第10話(壱) いけない双子の社会人
「ここか……」
車窓から見えている、煙突から立ち上る煙が精力的に稼働している空気を臭わせる。
「良かったね健二君。特別に企業見学がさせてもらえて」
「はい。見学先が従来の会社と違うのは、何だか引っ掛かりますけど」
運転席で、どこか機嫌良さそうにハンドルを握っている担任の香子先生に、無難な受け答えをしながらもう一度窓の外に目を見やる。
夏休みを目前に控えた土曜日、僕は風邪をこじらせて欠席した企業見学に、今さらながら行かせてもらえることになった。残念ながら見学先はその時の企業(ゲーム会社)ではなく、単なる工場だったのだが校長がわざわざ僕のためにセッティングしてくれたのだという。
案外、彼は僕が思っているよりも思いやりのある大人だったりするのだろう。
「ほいじゃけど、校長先生には感謝せんといけんね。その節は先方に頭まで下げたっちゅう話じゃけえ」
「えっ、あのお寒い頭頂部をさらしてまで頼んでたんですか。だったらせめて、ウィッグぐらい……」
「こら!」
先生に怒られて思わず言葉を止める。
「そういうことは口に出して言うちゃあいけんじゃろう、心の中にしまっとかんと」
「全くもってその通りです、失礼しました」
だけど、偉そうなことを言っている先生の口元もハッキリと緩んでいた。
「さぁ、着いたよ。降りようや」
「はい」
そんなこんなで車は無事に駐車場へと到着して、僕たちは正門までの道のりを歩き始めた。本来なら門のすぐ近くにも止められる場所があるのだが、部外者である僕たちは客人専用の駐車場に止めることが義務付けられていたので、面倒ながら遠回りをするしかなかったのである。
「えぇっと、一水高校2年5組の林葉健二君と引率の岸村です。今回は、企業見学と言う形で工場の中を見て回りたいんですけど……」
「林葉君ですね、そちらの学校から話は聞いてます」
正門に着くと、すぐに先生は守衛を相手に諸々の手続きを始める。なるほど、不審者の侵入を防止するために、門の前にはガードマンが常駐しているってわけだね。
「健二君。入門許可証もろうたけえ、中に入ろうや」
「はい」
思ったよりも手続きは早く済み、僕たちは工場内へと足を踏み入れたのであった。
僕たちが見学する会社は、工場を運営する親会社ではなくその下請け企業だった。
「あんたらが今日見学する林葉君と岸村先生じゃね、待っちょたよ」
下請け会社『ティー・エムエム』の事業所に着くと、役職と思しき男性が入り口の前に立っていた。
「まぁ、ここの工場の中にも下請けはよけ(=たくさん)あるけど、ここ選んだのはええチョイスじゃった、早速中を見て行こうや」
男性が僕の肩を叩いて後についてくるよう促す。
「えっと、私は……」
「ああ、あんたはええの。先生が作業場を見回りしても何もなりゃせんじゃろ。あんたは休憩所で待っちょきんさい、お茶ぐらい出すけえ」
「はぁ」
どうやら、肝心の内部までは先生同伴とはいかないみたいだった。
「先生、退屈かもしれませんがそういうことみたいですよ」
「うん、先生のことは気にせんでええけえ、健二君は会社っちゅうもんをその目でしっかり見てきんさい」
そんなことを言いながらも先生の目はどこか寂しそうだった。
「ほいじゃあ行こうや、あんたも早よう中を見てみたいじゃろ」
「はい」
僕は力強く返事をすると、足早に歩を進めている男性の後に続いた。正直なところ、そんなに見てみたくもなかったし、どうせなら先生と一緒に回りたかったのだけど。
「……ここで人工の強い糸を製造して、それが実用化できるかどうか検査室に持って行くっちゅうわけ」
「はぁ」
どうやらこの会社は、様々な用途の糸を作る紡績工場のようだった。
「ほいで、ここの部署はその製造する機械を一通り使い終えたら分解して洗浄するところじゃね」
「なるほど。それをあっちの部署でまた組み立てて製造室に投入する、と」
「その通り。よう分かっちょるじゃないね」
感覚で口に出した見解が、どうやら正解を導き出していたみたいだった。
「それからあっちが作り損じの不良品をこまこう(=細かく)に切って捨てたり出荷用のケースを定期的に洗うところ」
「はい」
「そいで、この向こうが……」
僕は男性(後に知ったのだがどうやら係長だったらしい)に連れ回されながら『ティー・エムエム』の作業場を隅々まで見学した。全体的に悪い作業場ではなさそうだったものの、やはり請負という立場上、施設面や衛生面ではそれ相応と言わざるを得ないような部分もチラホラと見受けられた。だが、そういう面での不備が、思わぬ形で僕にラッキーな展開をもたらすのであった。
チャイムは鳴らなかったものの、時計の針は正午を差していた。
「おお、もう昼飯の時間じゃね、戻らんと」
「すみません、僕の方は12時半までが見学時間ということになってるんですが」
どうやらここの昼休みの開始時間は、うちの学校とは大きく異なっているみたいだった。
「そうかね。じゃったらわしは戻るけえ、半まで自由見学にしちゃげるけえ気になったところを見て来んさい」
「気になったところって……」
「そんなもん自分で考えりゃええじゃろ、わしゃ飯食いに戻るけえ」
「あっ」
係長はそこまで言うと、そのまま踵(きびす)を返して休憩所に引き上げてしまった。
「そんなに腹が減っていたのかよ」
小声でつぶやきながら一つ息を吐く。
――そういえば……
股間を迸(ほとばし)る尿意に、今さらながら大事な場所を聞き落としていたことを思い出す。この会社、トイレはどこにあるんだ。
――まぁいいや、適当に練り歩いてればどこかに案内表示があるだろう。
そんな気持ちでクリーンルーム入室用の更衣室前に差し掛かったその時だった。
「わっ」
更衣室前のドアが自動で開いて、中から童顔の少女が現れる。
「全く、新人だからといってあのオバサンたちは私を監視し過ぎだぞ」
その後に続いて、先ほどの少女と全く同じ顔つきをした少女が姿を見せる。
「サヨが悪いんでしょ、すぐ仕事そっちのけでエアコンの前を独占するんだから」
「スズだってちょくちょく扇風機に当たりに行ってるじゃないか」
サヨとスズというのはこの子たちの名前のことか。雰囲気としてはサヨの方が積極的タイプで、スズの方は優等生タイプ、といった感じである。同じ顔が二つあるということは、察するにこの二人は双子ということか。
「それよりもトイレだトイレ、冷風に当たり過ぎてすっかり膀胱が膨らんでしまった」
「そうね、私も……」
二人が通路の端を右に折れ、トイレへと向かっていく。
――……って、トイレっ!?
その言葉に反応して、思わず彼女たちの後を追いかける。この時、僕は感情ではなくただ感覚の赴くままに、トイレという名の桃源郷を追い求めていたのである。
「ここが……」
通路を抜けた外の渡り廊下の先のドアに「便所」というプラカードが貼り付けてある、何ともお粗末な建屋。中に入ると両脇に男子用の小便器(×2)と、消毒液どころか石鹸すら置いていない手洗い場。そして、正面には和式便所の個室が二つ。
「……」
個室にドアはあるものの、そのドアはかなり小さく下の隙間は丸見え状態。間違いなく、床に顔をすり付けなくても中が見える、そんな造り。
「おい、誰だお前」
手洗い場の前で立ち話をしていた先ほどの少女の一人――サヨが僕に気づいて声をかけてくる。
「あ、僕は今日この会社に見学に来ている高校生です」
「ふーん。それでこのトイレに何の用なの?」
今度はスズの方が訝しむように声をかけてくる。
「いや、オシッコがしたくなったから、それだけです」
『……』
無難な受け答えをしたつもりだったが、彼女たちはどこか腑に落ちないといった具合に顔を見合わせる。
「まぁいいわ。ここは男女共用なんだし、オシッコがしたいんだったらそこのアサガオ(=小便器)に勝手にしてちょうだい」
「スズ、私たちも」
「そうね」
少女たちが互いに別々の個室へと入る。まるで、男に見られるかもしれないということなど意に介さず、といった具合に。
「……!」
尿意がどこかに吹き飛んでしまった僕は、すかさず体を屈めて下の隙間を覗き見た。すると、すぐに右の個室に入ったサヨの局部が視界に飛び込んでくる。
――この子は和式トイレを逆向きで使うのか……
プシャァァァァァァァァ……
間髪入れずツルツルの局部が開いて、サヨが放尿を開始する。大事な部分に右の人差し指と中指を添えながら排泄する様が何とも艶めかしく、すぐに股間が熱くなる。そして。
「……」
左の個室に視線を移すと、上手い具合にそのタイミングでスズのお尻が落ちてくる。どうやらこの子はオーソドックスなトイレの使い方をするらしい。
「んっ」
プシャァァァ……
やや小ぶりなお尻の右側に右手を添えながら、スズが放尿を開始する。
「……」
少し後ろに下がって、僕は両方がバッチリ見える位置から二人の放尿を覗き見た。局部を晒して勢い良く透明の尿を噴き出すサヨと、お尻を晒して控えめに黄色い尿を垂れ流すスズ。ここに来て、僕はようやくこの企業見学に来て良かったと思える瞬間に立ち会えたのである。
ジャ~!!
やがて、大事な部分を拭き終えた二人が水を流しながら同時に立ち上がる。
「やばっ」
僕はすぐに小便器の前に移動して、何事もなかったかのように放尿を開始した。
「何だお前、まだいたのか」
「すみません、何と言うか妙に出が悪くて」
個室から出てきたサヨに右脇からペニスを覗き見される。
「言い訳はいいからさっさとオシッコ出しちゃいなさいよ」
左脇からはスズが急かすようにペニスを覗き込んでくる。
『早くオシッコ出ろ、出ろ』
結局、僕は彼女たちに一部始終を見届けられる形で放尿をする羽目になってしまった。
こうして、一足遅れた僕の企業見学は、最後に甘酸っぱい思い出を残してお開きとなったのである。
「どうじゃったかね、工場の中は」
帰りの車の中で香子先生がそんなことを聞いてくる。
「うーん。設備的には少し古めかしいところが多かったと思いますけど、それはそれで良いところだったと思います」
今時あんな大きな工場であんなトイレがあるなんて、そっちのマニアにとっては観光スポットのレベルである。
「うん、健二君がそんな活き活きした顔しとれば、同伴は出来んかったけど一緒に来た甲斐があったっちゅうもんじゃね」
「そうですね」
まぁ、先生が同伴していればあんな場面に出くわしたかどうか分からなかった上に、出くわしたところで覗くことなど出来なかっただろうけど。
「この分なら、夏休みまでの残りの学校生活も頑張れそうです」
「うん、健二君がそう言ってくれりゃあ先生も嬉しいわ」
先生の心からの満足そうな笑顔に、思わずこっちも嬉しくなってくる。ともあれ、こういう経験が出来るのならばまた、どこかの会社を見てみたい。そんな風に思える今回の企業見学だった。
第10話(弐) 月夜のマーメイド
パシャッ、パシャッ、パシャッ!
日陰の長椅子に腰掛けて、水を弾く音が響き渡る場所に目を凝らす。
「お前、今学期ほとんど水泳参加しとらんじゃないか。少しぐらい泳いでもえかったんじゃないんか」
「そうかもしれませんけど、体調が優れないんです。特にここ最近は寝起きなんて咳が酷くて」
「まー今回は大目に見ちゃるが、2学期も最初に何回か水泳の授業をやるけえよう考えちょけよ」
「はい」
体育教師に釘を刺されながら再び水を弾く音が響き渡る場所――プールの中に目を凝らす。
「ウォーターアッパーじゃあ!!」
「きゃっ、もうあんたら飛沫(しぶき)を散らしんさんないね!」
既に泳法の授業を全部終えていたため、今回の水泳は授業とは名ばかりの水遊びのようなものだった。
「うりゃあ、水中逆立ち!」
「ゲヘヘヘヘ。水死体のマネ」
「あ! 海パンがちょっと破れたでよー」
悪ふざけのノリで騒いでいる連中を見ながら、何とも寂しい気持ちが込み上げてくる。そう、本来なら僕だって、あの中で水と戯れていたはずだったんだ。
「……」
確かに体調が優れないのは本当だったけど、決して水泳を見合わせるほどのものではなかった。だけど、僕はどうしてもあの輪の中では溶け込む前に虐げられる存在になってしまうのである。
記念すべきプール開き最初の授業でいきなり突き落とされ、屈辱的な本年度第1号の入水者になってしまったこと。クロール中に海パンを引っ張られ、何度も脱がされそうになったこと。ついには急に後ろからしがみつかれて沈められ、溺死しそうになったこと。そんな状況が続けば、どんな自慢のスイマーでも流石に授業をボイコットするというものだろう。
「……」
人の心境を知りもせず、バカ騒ぎを繰り広げている連中の汚い顔を見やりながらため息を吐く。
「健二君。ちょっといいかしら?」
そんな僕の前に、ふと養護教諭の早紀先生が現れた。
「構いませんよ。ちょうど暇してましたから」
「だったら保健室に来てちょうだい。話したいことがあるの」
先生が僕の手を取り強く引く。
「すみません、健二君をお借りしますね」
「おう、授業を受けん奴じゃけ好きにせえ……ってオイそこ! 何を排水溝の栓抜いて遊びよるか!!」
そして、そのまま先生は体育教師の許可を取って僕を連れて行ってしまったのである。
「水泳の補習授業?」
「そ、補習授業。健二君はロクに水泳の授業を受けてないから、夏休み前に2時間ほどやる必要があるの」
保健室で僕を立たせたまま丸椅子に腰掛けた早紀先生が、右手でボールペンを揺らしながら当然のように言ってくる。
「心配しなくても補習を受けるのはあなた一人だけだから、のびのびと泳げるわよ」
「そうなんですか」
よく分からないが、あのバカ騒ぎ連中がいないのなら気兼ねをする必要はなさそうだ。
「で、その補習はいつあるんですか?」
「今夜よ」
「えっ」
これまた当然のように言ってくる先生を前に思わず目が丸くなる。
「心配しなくても、同伴の先生がいるんだから溺れたって介抱ぐらいしてもらえるわよ」
「えっ、同伴の先生って誰が……」
先生が僕の言葉に耳もくれず、机上のメモ用紙にサラサラとペンを走らせてそれを手渡してくる。
「これが詳細ね。とりあえず書き落としはないと思うから、大事に持っておきなさい」
「は、はぁ」
「これで用件はおしまいよ。とっとと授業に戻りなさい」
ギュム。
「うん、デカ過ぎず小さ過ぎずの相も変わらず手ごろなサイズ」
「それはどうも」
そして、何故だか先生にペニスを握られて僕はプールへと戻ったのであった。
いつの間にやらプールの周りは救急車とパトカーでごった返していた。話を聞くと、何でも生徒の一人が排水溝の栓を抜いて遊んでいるうちに、誤って頭が溝の中にハマってしまったらしく、抜けなくなってしまったというのだ。どうにか到着した救助隊に抜いてもらえたものの、重体で意識がなく結構ヤバい状態なんだとか。
「……」
最も、その生徒というのが僕にしがみついて何度もプールに沈めようとしてきた奴だったので、同情する気はこれっぽちもなかったのだけど、彼の愚行のおかげで即座に新しい水と入れ替えることが決定したので、今夜補習を受ける身として感謝だけはしておきたい。もちろん、それを差し引いても彼が多大な迷惑を僕だけでなく、周囲にまでかけ散らした事実に変わりはないのだが。
午後7時半より2時間、学校のプールにて補習。
海パンがなければフルチン参加も認めます☆ 早紀より
妙に可愛らしい字体で書かれた走り書きに目を通しながら、夜道の通学路を歩く。
もちろん、肩にかけていた水泳用バッグの中には海パン(+ゴーグル)を入れていた。
――それにしても、夜の学校なんて初めてだな。
生ぬるい風と、どこかの家の子供の泣き声が蒸し暑さを無駄に増幅させる。こうなってくると、プールの中が否が応にも恋しくなってくる。
ようやく着いた夜の学校は、どういうわけだか正門が開いたままの状態になっていた。まるで、僕が来るのを待っていたかの如く。
――何とも不用心な……
僕は門を閉めると、一目散にプールへと向かった。時刻は現在午後7時20分、着替えの時間も入れると、あまり余裕があるとは言えない時間帯だった。
速やかに着替えを済ませ、プールサイドまで行ったものの辺りは薄暗く、月の光でとりあえず周囲が見える程度だった。
――何だよ、誰もいないじゃないか……
時間が時間なだけに、人気のなさが妙に怖くて背筋が震えてくる。そもそも、本当にこんな時間に補習があるのだろうか。不意に僕の中で懐疑的な気持ちが膨らみかけようとしていたその時だった。
「来ちょったんやね健二君」
聞き覚えのある声とともに水着姿の女性が姿を見せる。
「あ」
紛れもなく、その人は僕のクラスの担任である香子先生だった。
「早紀先生から話は聞いとるよ。水泳の授業の出席時間が足りんけえ、補習をせんにゃあいけんのんよね」
「はい。じゃあ、補習の担当は先生なんですか?」
「うん。健二君はうちのクラスの生徒じゃけえ、先生が見ちゃげる必要があると思うてね」
こんな時間、わざわざ僕のために担当教科でもない授業の補習を見てくれるその気遣いに、思わず胸が熱くなる。だけど、それ以上に心がざわついてしまうのは。
「先生、その水着は……」
「あぁこれかね?」
月光の淡い輝きに照らされて露になっている先生の水着に目が釘付けになる。
「どうやろうか?早紀先生に勧められて買ってみたんじゃけど、マイクロビキニっちゅううんは今年のトレンド水着じゃったりすんやろうか?」
「え~何と言いますか、あー、うん」
布面積はきわめて小さく、胸の谷間と股間の筋をこれでもかという程に露出した赤水着。もちろん、後ろは紐で割れ目を隠しているだけの、お尻を盛大に晒したTバックスタイルである。
「すごく似合ってますよ。やっぱり香子先生は、そういう水着の似合う女性だと思います」
「うん、ありがとう。じゃけど」
先生がモジモジとしながら僕との距離を詰めてくる。
「その、泳ぐ前にはみ出しちょりゃせんか1回見てもらえんかね?」
「あ、はい。いいですよ」
僕は両膝をついて、先生の股間が目の前に迫る距離まで顔を近づけた。
「……」
息を荒げながら両目を見開き、先生の股間を凝視する。残念ながらもとい、どうやら申し訳程度の赤い布は、肝心な部分をしっかりと覆い隠しているみたいだった。
「大丈夫ですよ、デリケートエリアはしっかりと隠れています」
「それじゃったらええんやけど……健二君の吐息がさっきからずっとかかりよって、何かこそばゆいんよね」
「すみません。つい興奮しちゃって」
だけどここまで来ればついでに。
「じゃあ次は後ろもはみ出しチェックをするんで、お尻をこっちに向けて下さい」
「こ、こんな感じじゃろうか」
先生が素直にお尻を向けてくる。
「うっ」
その大きくて綺麗な肌色の桃を眼前にして、思わず言葉に詰まる。何度も見ている先生のお尻とはいえ、夜のプールに水着姿で拝むそれはトイレで見る時とは違う官能美が秘められているのだ。
「では失礼します」
超が付くほどの至近距離でTバックのお尻にお目を凝らす。なるほど、ナイスなまでの安産型……じゃなくて、こちらの方も赤い布が肛門をしっかりとコーティングをしているみたいで問題なさそうだ。
「こっちもオッケーです……っと」
すっかり興奮して前のめりになっていた僕は、そのまま体勢を崩してしまう。
ブニュッ。
「け、健二君」
気がつけば、僕は先生のお尻に顔から突っ込んでしまっていた。
「うぷぷ」
本当はもう少し埋めていたかったけど、あわてて先生のお尻から顔を引き離す。
「すみません、わざとじゃないんです」
「ま、まぁ別にええんじゃけど、これはエッチ系のイベントとかじゃなくてあくまで補習なんじゃけえ、もう少し気を引き締めてやろうや」
「そ、そうですね」
「じゃあ始めようかね」
「はい」
僕たちは適度な準備体操を済ませると、水を入れ替えた一番風呂ならぬ一番プールに一緒に入水した。
「うわっ、冷たい!」
思わず不意打ちの水鉄砲をくらった村人のような声を上げてしまう。
「うん、気持ちは分かるけど補習なんじゃし我慢しようや」
僕とは対照的に先生はいたって平気そうだった。
「じゃあまずはクロールから泳いでみようかね」
「はい!」
こうして、僕は先生に見守られながら夜のプールを泳ぎ続けた。クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、それぞれを50mずつ時間の許す限り。
最初に先生が泳ぐ見本をプールサイドから追いかける。その姿はさながら人魚のようで、艶めかしくも美しく、ずっと眺めていたい気分になってくる。だけど、僕のために先生がここまでしてくれているその気持ちに応えなければ、男が廃るというもの。
「ほいじゃあやってみようか」
「はい!」
先生の想いを胸に僕もまた水の舞台に浮かぶ。始めは泳いでいくうちに体がそれて、気がつけば隣のコースに着いていたりもしていたが、感覚を研ぎ澄ませていくうちに少しずつまっすぐに進むようになっていた。
「ええフォームしとるね。流石は水の星座の子じゃわ」
そんな褒められ方をされながら(かく言う先生も水星座に属するのだが)自分でも分かるほどに動きが洗練されていく。そうやって、学校生活最高の補習授業は澄んだ清流のような達成感に満ち溢れたまま終わりを迎えたのであった。
「健二君、まだじゃろうか?」
「準備オッケーです、このぐらいでいいでしょう」
用具室にあったスコップで適度なサイズの穴を掘って、埋められる程度のスペースを作る。
「じゃけど外でするのはあんまり気が乗らんのんよね」
「気持ちは分かるんですけど、緊急時なんだし我慢して使いましょうよ」
「うん……」
腹部をおさえながら、少し前かがみになっている先生の姿が妙に可愛らしい。
「やっぱり水泳の補習は休日返上でもええけえ昼間に限るね……」
「そうですか?僕としてはこういうシチュエーション、悪くないと言うより最高にそそられるんですけど」
補習が終わってものの数分もしないうちに、先生は僕に猛烈な便意を訴えた。どうやら、夜のプールですっかりお腹を冷やしてしまったということらしい。しかしトイレを使うにも、校舎は鍵がかかっていて入れず、プールのトイレは男女ともに故障中。そこで、更衣室裏に穴を掘って臨時トイレの作成と相成ったわけである。
「ああ、もう出そうやわ!」
先生が悲痛な声を上げながら穴に跨りビキニを下ろして屈む。
ブビッ、ブリリッ! ブリブリブリブリブリッ!! ブプッ、ビチャア!!
「はぁ、はぁ……」
肛門からおびただしい限りの下痢便を噴き上げながら、先生が肩で息をする。
「香子先生……」
お尻から流れ落ちる脂汗が、彼女を襲った腹痛の激しさを物語っているかのようだった。
プシャァァァ……ブリッ、ブビビ!
「何か、ウンチとオシッコが一緒に出よるのって変な感じじゃね」
自分の糞尿がたまった穴の中を一瞥しながら、先生がそんなことをつぶやいてくる。相変わらず、排泄行為を僕に見られること自体には何の抵抗もないみたいで、実に気持ちが良い。
「さあ、どうなんでしょうね」
それがどんな感じなのかというのは何とも言い難いが、一つだけ確実に言えることがある。
「だけど、先生の野外排泄ショット、すごくエロ可愛いかったですよ」
クチュッ。
あらかじめ多めに持参していたポケットティッシュの一つを開けて二枚重ねにして、先生のお尻にあてがう。
「健二君、今回はお尻ぐらい先生が自分で……」
「気にしないで下さい。こんな時間までわざわざ僕のために付き合ってくれたほんのお返しです」
先生の便でグチュグチュになった一つ目を穴の中に廃棄して、二つ目をお尻にくっつける。
「……優しいんじゃね」
「……先生の影響です」
月明かりに照らされた、頬を染めている先生を前に思わずつられて赤面する。
そんな感じにお尻と局部を拭き続けているうちに完全に汚れがなくなったのは五つ目の二枚重ねの時だった。
「はい、キレイになりましたよ。立ち上がって下さい」
「うん」
お尻を拭き終えた僕は気を紛らわせる意味で大きく深呼吸すると、糞尿と使用済みティッシュの入った穴を埋めて埋没させた。
「じゃあ、シャワー浴びて帰りましょうか。ついでにお尻も洗い流せるし」
「そうじゃね」
僕たちは、どちらからということもなく寄り添いながらシャワー室へと行った。どこか官能的な三日月と、満天の星空に見守られながら。