---クリス---
ミケを食したことで、色々なスキルが現れた。『転移』はその1つである。行ったことのある場所なら行ける。だけど、あの滅んだ世界へは行けなかった。異世界転移はダメなようだ。
ミケがいなくなってから、狩りの質も変わっていく。食べる為の狩りから、強く成る為の狩りへと。一角兎を卒業し、シルバーバックベアというクマを狩っている。こいつら、やっとの思いで作った家を壊そうとするから、退治と強化の一石二鳥である。しかし、木剣では分が悪い。斬れないし刺さらずに、ついつい『強奪』のお世話になってしまう。これでは、いつまで経っても強くなれない。
そんな紆余曲折な日々を送っていた或る日、ゴールドバックベアを間違えて攻撃してしまった。シルバーバックベアは災害級であるが、ゴールドバックベアは更に強い天災級であるのだ。
僕の頼みの綱の『強奪』が効かない。焦る…マズい。逃げ回るが、鼻の効くゴールドバックベアは、敵対者を決して許さないようで、どこまでも追ってきていた。逃げまくり、家の方向も分からなくなった僕は、生きる事を諦めた。ゴールドバックベアの爪が僕に迫ってくる。目を閉じ、その時を待ったのだが、一向に激痛が来ない。瞬殺されたのかな?
「おい!大丈夫か?」
久しぶりに聞く、人間の声…目の前で、ゴールバックベアが、息絶えていた。あれ?この人を、僕は知っている。なんで、あの世界の姿のままなんだ?
「ユーマさん?」
「へっ…なんで、俺の真名を知っているんだ?」
呆然とした表情で僕を見つめているユーマさん。
「僕ですよ。成美の弟の成人です。この世界に転生しました」
「うん?ナルトくん?」
ユーマさんだ。「なるひと」だと何度訂正しても「ナルト」と呼ぶ彼。
「それは懐かしいが…いいなぁ、異世界転生か…」
---サマエル---
成美は母さんの弟子で、俺の彼女だった人物だ。俺が異世界に置き去りにされたことを知らずに、遠征先で俺の両親と共に研究をしているはずだ。俺の事情をナルトに話した。
「いじめっ子に、この世界に売られたんですか?そうなると異世界転移者?」
「そうなるのかな?」
現在、家まで戻って来た。森の中での長話は、危険が一杯であるから。ナルトに、仲間達を紹介した。皆、ナルトの臭いを嗅ぎ、マーキングしている。お風呂に入ると消えるんじゃないのか?
ナルトは転生後、クリス・マクレガーと名付けられたそうだ。
「俺もカールトン公爵の養子になり、サマエル・カールトンって、名付けられたよ」
ナルトは5歳くらいらしいが、前世の記憶と、育ての親の記憶とスキルで、俺と同じ感覚を有しているようだ。
「家を作ったんですか?」
「仲間がだよ。俺は力が強く無いからね」
家の設計と、材料を加工しただけである。家の中を案内していくと、
「おぉぉぉ~、温水洗浄付き水洗便所ですかぁ。これは必要ですよね」
必要です。ボットン式でトイレットペーパーの無い世界、やはり必需品だと思います。
『彼はナイフ使いのようですね。では、これを差し上げて』
ギルがナルトの為に『聖なるナイフ』と『魔短剣』を収納庫に入れてくれた。
「これを今後使うと良いかな」
早速、ナルト…クリスに手渡した。
「いいんですか?」
「あぁ、俺は非戦闘員だからね」
基本『強奪』による瞬殺しか戦う術が無い俺。仲間がいないと、戦え無い。今後はクリスにガードしてもらおう。
◇
あっちの世界の仲間が増えたので、発掘作業を一緒に考えて貰った。
「澱んだ空気は、『強奪』で奪えば、綺麗な空気が入るんじゃ無いかな?」
「それは俺も考えてたけど、ドアで隔てられた空間の空気は、『強奪』出来無かったんだ。後、あの建築物が何階層有るかもわからなし。さて、どうした
のものか」
クリスも俺と同様、魔法が使えないそうだ。魔法を使える人材を見つけないとダメかな?ポチ、タマ、ティア、苗子も魔法は使えないらしい。破壊系のスキルはあるらしいが、なるべくあの建築物は壊さない方向にしたい。