俺の周囲にゴブリンが展開している。何かを喚いている。俺にはゴブリンの言葉は分からない。攻撃してくるゴブリンを刀で切り裂いていく。
『そのゴブリンの集落を殲滅してくれる?』
脳裏に響くミカエルからの念話。簡単に言わないで欲しい。俺は自分の世界に戻れば、単なる中学生だぞ!
パーティー仲間のクズとクキが俺を護る様に展開してくれている。我武者羅にゴブリンを斬り殺していく俺。辺りはゴブリンの血煙で、生臭さを感じる。その臭さを捕らえたのか、オークの群れが乱入してきた。最近、このパターンが多い。時間が経てば、オーガ達もやって来るだろう。
幸い、今回はオーガで来る前に、ゴブリンとオークの群れを倒し斬れた。ゴブリンの討伐証明を切り取るクキ、オークの討伐証明を切り取るクズ。俺はクズからオークの遺体を受け取り、アイテムバックへと収納し、食える部位、売れる部位、捨てる部位に選別していく。それが終われば、、依頼を受けた冒険者ギルドへと戻る。
◇
護﨑守人…俺が生まれた世界での名前である。俺の物心付く前に両親は異世界に永住を決め、離婚し、それぞれ違う相手と再婚し、子供をもうけていた。俺の物心が付く前から俺には、異父、異母の妹がいた。俺の物心を付く前から、俺達は母さんの配下であるミカエルとルシファーに育てられていた。
意味が分からん。俺の両親は何がしたいんだ?
俺の住んでいる家の敷地に三連鳥居があり、そこを潜ると異世界へと行ける。それが普通だと思っていたのだが、友達の家には三連鳥居が無かった。そして、認められている者では無いと、異世界へは行けないようだ。いや、行けるといえば行けるのだが、それは神隠しと呼ばれているようで、行ったら戻れないらしい。認められている俺は、行き来自由であるが、友達の数人は神隠しに遭い、俺の産まれた世界にはいない。
俺は両親の正体を知らない。母さんの配下が天使長と魔王って時点で、ナニカがおかしいだろう。パーティーメンバーの二人は父さんの配下で、クズが九頭竜と言う頭が九つある龍で、クキは九鬼という九鬼衆のボスが正体である。普段は俺と同じ人間形態であるけど…
妹もおかしい。父さんの娘であるナインは九尾の狐であり、母さんの娘であるグレイは、天使なのに悪魔のような尻尾がある。俺はなんなんだろうか?
異世界から俺だけ戻り、家で待つ妹達の食事を用意する。
「今日はオークのカレーにする。ナインはご飯を炊いて、グレイは野菜を切って」
「「はぁ~い」」
アイテムバックから、今日狩ったオークの肉を取り出し、処理をしていく。肉にしてしまえば、豚肉となんら変わらない。余分な脂身をクリーニングして、後でラードに加工する。近くの揚げ物屋に売れるのだ。異世界とこの世界では通貨が違うので、それぞれで稼がないと生活が出来ない。まだ、妹達は小さい為、異世界で暮らせないらしい。異世界産まれなのに、不思議である。
◇
小学校、中学校に通った俺。一方、妹達は未だ人化が出来ず、通えない。なので、学校から帰ってきて、異世界で狩りをして、夕食をした後、妹達に勉強を教える波目に。俺の自由時間は寝るだけである。まぁ、やりたいことは無いので問題は少ない。狩りで心身共にヘトヘトになるので、何かしたいとは考えられないのだった。
摩訶不思議な生活を経て、俺は漸く高校生になった。高校生になっても、あまり生活は変わらないけど…お祝いとして、両親から妹達に人化の能力が贈呈された。俺に祝いは無いのか?
「お兄様と高校へ通います」
とグレイ。
「ニイチャと学校へ行くんです」
とナイン。二人共俺と通学を希望していた。ミカエルが事象を操作し、俺と同じ高校に入学した妹達。いいのか?そんな改変をして。世界に歪みが生じ無いのか?
「大丈夫ですよ。人間って意外に適応力ありますから」
と、天使長の声。適応力で済む問題なのか?
そして、初登校…
「また、同じクラスなのね」
って、いきなり女子に声を掛けられた。誰だ、コイツは?
「うん?その顔は…私を誰か分からないの?小学校、中学校と9年間も同じクラスにいたのに。西園寺よ!西園寺綾香よ!」
俺に詰め寄る女子。記憶に無い。
「悪い。記憶に無い」
「なんでよ~!義務教育期間9年間を無遅刻、無欠席で通して、中学卒業時に一緒に表彰されたでしょ?」
それも記憶に無い。なんでかな?
「悪い。記憶に無い。お前の勘違いだろ」
「はぁ~?」
異世界で生き抜くことで必死で、こっちの世界の記憶は曖昧なのが原因である。西園寺を放置して、妹達と席に着いた。