---夢民---
マズい…寝坊した。このままでは遅刻をしてしまう。走る。電車を降りて走り、駅を出て走り、門が見えて走り、門が閉まる前に学校の敷地内に入り、教室へ向かって走っていく。今日はテストである。期末試験の初日である。徹夜で勉強していた筈が、寝ていた。徹夜故、目覚ましをセットしていなかったのが敗因である。始業のチャイムが鳴り始めた。鳴り終わる前に、教室に飛び込まないと、試験が受けられないかもしれない。
幸運にもチャイムが鳴り終わる前に、教室の扉を開けて中に入れたのだが、突然光に飲み込まれていった…
◇
光が霧散していくと、真っ暗な場所にいた。手足は動かない。何が起きたのか?周囲を見回そうとするが、何も見えない、何も聞こえない。ここはどこだ?どういう状況なのだ?
目の前に突然、文字が浮かんだ。
名前無し ジョブ:受精したての受精卵
初期スキル:念話
スキル
王家の血…奴隷化無効
パーソナルスキル…前世のスキルを持ち込み済み
と…ツッコミどころ満載の内容である。受精したての受精卵に転生したのか?って、俺は死んだのか?はて?まさか、教室の扉に黒板消しがセットされており、当たり所が悪くて、死んだのだろうか?
で、スキル『王家の血』って、俺は王族の子供なのか?テストとか無いといいのだが…うん?待て待て、俺の性別は何だ?女性だと、ヤローにやられるのか。それはイヤだ。お願いです。男でお願いします。
日々、成長していく俺。まだ自発呼吸は出来無いが、思考は出来る。母体を通して、周囲の音や声が聞こえる。
『今回は大量に女性が手に入りましたな』
『あぁ、そうだな。我が王家は、異世界から召喚した女性の血で成り立っている』
異世界から召喚した女性?まさか、クラスメイトかな?って、俺だけ転生ってことか?そうか!遅刻ギリギリだったせいで、転移に巻き込まれて死んだってことか。ラノベで手に入れた知識から正解を導き出した気になった。まぁ、概ね正解だろうな。
『男達は戦士にする。異世界の者は、特殊なスキル持ちが多いのが良い』
『えぇ、これで我が国は安泰です。毎年、あの召喚陣で、召喚しましょう』
そうなると、彼女も転移したのか。このロクでも無い王族に抱かれているのか?許せない。まだキスしかしていないんだぞ、俺は…
◇
受精卵から胎児になった気がする。手足の感覚が若干芽生えてきた。ラノベでの知識…魔力を感じ取る練習を始めた。体内にある魔力を体内で循環させ、臍の緒から母体の魔力も貰う。臍から伸びているロープ状の物が臍の緒だろうな。うん?隣に誰かいる。双子ってことかな?呼び掛けてみるが、返事が無い。俺と違い、前世のPSを引き継いでいないのかもしれない。いや、そもそも転生者で無い可能性もあるな。
外から聞こえる会話から、現状が分かって来た。転移させた女性達は、薬で意識を奪い、王家の子作り専用の女体にしているようだ。まず王が好みの女性とやりまくり、1年の間に妊娠しない女体は、爵位持ちに払い下げになるらしい。そして、1年後、新たに異世界から女性を転移させて…を繰り返している王家のようだ。なので王家の者は異世界人の血が濃くなり、特殊な能力持ちが多いらしい。そして、この国の国民の殆どが、転移者もしくは、その子孫らしい。クソみたいな王国である。
今回生まれるのが、男なら第25王子になり、女なら初めての姫になるらしい。俺、25人目の王子になるのかな?25番目ともなると、産まれて直ぐに養子に出されそうだな。
『お兄ちゃん…がんばってね』
妹から念話が届いた。俺の隣にいるのは女で、俺は男だった。要するに彼女は初めての姫である。で、俺は無事男の子になれた。
『初めての姫だって、良かったな』
『お兄ちゃんと一緒に居られる?』
『まず無理だな。25番目だと…』
『イヤだよ~。毎日、話し掛けてくれるのは、お兄ちゃんだけだし』
まぁ、子宮にいるのは、俺と妹だけだからな。そう言えば、両親が話し掛けて来ないなぁ。母親は意識が無いから無理だが、父親はどうしたんだ?
◇
妹との二人の時間は楽しい。時には俺の前世の知識を教えたり、時には二人で魔力の鍛錬をしたり、時には妹に抱きつき、頭を撫でたり…そう言えば、俺と妹の会話は、念話と呼ばれるテレパシーで実現しているのだろうか?まだ声を出せないし、言葉を話せないはずだが、
『リンク…妹と距離に関係無く、念話での会話が出来る』
目の前に文字が浮かんだ。なるほどスキルのようだ。任意に自分のステイタスって見られると便利なんだけど…
『ステイタス…各種情報を見られる』
また文字が浮かんだ。『ステイタス』と念じると、
名前無し ジョブ:妊娠6ヶ月の胎児
スキル
ステイタス…各種情報を見られる。
王家の血…奴隷化無効
リンク…妹と距離に関係無く、念話での会話が出来る。
パーソナルスキル…前世のスキルを持ち込み済み
と表示された。これは便利である。妹に教えておく。
『凄い…流石はお兄ちゃんだね』
妹も出来るようだ。そうなると一卵双生児かもしれないな。妹に一卵双生児に付いて教えておく。
『お兄ちゃんと同じ顔なの?嬉しいな』
と、喜んでいるが、俺は美男子では無いので、妹は美少女では無いかもしれない。ごめんな…