼギオンだ。鉄壁のガードを誇るゼギオン相手に、アイツはどうですんだ?
ゴブタショックもあり、決勝戦は2日先延ばしになった。そして、幹部会…重い空気が支配している。シオンとシュナとソーカだけ、明るいんだけど…
「なんか、アイツ対策は無いのか?」
「…」
無いらしい…ゼギオンなら圧搾されることも無いだろうけど…恐いのは、俺を殺した電子レンジ攻撃かぁ…って、アイツ、魔法使いなのか?物理攻撃って見た事ないけど…
「なぁ、シオン。アイツって剣術は出来ないのか?」
「ハクロウより上ですよ。何を言っているんですか?」
ハクロウより上?剣術も出来るのか?
「ただ、私達相手には使わないと思います。威力がデカ過ぎるから」
剣撃の法が魔法より威力があるのか…固まる俺。なんだ、その剣術は…
「主様は4刀流ですよ」
って、嬉しそうにシュナが答えた。4刀流?腕は2本だよな?
「格闘術は使えるのか?」
「あぁ、一番威力があるから、剣術よりも使わないと思う」
って、シオン。はぁ~?格闘術が一番攻撃力があるのか?
「なんだっっけ?あぁ、『アトミック・ボム』って拳技で、小さな星が粉々になっていたし」
って、ソーカ。はぁ~?星を粉砕する威力なのか…ベニマルからツバを飲み込む音が聞こえた。つまり、俺達というより、この星が壊れるから、手加減しているのかぁぁぁぁ~?!
「一番威力の小さい攻撃って何だ?」
三人が顔を見合わせて、考えている。
「あぁ、それなら、ソウルイーターじゃ無いかな?魂をロストさせるスキルです」
って、真顔のシオン。えっ!魔法で無くて、スキルで持っているの?そんな凶悪な攻撃方法を…ロストだと、蘇生は無理じゃないか…凶悪過ぎるだろ、それって…
「アイツのジョブってなんだ?」
「主様のジョブは、ネクロマンサーな魔導戦士ですよ」
シュナが答えた。ネクロマンサー?凶悪過ぎるだろう。死霊系の魔術師じゃないか…で、聖属性って、またチートなジョブだな。
「アイツの弱点って?」
「うん?いっぱい、ありますよ。でも、戦闘中にはありません」
ソーカが答えた。戦闘中の弱点は無いのか?
「ちなみに戦闘中でない場合は?」
「アルコール臭い女性は、苦手って言ってました」
それは夜の営みでのことだな。通り縋りのエロ好きとしての弱点ってことか…う~ん。
◇
そして決勝戦。端的に言おう。ゼギオンが弾けた。物理的にだ。防御力に自信があったゼギオンが、観衆が見守る中、速効で弾けた。飛び散るゼギオンの身体を構成していた部位達…アイツの送る声援は無く、格闘場は恐怖で包まれていった。
そして、アイツは俺の前に進み出た。
「僕の欲しい人材は、君だよ。リムル・テンペスト君♪」
俺が欲しいだと…屍姦三昧されるのか?あの恐怖が甦る。
「誤解するな。子供達の教師枠としてのスカウトだよ。もちろん、戦闘力も込むでのスカウトだ。この世界のラスボス達は、既に倒した。向こう10000年くらいまでは、平和な星になる。一緒に来てくれ。拒否や逃亡はさせない。いいな!この宇宙を統べる絶対神として、お前に命じる。って、感じだよ」
笑顔のアイツ…はぁ?絶対神…コイツ、神なのか…道理で勝て無い訳だ…こうして、俺は、この通り縋りのエロ好きの配下になった。
ここまでが第1部になる予定です。