第19話(壱) 迷惑身内の撃退法
今回は、たとえ身内であれど非難されて然るべき人間は、己の心を偽ることなくハッキリと非難するべきである。
そんなことを否が応にも痛感してしまう、そんなお話である。
「健二君、来賓の方が会いに来られちょるんやけど……」
昼休み。いつもの屋上飯を済ませて図書室に行こうとしていた僕は、担任の香子先生に呼び止められてそんなことを言われた。
「……」
学校まで僕を訪ねてくるような来賓に心当たりはなかったが、それ以上に先生の歯切れの悪い言い方が妙に引っ掛かった。
「ま、まぁ話が長引くようじゃったら午後の授業に遅れても気にせんでええけえゆっくり話してきんさいね」
「……分かりました、ありがとうございます」
何か特別な相手が来ているような気がしていたものの、特に無視する理由もなかったので僕は客人に会うべく来賓室へ向かった。
どの道、既に香子先生の授業が済んでいたので仮に午後の授業に遅れても、僕自身にはあまり関係のない話だった。
来賓室で待機していた相手を前に思わず体が固まってしまう。
「健二くん、久しぶりじゃね。元気しちょった?」
「あ、ああ。今のところは無難にやってるつもりだよ」
「そうかね、そりゃえかった」
数か月ぶりに見たその顔は紛れもなく僕の母親だった。
「……」
酒浸りの父親と暮らしている気苦労の影響か、前に出会った時と比べて母親は少しやつれているかのように見えた。
「それにしてもこんな時間にこんなところまで僕を訪ねて来るなんて珍しいじゃない。何か緊急の要件でもあるの?」
「うん、それが父さんのことなんじゃけどね……」
父さんといっても僕ではなく母親の父さん。
つまり、僕からしてみれば祖父・つまりおじいちゃんのこと。
「ジイちゃんに何かあったの?」
「それが、あんたを呼べっちゅうて病院でガタガタ騒ぎよってね……」
「はい?」
母親が言うにはこういうことだった。
一昨日の夕方、一人暮らしの祖父が階段から転落して、右足を骨折して病院に運ばれた。
そして、運ばれた病院のベッドの上で何度となく「健二を呼べ! アイツに看病させろ」などとわめき散らしているのだという。
「どうして病院で面倒見ている人を僕が看病しなけりゃならないのさ」
「知らんいね。『家に帰らせろ、アイツが付きっきりで介護すりゃあ済むことじゃ』っちゅうて看護師さんにもほげ散らかしよるんじゃけえ」
「全く、迷惑にも程があるでしょうが……」
悪い意味で傍若無人な祖父の下劣っぷりに頭を抱えてしまう。
学生の僕が付きっきりで介護をするなんて不可能なことぐらいは常識で考えて分かるだろうに。
「とにかく、お母さんも極力どうにかしようと思うけえあんたも考えちょきんさい」
「分かったよ」
母親はそこまで言うと席を立ち、来賓室を後にした。
「……」
香子先生は気遣ってくれるようなことを言っていたが、昼休みはまだ十数分ほど残されていた。
だが、すっかり気を重くしてしまった僕は、職員室にいた先生に(要所をぼかしながら)事情を告げて速やかに早退した。
今は香子先生以外の教師の授業なんて、とてもじゃないけど受けられる気分ではなかった。
「随分とお早いお帰りね。香子のお尻は満喫出来たのかしら?」
家に帰るとトイレの花子さんが部屋に寝そべって同人誌を読んでいた。
「良いわね、これ。二人のスカトロ漫画家が授業後のトイレタイムを別視点から描くなんて最高の発想だわ」
「当たり前だろ。僕なんかこの同人誌で何発も絶頂を迎えて……じゃなくて!」
今はオナニー自慢をするような状況ではないので某合作同人誌の話題はひとまず遠くに置いといて。
「どうにかしてくれ花子さん。僕、気分悪くて早退しちゃったんだ」
「何よ、オチンチンを舐めて欲しいんだったら舐めてくれってハッキリ言えばいいじゃない」
「違うんだよ、家庭の事情がややこしくってね……」
僕は、今日の昼休みに来賓室で母親から伝えられた不愉快なことをそっくりそのまま花子さんに告げた。
「……つまり、そういうこと。ジイちゃんの身勝手は今に始まったことじゃないけど今回のは特にタチが悪いと思ってね」
「…………」
「どうしたの?」
花子さんの性格なのか僕の伝え方が悪かったのか、彼女は黙ってうつむいたまま体を打ち震わせていた。
間違いなくそれは怒り、それも激昂と呼んで差し支えないレベルの憤怒の感情に支配されている、そんな姿だった。
「健二っ! 今すぐその老いぼれを収監している病院を教えなさい! あたしが縊(くび)り殺してきてやるわっ!!」
「花子さん……」
憎しみをむき出しにしているかのような形相で僕の腕をつかんで花子さんが大声を上げる。
もちろん、僕のために憤ってくれる彼女は嬉しくて愛おしいけど、今の僕が望んでいるのはそういうことではなくて。
「ありがとう、花子さん。だけど、殺すのだけは待ってくれ。そんな男だけどアレでも一応、認めたくはないけど僕の家族なんだ」
「健二……」
花子さんの頭に手を添えて優しく愛撫する。
「それに、あの人に簡単に死なれたら困るんだよ。色々と積み重ねてきたものがあるという意味でもね」
「……どういう意味かしら?どうせ不愉快な話なのでしょうけど聞かせてちょうだい」
「分かった。とりあえず、お風呂にでも入ってゆっくり話すとしよう」
僕は、花子さんのお尻を軽く一揉みすると浴室に入って入浴の準備を整えた。
浴槽に水を張っている間、僕たちは何も言わず、ずっと寄り添い合って互いのぬくもりに心を委ねていた。
「あの人はね、小さいころから弱者を恫喝して服従させる才能には長けていた。少なくとも、僕は本人の口から何度もそう聞かされた」
丸椅子に腰掛けた花子さんの背中を流しながら、前に祖父から繰り返し聞かされ続けた武勇伝を暴露する。
「何よそれ。悪事自慢とは随分と汚らしい男ね、あなたと違って」
「だけど、あの人の小賢しいところは巧く周囲に悟られないよう仲の良さを装うところにあるんだ」
祖父の薄汚いドヤ顔を思い出し、心身ともに汚された気分になりながら先を続ける。
「例えば金持ちの子に外食のランチをおごらせる。だけど、自分一人が食べていたら目につくから同じ物を頼んでその子にも食べさせる。そうすれば周りも特に違和感を覚えないだろ?」
「確かに、言われてみればその通りね」
「その後で『これで俺たちは共犯だ。チクったらお前も叱られるぞ』と釘を刺しておけば相手も周りを頼れない。その手法で何度となくゆすりとたかりを続けていたんだとさ」
「……最低ね。そんな奴があなたの親族であること自体がおかしいを通り越して間違っているレベルだわ」
僕にスポンジで背中を擦られながら花子さんがため息を添えて呆れ果てる。
「そんな奴が偉そうに文句を垂れ続けてきた果てに僕の家族は荒れに荒れ、僕は高校進学を期にやむなく家を出て独り暮らし……全くもってバカげた話だよ」
「じゃあ、健二は家を出たい一心で実家から離れた高校に入ったってこと?」
「そうなるね。ま、当時から学校でいじめられていた僕としてはそれで良かったのかもしれないけど、結局はこっちでもいじめられる辺りがやっぱり僕だったりするんだよね」
肩をすくめながら前に回り、花子さんの太ももから局部にかけてのラインをスポンジで撫でるように擦る。
「だからさ、ジイちゃんには簡単に死なれるぐらいなら徹底的に痛い思いをさせて苦しみながら長生きしてもらいたいんだ。いっそポックリ逝った方が良かったと言ってしまいたくなるぐらいにね」
少し極端な言い方だったかもしれないがそれが僕の偽らざる気持ちだった。
いかに身内といえども悪事は悪事、現在進行形でいじめを受けている身としてそれだけは徹底しておきたかったから。
「それに、うっかり死なれて葬式にでもなったら参加しないと後々親に文句を言われるし、参加をしたら嫌味な親族たちに絡まれるし、どのみち僕にメリットなんてないんだよ」
「健二……心中お察しするわ。でも、あたしはあなたの味方よ。一緒に対策を練って乗り越えてみましょ」
花子さんが泡まみれの体で立ち上がり、手を差し伸べる。
「……」
そして、僕は迷うことなくその手をつかむ。
「花子さん、君は僕の大事なパートナーだ。信じさせてもらうよ」
「ええ、信じなさい。あたしたちは強い絆で心を結ばれた同志なのだから……」
僕たちは、どちらからともなく空いた方の手で互いの局部に手を添えて、その感触を確かめ合いながら抱き合った。
そして、泡まみれの体同士を擦り合わせながら一時の享楽を心行くまで満喫したのである。
翌日、香子先生に連絡を入れて学校を休んだ僕は祖父が入院している病院へと向かった。
「ジイちゃん、言われた通り来てやったぞ」
「何が言われた通りか! 俺が入院してから何日も待たせやがって!!」
病室に入って挨拶をした途端に轟くような声で怒鳴り上げられる。
幸い、一人部屋だったので他の患者さんに不快感を与えなかったのは救いだったけど、これはあまりにも理不尽な怒りというヤツである。
「そう言ってくれるなよ。僕だって休みたくない学校を休んでまで来てやったんだから」
「うるさいっ! お前は俺の奴隷じゃけえ介護するのが当然じゃろうが!!」
来たよこれ、奴隷だってさ、奴隷。
薄々感づいてはいたけど、やはり祖父は僕のことをそういう目でしか見ていなかったということらしい。
だけど、そういうことならこんな人間に中途半端な情けは不要である。
「おい、汗かいとるけえ俺の体を拭け!」
体を半分起こしていた祖父が枕脇に置いてあったタオルを僕に投げつけてくる。
僕は、それを左手で受け止めるとほんのりと怒気を含ませながらゆっくり口を開いた。
「ジイちゃん、礼を言うよ。わざわざ僕を人生最後の会話相手に指名してくれるなんて全くもって最高のチョイスだ」
「はぁ? お前、何を言って……」
「残念なのは70年も生きたあんたが僕の1年分ほどの苦労もしなかった、その無駄なまでの悪運の強さかな!」
パン!
僕が一つ手を叩いた、その音が合図だった。
直後、天井が開いて大型の鉄製タライが祖父の頭部を直撃する。
ゴオォォォォォォン!!!
「がはっ……」
お寺の鐘を突くような良い音が鳴り響き、祖父が脳しんとうを起こしながら倒れ込む。
だが、タライの音もまた合図だった。
「フハハハハハ! ここでようやく私の出番のようだな!」
突如、窓が開いて赤いマントを付けた仮面の男が姿を見せる。
すると、祖父の姿を確認するなり喉を切り付け声帯を引き抜いてしまったのである。
「うわ……」
祖父のやって来たことを考えれば同情こそしないものの、見ている側としてはやはりエグい。
「ふん!」
そして、追い討ちと言わんばかりに4本のナイフを祖父の四肢に突き立てるとすぐさまこっちに向き直って僕の胸ぐらをつかむ。
「……勘違いするな、これは貴様のためではない。私は愛する花子の願いを聞いてやったまでの話だ」
「は、はい……」
「もし、貴様が花子を泣かせるようなマネをしたならば、次は貴様がこの老いぼれのようになるということだ……覚えておけ!」
赤マントは僕を壁に叩きつけると、そのまま笑い声を上げながら自分が犯人であることをアピールするかのようにわざわざ窓を叩き割って逃走した。
僕は少しだけ呆然としていたが、すぐにナースコールをして事情を伝え、祖父を集中治療室へと移送させた。
こうして、僕と花子さんの共同戦線は理想的な形で幕引きを迎えたのであった。
「……」
えっ?肝心の花子さんはどこにいたのかだって?
そりゃあなた、僕の合図とともに天井を開けてタライを落とした仕掛人がいたでしょ、その人に決まってるじゃないの。
ちなみに、天井が開いたのは原理もへったくれもない、妖術ってヤツね、妖術。
その後、集中治療室に搬送された祖父は命に別状こそなかったものの、声を失い四肢も八割近く機能不全状態と化した。
当初は僕に疑いの目が向けられたものの、返り血を浴びた赤マントの目撃情報が多数寄せられたことで無実が証明され、すぐに不問となった。
そして、事件を経てすっかり僕に恐れをなしてしまった祖父は、僕との関わりを完全に断ち切ってしまったのである。
チュプッ、チュプッ……
「ああ、すごくいいわ、この勃ちっぷり……健二のオチンチンを舐めているとあたしの股間まで濡れてきちゃう……」
「何だよ。今日のは随分とねちっこくて激しいじゃないか」
事件の翌日、僕はもう1日学校を休んで部屋の中で花子さんと戯れていた。
本来ならば香子先生の授業がある日だったので休む予定もなかったのだが、どういうわけか心身ともに花子さんを求めて止まない気持ちが抑えられなかったのである。
「感謝するよ花子さん。考えたのは僕だけど、花子さんの魔力と人脈があったからこそうまくいったんだから」
「本当に感謝しているのなら、言葉なんていらないから後であたしのオマンマンをたっぷり舐めてちょうだい」
膨れ上がった僕のペニスを口の中で転がしながら付き膝体勢の花子さんが上目づかいで答えてくる。
何を隠そう実行者こそ花子さんと彼女の親友である赤マントの二人だったけど、祖父撃退劇の一連の流れを発案したのは僕だったのである。
最も、四肢にナイフを突き立てたのは完全な赤マントの独断であって、僕の中ではタライ落としと声帯切除までだったのだけど。
「それにしても、あなたも大胆なことを考えつくものね。だけどもう気は済んだんでしょ?」
「ああ、済んだよ。もうジイちゃんに対する不快感なんて微塵もないしむしろ心から長生きしてほしいぐらいだよ」
もちろん、事件後の状態をそっくりそのまま維持した上での話なんだけどね。
「それよりも花子さん、僕、もう……!」
「いいわ、よこしなさい……あなたの溢れ出るリビドーをっ……」
ビュルルッ、ビュルッ! ビュルビュクッ!!
僕のペニスは花子さんの口の中で絶頂を迎えて大きく弾け飛んだ。
「あなたのエキスは全部あたしの物よ……」
花子さんが恍惚とした表情で僕の発した口内の精子を喉の奥へと流し込む。
そして、徐(おもむろ)に立ち上がり、パンツを脱ぎ捨て自らの手でスカートをめくり上げる。
「さぁ健二、いらっしゃい……今度はあなたのお口があたしのオマンマンに触れる番よ……」
「花子さん……だったら僕も遠慮なく……」
今度は僕が膝を付き、花子さんの局部へと舌を伸ばす。
香子先生には悪いけど、この日ばかりは学校を休みながらも得たものが大きかったと言える、そんな有意義な1日だった。
第19話(弐) マネしちゃいけない下着ドロ
「健二君。最近この界隈で頻発している下着泥棒の犯人探しをあなたに依頼します」
放課後、帰宅途中の僕を呼び出した養護教諭の早紀先生が保健室に連れ込んでまで伝えたのはそんな妙な頼み事だった。
「ちょっと待って下さい先生」
たった一言で済ませて僕には目もくれず、保健室の資料を熟読している先生に思わず声をかける。
「あら、用件は告げたのにまだ私に未練があるのかしら?」
「どうして僕がそんな怪しいミッションに取りかからなくちゃいけないんですか、警察か自警団にでも相談すればいいでしょうに」
「それがどうも最近あなたのアパートの近所が狙われているみたいでね。だったらあなたに一任するのが一番手っ取り早い解決策かと思って」
「そんな理由で僕に任せるとかどんだけ適当なんですか」
我ながらあまりにも筋の通った突っ込みを入れてやる。
いくら大雑把でその場のノリでガンガン話を進めるタイプの早紀先生とはいえどこれはあまりにも無茶苦茶だ。
「そう。だったら適当じゃない方の理由であなたに一任させてもらうわ」
「えっ」
先生が急に真剣な面持ちになって僕の両肩に手を添える。
「岸村香子、棚田円香、巻上涼夏、葉枷奈美子、又下未衣、又下舞、重村麻梨乃……今、私が並べたこの名前、全員知ってるわよね?」
「ええ、知ってますけど」
担任の香子先生は当然として、後の顔ぶれも深くない関係の相手が混じってはいるものの、少なくとも顔を合わせれば会話をする程度の間柄ではある。
「そのメンバーがどうしたって言うんですか」
「現在の発生件数が10件。うち7名が健二君の知り合い。つまり……」
先生の手に力が込められ、まさかと思っていた最悪の事態が告げられる。
「あなた、捜査線上に浮かび上がっているのよ」
「あっはっは! 健二君が下着泥棒の有力候補とか何それ、サイコー!」
「笑わないで下さいよ。こっちはとんだ冤罪で迷惑こうむってるんですから」
家に帰って隣の部屋の留里さんに事情を話すと、彼女はこれでもかというぐらいに笑いながら僕の部屋を転げ回った。
「あーおかし~……でも、それが本当だったら健二君は本腰を入れて犯人を見つけ出さなきゃ後々ヤバいってことだよね?」
「そうですね。うっかり家宅捜索なんてされてしまったら、たとえ身の潔白が証明されても後味の悪さだけが残っちゃいますからね」
流石にこの部屋のお宝コレクションを見られてしまったら白黒以前に色々な意味で目を付けられるのは想像に難くない。
まして、それが警察やその関係者ならばなおさらの話である。
「じゃあ、犯人の目撃情報とかは寄せられてたりしないの?」
「それがですね、手がかりのようなものはあるみたいである程度の目星はついてるそうなんですけど……」
帰る前に早紀先生は、ヒントと称して2つの有力情報を僕に提供してくれた。1つ目は、盗難現場に数分間、魚の臭いが漂っていること。2つ目は、ここ数日ブルセラショップに女性用のランジェリーを同じ男が度々売りに来ているということ。
この2点から考察すると、犯人は臭いが染み込むほどに年季の入った魚屋の人間で、金銭的に困窮していることが窺える。
「何よそれ。聞くからに汚そうな男の犯行としか思えないわよ」
「ですよね……って言うか心当たりがあるんですよ、一人ほど」
「あら。そんな汚らしい人と関わっていると健二君まで汚れちゃうんだから気を付けなさいよ」
「いやいや、僕は相手にしたくないんですけど向こうから一方的に絡んでくるクチでしてね……」
僕は、ちょくちょく買い出しに行く近所のスーパー『セントラル・フーズ』の鮮魚部で主任を務める宮木チーフの話を留里さんに切り出した。
「何と言いますか『俺が切った刺身は取れたての新鮮で、後輩は新鮮な魚ですら腐らせてしまう』なんてお客さんに平然と吹聴するような人だったりするんですよ」
「嫌な男ね。そんな奴がいるようなお店のお刺身なんて食べる以前に見たくもないわ」
留里さんがウンザリした顔で全くの正論を口にする。
「僕も僕で『林葉君は学校のスーパースターなんじゃけえ次期店長を期待しちょるよ』とか『林葉君がおりゃあクラスも退屈せんでええじゃろう』とか顔合わせるたびに言われ続けてましてね」
「ふーん。でも、それって健二君のことを見込んでるとも考えようによっては……」
「彼は僕が1年の頃からいじめられ続けているのを知った上でそんな寝言をほざいているんですよ」
「やっぱりゲスね。その男、とんだお下劣マンだわ」
柔和な顔をしながらも、留里さんの口調に怒気が含まれているのを察知する。
「まぁ店での言動はさて置き、犯人は宮木チーフで間違いないと思います。パチンコ狂いの彼が金銭苦に負けて下着泥棒に走ったと考えるのが妥当な線でしょう」
僕は、うまい具合に話を本題に戻して留里さんの気持ちを和らげた。
「彼女もいない宮木チーフのことです。きっと香子先生辺りのTバックを汚さないレベルでクンカクンカして、満足したらブルセラショップで換金って流れを作ってたんじゃないんですかね」
「なるほど。つまり、可愛い女の子のパンツがたくさんあれば、いっぱいクンカしていっぱいお金が作れるから犯人にとっても都合がいい、と」
「そういうことになりますね……?」
ギュム。
ふと、何の脈絡もなく留里さんにペニスを握られる。
「留里さん?」
「ふふっ、健二君……私、いいこと考えついちゃった……」
留里さんが可愛いながらも妙に含みを秘めた笑顔で僕を見つめてくる。
「……」
自信に満ちたその瞳を見た瞬間、僕は犯人の敗北と自分たちの勝利を確信した。
翌日の夕方、学校から帰ると留里さんが僕の部屋で犯人をおびき寄せる下準備を整えていた。
どうしていつも僕の部屋に上がり込んでいるのか気にはなるけどそれはひとまず置いといて。
「健二君、犯人の主な活動時間帯は7時から8時ぐらいだったっけ?」
「そうみたいです。って言うか、その時間帯しか犯行に及んでいないみたいだから現れるとしたら間違いなくその辺りです」
「うふっ☆ 変態さんに私のティーパーティーをしっかり満喫してもらわなくっちゃね」
留里さんが自前の下着を次々と洗濯ピンチにぶら下げる。
そのどれもがTバックばかりで色とりどりなものだから全くもって目のやり場に困ってしまう。
「それにしても、こんなに干しちゃって留里さんはちゃんと穿いてるんですか?」
「あら。今の私はノーパンよ、ほらほら」
留里さんがタイトスカートをめくり上げて局部を僕に見せつける。
「いやいやいやいやいや、エッチなのは大いに結構だけどその前にお仕事でしょ」
「何よ、つれない子ねぇ」
留里さんが少しブスッとした顔つきで8枚のTバックを吊るしたピンチをベランダのフックにかける。
とりあえずこれで準備は完了だ。
「それでは、変質者が出現するまで電気をつけずに待機しましょう」
「はーい」
あえて部屋を暗くして、無人を装いより犯人をおびき寄せやすい環境をセッティングする。
時間はまだ5時半だったが、既に部屋の中は宵闇に支配されていた。
おおよその頃合いにして夜7時半ちょい過ぎ、息を殺して待機していた部屋でベランダの物音を察知する。
「あれは……!」
窓越しから見たそのシルエットは間違いなく人影だった。
「留里さん、今だっ!」
「ええ!」
僕が窓を開け、留里さんが女豹のような動きで人影に飛びかかる。
「覚悟しなさい下着ドロ!」
「ぐぎゃあっ!」
留里さんが鮮やかなまでの一本背負いを人影にくらわせる。
ドガアァァァッ!!
背中をアスファルトに叩きつけたその音を聞いただけでかなりのダメージを与えたことは想像に難くない。
だが、こんな時の留里さんはそれだけで終わらせない。
「さ~て……私のTバックに汚い手で触れたお礼はしっかりさせてもらうわよ~」
一度顔面を踏みつけた後で伝家の宝刀・四の字固めで締め上げる。
「ひぎ~、骨が折れるぅ!」
「あら、折れて困るような骨かしら?でも安心して。今日はずっと、折れる直前の寸止めを楽しむだけだから……」
「あ~……」
懐中電灯でその場を照らすと、思った通り問題の下着泥棒はセントラル・フーズの宮木チーフだった。
しかも、ご丁寧に留里さんのパンツを頭にかぶってるよこの変質者。
「も~、さっき脱いだばかりのを付けちゃうなんていけない人ね~。私、嬉しくてもっともっと締め上げたくなっちゃうわぁ♪」
「は、林葉君!顔見知りじゃろ、ねぇ!わしを助けんさ……ギャヒーー!!」
「分かりました。すぐに警察を呼んでほどいてあげますんで、しばらく断末魔の悲鳴を上げ続けていて下さい」
僕は一つため息を吐くと即座に警察へと通報した。
こうして、度重なる絞め技攻撃を受けて体の一部が曲がってはいけない方向に曲がってしまった宮木チーフは御用となり、頻発していた下着泥棒問題は無事解決したのであった。
蛇足だけど、やっぱり彼は盗んだ下着を片っ端からクンカしながら遊ぶ金欲しさにブルセラショップに売り続けていたんだとさ。
「でかしたわよ健二君。流石は私の見込んだ男だけのことはあるわ」
翌日の放課後、またしても僕を呼び出した早紀先生に労いの言葉を送られる。
だが、今回連れ込まれた場所は保健室ではなく特別教室ばかりが並ぶ人気のない4階の女子トイレだった。
「いえいえ、僕一人の力ではなく頼もしい仲間の協力あってこそ成し得た逮捕劇です、けど……」
「あら?私とマンツーマンの和式トイレなんて不慣れでちょっと怖かったりするのかしら?」
先生が余裕しゃくしゃくといった具合に僕を見下ろしてくる。
確かに先生の言う通り少し怖くもあったが、それでも僕の股間は妙な期待に熱を帯びていた。
「とりあえず聞いておきます。今回はどんな意図で僕をこんな場所に?」
「あまり深く考えないでちょうだい。これは内心ちょっぴり健二君を下着泥棒の犯人だと疑ってしまった私からのお詫びの印よ」
先生が僕に背中を向けてゆっくりとスカートをめくり上げる。
「あっ……」
すると、僕の視界に紫のTバックを穿いた形の良い大きなお尻が映った。
「早紀先生のお尻……」
「どうかしら?香子やあなたの仲間内のTバックも刺激的なのでしょうけど私のも悪くはないでしょう?」
「わ、悪くないどころか全然良いです、はい!」
未だかつて拝めたことのなかった前人未到の領域を前に日本語がおかしくなりながらも率直な感想を口にする。
既に僕の股間は膨れ上がり、ペニスはロケットのように勢い良く上向いていた。
「うむ、模範解答乙ってところね。だけど本番はここからよ」
先生がそのまま一段上がって便器を跨ぎ、Tバックを下ろして屈む。
「せ、せ、先生……」
「さっきの尻見せはお詫びの印。そして、こっちは犯人逮捕のご褒美といったところかしらね」
ブボオッ!!
先生が生のお尻から一つ大きく屁をかまし、容赦ない悪臭が漂ってくる。
「うえ~っ……先生、酷いです。これはご褒美なんかじゃなくてご放屁です」
「面白くないことを言う子ね。センスがないわよ、健二君!」
ブッ! ブビッ、ブリブリブリッ!! ブリビチッ!!
僕をなじりながら先生が一気に下痢っぽい排便をする。
水っぽいながらもしっかり固形便の型を成している先生のウンチはもしかして。
「先生、さては下剤を飲まれましたね?」
「ご名答よ、トイレの中だと冴えてるじゃないの!」
ブビビビッ、ブピッ……プシャァァァァ~……
排便と放尿を同時進行させながら先生が力強く返答する。
「これを見せたい一心で、あなたを呼び出す1時間前に下剤を飲んでおいたんだからありがたく思いなさい!」
「は、はい……」
少し偉そうな物言いが引っ掛かったもののそれでも僕は嬉しさのあまり手も触れないまま絶頂しそうになっていた。
何せ、あの難攻不落の早紀先生の排泄姿をこんな形で拝むことが出来たのだから。
「早紀先生、あの、僕……!」
「お尻は自分で拭くから気にしないでちょうだい」
僕の申し出を見抜いていたのかそこは切り出す前にあっさりと拒否られる。
「そうそう、もしお尻を触ったら後でチンポを潰しちゃうから覚えておきなさい」
「あ……」
戦慄級の脅しを受けて残り数センチまで迫っていた指先をあわてて引っ込める。
先生はそんな僕を尻目にカラカラとペーパーを手繰り寄せて何食わぬ顔でお尻を拭いていた。
「さてと」
ザザ~ッ!!
拭き終えた先生が水を流して立ち上がり、やはり何食わぬ顔で衣類を整える。
「健二君、これにて私の用件は終了よ。いつまでも女子トイレにこもってないで早く出て行きなさい」
ギュム。
僕のペニスを一つかみした後で、先生がやはり何食わぬ顔で洗面台に向かい、石鹸を使って手を洗う。
嬉しさの一方で彼女の心境が見えない不安もあったけど、一つだけ言っておくべきことがある。
「早紀先生! 今日は、その……桃源郷のような世界をありがとうございました!」
先生の後ろ姿に一礼すると、僕はトイレを出て速やかに帰宅した。
その日、僕は初めて早紀先生をオカズに使い、新記録と呼べるほどに大量射精をしてしまったのであった。