---雫---
風が頬を撫でる感覚で目が醒めた。ここはどこ?ゆっくりと、瞼を開いていく。瞳に光が差し込む。なんか、久しぶりに見る太陽の光…ここはどこ?
「あら?目が醒めたのね」
知らない女性が私の顔をのぞき込んだ。だれ?
「ここは?」
女性の服装…ラノベに出てくるファンタジー世界の冒険者のような格好である。これは夢??
「今、サマエルを呼んでくるわね」
サマエル?誰のこと?身体を起こし、室内を見回す。隣のベッドには仄が寝ている。壁は木材を積み上げてある。まるでログハウスのようだ。
「雫…おはよう…」
目の前に夢馬が…これって、夢?
「まだ、意識が覚醒していないのかな」
夢馬の格好もファンタジー世界の冒険者のようだ。
「現状認識が出来ていないんじゃないのかな」
知らない子供。彼も冒険者の格好である。ここはどこなんだ?異世界転生でもしたのかな?
「ここはねぇ…」
夢馬がゆっくりと時間を掛けて、現状の説明をしてくれた。ここは、未来の世界?そうだ、コールドスリープしたんだ。何もかもに絶望して。
「アマゾネル因子は取り除いたから、もう大丈夫のはずだよ。今は体力を付けることだけを考えてね」
◇
翌日、仄も目が醒め、夢馬が私に伝えたことを、仄に話している。
未来の世界…人間は生き延びていた。人間では無い亜人と呼ばれる種族もいる。夢馬の説明によると、生物はメスを産みやすい傾向にあるそうで、万が一メスだけになった場合、子孫を残す為に疑似オスや雌雄同体の進化を起こすのだと言う。そう言えば生物学で習った気がする。生物進化論だっけ?
「施設にあった資料を精査すると、アマゾネスという種族はね、性欲を満たす為の行為をする種族へ、鉄槌を下す役目があるらしいんだよ」
生物は基本、子孫を残す為の行為をする。だけど、それを見境無く性欲を満たす為だけに行っていた樋口達…なるほど、私達人類は、愚かなことをしていたのかもしれない。愛を確かめ合う為に行う行為…そこには子孫を残そうとする意思はない。私も龍太郎としていた。自業自得の事態ってことなのか。
「まぁ、ここでスローライフしよう。ここなら安全だし」
この家の周囲には鬱蒼とした森が広がっていた。この家の地下には、私達のいた施設があるそうだし。遠くには、この地を囲うようにして山脈が連なっていた。
「家の敷地内なら安全だから」
敷地を出ると、魔物達がいるそうだ。ジャマだからと言って、狩ることはしないとか。食料の為、自衛の為以外に殺すのは良くないそうだ。
「夢馬は、普段何をしているの?」
「遺跡の発掘かな」
遺跡とは、私達の世界の建物らしい。長い年月を経ても壊れなかった建物が、遺跡として残っているそうだ。私達のいた建物のように。
「電気があるから、俺達のような世界の暮らしも出来る」
夢馬には神様特典のスキルがあるそうだ。だけど私と仄には無い。単なる少女であるのだ。戦闘なんか出来無い。出来るのは家事くらいだろうな。
「家事をしてくれると助かるよ」
夢馬の仲間の女性達…戦士と魔物だそうで、家事が苦手だと言う。その代わり、戦闘はお手の物って…
「今まで俺とクリスで家事を切り盛りして、ポチとタマに手伝って貰っていたんだよ」
ポチとは白狼で、タマは白虎だと言う。クリスは夢馬の彼女の弟が異世界転生してとか…はぁ?夢馬の彼女?!
「彼女…いたの?」
初耳である。
「いた…よ。母さんの弟子で成美っていう、歳上の女性だよ」
夢馬の好みって、歳上だったのか…だから、私と仄には目もくれなかったのかぁぁぁぁぁ~!
「やっぱり、乳の大きさ?」
「はぁ?何を言っているんだ?それだと、俺はホルスタイン好きになるじゃないか。おれは黒毛和牛の方が好きだよ」
見た目ではなく、中身なのか。う~ん…