※この作品はR-18です。

すかもんっ!   作:Žž‰€—時園礼

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第25話 二人ぼっちのヴァージンチェリー

「おう、あんたが確か林葉の健二君じゃったよね」

 そんな言葉とともに、朝のホームルームを控えた教室にずかずかと入ってきたのは、隣のクラスの副担任である永戸先生だった。彼女は女子限定の体育教師なので、基本的に授業を教わることはないけれど、僕の知っている先生の一人だった。

「は、はい、僕が林葉です」

「やっぱりあんたなんじゃね。香子先生が気になっとるとかいう、林葉君とかいう子は」

「……」

 不意を突くかのように、心の琴線を貫かれるような言葉を受けて思わず絶句する。確かに、僕が担任である岸村香子先生に抱いている感情が特別なものであることは揺るぎのない事実だが、そんなに堂々と口に出さなくたっていいものだろう。

『ククッ、クヒッヒッヒッヒ……』

 思った通り、周囲では一部のクラスメートたちが下品を通り越した不愉快極まりない笑い声を立てていた。だけど、そんな中でも僕は努めて自然な言葉を選ぶ。

「もちろんです。クラス委員として、僕は担任である香子先生を常に気にかけています」

 下心が別のところにあるのは言うまでもないが、ここでは建て前を口に出しておく。気恥ずかしさとは別に、騒ぎになったら僕の立場上、酷い目に遭うのが分かりきっていたから。

「そうかそうか、それは立派な心掛けじゃの、じゃけど……」

 永戸先生が感心したかのように僕の肩に手を添える。しかし、その後に出てきた言葉は非常に重く、僕の心に底知れない不安感を植え付けたのである。

「香子先生、今日は学校休むらしいで。昨日の夜に体調を崩したんといや」

 

 

 当然のことながら、香子先生が不在のままホームルームが始まる。教壇には、これまた当然ながら副担任である笠松先生の姿があった。

「残念ながら、担任である岸村先生は昨日より体調を崩されて、学校を休むことになってしまった。ゆえに、本日は俺がこのクラスの担任を務めさせてもらう」

 僕だけでなく、笠松先生もどこか心苦しそうな表情を浮かべていた。

「このような形で俺が代行を担うことになるなんて、実に残念な限りだ……」

「……」

 ふと、斜め前に視線を向けると、女子のクラス委員である棚田円香さんの表情も不安そうに曇っていた。普段は香子先生に色々と意見している彼女だが、こんな時にはやはり心配だったりするのだろう、その人となりに安心する。

 ――ケヘへ。香子マジで倒れたんといね、超ウケるけえ。

 ――二度と来んでええわいね、あんなうっとうしい奴。

 少なくとも、僕の聴力の届く範囲でこのような会話をコソコソとしている、おおよそ普通の人間とは思えないような輩に比べたら。

 しかし、そんな中でも笠松先生が熱弁を続ける。

「……だが! 岸村先生に限らず、みんなも普段から体調管理や危機管理には十分に気を配ることだ。『僕だけは、私だけは大丈夫』などとタカをくくって、うっかり油断をしていると……」

 ガアァァァァン!!!

『!!』

 熱弁の途中で急に響いた突然の大音に、クラス中が騒然とする。なんと、何の前触れもなく天井が開き、二人の陰口女子の頭部に大型の鉄製タライが直撃していたのである。

「このように、頭上から落ちてくるタライをくらって醜態を晒してしまうということだ。とりあえず、目が覚めるまで寝かせておけ」

 キーンコーンカーンコーン。 

「おっ、時間だな。それではみんな、辛いかもしれないが授業はちゃんと受けるように」

 チャイムとともに、笠松先生が気を失って白目を剥いていた陰口女子たちを尻目に教室を後にする。少しビックリしたけど、それ以上に気持ちがスッキリした、香子先生が不在ながらも清々しい朝のホームルームだった。

 

 

「やっぱりタライを落としたのは花子さんだったんだね」

「当たり前でしょ。香子のウンチにも劣るあのアマどもの頭を浄化させてやったまでの話よ」

 昼休み、僕はメロンパンを食べながら、トイレの花子さんから事の真相を聞いた。雰囲気から察するに、笠松先生も一枚かんでいたとは思うが、それはこの際置いておくとして。

「良い仕事だったよ、花子さん。最も、あの程度であの子たちが浄化されるとは思えないけどね」

 昔、何かのアニメの最終回で頭をぶつけた変態が、真人間になったという話を見たような覚えがあるが、現実にはそんなことなど有り得ない。せいぜい、名前を忘れるレベルの記憶喪失に陥る辺りが関の山というところだろう。

「……それにしても香子が心配だわ。部屋で倒れてたりしてなければいいんだけど」

「同感だね。僕だって、出来れば今すぐ早退して香子先生のお見舞いに行きたいぐらいだよ」

 香子先生を憂い、僕が大きくため息を吐いたその時だった。

「だったら行けばええじゃん。健二君、香子先生が気になるんじゃろ?」

 屋上のドアが開き、円香さんが姿を見せる。

「そうっちゃ。香子もおらんのにまだ学校に居座っちょるとか、あんたらしくないじゃん」

 円香さんに続くかのように、同級生で唯一の男子友達である泰地が姿を見せる。

「そんな不健康な顔をしているようなら、重症患者と認定して今すぐ帰ってもらうしかなさそうね」

 泰地の後から、養護教諭の早紀先生が姿を見せる。

「みんな……」

「うむ、早紀先生が認めるほどの重傷患者ならば、これ以上学校に置いておくわけにはいかないな」

 そして、最後に現れたのは笠松先生だった。

「健二君。副担任として、今すぐ香子先生の家まで見舞いに行くことを命じる。支度を整えて、速やかに実行に移すように」

「はい!」

 笠松先生から告げられた緊急指令に、僕は迷うことなく力強い返事をした。そして、教室に戻ってカバンと手提げを回収すると、早紀先生から数点の医薬品をもらって学校を後にした。こうして、僕は力強い味方たちの後押しを受けながら、香子先生の家に向かったのであった。

 

 

 望根尾(のぞねお)町二丁目三番地四号、民営アパート式和荘・一〇八号室。

 クラス名簿で住所こそ把握していたが、実際にこうして香子先生の自宅を訪ねるのは初めてだった。

「……」

 校内でも校外でも、何度となく一線を越えそうな関係を続けている相手とはいえ、初のお宅訪問はやはり緊張する。しかし、このまま立ち尽くしていても埒が明かないので、僕は意を決して呼び鈴を押したのである。

 ピンポ~ン♪

 妙に可愛らしい音が響き、思わず顔を緩めながら挨拶をする。

「ごめんくださーい。香子先生、僕です、林葉です!」

 大きな声で名乗りを上げるも扉の向こうからは返事がない。もしかして、ふらつく体で病院にでも行ったのだろうか。

 ――だけど……

 アパートの駐車場には、先生の愛用車(ピーチピンクの軽)が当然のように残っていた。

「……」

 流石に学校を休むほどの風邪をこじらせた人が、歩いて病院に行くとは思えない。そうすると、返事がないとはいえ、先生は家の中にいると考えるのが妥当だと言えるだろう。ふと、昼休みに花子さんがポツリとつぶやいた言葉が脳裏をよぎる。

「……それにしても香子が心配だわ。部屋で倒れてたりしてなければいいんだけど」

 それは、この状況ではあまりにも可能性として考えられる最悪の展開だった。

「くっ……!」

 拭いようのない不安に駆られた僕は、無意識のうちにドアを強く叩き上げていた。

「先生っ、先生っ! いるんでしょ、いるんですよね!?」

 声を上げれば上げるほど、言いようのない不安感が込み上げてくる。しかし、そんな不安は次の瞬間にあっさりと吹き飛んでしまったのである。

「えっと……健二君、なんでこんな時間にここに来ちょるんじゃろうか?」

 鍵の開く音がしてドアが開き、パジャマ姿の香子先生が姿を見せる。案の定、風邪のせいか顔が少し赤く、表情はどこか曇っていた。

「先生……良かった、無事だったんですね! 呼び鈴押しても反応がないから心配しましたよ」

「う、うん。何と言ったらええか、先生、さっきまでウンチしよって出られんかったんよね」

「あ……」

 先ほどの無反応だった理由を聞いて、赤面をしながら納得する。なるほど、それなら呼び鈴を鳴らしたんだから返事をしろ、という方が無理な話である。

「それはええけど、学校はどうしたんかね? まだ午後の授業をやりよる時間帯じゃろう」

「あ、それは説明しますんで、とりあえず家に上げてもらえませんでしょうか。こんな時間ですが、今日は先生のお見舞いに来ているつもりなんで」

「……まぁええじゃろう、先生の部屋で話を聞くとしましょう」

 先生は、少し不満そうな顔をしていたが、僕の申し出を受け入れて家に上げてくれた。

「ありがとうございます。その気遣い、心から感謝します」

 月並みながらもお礼の言葉を並べ立て、先生の後に続きながら敷居を跨ぐ。気がつけば、僕の股間も熱を帯びていた。

 

 

「……じゃあ、みんなが先生を心配してくれとる中で、健二君が代表して来てくれたっちゅうことでええんじゃろうか?」

「はい。僭越ながら、クラス委員の務めとして、僕がお見舞いに来たというわけです」

 整理整頓の行き届いた先生の部屋で、学校を早退した経緯を正当性を主張しながら説明する。とりあえず、進めれば進めるほどに、先生の表情も和らいでいたので機嫌は直してくれたみたいだった。

「まぁ、笠松先生の許可も取っちょるんならええじゃろう。今回は健二君の思いやりにお世話になるとします」

「はい!」

 今日初めて見た先生の笑顔に歓喜して、力強く返事をする。我ながら、美人の飼い主に可愛がられて尻尾を振って喜んでいる、小犬のようである。

「でも、お世話になるとして健二君は何をしてくれるんじゃろうか? もう昼食は済ませちょるけえ、極力安静にしちょきたいんじゃけど……」

「先生。病人には、これを注入する必要があると思います」

 僕は、少し誇らしげに早紀先生からもらった医薬品の入った袋から、小さなカプセルを取り出した。

「健二君、それは……」

「はい。見ての通り、お尻の穴から回復を促進する魔法のアイテム、座薬です」

 ドヤ顔気味に座薬を披露しながら先生の反応を伺う。

「うん。ま、まぁ風邪には効果的じゃけえ、そりゃあやるに越したことはないと思うんやけど……」

 先生は、気持ちでは理解しつつも、気恥ずかしさからか及び腰のように見えた。だから、僕はそんな先生の背中を後押しした。  

「大丈夫ですよ、もう学校で一度やってるじゃないですか。それに、こんな時に恥ずかしがってる場合じゃありません」

「健二君……」

「この季節の風邪は、悪化させると長引きます。うっかり肺炎なんて併発させようものなら、それこそ長期休養を余儀なくされてしまいます」

 風邪に関する諸雑学を思い出しながら、自然な口ぶりで先生を説得する。もちろん、これは出まかせなどではなく、れっきとした事実に基づく知識なのだけど。

「……じゃったら、ちょっと恥ずかしいけど健二君に入れてもらおうかね、うん」

「良い判断です。それでこそ、僕の愛する香子先生です」

 最後の方を少し小声にしながら先生の覚悟に敬意を表する。

「ん? 何か、終わりの方がよう聞こえんかったんやけど」

「空耳ですよ。さぁ、ベッドの上にうつ伏せになって、お尻を突き上げて下さい」  

 軽く濁しながら、先生に挿入の準備を進めさせる。先生は、僕の指示に何一つ拒絶を示すことなく、ベッドに上がって艶めかしいポーズを作った。

「こ、こうじゃろうか」

「それです。まさに、そのスタイルを僕は求めていたんです」

 突き上げられた先生のお尻の真正面に立って、パジャマのズボンをずり下ろす。すると、金色のTバックに申し訳程度に包まれた生尻が露となる。

「すごいですね、香子先生ってこんな日でもTバックを穿いてるんだ」

「変じゃろうか? まぁ、お尻がスース―して、ちょっと冷たかったりするけえ、こんな日に穿くのは不適切なんかもしれんけど……」

「いいえ。先生らしくて安心しました」

 両手で少しねちっこく、先生のお尻を愛撫する。何度もしていることだけど、丸くて綺麗で程良く大きなその桃尻は、やはり最高の手触りに他ならなかった。

「健二君、お触りするのもええけど、そろそろ……」

「おっと、そうでしたね」

 イタズラ心を封じて、勢い良くTバックの下着をずり下ろす。すると、今度こそ割れ目までしっかりと、先生の生尻が露になったのである。

「では、行きますよ……」

 右手の指で先生のお尻を広げながら、左手で座薬の先端を先生の肛門にくっ付ける。

 プツッ。

「んっ……」

 先生のちょっとエッチな声音にドキッとしながら、ゆっくりと座薬をお尻の中へと流し込む。それは、永遠に続くかのような、泡沫(うたかた)の快楽行為のようだった。

「あ~……先生、健二君にお尻の純潔を捧げたような気分やわ」

「何ですか、その言いぐさは。男に免疫のない処女じゃあるまいし」

「いや、先生は、生まれてこのかた一度も男の人と付き合ったことなんかない、全くの処女なんやけど……」

「そりゃそうですよ、先生ぐらいの年だったら、普通はそれが常識で……って、えぇっ!?」

 他愛もない会話の中で、衝撃の事実を知って思わず声を上げる。なんと、僕のクラスの担任教師である香子先生は、二十代後半にしてバージンというまるでリアル優〇さんのような女性だったのである。

 ……かく言う僕も、全くの童貞男子だったりするけれど。

 

 

 座薬挿入から十数分の間を置いて、僕は風邪で全身を固くしていた香子先生に全身マッサージを施していた。もちろん、施術後に体を冷やさないよう、暖房と電気ストーブを入れて部屋を暖めた状態で。

「それにしても驚きましたよ。先生のような女性が、エッチはおろか男性との交際経験もなかっただなんて」

「うん。まぁ、どこかで縁があるじゃろうと思うて普通に暮らしとったら、いつの間にかここまで来とったような感じかね」

「いつの間にか、って……」

 こんな美人でスタイルも良くて、ちょっと天然だけど優しくて素敵な人が未だに処女というのは実にもったいない話である。やはり、縁を引き寄せるためには、素材だけではなく積極的に声をかける姿勢が必要だったりするのだろうか。

 そんなことを考えながら、下着姿でうつ伏せに寝ている先生の首筋に濡れた指を押し込む。

「先生、本当に筋肉痛が酷いなんてもんじゃないですね。特にここはガチガチで、明らかに血行を悪くしてますよ」

「そうじゃね……うん、首と肩甲(けんこう)骨周りが特に痛くてやれんのんじゃわ」

「多分これ、頭部への血流を相当悪くしていますよ」

 大げさでなく、先生の首は凍っているかのように固くなっていて、普通にマッサージをしていても、指が入れられるとは到底思えなかった。だからこそ、早紀先生のくれた医薬品袋に入っていたマッサージ用オイルが功を奏したのである。

「あと、やっぱり肩甲骨ですね。巨乳ゆえの肩こりは、肩甲骨なだけにまさしく健康問題です」

「健二君、全然面白くないんやけど、先生無理にでも笑わんといけんのんじゃろうか」

「笑わなくて結構です。触らせてくれればそれだけで十分です」

 首に劣らずガチガチの肩甲骨に、指を突っ込んでコリの部分を揉みほぐす。その流れに続きながら、僕は先生の体の至る部分にしっかり指を入れ込んで、体のケアに尽力した。特に、お尻と股関節部分は、オイルをたっぷり染み込ませて、奥の奥まで指を入れ込んだのである。

「いかがでしたか、素人なりのマッサージは。ちょっと力の入り過ぎた箇所もあったけど、大分ほぐせたと思います」

「うん、ちょっとエッチじゃったけどすごく楽になった気がするね。健二君は、整体師の免許でも持っとるんじゃろうか?」

「いやいや、うちの隣に住んでる人がマッサージのプロで、その人から教わっただけです」 

 感心しながらも少し驚いている先生に、話せる範囲で種明かしをする。実際のところ、その隣人の女性からは、実技と称してマッサージの範疇を超えたケアも受けていたりするのだが、それは内緒である。

「それはそうと先生、少しは楽になりましたか?」

「うん、座薬も入れてもろうたし、マッサージで体もほぐれたし、あとは薬を飲んで横になれば……」

 グルルルルッ!!!

 話の途中でうめき声のような音が先生のお腹から発せられる。これはつまり、マッサージを経てほぐれた体の影響で、新陳代謝が活性化されて老廃物が出てくる証に他ならないわけで。

「健二君……先生、お腹が痛うなってきたわ……」

「大丈夫ですよ、僕がついてます」

 僕は、お腹をさすりながら前屈みになっている先生に付き添って、トイレに同行した。僕にとっては、脂汗を流して苦悶の表情を浮かべている先生も、普段の先生と同様に、美しく愛しい存在に変わりなかった。

 

 

 香子先生が一段上の和式便器に跨り、お尻を出して屈みこむ。何度も見ている光景だけど、先生の家で見るそれは、また一段と官能的な空気を醸し出していた。

「先生、ちょっとトイレが臭いますね」

「うん、今日は朝から下痢ばっかりしとるけえ、ウンチの臭いが充満しとるんよね」

 先生が咳き込みながら右手の指を自分のお尻に添える。

「……」

 それを真後ろから見ているだけで、僕のペニスは充血とともに大きくせり上がっていた。

「んっ……!」

 ブッ、ブビビッ! ブリビリビリッ! ブリビリッ、ビチャッ!

 先生の肛門からビチビチの下痢便がひり出される。その便臭はすさまじく、空気に混じってより臭い空間を作り上げるのに、さほど時間はかからなかった。

 プシャァァァァ~……

「健二君、今日もお尻拭いてもらえんじゃろうか」

 放尿をしながら、先生が申し訳なさそうに頼んでくる。

「最初からそのつもりですよ」

 僕は二つ返事で承諾すると、備え付けのペーパーを抜き取って、丁寧にちぎりながら先生のお尻にあてがった。

 グチュッ!

「先生、ウンチに混じってペーパーに血が付いてますよ……もしかして、痔ですか?」

「うん、多分下痢続きで何回もお尻を拭きよったけえ、切れ痔になったんと思う」

 言葉通り、先生のお尻を拭いているうちに、ペーパーには茶色いシミがなくなる一方で、赤いシミが付着するようになっていた。それは、考えるまでもなく血糊(ちのり)とか血痕とか、そういった類の赤色であることに間違いなさそうだった。

「そういうことならコイツの出番ですね」

 持ち込んでいた医薬品袋から、塗り薬を取り出してベッタリと右手の人差し指に取る。

「先生、じっとしてて下さいね」

「う、うん……」

 そして、その指で愛撫するかのように、先生のお尻の割れ目をなぞったのである。    

「健二君、これは……」

「痔の薬です。分かりやすく言うと、デリケートエリア専用の軟膏ってヤツでしょうか」

「なるほどね。何か、ヒリヒリしちょったお尻が楽になった感じやわ」

 塗ったそばから軟膏は効果を発揮したみたいだった。

「ほいじゃけど、健二君は塗り方が手慣れちょる感じじゃね。まさか、健二君も痔になりやすい体質でいつも自分で塗りよったりするんじゃろうか?」

「いえ、知り合いのコミケ仲間にありがたくもない大痔主(おおじぬし)がいて、その人にちょくちょく塗ってるうちにコツをつかんだだけの話です」

 感心しながらも疑問を抱いている先生に、話せる範囲で種明かしをする。実際のところ、そのコミケ仲間の痔持ち女性には、見返りと称して何度もペニスをしゃぶられているのだが、それは内緒である。

「それはさて置き、とりあえず便臭に応急処置をしておくとしましょう」

 僕は医薬品袋から消臭スプレーを取り出して、三発ほど噴霧した。

 すると、みるみるうちに便臭は弱まり、ミントの香りがトイレの中に漂い始めたのである。

「ええ匂いがするね。これなら、もう少しトイレにこもっちょきたいぐらいじゃわ」

「先生は病人なんだから、さっさと流してお部屋に戻る!」

 パチン。

 お花畑なことを口にする、可愛らしい先生のお尻を優しく叩いて目を覚まさせる。

「う、うん、そうじゃった。先生は今日、風邪で休んじょったんよね……」

 先生はバツが悪そうにそうつぶやくと、水を流してそそくさと立ち上がり、一連の排泄作業を終わらせた。

「……今日も良い眺めでしたよ」

「うん、ありがとう。じゃけど、エッチなのは程々にしちょこうね」 

 そんな会話をしながらトイレを後にする。心なしか排便後の先生は、先ほどまでとは別人のように表情に明るい光が灯っているかのようだった。

 

 

 香子先生に強力型の風邪薬を飲ませてベッドに眠らせる。この風邪薬が、早紀先生からもらった医薬品袋の中の最後のアイテムだった。

「先生、具合はいかがですか?」

 あお向けに寝ている先生を見下ろすように声をかける。すると、思った以上に元気な声で嬉しい答えが返ってきた。

「うん、健二君の介護のおかげで大分楽になった。これなら思ったより早よう学校に戻れそうやわ」

「そうですか、どれ……」

 僕は、体を少し屈めると、先生の額に自分の額を添えてみた。

「け、健二君?」

「……これもクラス委員の務めです。生徒だけでなく、先生の健康もしっかりチェックを入れないと」

 額を通じて先生の体温がほのかに伝わってくる。

「いや、これはちょっと、照れ臭いっちゅうか……」

「だったら、前みたいにお尻の穴で検温しちゃいますか?」

「……やっぱりこれでええわ」

 流石に排便して間がない上に、薬を塗った後のお尻に体温計を入れるのは気が引けたのか、先生は頬を染めながらも『おでこ検温』に応じてくれた。

「……」

「ふむふむ、これは微熱状態というヤツですね」

 伝わってくる感覚から、率直な見解を口にする。先生の額は少しだけ熱かったものの、高熱を憂うほどのレッドゾーンは既に脱していた。

「まだ少し、安静にしておく必要がありそうですね。少なくとも、今日はしっかり養生に努めましょう」

「そうじゃね……」

「では、この辺りで」

 僕はゆっくりと額を離して『おでこ検温』を終わらせた。時計を見ると、時刻は午後の五時を回っていて、驚くほどに外は暗くなっていた。

「そろそろ帰らせてもらいます。明日も学校だし、泊めてもらうわけにもいきませんからね」

「う、うん、分かった。先生としては健二君がおってくれた方が嬉しいんじゃけど、立場的にそれは色々と問題じゃけえね」

「同感です。僕だって、本当は香子先生と初夜……もとい、一夜を明かしたいんですけど……」

 名残惜しさが漂う空気の中で、僕と先生は貫きそうな眼差しでお互いを見つめ合う。そして、どちらからということもなく、まるで恋人同士のように唇を重ね合わせたのである。

「んっ……」

 寝ている先生の頬に手を添えて、ねっとりとしたキスを吟味する。先生の唇は甘酸っぱく、まるでレモンのフレーバーのような香りが漂っていた。

「はぁ、はぁ……いい、すごく良いです、先生」

「健二君……」

 息が詰まるほどのキスの後で、大きく呼吸をしながら顔を紅潮させる。

「今日は先生ををケアすることが出来た上に、キスまでさせてもらえて僕は幸せです。これならば、一片の悔いもなく家路につけそうです」

「うん、先生も健二君のそんな嬉しそうな顔を見れて幸せじゃわ……」

 先生がベッドからゆらりと立ち上がり、慈しむかのように僕を抱きしめる。その瞳には、うっすらと真珠のような雫がきらめいていた。

「今日は本当にありがとうね。健二君のおかげで先生、今まで以上に元気になれそうやわ」

「……どうやら僕は、この短期間で随分と幸せな高校生になれたみたいですね。香子先生のような女性とこうして抱き合えるなんて、身に余る光栄です……」

 僕は、先生の背後に両手を回してその体を優しく抱き返した。

 そうやって、僕たちはしばらくの間、静寂の中で互いのぬくもりを確かめ合っていた。

 

 

「気をつけて帰りんさいよ」

「はい、極力明るい道を通って帰るつもりなんで、大丈夫だとは思います」

 玄関まで見送られながら、香子先生の家を出る。

「それじゃあ、お大事に」

「うん、明日学校でね」

 パタン。

 扉が閉まり、程なくして鍵を閉める音がして、これにて本日のお見舞いタイムは終了である。

「……」

 僕は、大きく息を吐くと一礼をして速やかに式和荘を後にした。こうして、初となった香子先生宅への訪問は、甘美にして艶めかしい記憶とともに、僕の脳裏に鮮明に刻み込まれたのであった。

 人生で初となる、唇で交わした甘酸っぱいキスの感触とともに。

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