平成〇年4月8日。高校3年生になって初となる登校日、僕は新しい日々が幕を開ける学校へと向かっていた。
――去年は色々と嫌なことがあったけど、それを差し引いても楽しい1年間だったな。出来れば、今年も……
春風に吹かれながら、桜たちに歓迎されるかのように歩を進める。
「……」
空を見上げると、桜だけでなく快晴の青空までもが新しい始まりを祝ってくれているかのようで、僕は高3にして初めて『新しいクラスに期待する』という感情を抱いたのである。
少なくとも、この時までは――――
運命の稲妻が、意地悪な雷撃をもって僕の上に落ちてきた。
「あっ……」
昇降口の掲示板に張り出された新しいクラスのメンバー表を前にして、思わず硬直とともに絶句する。あろうことか、進級した僕のクラスの担任は香子先生ではなかったのである。
――そんな、香子先生……
これまで、ずっと心の支えだった香子先生が担任ではなくなってしまったことのショックに、失望感が広がってくる。しかし、不運はこれだけでは終わらない。
――ま、円香さんまで……
クラスメートとして2年間、僕が最も心を許していた円香さんも香子先生のクラスへと振り分けられていて、僕のクラスには存在しなかったのである。
「は、はは……」
僕は何もおかしくないのに乾いたような笑い声を立てると、同級生たちの喧騒をよそに新しいクラスへと呆然とした表情で足を進めた。
期待が大きい分、失望も大きい――何と言うか、使い古されたその言葉が骨身に染み渡るような、そんなもの悲しい朝の一時だった……
新しい僕たちのクラスの担任は、女性の体育教師――永戸先生だった。
「あんたら、これからはあたしが担任じゃ。色々あるとは思うが楽しくやって行こうじゃないか」
サッパリした性格と男勝りな口調が特徴的で、決して悪い人ではないのだが、香子先生という女神を熟知している僕からすればやはり物足りなさを感じずにはいられなかった。
――今頃、香子先生は何を話しているのかな……
僕はホームルームも上の空で、隣のクラスの香子先生に想いをはせる。まさか、去年のクラスメートの半分以上が引き続き香子先生のクラスに振り分けられていたのに、肝心の僕が外されてしまうとは。
――今回ばかりは陰謀論とかいうヤツを信じたい気分だよ、全く……
今すぐにでも帰りたい気分になりながら、頬杖をついて小さなため息を吐く。しかし、永戸先生はそんな些末(さまつ)な隙も見逃さなかったのである。
「……それにしても、さっきから初日じゃっちゅうのにから、随分と覇気がなさそうな顔しとる奴がおるじゃないか、のう林葉君」
「はへっ?」
永戸先生に名指しをされて、思わず間の抜けた声を上げてしまう。気がつけば、クラスメートたちの視線が一点に僕へと集められていた。
「いや、あの、まだ心のスイッチが入っていない状態と言いますかね、はい……」
「どうせ香子先生が気になってしょうがないんじゃろう? ほいじゃが今日からはあたしが担任なんじゃけえ、今すぐにでも気持ちを切り替えんさいよ!」
「は、はいっ!」
僕たちのやり取りにクラス中が笑いの渦に包まれる。少し気恥しいが、どこか和やかな雰囲気に悪い感じはしない。
「…………」
よく見てみると、今回のクラスメートの中には僕をいじめていた奴がおらず、極端に悪い顔ぶれは男女ともに一人も見当たらない。
――だとすると、これはこれで良かったってことなのかな……
香子先生と円香さんに関しては遺憾の極みだけど、クラス内に漂う安心感を肌で感じながら少しずつ気持ちを落ち着ける。そして、一つ深呼吸をして今度こそ永戸先生の話に耳を傾けていたその時だった。
「……おう、そうじゃった。掲示板には書いちょらんかったが、副担任を紹介しちょかんといけんかったの」
事務的な話が続いていた途中で、永戸先生が思い出したかのようにそんなことを口にする。そう言えば、掲示板には担任の名前はあれど、副担任の名前はどこにも書かれていなかった。
「どうぞ、入って下さい」
少しだけ危惧していたところにドアが開き、件(くだん)の副担任が姿を見せる。
――あっ……
それは、間違いなく運命のお導きだった。新しいクラスの副担任は、前年に引き続き僕の理解者にして同じ嗜好を持つ同志――笠松先生だったのである。
「前年から知っている子たちには、おはよう。初となる子たちには、はじめまして。今後一年間、このクラスで副担任を担う、笠松範人です」
笠松先生が永戸先生の右隣に立ち、深々と頭を下げる様子を見ながら密やかに胸をなでおろす。
――良かった、笠松先生がまた一緒で……
決して悪くない担任とクラスの顔ぶれに続き、笠松先生の登場でより安心感が増す。どうやら、天は僕を完全に見放したわけではなかったみたいである――と、そんなことを考えて油断していた時だった。
「それともう一人、掲示板には書いちょらんかったが転校生がおるんじゃ」
『……?』
僕を含めたクラス中が、永戸先生の言葉に反応を示す。掲示板に名前がなかった予期せぬ存在なのだから、当然と言えばそれまでなのだけど。
「ええぞ、入ってこい」
少しだけ気にかけていたところにドアが開き、件の転校生が姿を見せる。
――……えっ!?
それは、間違いなく運命のイタズラだった。明らかに見覚えがあるその少女の姿に、僕は思わず目を丸くする。そう、彼女は一週間前にエイプリルフールを利用して、まんまと僕に一杯食わせたあの時の少女だったのである。
「みなさん、はじめまして。今日からこのクラスでみなさんと一緒に学ぶことになった、転校生の春野七葉です」
転校生――七葉(ななは)ちゃんが永戸先生の左隣に立ち、丁寧に頭を下げる姿を見ながら全身が熱くなる。まさか、あの時の子とこんな形で再会を遂げてしまうとは。
――香子先生。僕、今年度も色々と大変そうです……
ともあれ、こうして僕の高校生活最後の1年が幕を開けた。
「席は……おお、林葉の隣が空いとるけえ、あそこに座れ」
「はいっ☆」
隣の席に、因縁の転校生――七葉ちゃんを置いて…………
「ふーん。それで、香子や円香と離れ離れになった上に、痴女みたいな女がクラスメートになっちゃったってわけ?」
「……そんな感じかな。ま、痴女だなんて言うつもりはないけど、エッチな子には変わりないかな」
昼休み。僕はいつものように屋上で、トイレの花子さんに近況報告をしながら昼食を嗜(たしな)んでいた。
「つまり、総合的に見れば悪くないけど、肝心な部分が欠けてしまった感じかな……今のクラスのイメージって」
「そうかしら? あたしとしては、あなたはとても面白いクラスに入れたと思うんだけど」
晴天の空の下、花子さんが僕と異なる見解を口にする。だけど、肝心な人を二人も欠いたクラスに入れられて、そんな風にはとても考えられそうになかった。
「そりゃあ花子さんは当事者じゃないから何とでも言えるけど、僕には結構なダメージだったんだぜ。せめてどちらか一人だけでも一緒にいてくれたら……」
ギュム。
話の途中で、花子さんに遮られるかのようにペニスを握られる。しかも、結構強めに。
「は、花子さん……?」
「……どうやら今のあなたには、口で言うよりも身をもって感じさせた方が適切なのかもしれないわね。あたしはこれで失礼するわ」
花子さんが踵を返し、僕の前からその姿を消す。
「ちょ、ちょっと」
僕はあわてて引き留めようとしたが、花子さんはそのまま気配まで消して僕の前から完全に消失してしまったのである。
――ほら、お客さんよ。相手をしてあげなさい…………
消える直前に、そんな言葉を残して――
「あっ」
すると、花子さんと入れ違いざまに、七葉ちゃんが弁当箱を手に僕の元へとやって来たのである。
「どうも、健二さん。いつもここでお昼を食べられているのですよね」
「な、七葉ちゃん……」
戸惑う僕をよそに、七葉ちゃんが隣に腰を落としてランチの準備を始める。どうやら弁当箱は思った以上に大型で、中には白飯と肉料理がギッシリと詰め込まれていた。
「……」
ずっと黙りこくっているのも気が引けたので、僕はおそるおそる自前の弁当にパクついている七葉ちゃんに、気になっていたことをたずねてみる。
「その……どうして僕が昼をここで食べているのを知っているわけ?」
「はい、それは先ほど永戸先生から教えてもらいましたので」
薄々と感づいていた答えが返ってきて、思わず苦笑いを浮かべてしまう。なるほど確かにあの先生ならば、そのぐらいのことは転校生にもカミングアウトして何ら不思議はないだろう。
気を取り直して僕は七葉ちゃんに次の質問を投げかける。
「……じゃあ、どうして僕と一緒にご飯を食べようなんて思ったの?」
「私が健二さんと一緒にランチをしたかった、それだけのことです」
「そ、そうなんだ……」
メロンパンをかじりながら、あまりにもストレートな返答に困惑する。いくら面識があるとはいえ、あんな形の接点しかないような相手とランチがしたいと言うのは、一体どういう考えあってのことなのだろうか。
「それじゃあ今度は私から質問です。どうして健二さんは女の子のトイレを覗かれて、興奮なさるのですか?」
「うぐっ……!」
思いがけず突拍子もない質問を受け、思わずメロンパンを詰まらせる。どうにかココアで流しこんだものの、これは予期せぬボディブローである。
「あら。私には色々と聞いておきながら、自分は質問に答えられないんですか? 女の子のお尻とウンチが大好きな、可愛いおチンポ様の健二さん?」
「そ、そ、それは……」
七葉ちゃんがにこやかな笑顔で僕の心の芯となる部分を突いてくる。正直なところ、これは簡単に答えられるような質問ではない……
「…………」
……だけど僕は、先日のことも七葉ちゃんの姉のこともあったので、本当のことを彼女に伝えることにした。
「正直なところ、よく分からないんだよ。だけど、この性癖だけは幼稚園の頃から持っていて、僕は当時から女の子のトイレを覗いていたんだ」
漫画やアニメに興味を持つ、もっと前から夢中になっていた秘密の性癖の原点を七葉ちゃんに打ち明ける。
「当時はただの興味本位だったんだけど、段々と続けているうちに興奮を覚えるようになっていてね……気がつけば、トイレを覗くことが僕の性欲の根源になっていたのさ」
「そ、そうだったんですね……」
先ほどの僕と同じような受け答えをしながら、七葉ちゃんがこっちを見据えてくる。少し驚いているみたいだったが、僕はその先を続けた。
「そして、いつの間にやら同じ趣味を持つ人たちとの輪が出来上がって、現在に至る……と、言ったところかな」
決してうまい説明とは言えなかったけれど、僕は思いついたなりに七葉ちゃんの質問に答えてみせた。
「その……分かってもらえたかな?」
「ん~、何となく理解は出来たんですけど……」
七葉ちゃんは目を泳がせながら、何かを考えているみたいだった。
「えいっ☆」
キュッ。
そして、箸はしで僕の膨れていたペニスをつまみ上げたのである。
「な、七葉ちゃん?」
「あはっ、ごめんなさい☆ 大きなウィンナーだと思ったら、これは健二さんのおチンポ様でしたね」
「いやいやいや。嬉しいけど、笑えないかな……」
僕は七葉ちゃんのジョークを軽く拒絶する。間違いなく意図的にやっているのだろうけど、その真意が全くもって見えてこない。
「ですよね。じゃあ、これで質問タイムは終わりにしましょうね」
「あ、ああ……」
七葉ちゃんは何事もなかったかのようにケロリと笑うと、ズボン越しとはいえ僕のペニスをつまんだ後の箸で弁当を食べ続けた。
「……」
僕はそそくさとメロンパンの残りを食べ終えると、ココアを流し込み、速やかに屋上を後にした。
「……また、教室でね」
ジャンボサイズの弁当を美味しそうに食べ続けている七葉ちゃんに、そんな言葉を残して――
それから僕は、午後の授業も上の空で物思いに耽(ふけ)り続けていた。香子先生の授業がなかったのも一因だが、それ以上に七葉ちゃんの存在が気になって仕方がなかったのである。
――全く、どうしたって言うんだ僕は…………
何故にここまで、彼女に心を揺さぶられてしまうのか。いくら可愛いからと言っても、僕には『岸村香子』という最も愛すべき人がいるはずだ。それなのに、どうして。
「…………」
僕の気持ちを知ってか知らずか、隣の席の七葉ちゃんはずっと惚ほうけたような顔をして授業を聞いていた。そんな彼女の瞳の中には、果たして何が映っていたのだろうか。
――君は一体、何を考えているのだろうね……
授業中、僕は何度もチラチラと横目で彼女をうかがいながら、モヤモヤとした時間をやり過ごしたのであった。そして…………
「健二さんっ」
放課後。すぐにでも帰ろうとしていた僕に、七葉ちゃんが話しかけてきた。
「君は……まだ僕に用があるのかな?」
「はい☆ 私、健二さんに大事な話があるんです」
少し構えていた僕に、七葉ちゃんは笑顔で答えてくる。そして、その笑顔が魅力的だからこそ、ますます心が搔き乱されてくる。
「悪いけど、もう明日にしてくれないか? 今日はこれ以上……」
「そうはいかないんです、今じゃなきゃダメなんです」
七葉ちゃんが僕の腕をつかみ、上目遣いで迫ってくる。よく分からなかったけど、その表情があまりにも切羽詰まっているように見えたので、僕は話を聞いてみることにした。
「分かったよ。で、話って何なのさ?」
「ほら、私……さっきお昼ご飯をたくさん食べたじゃないですか。だから……」
ギュム。
そこで七葉ちゃんは僕のペニスを握ると、天使のような愛らしい顔でこう言ったのである。
「私、ウンチがしたくなりました☆」
「…………」
七葉ちゃんの手の中で、萎(しぼ)んでいたはずのペニスがどんどん大きくなる。結局、何だかんだと偉そうなことを考えていても、性的な本能には抗えない僕なのであった。
「健二さんってエッチな割に照れ屋さんなんですね。こんな人目につかないトイレに私を連れ込むなんて」
「仕方ないだろ。人目についたらそれこそ一大事だろ、こんなの」
僕たちは、4階の特別教室が並ぶ人気のない廊下の女子トイレにいた。もちろん、このトイレを選んだのは僕の判断である。
「何でも良いから早く使いなよ。ウンチがしたいんだろ?」
「……えへへ。健二さんに、たっぷり見せてあげますからね」
七葉ちゃんは段を上がると、便器を跨いでパンツを下ろし、大きくスカートをまくり上げながら屈んだ。
「んっ……お尻の穴からウンチがいっぱい出ちゃいそう……あぁん☆」
ムリムリムリムリムリムリメリリッ……ムリメリッツ、ブリリッ!! ブブッ、ブリリリッ!! ブリブリブビビ!!
七葉ちゃんは気持ち良さそうな声を上げると、僕にお尻を凝視されていることなどお構いなしといった具合に脱糞を始めた。
「やだぁ、お昼いっぱい食べたから、ウンチがいっぱい出ちゃうのぉ☆」
ムリメリメリッ! ブリュッ、ブピッ、ブゥ~~ッ、ブピピッ!!
――すごい……何て量なんだ……
七葉ちゃんは僕の見ている前で、放屁も交えた大量排便を披露した。その臭いは強烈で、まるで肥溜めの中に落ちてしまったかのような、それ程の臭気を漂わせていた。
プシャァァァァァァァァ…………
「やだ、オシッコしながらオマ〇コがピクピクしてる……こんなオマンマン、恥ずかしくて健二さんに見せられないですぅ」
七葉ちゃんが放尿しながら卑猥な言葉を並べ立てる。それが本気なのかは分からなかったけど、それでも僕のペニスは興奮とともに激しくそそり勃っていた。だから……
「あんっ」
「七葉ちゃん。この前は拭いてあげられなかったけど、今回は僕にお尻を拭かせてほしい」
僕は左手でむき出しとなっている七葉ちゃんのお尻を触ると、下の介助を自分から願い出た。よく分からないけど、今の僕にとってはこれが最良の選択肢である、そう思えたのだ。
「……いいですよ。私、健二さんにならお尻もオマ〇コも、好きなだけ拭かせてあげちゃいます」
七葉ちゃんは少しはにかみつつも、僕の申し出を二つ返事で了承してくれた。
「ありがとう。それじゃあ……」
僕はペーパーを抜き取ると、適度な量にちぎりながら七葉ちゃんのお尻を拭いてあげた。量が量なだけに、最初の一拭き目はベットリ感がとても生々しかった。
「七葉ちゃんって可愛いお尻をしてる割に、随分と臭いウンチをいっぱいするんだね。僕、手も触れずにイキそうになったよ」
「やだ、健二さんのエッチ。そんなこと口に出して言われると、恥ずかしいじゃないですか……」
便臭が立ち込めるトイレの中で、少しずつ僕たちの心が距離を詰めて行く。
「本当に、健二さんって不思議で素敵で変わった人ですね。私、ますます興味を持っちゃいました」
「……僕もだよ。瑞葉さんのトイレも絶景だったけど、七葉ちゃんのはもっと良い眺めだった。また見せてよね」
「はい☆」
ペーパー越しに七葉ちゃんのお尻と局部をなぞっているいちに、少しずつ心の中の壁が崩れ落ちて行く。もはや、僕と七葉ちゃんの間を遮るものは何もない。
「これからもよろしくね、七葉ちゃん」
「……はいっ!」
そして、女子トイレの一室で僕たちは新しい絆を誕生させたのであった――
翌日。委員選考に割り当てられた1時間目の授業で、僕と七葉ちゃんは永戸先生によって早速クラス委員に指名された。
「あんたら昨日の午後の授業でボケっとしとったそうじゃないか。ピリッとさせんにゃいけんけえ、あんたらがクラス委員をやりんさい!」
『は、はぁ……』
僕たちは逆らう術もなく、今まさに先生の強い推しと悪意のないドヤ顔に押し切られようとしていた。
――僕は良いんだけど、七葉ちゃんは……
チラリと隣を見ると、七葉ちゃんは僕に満面の笑顔を向けながら、両拳を握っていた。
――健二さん、頑張りましょう!
七葉ちゃんの表情からその覚悟を察する。どうやら彼女はやる気マンマンのようである。ならば……
「分かりました。3年5組のクラス委員、僕たちがしかと引き受けさせてもらいます」
「言うたの。確かに聞いたけえの、信じちょるど」
先生は僕に念を押すと、黒板に僕たちの名前を書き、その横にハッキリと『クラス委員』という肩書きを記入した。これで、僕たちの役職が正式に内定したのである。
――これで、2年連続のクラス委員か……
押し付けられる形でクラス委員になったのは去年と一緒だったが、その中身は明らかに違っていた。何故ならば、全く不快感が湧いてこないのだから。
――これも、多少なりとも信用されてる証だったりするのかな……
僕たち以降も独断で委員を決め続ける先生に、クラスの中から次々と悲鳴と笑いが起こり続けて少し楽しい気持ちになってくる。こんなこと、去年は一度もなかった光景だ。
「…………」
どうやら花子さんに言われた通り、僕は本当に面白いクラスに入れたのかもしれない。今になってそう思えてくる。
――香子先生……あなたがいないのは寂しいけど、僕は今、何だか幸せな気分です……
僕はボンヤリと窓の外の桜を眺めながら、愛すべき女性の姿を思い浮かべて心を泳がせていた。
「健二さん。今日もお昼、一緒に食べましょうね」
「ああ、最初からそのつもりだよ」
新しいクラスメートとの親交を、着実に深めながら――――