---ソーナ・シトリー---
リアスはショックのあまり、黙り込んでしまった。未来において、イッセー君を毒殺して、別の相手と再婚し、世界を征服する事実にショックを受けていた。それは、イッセー君も同様のようだ。リアスのことを見ることが出来無いみたいだ。
「ねぇ、その大樹って子に逢えるかな?」
私はリーシアに訊いてみた。
「元の世界へ戻る移動手段なので、その時が来るまで、隠れています。ですので、今は無理です」
大樹って子は狙われているようだ。
「お願いです。未来の世界を助けてください」
リーシアが頭を下げてきた。だけど…その場で、名乗りを上げる者はいなかった。相手の能力が危険過ぎる。魔法も異能力も無効にして、使えなくしてしまうこと、その上で邪龍2匹とトライヘキサの相手をすることに、恐怖を抱いたのだ。どう考えても勝てる相手ではない。
「俺…行こうかな…」
震える声でイッセー君が名乗り出た。
「では、私も…」
アーシアさんが追従した。
「ダメよ!イッセー、アーシア、行かないでくれる」
リアスが声を上げた。
「あなたたちに何か遭ったら、この世界はどうするのよ。あなた達の主として、許可は出さないわ」
「何言っているんだ…リアス」
青い顔をしたイッセー君が、リアスに声を掛けた。
「もっと、イッセーを愛する。将来、イッセーを毒殺しないように、イッセーを愛します。だから、行かないで…」
静まりかえる場…これでグレモリー眷属と、チーム赤龍帝は不参加が決定した。
「リーシア、タイムリミットはどのくらいあるの?」
悲しそうな顔のリーシアに訊いた。
「3日後…参加してくださる方は、3日後の0時に、駒王学園の旧校舎に来てください。大樹君が迎えに来てくれます」
そこまで言うと、リーシアはどこかへ転移していった。
◇
冥界へ戻り、アジュカ様に相談したり、シーグヴァイラ、サイラオーグ、ヴァーリに打診をしてみた。その結果、全員不参加だと言う。
「未来がそんな状況ならば、今出来る事をして未来に備えるべきよ」
と、シーグヴァイラ。そうなんだけど…
「俺達が意識を変えれば、未来の結末は変わるはずだ」
と、サイラオーグ。そうかもしれない。
「イッセー君を狙う勢力があるならば、今のうちに消しておくべきだな」
と、ヴァーリ。三人三様の思惑により、この世界にとどまると言う。
そうなると…リーシアさんは、仲間を失ってまで来たのに、誰も連れて行けなくなる。本当にそれでいいのか?家に戻り、眷属を集めた。
「椿姫、留守中のことを頼めるかな?」
「えっ…」
私の出した結論に驚いた椿姫は、言葉を飲み込んだ。
「リーシアを一人で返す訳にいかない。彼女を護ってあげたいの」
「何も、ソーナが責を負わないでもいいでしょ?」
椿姫が私を抱きしめた。
「リアスの言い分もわかる。シーグヴァイラ達の言い分もわかるの。でもね、私はリーシアが可愛そうに思えるのよ」
危険を冒してまで来た過去。ピークを過ぎていない戦士達に、救援を求めに来たリーシア。なのに、自分たちの世界を守る為に、未来へは行かないという結論。では、リーシアは死にに戻るのか。そこに救えるかもしれない命があるのに、見捨てるのか?私には出来無い。リーシアの悲しそうな表情が、脳裏を離れない。ここで、いかないと後悔すると思うのだ。
「だからと言って、ソーナだけを行かせる訳にいかない。それならば、私も行くわ」
「私も行きます」
「私も」
次々に名乗りを上げる私の眷属達。
「みんなには、この世界を護って欲しいの。いい?椿姫、これは命令よ」
「ソーナ…」
これで、今生の別れになるかもしれない。椿姫の胸に顔を埋めた。
◇
約束の時間に一人で、待ち合わせ場所へ向かった。そこにはリーシアと知らない男性がいた。彼が大樹なのか?
「ソーナさんだけですか?」
大樹に訊かれた。
「そうよ」
「リーシア、時間だ」
突然、私達を光が包み込み、目の前が真っ白になっていく。これが亜空間転移ってものなのだろうか?光が霧散すると、知らない場所にいた。湖の畔である。ここはどこ?
「ここは、エデンの園よ。生き残った者達を収容している場所なの」
知らない少女が現れた。線の細い身体、だけど、眼光は鋭い。この子は誰?
「私は、そこにいる代羽大樹の主、セーラ・シトリーよ」
セーラ・シトリー?私の子孫?
「ちょっと違うわ。平行世界のソーナ・シトリーとお父様の間に、生まれたのよ。あぁ、お父様は兵藤一誠では無いから、誤解はしないでね」
イッセー君じゃない?え?他に誰が?
「それよりも、ソーナさんしか、救い出せなかったの?」
セーラがリーシアに訊いた。ちょっと、待って!救い出す?
「すみません。彼女だけです。過去を変えれば、未来が変わるはずだって…」
悔しそうな顔のリーシア。どういう意味?この世界を救うために来たのでは無いのか?
「それは違うわ。あなたのような方だけを救うことにしたの。だって、愚かな選択をする悪魔は、いてもしょうがないからね」
私だけを救う?
「リーシアの話を聞いていなかったの?アイツらは過去の世界に行って、リーチを手に掛けたのよ」
それは、過去の世界すらも征服するってこと…
「はい、正解ですよ。ソーナさんが愚かでなくて良かったわ。この世界にいた主戦力は、大樹達と入れ替わるように、この世界を放棄したのよ。もう、生き残っているのは、ここにいるだけだからね」
それは、私のいた世界は…終わるってことか…目の前が真っ暗になっていく。