※この作品はR-18です。

すかもんっ!   作:Žž‰€—時園礼

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第18話 奈美子ちゃんのひり出す快楽

 おぼつかない足取りでフラフラと歩いていたコミケ仲間の丸尻桃美ちゃんを見たのは、下校中の通学路だった。

「桃美ちゃん、どうしたんだ一体!」

 普段の元気な彼女からは、想像もつかないような痛々しい有様に思わず声を上げてしまう。土埃にまみれた服。大きなアザの作られた右腕と左手首。ミニスカートの下から見える赤く腫れあがった両足。

 幸い顔面が無傷だったため、見るに堪えない状態ではなかったものの、それでも重傷と呼んで差し支えない程に痛めつけられていたのは容易に見当がついた。

「なぁ健二、手当してーからちょっと家に寄らせてくれ……」

「分かった。と言うかよく分からないけど、ひとまず応急処置だ、うん」

 僕は桃美ちゃんに肩を貸すと、努めて足早に家までの道を急いだ。左手にカバンを持っていたので歩きづらくはあったものの、手負いの仲間を前にそんなことは構っていられなかった。

 

 

「野糞女を秒殺した報復?」

「ああ。たまたま寄った本屋の裏で、目の前に便所があるのに野糞してるデカ尻女がいたから注意したら絡んできてよ、ものの数十秒で返り討ちにしてやったってわけさ」

 僕の部屋で救急箱を取り出して、一人で勝手に治療を始めている桃美ちゃんがことの経緯を説明する。

「そしたらよ、その女の連れの男が口を挟んできてウダウダ言いやがってよ……」

 何か後ろめたい事情でもあるのか、少しずつ桃美ちゃんの声のトーンが下がっていく。

「それで、どうしたの?」

「……蹴った」

「蹴るなよ!」

 薄々とそんな気がしないでもなかったが、予想通りの展開に思わず大声で突っ込みを入れてしまう。

「そりゃ俺だって悪かったとは思ってるよ。だけど瞬間的にカッとなっちまったら止められなくてさ、そのままそいつとケンカになって……」

「で、今度は返り討ちにされたと」

「そーだよ。最初の蹴り以外は一発も決められずに完敗ってオチさ」

 桃美ちゃんが自嘲気味に鼻を鳴らす。その悔しそうな顔からは、負けたこと以上に屈辱的な何かがあるように見えた。

「……まさか相手は本気を出してなかったとか?」

「…………」

 ふと感づいたことを口に出すと、桃美ちゃんが露骨に顔を背けてしまう。

「いや、これだけ手足を痛めつけられているのに顔に一つも攻撃を受けていないとか、偶然にしては意図的すぎるじゃないか。まるで手心を加えたって言うかさ」

「……だよ」

「ん?」

「図星だよっ!」

 ギュム。

 桃美ちゃんが、自棄(ヤケ)になったかのような大声を出して僕のペニスを握ってくる。

「ああそうさ、アイツは明らかに手加減して戦ってたよ! そんで俺はそんな相手にすら勝てなかったんだよっ!」

「だとすると、その人は相当に強い男だと考えて間違いないね」

「ついでに言うと、スカートの中に手を入れられて『女であることに免じて顔とお尻は大目に見てやる』とか言われて、ケツ撫で回されちまったんだよっ!」

「……だとすると、その人は相当に変態紳士だと考えて間違いないね」

 誰とは断定が出来ないけど、そういう言動とそういう行為をするような人間がいそうな場所には大いに心当たりがある。ついでに言うと、元凶となった野糞女に関しては間違いなく僕の知っている存在だ。

「クソっ、Tバック穿いてる時に触られたんじゃ、生尻を触られてんのと一緒じゃねーか……しかも気持ちの良い触り方してきやがってよ、あの野郎…………」

「事情は察した、僕に任せてくれ」

 ムギュ。

 僕はハッキリとした声音でそう告げると、スカートの中に手を入れて桃美ちゃんのお尻をわしづかみにした。

「な、何だよ。そんな揉まれ方されたら感じちまうじゃねーか」

「少なくとも、桃美ちゃんを気持ち良くさせるお尻の触り方に関しては僕の方がその人より優れている、それだけは覚えておいてくれ」

「そうだな。お前、本当に優しくて心地良い手付きしてやがるよ……」

 さっきまでと比べ、桃美ちゃんの表情が格段に和らいでいた。

「健二、後で俺にチンポしゃぶらせてくれよ……」

「そんなので喜んでくれるんだったら、根元までしっかりくわえ込ませてあげるさ」

 僕は桃美ちゃんが家に帰るまでの間、たっぷりと淫靡な時間を共有して彼女のケアに尽力した。そのムチムチとした体は思った以上に刺激的で、気がつけば僕は今まで以上に桃美ちゃんへの想いを深めることになった。最も、本番行為には及ばなかったので、童貞卒業とまでは行かなかったのだけど。

 

 

 翌々日の日曜日、僕は漫画家たちが集うアパート・望気荘(のぞけそう)に向かった。桃美ちゃんを簡単に倒してしまうような、スーパーサ〇ヤ人だか北斗〇拳の継承者だか分からないような猛者がいるとしたら、間違いなくあそこしかない。

 そんな確信とともに、僕は古めかしくも愛おしい望気荘へと足を進めていたのである。

「おやおや、君はコミケでお馴染みのスカトロジスト君ではないか」

 ふと、アパートの手前まで差し掛かったところで背中から声をかけられる。

 振り向くと、自警団「パイナップルパトロール」メンバーの一員である小夜(こや)氏がいた。

「ああ、どうも小夜さん久しぶりです」

「……」

 そして、隣には含み笑いが妙に引っ掛かる男性もいた。

「ふみひでに御用かい? 残念ながら彼は今、筆休めに夢遊病のごとく街をふらついてる真っ最中だ」

「いえ、今日は別件です……ふみひでさんがいないのは残念ですが」

「ふん! あんな地に足もついてねーような天然フワフワ野郎に憧れてるようじゃお前もたかが知れてるな、小僧」

 小夜氏との会話に水を差すかのように、隣に居た男性がトゲのある言葉をぶつけてくる。

「えーっと、あなたは……」

「俺の名前はきトう。望気荘に燦々(さんさん)と輝く恐怖の暗黒太陽さ」

 奇妙な自己紹介をしながら男性――きトう氏が、自分に親指を向けてドヤ顔を披露する。おいおい、そんな痛々しい自己紹介をした後でポーズを決めても、コントにしかならないぞ。と、言いたくなる気持ちは心の中に押し込んで。

「きトうさんですね。僕は林葉健二といいます、よろしくお願いします」

「林葉、ねぇ……とりあえず記憶しといてやるよ。お前のような奴でも、俺の人生のどこかで役に立つことがあるかもしれないからな」

 無難な挨拶に対してもトゲのある言葉が投げかけられてくる。

「まぁ普段は高尚な雑誌で定期的に描いてる俺だけど、たまには低俗アンソロジーに参加するのも悪くないと思ってここに来ているから、覚えておいてくれ」

「は、はい」

 この偉そうな物言い、不愉快とまでは言わないけれど、なんて疲れる人なんだ。まるでこの数年、酒浸りで暇さえあればテレビを見ながら愚痴を吐き散らかしている、僕の父親を相手にしているかのようである。

「じゃあな。せいぜいその安い目で夢中になれるような作品を見つけろよ、はっはっはっはっは」

 何がおかしいのか大きな笑い声を立てながら、きトう氏は曲がり角へと姿を消した。

「……気にしないでくれ。彼のトゲトゲしさは業界ではお約束のようなものだから」

 きトう氏がいなくなったのを見計らって小夜氏がフォローを入れてくる。こういった細かな気遣いが出来る辺り、流石はパイナップルパトロールのメンバーである。

「大丈夫です。あんなの学校やコミケで一部の連中に受けてきた仕打ちに比べたら、カスリ傷にも値しません」

「そうかそうか。初めて会った時に比べると、君も随分と成長したものだな~」

 小夜氏が感慨深そうに僕の両肩を優しく一叩きする。

「私はこれで失礼する。あんな男とはいえ、これから私も奴と一緒に某隔月誌の新作の打ち合わせをしなければならないからね」

「小夜さん……」

「では、また今度な。次に会った時は君のさらなる成長を期待しているぞ」

「はい、ありがとうございますっ!」

 僕は、きトう氏の後を追って曲がり角に消えていく小夜氏に大きく返事して、深々と頭を下げた。久々に出会った小夜氏ではあったけど、やはり好感の持てる同人作家に変わりはなかった。

 

 

 望気荘の敷地内に入ると、きトう氏に続いてまたしても見たことのない男性が入り口の前を竹箒たけぼうきで掃いていた。本来ならそういうことは管理人がする仕事じゃないかと思うのだけど。

「すみません。いつもここに、口の悪いツリ目の美人がいませんでしたか?」

「……涼姫のことか?」

「はい、その人です。巻上涼夏さん、そう、通称涼姫」

「……」

 男性が何も言わずこちらに一瞥をよこすと、その目つきからはふみひでほどの耽美さこそ備わっていなかったものの、炎のような力強さが見受けられた。そう、例えるなら桃美ちゃんが激しく燃え盛る赤い炎ならば、この人はゆるやかながらも強い熱を帯びて燃え続ける青い炎。

 ……もしかして、手心を加えながらも桃美ちゃんを叩きのめした男というのはまさか。

「えっと、つかぬことをお伺いさせて頂きます」

 僕は男性の空気に気圧されながらもおそるおそる口を開いた。

「先日僕の仲間が野糞している女の子に注意したら、ケンカになってその子を秒殺しちゃったらしいんですよね。そしたら今度はその子の連れが現れて僕の仲間を……」

「よく分からんが、君の仲間とやらを叩きのめしたのは俺だ」

「やっぱり!」

 話の途中であっさりとカミングアウトされて思わず大声を上げる。見た目から何となくそんな気がしないでもなかったが、いざ本人の口から告げられると妙に実感がわいてくる。

「まずはじめに、手加減をしてくれたことには感謝しておきます。でも、どうしてあんなケガを負わせちゃったんですか。元はと言えば野糞を注意した僕の仲間に絡んできた巻上さんに否があるというのに」

「ああ、まぁそういう考え方もあるかもしれないけどな」

「確かにあなたも一発だけ蹴りを受けた手前、多少の報復措置はやむを得ないかもしれません。ですが、フラフラになるまで攻撃を加えるなんて過剰防衛のレベルです」

「……とりあえず涼姫に会ってこい。今、3階の空き部屋で休ませている」

 男性は詫びの言葉を口にせず、涼姫の居場所を告げると竹箒を置いて再び僕に目を向けた。

「これも何かの縁だ。一応、君の名前を聞いておくとしよう」

「僕は林葉健二といいます、アニメやゲームを愛する現役の高校生です」

 男性に問われて反射的に自己紹介をする。何気に本題から話を逸らされた気がしないでもないんだけど。

「そうか、君がふみひでの言っていた健二君とかいうスカトロジストだったんだな」

 その嬉しそうな口ぶりから察するに、この人はふみひでと友好関係の深い作家さんだったりするのだろうか。

「俺の名前は八乙女もんとのすけ。サークル『八乙女けんきゅう所』で活動している同人作家だ、覚えておいてくれ」

「あ、ちょっと」

「後は涼姫に聞いてくれ。俺は自前の戦艦のメンテに行ってくる」

 男性は、妙に個性的な名前を名乗り上げると、背中を向けてそのままどこかに出かけて行ってしまった。

「……」

 男性が桃美ちゃんを叩きのめしたことが明白になったにも関わらず、どういうわけか彼に対しては怒りや不快感のような感情が湧き起こってはこなかった。むしろ、そんな相手だというのに心のどこかで仲間意識さえも芽生えようとしていたのである。

 

 

 望気荘の毒舌美人な管理人――巻上涼夏さんは八乙女氏の言葉通り、3階の空き部屋で不機嫌そうに瓶ビールをラッパ飲みしていた。見てみると、ところどころにアザと傷痕が出来ていて、桃美ちゃんに秒殺されたというのが容易に伺える。

「何だぁ、健二じゃねーか。さてはあたしのトイレを覗きに来やがったな、このデバガメ野郎」

「違うよ。今日は少し真面目な話だったりするんだ」

 大股開きで胡坐(あぐら)をかいている巻上さんの隣に座って、努めて神妙な顔を繕いながら本題へと切り込む。

「君、昨日本屋の外で野糞してたんだってね?」

「ブボッ!」

 巻上さんが飲んでいたビールを盛大に噴き出すもさらに先を続ける。

「それで僕の仲間が咎めたら君、彼女に絡んで返り討ちにされたそうじゃないか。そしたら今度は八乙女って同人作家が乱入して彼女をあっさり叩きのめしたって話を聞いた」

「……けっ、あたしが外でデカ尻出してウンコしてちゃ悪いのかよ」

 バツが悪いのか、巻上さんが露骨なまでに目を背けながら鼻を鳴らす。

「確かに彼女も行き過ぎるところはあるけど、元をただせば君がトイレ脇で野糞するような奇行に走らなければ彼女はケガしなくて済んだんだぞ、分かってる?」

 少しキツい言い方だったかもしれないが、桃美ちゃんの傷ついた姿を思うとこれだけは言わずにいられなかった。大体目の前にトイレがあるのに、あざ笑うかのようにその横で野糞とか何だそりゃ、という話である。

「しゃーねーだろ、そこのトイレ男女共用で個室が一つしかなくて使用中だったんだよ」

「それにしたって少しぐらい我慢出来ただろ。それを空いてないから即決で野糞とかさ、どんだけこらえ性が無いのかと……」

 ギュム。

「個室はダチの奈美子が排便撮影に占拠してたんだよっ!!」

 巻上さんが僕のペニスをつかんで大声を張り上げる。

 その表情と声音からはいつものおちゃらけた空気が完全に消えていて、普段からは想像もつかないような真剣さがにじみ出ているかのようだった。

「おいおい。気持ちは分かるけど、排便撮影とかダチの奈美子とかいきなり言われても僕だって……」

 僕が巻上さんのいつになく激しい剣幕に困惑気味なっていたその時だった。

「ヤッホー☆ 涼姫、私の昨日のウンチ姿、バッチリ撮れてるよー」

 玄関のドアが開いて、女子高生と思しき女の子がビデオカメラを片手に嬉しそうに姿を見せる。

「ん? だれだれ、お客さん?」

 女の子が僕に気付いてつぶらな瞳を大きく開き、下から覗き込んでくる。

「二人きりの時にオチンチンを揉まれちゃうなんてお兄さん、よっぽど涼姫と仲良しさんなんだね」

「えっと、何と言うか、これは……」

 ギュム。

 そして、返答につかえている僕のペニスを巻上さんの上から握ると、にこやかに笑いながらこんな自己紹介をしたのである。

「私の名前は葉枷奈美子。可愛い女の子のお尻とウンチが大好きな女子高生だよ、よろしくね☆」

 

 

「じゃあ、奈美子ちゃんが八乙女先生に排泄姿を撮影させてたから、巻上さんが外でせざるを得なかったってこと?」

「そうだよ。私、和式トイレでウンチしてるところを男の人に撮ってほしかったから、八乙女さんに頼んだの。そしたら二つ返事でオッケーしてくれてさ」

 大いびきで一升瓶を抱きかかえて眠りこけている巻上さんを部屋の脇に移動させて、奈美子ちゃんから事情を聴く。どうやら彼女は、自棄やけになって荒唐無稽な作り話をでっち上げていたわけはなかったということらしい。

「昨日は八乙女さんがお尻を撫でてくれたおかげで、とってもいいウンチが出たの。あなたにも見せてあげたかったなぁ☆」

「ああ、うん。それは確かに見てみたかったけどさ……」

 目をキラキラとさせながら、排泄模様を恍惚として語る奈美子ちゃんが初対面なのに妙に愛しく思えてくる。

「おっと、自己紹介がまだだったね。僕の名前は林葉健二。アニメとゲームを愛する現役の高校生だよ」

「えー! あなたがミスターの言ってた、夢見るスカトロジストの林葉健二さんなんですかー!!」

 とりあえず無難な自己紹介をしたつもりだったが、奈美子ちゃんに必要以上に驚かれてしまう。それはさて置き、ここでも僕は夢見るスカトロジストという二つ名で通っていたりするのか。

「えっと、大体の見当はついてるけどミスターというのはまさか……」

「はい! 海王星を守護星に持つステレオタイプのミスター魚座こと、ゆめみふみひで先生です!」

「ああ、そりゃ聞くまでもなかったね」

 おそらく、僕の噂はふみひでの口から望気荘中に広まっているのだろうと確信する。もちろん、ここの住人や関係者に悪い人はいない(一部を除く)と思っているので、どうということはないのだけど。

「でもでも、ホント夢みたいです。その健二さんとこんな形でお会い出来るなんて~」

「わっ、ちょっと!」

 奈美子ちゃんに不意打ちで押し倒されて上に乗っかられる。

「一度こんな風に、お尻を割ってじっくり話したかったんですよ~」

「いや、割るのは腹だしこんなマウントポジション取られて、じっくり話せるわけないでしょうが」

「私、背は低いしぽちゃっとしてるし、おまけにお尻とウンチが趣味の変態さんだから彼氏がいないんだ。だったらここで既成事実をメイク・ラブしちゃって……」

「わっ、マズい、マズい、マズいよ!」

 ちょっと待て、望気荘で逆レ〇プ展開とか住人たちにバレたら、一発でアンソロジーのネタにされまくりだろ。

「くっ……」

 どうにか押しのけようとするも、奈美子ちゃんの力が意外に強くてピクリとも動かない。

「さーて、スカドル奈美子の念願の初エッチが今、ここに……!」

 奈美子ちゃんの舌が僕の口の中にヌルリと挿入されそうになっていた、その時だった。

「君たち、何をしているんだ」

 低音の美声が耳に行き渡って思わず僕たちの動きが止まる。振り返ると、いつもと変わらぬ耽美な容姿を携えたふみひでが腕を組んで立っていた。

「あ! はい、これは、その、えっと……」

 奈美子ちゃんが僕から離れてパッと立ち上がり、しどろもどろになりながら説明を試みるも全く話にならない。片や、目の前のふみひでは言葉に出さずとも、全てお見通しといった具合である。

「奈美子ちゃん、涼姫が安静にしてるんだぞ。なのに、どうしてその傍らでそういう行為に走ってしまうんだ」

「は、はは、どうしてですかね……」

「俺は君の容姿も性格も好きだし、趣味や嗜好は最高レベルだと思っている。だけど、場をわきまえない淫行をするのならしばらくは望気荘への出入りを禁止に……」

「ま、待って下さい! 流されそうになった僕にも責任はあります!」

 気がつけば、僕は奈美子ちゃんの前に手をかざして彼女をかばっていた。

「その……奈美子ちゃんは確かに強引だったけど、本当はちょっとだけ嬉しかったです。何と言うか、僕なんかを心から慕ってくれて……」

「健二さん……」

「あ! これ、社交辞令とかじゃなくて本心だからね、本心」

 ちょっと前まではモテない男の代名詞のように言われ続け、彼女いない歴をネタに同級生からも家族からも散々揶揄されていた僕にしてみれば、奈美子ちゃんの気持ちは本気で嬉しかった。ただ、それが突発的だったことと、ケガ人が休んでいる隣での行為だったことが問題だったというだけで、言うまでもなく彼女への嫌悪感など微塵もない。だから、そんな彼女が僕への過度の好意のために出入り禁止になるなんて事態は、何としてでも避けなければならなかったのである。

「……なるほど、つまり健二君は奈美子ちゃんの火遊びは自分にも責任の一端がある、と言いたいんだな」

「はい! 何か罰則があるのだったら男である僕が負うべきだと考えています」

「ちょっと、そんな……」

 負い目を感じているのか奈美子ちゃんがオロオロとしていたが、僕は後に引くつもりなどなかった。

「そうか、ならば」

 ふみひでが一つ息を吐き両手を僕の方に添える。そして、淫靡ながらもどこまでも済んだ瞳でゆっくりとこう告げたのである。

「奈美子ちゃんを連れて、今すぐ彼女のトイレシーンを撮影してきてくれ」

 

 

「わーい☆ 健二さん、下から顔覗かせてブイ、ブイ、ブイ」

「おいおい、トイレの隙間から見つめ合うとか僕たちはどれだけ変態なんだよ」

 改装した望気荘の女子トイレ(和式)で、大きな下の隙間から顔を出してVサインを送っている奈美子ちゃんに苦言しながらも拳を握る。

「でも、盗撮風に撮れというふみひでさんからの指示だから、あくまで自然体排泄だよ、いいね?」

「はい!」

「じゃあ、頼むよ!」

 隙間越しにグータッチを交わして、ビデオカメラを回しながら撮影の準備に入る。その向こうでは、いそいそと支度を整えていた奈美子ちゃんのお尻がプリンと落ちてきた。

「うっ……」

 ビデオ越しながらも和式に跨る奈美子ちゃんのお尻に思わず股間が熱くなる。しかし、私情を理性で制御して、黙々とカメラを回す。

 プシャァァァァァ~……

「はー」

 そんな僕の前で、奈美子ちゃんが気持ちよさそうな声を上げながら放尿する。さり気なく右手の指をお尻に添えている辺りが、不自然にならない範囲での作為的な仕草で艶めかしい。

「んっ……んー!」

 ブウゥゥゥゥッ!!

 今度は間髪入れず肛門が開いて大きな放屁音が轟く。

「……」

 臭い。とにかく臭い。こんな、スカンクでもしないであろう悪臭に満ちたオナラを人間の女の子がするなんて、もはや超常現象の世界である。

「う~ん」

 やがて、そんな奈美子ちゃんのお尻から、お待ちかねの茶色い塊が姿を見せる。

 ムリムリムリムリムリッ……ムリッ! ブリブリッ、ブプッ! ブビュルッ!

 見事なまでの健康な1本糞と、そこからひり出される緩めの便たち。察するに、彼女はかなり溜め込んでいたものと思われる。

「……」

 使う、絶対に使うぞ。これはどう考えても今夜のオカズに決定だ。そんなことを考えながら、なおもカメラを回す。

 ピッ。

 すると、奈美子ちゃんは脇のボタンを押し、ウォシュレットを起動させてお尻を洗浄した。

「よいしょっと」

 奈美子ちゃんがお尻を動かしながら、局部にも洗浄水を当てる。僕は、声が出せないのでそんな奈美子ちゃんの仕草を前に、ただ鼻息を荒げるばかりだった。こうして、ふみひでプロデュースによる僕と奈美子ちゃんの盗撮風・自然排泄撮影は、最高の形として出来上がったのである。

 

 

 望気荘での撮影から数日後、たまたま立ち寄った件の本屋で何の因果か僕は桃美ちゃんと奈美子ちゃんに同時に鉢合わせてしまった。

「で、お前は俺のためにとノコノコ望気荘に出向いてエロ撮影に精出して、チンポ勃たせてムクムクと帰って来たってオチか」

「別に敵を討つと言ったわけじゃないだろ。僕は単に全体的な真相が知りたかっただけさ」

「そーですよ。健二さん風情が八乙女先生とガチで戦って、勝てるわけないじゃないですか。うっかりあばら骨の5、6本でも砕かれてしまったらあなたが責任取れるんですか」

「いや、そういうフォローはいいから」

 そして、本を吟味する時間すら与えられず、外のベンチに座らされて事情聴取と相成ってしまったのである。

 どういうわけか、桃美ちゃんと奈美子ちゃんに挟まれるような形で。

「でも、桃美さんだって悪いですよ。ろくにトイレの状況も知らずに外でウンチしてる涼姫に文句を言うなんて。反省して下さいね」

「いや、俺だって反省はしてるよ。あの八乙女って野郎に手加減までしてもらってやられちまったんだからな……涼姫って奴のことは知ったこっちゃねーけどさ」

 流石は安定の桃美ちゃん、反省点は八乙女氏に完敗したことの方なんですね、分かります。

「やっぱアレだな。腕っぷしに自信があるからって、正面切ってガンガン戦ってるだけじゃ勝てねー相手もいるってことだよな、うん」

 桃美ちゃんが首を縦に振りながら一人で納得する。まぁ確かに、ケンカは単なる腕相撲じゃないんだから、上級者同士だと力だけで勝てるようなものではないのだろうけど。

「しっかし健二よー。お前、また変な女に引っ掛かっちまってんのな。何なんだよ、このウンコが好きとかいう頭のイカれた奴は」

「そう言ってくれるな。奈美子ちゃんは、僕の性癖を熟知した上で慕ってくれている素敵な女の子なんだ。きっと君もすぐに仲良くなれるさ」

「はい、私もそう思います。だって、健二さんを間に置いて私たちには深いつながりが出来てしまったのですから」

 奈美子ちゃんがさっきとはケタ違いの素敵なフォローを入れてくる。桃美ちゃんの性格上、嫌いな相手だったら初対面であろうと喰ってかかるだろうから、見た限りでは奈美子ちゃんを嫌がっているとも思えない。

「それに、気が強くてムチムチでお尻の大きな桃美さんは、案外私の好きなタイプだったりするんですよ」

「……」

 桃美ちゃんがまんざらでもないといった顔つきで奈美子ちゃんを見やる。その顔は、いつもの強さではなく、優しさを前面に押し出したかのようなとても穏やかな菩薩の顔だった。

「えへへ、私たちは同志です。きっと既に強い絆で結ばれちゃってたりするんです」

「えっ」

 奈美子ちゃんが左手を僕の股間に添える。

「……ケッ、そうかもしんねーな」

「はい?」

 そして、桃美ちゃんがその上に右手を重ねる。

「……」

 気がつけば、僕の股間の上で見事なまでの友情の証が出来上がっていた。

「桃美さん、その大きなお尻を今度たっぷり堪能させて下さいね☆」

「お前こそ、今度ウンコしてるところを覗いてケツ触ってやるから覚悟しとけよ」

「はは、巻上さんがいないのは残念だけど、僕を通じて君たちが仲良くなれたのなら本望だよ」

 僕は両手を広げて二人の肩を抱き寄せると、満面の笑顔とともに偽りのない気持ちを口にした。

「わーい、健二さん公認で桃美さんとお友達になっちゃった! 私、嬉しくてお外でウンチしたくなっちゃう!」

「そういう糞みてーなこと言うんじゃねーっての! 大体、話を聞いてりゃお前はよ~……」

 僕の腕の中で、桃美ちゃんと奈美子ちゃんがなおも続ける会話に胸が熱くなる。両脇で繰り広げられる猥談を聞きながら、添えられた手の下のペニスはビンビンに膨れ上がっていた。

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