第39話(壱) 僕たちの検便記念日
「あんたら。今年度から、うちの学校も検便を採るようになったけえの」
火曜日。朝のホームルームで、担任の永戸先生は唐突にそんなことを切り出してきた。
――検便……
決して知らないわけではないその言葉を脳裏に描きながら、記憶の糸をたどる。少なくとも、僕は一度もこの行事に参加した覚えはない。
市の方針か学校の方針か、僕が通っていた小中学校は一貫して尿検査だけで、検便なるものは実施されなかったのである。もちろん、高校での2年間もまた然り。
――全く、何の酔狂で今さらこんなことやり始めるんだか……
文字通り『面倒臭そう』な行事に、クラス中が顔をしかめていることにも構わず先生が話を続ける。
「ほいじゃが(=しかし)まだ実験段階じゃ。それに、診察医師の人数不足もあるけえ、今年度の検便は女子限定じゃ」
『――!』
先生の発言に、クラス中がざわめきを始める。どうやら男子は全員免除ということらしい――言うまでもなく、この僕も。
――助かった……いくら僕でも、自分の出したブツなんて見たくもないからな……
ささやかな慈悲に思わず胸を撫で下ろす。そりゃそうだ、何が悲しくて男の検便なんて誰得イベントを開く物好きがいるのかという話である。
「女子の人数分、必要品はもう用意してあるけえの。春野、お前が配っちゃれ」
「は、はい」
隣の席の転校生――成り行きで女子のクラス委員になってしまった七葉ちゃんが、先生に言われて立ち上がり、教卓上に置かれた検便用品をクラスの女子たちに配る。つまり、その中には七葉ちゃん用の検便道具も入っているわけで……
「…………」
「ええか、用具は女子の人数分しかないけえの、男子は出さんでもええんじゃけえの。分かっとるね林葉君?」
ボンヤリしているところに先生の突っ込みが入り、とっさに言葉で切り返す。
「も、もちろんです! 誰がそんな、やらなくてもいい面倒事を好きこのんでやるものですか、はい」
すると、僕の言い回しが面白かったのか、クラス中が大きな笑いに包まれたのである。
――あれ? 何か笑えるところがあったのかな、今のセリフ……
僕には何がおかしいのか理解できなかったけど、不思議と悪い気はしなかった。よく分からないけど、クラスの中に少しだけ溶け込めている、そんな気がしていたのだ――
「健二さん。今日は一緒に帰りませんか?」
放課後。七葉ちゃんが、僕に帰りの誘いを持ち掛けてきた。
「うん、いいよ」
特に断る理由もないので承諾する。と言うか、彼女と帰路を共に出来るのなら大歓迎である。
しかし、そんな僕たちの元にクラスの外から無粋な横槍が入ってくる。
「よう七葉、元気?」
底意地の悪さが顔中に滲にじみ出ているその面子は、かつてのクラスメート――円香さんの仲間たちだった。
「転校して来てまだ二週間ぐらいしか経っとらんのに、えらい楽しそうじゃん? 調子に乗っとるじゃろう?」
「は、はぁ……」
七葉ちゃんが一目で分かるほどに困惑の表情を浮かべる。すると、今度は矛先が僕へと向かう。
「林葉君も元気そうじゃね。あたし何年も見ちょらんけえ、とっくに死んだもんと思うとったわ」
「おいおい、昨日昇降口で会ったばかりだろ。若年性認知症じゃあるまいし」
「うっさいのっちゃ」「うざいっちゃ」「黙れっちゃ」
軽い毒を込めた切り返しに、一斉に罵倒の言葉が飛んでくる。いつもながら、何なんだこの子たちは一体……
「……帰ろ、七葉ちゃん。これ以上いても、気分が悪くなるだけだ」
「はい、帰りましょう」
肝心の円香さんがいない上に、女子たちの罵詈雑言を聞き続けるのも面白くなかったので、僕は七葉ちゃんを連れて教室を後にした。
「なんかっちゃ! 林葉の分際で、まーちゃんと転校生に二股かけやがって!」
教室の中から変な罵声が飛んで来たが、僕たちは気にしないで階段を下り続け、速やかに下校した。
「あんたらっ、あたしのクラスで何をワケの分からんこと叫んじょるんかねっ!! バツとして今からグランド40周!!」
『ギョエ~~~~!!』
直後、永戸先生の雷が落ちたことさえ気にかけることもなく――
「待ってや、健二君」
帰り道。他愛もない猥談をしながら歩いていた僕たちのところに、円香さんが駆け付けてやって来た。
「どうしたの円香さん? そんなに必死になって」
「どうしたの? じゃないじゃろ。健二君と一緒に帰る約束を、友達にことづけちょったの、聞かんかったん?」
ギュム。
「あらやだ……」
円香さんが不満そうに僕のペニスを握ってくる。七葉ちゃんの視線など、お構いなしといった具合に……
「……残念だけど、君の友達は僕にそんなこと言ってくれなかったよ」
「そうなんじゃ……まぁ追いついたんじゃし、それに関してはもうええけど」
円香さんが機嫌を直して僕の右隣に並ぶ。どうやら、先ほどの放課後は職員室に呼ばれていて、直に僕を誘いに来られなかったということらしい。
「健二君って最近、七葉さんと仲がええそうじゃね。うちのクラスでも噂になっとるよ」
「そ、そうなの? 僕はただ、転校生の七葉ちゃんに早く学校に馴染んでほしくて、色々と教えてあげているだけなのに」
鋭い視線を円香さんに向けられ、少しドッキリする。よく分からないけど、それが理由で睨まれないといけないものなのだろうか。
「……そんなこと言って健二君、実はもう七葉ちゃんをホテルに連れ込んで、めくるめく官能の世界を存分に味わっていたりするんでしょ?」
「何だよその怪しい言い回しは……悪いけど、円香さんが思っているようなことは、今のところ一切ないからね」
「そ、そうですよ! 健二さんみたいなオクテが、まだ転校して日の浅い私にそこまで出来るはずないじゃないですかっ!」
円香さんのエッチにな追及に、七葉ちゃんともども真っ向から否定する。さり気なく『めくるめく官能の世界』という響きだけは少しウケたけど。
「ふーん……ま、七葉さんはともかく、健二君が言うんならあたしは信じるわ」
「感謝するよ。本当は、七葉ちゃんのことも信じてあげてほしいけど」
どうやら、クラスを離れてもなお、円香さんは心を許せる相手に変わりなさそうだった。
「ところで健二君。今日はあたし、健二君に用があるけえ、これから家に上がらせてもらうよ」
「えっ」
熱愛疑惑が晴れた途端、円香さんが急にそんなことを言って僕の腕にしがみ付いてくる。
「ど、どうしたんだよいきなり」
「悪いけど、頼むいね。健二君にしか頼めんことが出来たんじゃけえ」
すると、円香さんに合わせるかのように、七葉ちゃんも左側から僕の腕にしがみ付いてくる。
「ずるいですよ円香さん。本当は私が先に頃合いを見て頼もうと思っていたのに、抜け駆けをするなんて」
「な、七葉ちゃん?」
七葉ちゃんが円香さん以上に体をすり寄せてきて、思わず間の抜けた声を上げてしまう。と言うか、両脇から腕をつかまれて、正直歩きにくい……
「健二さん。唐突ですけど、私も健二さんに用があるから、お家に上がらせてもらいますね」
「……って、って、って!」
いくら両手に花とは言え、歩行困難な上に人目につきまくっている状況下に耐えかねて、僕は二人の腕を振りほどく。
「一体どうしたんだよ二人とも。僕に用があるとか、僕にしか頼めないことがあるとか、何の話だよ? まずは僕に用件を伝えてくれ」
二人の遠回しな物言いにヤキモキしながら、僕は少しだけムキになる。
『…………』
すると、彼女たちは一旦顔を見合わせると、驚くほど声をハモらせて僕に願い出たのであった。
『健二君 (さん)……あたし(私)のウンチを採るの、手伝ってや(下さい)』
目の前の官能的な光景に、思わず夢ではないかと錯覚をしてしまう。
「その……本当に、ここでしちゃうわけ?」
「仕方ないじゃろ、学校の行事なんじゃし」「健二さん、見てて下さいね」
おそるおそる確認をしてみたが、彼女たちの意思に変わりはなさそうだった。
「……」
僕は今、自宅のリビングにいた。そして、目の前では円香さんと七葉ちゃんが、二枚重ねのビニールシートの上で、お尻を出して屈んでいたのである。
――これは最高の景観だな……ありがとう、検便!
視界に映る二つの桃を前に、僕は心から感激する。ちなみに、トイレの中で採取しないのは、便を便器の中の水気と混ぜないためである。
「健二君、チンポが勃っちょる。一応これも学校の行事なんじゃけえ、あんまりそんな気持ちで臨みんさんなや」
「あはっ☆ 健二さんのムキムキなおチンポ様を見ていると、私まで幸せな気分になっちゃいますぅ」
顔だけ振り向かせていた彼女たちに、そそり勃っていたペニスを指摘されながら少し赤面する。だけど、ここでひるんでいては何も始まらない。
「それは後で発散させるとして……二人とも。準備は出来ているんだから、さっさとひり出してくれ」
僕は両手で彼女たちのお尻を撫でながら優しくもむと、二人に排便を促したのであった。
「んっ……んくっ……」「う~ん……」
円香さんと七葉ちゃんが、それぞれ艶めかしいうめき声を上げながら、肛門を開いて気張り出す。
そんな中、一足先に実が出てきたのは七葉ちゃんのお尻の方だった。
「いや~ん☆ 健二さんに見られてると思うと私、腸内が活性化してきていっぱいウンチが出てきちゃいますぅ!」
ムリムリムリムリムリッ……ムリリッ! メリッ、メリメリッ! ムリムリメリリッ!!
僕の目の前で、七葉ちゃんが絵に描いたような健康便をニチニチとひねり出す。その便は色・形・臭いと、どれを取っても一級品だった。
「それじゃあ、まずは七葉ちゃんのウンチから採取するね」
僕は七葉ちゃん用のヘラと容器を準備して、彼女の出した一番大きなウンチの真ん中部分をヘラですくい、出来るだけ多く容器へと盛り付ける。
「はぁ~ん…………」
プシャァァァァァァ…………
七葉ちゃんはそんな僕に目を向けることもなく、恍惚とした表情で放尿をしていた。
「これでよし、と」
僕は容器にフタをすると、速やかに七葉ちゃんの名前が書かれた紙袋の中へと入れた……それでもやはり、臭いはするのだけど。
「あ~、スッキリしました☆ ところで、円香さんはまだなんですかぁ?」
出し終えた七葉ちゃんが屈託のない笑顔で円香さんを煽る。それもそのはず、円香さんはさっきからずっとオナラばかり出していて、肝心の実が欠片ほども姿を見せていなかったのである。
「うるさいっちゃ、ウンチが腸の中で糞詰まり起こしちょるんじゃけえ、仕方ないじゃろ……!」
円香さんが肛門をヒクヒクさせながら、これまで以上に険しい顔で力強く気張る。しかし、彼女の力の限界か、宿便が予想以上に固いのか、その穴からは固形物が生まれいずる気配は微塵も感じられなかった。
「くそっ、せめて直腸の手前にたまっとる分だけでも出しちょかんと……」
円香さんは出てこない宿便にため息を吐くと、両手でお尻を開き、肛門を拡げながら踏ん張り始めた。
「うっ……くっ……う~~ん…………」
「頑張れ円香さん、僕はもうビンビンに勃ちっぱなしだぞ!」「円香さん、ファイトですっ! 私にもあなたのウンチを見せて下さいませ!」
僕と七葉ちゃんは、口々に円香さんへとエールを送る。やがて――
「ん~~~~っ!!!」
メリメリメリメリメリッ……メリメリッ、ブポオッ!!
僕たちの祈りが通じたのか、円香さんのお尻から漫画でしか見られないような極太の大型ウンチがひり出されたのである。
「きゃっ☆ 円香さんのウンチ、すっごくデカくて健二さんのおチンポ様よりもたくましいですぅ」
「……それは知らないけど、でかしたよ円香さん! これは奇跡レベルの強『ウン』だ!」
僕は先ほどの七葉ちゃんの時と同じく、今度は円香さん用の検便用品で彼女のウンチを採取して、名前の書かれた紙袋へと収納した。これで、採取作業は完了である。
「あ~……」
ジョロジョロジョロジョロジョロ……
円香さんが放心状態といった具合に気の抜けた声を上げながら放尿する。気がつけば、窓を開けているにも関わらず、部屋の中は彼女たちの糞尿の臭いがプンプン漂っていた。
「それじゃあ二人とも。僕が一緒にお尻を拭くから、ちゃんとおさえていてくれ」
「分かった」「はぁ~い」
円香さんと七葉ちゃんが自分の両手をお尻に添えて、しっかりと固定する。そして、僕がペーパーを両手に持って二人のお尻を拭く。
「……七葉さんって変わっとるけど、面白い人じゃね。あたし、冗談抜きで今日一緒にウンチすることが出来て良かったわ」
「私もです☆ 円香さんのお尻と可愛らしいウンチ姿を見ることが出来て、最高の一日になりました」
「…………」
僕が気持ち丁寧に拭いている傍らで、彼女たちが楽しそうに談笑を交わす。どうやら、初対面でありながら、お互いがうまい具合に打ち解けたみたいである。
――まさか、この二人がここまで仲良くなるなんて……すごいぜ、検便!
彼女たちのお尻を何度もガン見しながら、この背徳感あふれる素敵なイベントを復活させてくれた、名前も知らぬ偉い人たちに感謝の念を抱く。
こうして、『採る側』として臨んだ人生初の検便は、素晴らしい記念日となって僕の心に深く刻まれたのであった。
第39話(弐) 危険な逢瀬は雨の夜に
「は~~……」
体中から湯気を立たせながら、両手を腰に当てて大きく息を吐く。時刻は午後8時過ぎ、僕は今、長湯を経て風呂を上がったばかりだった。
――これだけスッキリすると、気持ちが良いなぁ……
全身をバスタオルで拭きながら、もう一度息を吐く。長湯の影響か、室内の温度計が15℃前後を差していたものの、僕の体は寒さを感じなかった。
「…………」
窓の外では、絶え間なく雨音が響き続けている。天気予報で夜から雨が降るとは言っていたものの、まさかこのような大雨になろうとは。
――……社会人になると、夜勤とかするような仕事だったら、こんな時間にこんな雨が降っていたって、出かけなきゃいけないんだよなぁ……
ふと、そんなことを考えながら『レイニーブルー』な気分に胸を締め付けられる。もちろん、今の僕には関係のない話なのだけど。
――全く。もう来年だというのに、高校卒業後の進路なんて想像もつかないよ……
拭き終えたバスタオルを洗濯カゴに放り込み、服を着ながらリビングのカーテンを閉めて電気をつける。
「…………」
部屋に明りが灯され、僕の視界にアニメのポスターたちがドドンとはっきり映し出されたその時だった。
ブルルルル!ブルルルル!
「わっ」
急に机上の携帯電話が鳴り始めて、思わず声を上げる。基本的に常時マナーモードにしているとはいえ、やはり振動音でも不意に聞こえてきたらハッとする。
――誰だよ、こんな時間に……
携帯を開いて、画面に出てくる着信相手の名前を確認する。どうやら、送信相手は他校のスカトロ仲間――奈美子ちゃんだった。
――奈美子ちゃん……僕に一体、何の用なんだ?
明らかに無視の出来ない相手だったので、僕は迷うことなく電話に出る。
「もしもし」
すると、電話口の向こうから、切羽詰まった奈美子ちゃんの声が聞こえてきたのである。
「健二先輩、助けて下さい! 一大事なんです!」
「い、一大事?」
「そうです! 私……今、部活帰りなんですけど、とってもヤバい状況なんですっ!」
奈美子ちゃんの声色が、ただならぬ雰囲気を感じさせる。察するまでもなく、これは穏やかではない。
「とにかく健二先輩、今すぐ私のところに来て下さい!」
「分かった。すぐに行くから、場所を教えてくれ」
焦り気味の奈美子ちゃんに、努めて冷静に対処しながら肝心の現在地を聞き出す。
「はい! 私は今、一水公園の女子トイレの中ですっ!」
「一水公園の女子トイレだね、了解した……って、女子トイレ?」
そこまで聞いて、ふと僕の中で張り詰めていた緊張の糸が緩くなる。しかし、奈美子ちゃんはそんな僕に構うことなく続ける。
「それと、トイレットペーパー持参でお願いしますね。あ、お外は雨が降ってるから、水濡れ注意ですよ」
「…………」
「ついでに、お尻が切れちゃったんで、軟膏薬があったら持って来てほしいです。あと、個室の中がいい加減ウンチ臭いから、消臭スプレーもあった方が……」
「な、奈美子ちゃん。それって、つまり……」
次々と出てくる注文の品々に、僕は全てを察してしまう。だが、奈美子ちゃんはそんな僕に何一つ悪びれることなくこう告げたのであった。
「はい☆ 公園のトイレでウンチしたら紙がなかったから、先輩に持って来てほしいんです」
それは、全くもって僕が察した通りの答えに他ならなかった…………
電話後、僕は化粧水をつけると、必需品をそろえて速やかに奈美子ちゃんのいる一水公園のトイレに向かった。少し遠い場所ではあったものの、雨が激しかったので、今回は歩きだった。
――暗いし雨降ってるし、そりゃあ自転車はキツイよな……
傘を差し、小型の手提げを肩にかけて雨道を急ぐ。気が付けば既に靴下ごと靴が濡れていて、歩くたびにグチュグチュ音が否応なく耳に入ってくる。
――待ってろよ、奈美子ちゃん……
本当は風呂上がりにこんなことをするのは不本意だったけれど、大事な人の窮地である以上、そんな感情はすでに忘れ去っていた――
一水公園に着いた僕は、すぐさまトイレに直行して、奈美子ちゃんのいる女子トイレの個室に入った。
「お待たせ、奈美子ちゃん……って、うえっ」
入るや否や、すぐに便臭が鼻腔へと突き刺さる。それもそのはず、奈美子ちゃんが跨っている段差式和式便所の下には、彼女がひり出した下痢便が、山のようにこんもりと盛られていたのである。
「もう、遅いですよ健二先輩。私がエッチな人に痴漢されでもしたら、どうしてくれるんですか」
ブビィィッ!
奈美子ちゃんがお尻を丸出しにして屈んだままの体勢で、オナラをふってくる。その臭いはすぐに充満していた便臭と入り混じり、個室の中で悪臭へと変化した。
「いや、いくら何でも、こんな大雨の中を動き回るような痴漢はいないでしょう」
僕は手提げから消臭スプレーを取り出し、四方八方へと噴射する。すると悪臭は中和され、完全消臭とまでは言えないものの、どうにか許容範囲程度にはおさえることに成功した。
「それに奈美子ちゃん……紙がないのは仕方ないとして、どうしてウンチを流さずに放置してるかなぁ」
「えへへ。この際だから、ついでに私の今日のウンチを先輩にも見せてあげようと思って、このままにしてたんです」
「……」
ふと口にした素朴な疑問に、奈美子ちゃんらしい答えが返ってきて、思わず苦笑する。やはり彼女は相変わらずである。
「全く……久しぶりの出会いがこんな形だなんて、どうにかしてるよ僕たち」
僕はため息を吐きながら、両手で奈美子ちゃんのお尻を揉みながら愛撫する。当たり前ながら、その質感もまた、相変わらずだった。
「や、やだ、先輩のエッチ……もうオチンチンがビンビンになってたりするんでしょ?」
「まあね。だけど、そんな勃起男子にお尻を拭いてほしいのは、どこの誰なのかな?」
「は、はい……それは私です……」
「合格。正直で大変よろしい」
僕は奈美子ちゃんの肛門に息を吹きかけると、手提げから未使用のペーパーを取り出して、彼女のお尻を拭いた。
「……今日は本当に下痢っぽいんだね。お尻のベットリ感が生々しい限りだよ」
「そうなんです……ここ数日、寒暖の差が激しくて、お腹の調子が優れないんですよぉ」
お尻を拭きながら、奈美子ちゃんと彼女の便質の話で盛り上がる。どうやら彼女は本当に下痢続きらしく、今も継続中の『排便日記』ではずっと下痢の二文字が並び続けているのだという。
「先輩、こんな下痢ウンチな私のこと、見捨てないでいてくれますか?」
「心配はいらないよ。どんなウンチをしていたって、奈美子ちゃんは僕の大事な仲間だもの。見捨てたりなんかしないさ」
僕は固定している右手に力を込め、奈美子ちゃんのお尻をより強い力でつかみながら、なおも拭き続ける。それは、彼女を想う僕の意思表示でもあった。
「覚えておいてくれ……これこそが、僕の気持ちだ。たとえ手と手が離れても、僕はお尻をつかんで奈美子ちゃんとの絆を守り続けてみせる」
「先輩……」
「さあ、お尻を拭いたら次は痔の薬だ」
僕は奈美子ちゃんのお尻を拭き終えると、速やかに手提げから軟膏薬を取り出して、奈美子ちゃんの切れ痔の部分とその周囲に塗布をした。
「あぁ~、冷たいです……でも、先輩にお尻の割れ目をなぞられる感触、すごくいい……」
「僕も嬉しいよ。久しぶりに、奈美子ちゃんのエッチな姿を見ることが出来たんだから……」
僕たちは、汚いトイレの中で、互いを満たし合いながら夜の逢瀬を心行くまで堪能した。降り止まぬ雨の中、僕たちの心にも幸せの雨が降り注ぎ続けていた。
トイレでの逢瀬後。奈美子ちゃんの好意で、僕は彼女の家で風呂に入ることになった。海外旅行でご両親不在の中、一番風呂を頂く形となったのだが……
「……やっぱり、奈美子ちゃんも同伴しちゃうわけ?」
「当たり前じゃないですか。今日は私と先輩、二人で一緒に一番風呂です☆」
広めの浴槽で、奈美子ちゃんと肩を寄せ合いながら湯船の中につかる。二人で入る浴室は、トイレの中とはまた違った妙な背徳感が漂っていた。
「えへ。生で見る先輩のオチンチン、可愛いです」
ギュム。
奈美子ちゃんが湯船の中で、僕のペニスを握りしめてくる。だから僕も、負けじと奈美子ちゃんのあそこに手を添える。
「……奈美子ちゃんこそ、相変わらずの無毛なオマンマン、可愛いよ」
「や、やだ、先輩ったら……」
奈美子ちゃんが僕に局部を触られて赤面する……僕のペニスを握ったままで。
「もう! そんなことするエッチな先輩には、泡風呂攻撃しちゃうんですからね!」
「えっ?」
ボコッ! ボコッ! ボココッ、ボコオッ……!
言うが早いか、奈美子ちゃんがさっきウンチをひり出したばかりのお尻から、湯船に泡をわき立たせる。
「奈美子ちゃん、こ、これは……」
「えへへ。誰かさんが触りまくってくれたから、お尻の穴が活性化しちゃったみたいです☆」
奈美子ちゃんが無邪気な笑顔を浮かべながら、僕に親指を突き立ててくる。浴室は、今の排ガス攻撃で、程なくして屁臭香る空間へと変貌を遂げていた。
「全く……そんなにオナラしまくってたら、切れ痔が広がっちゃうぞ」
「いいんです。その時はまた、先輩に薬を塗ってもらいますから」
奈美子ちゃんが浴槽から上がり、腰掛け椅子を用意してその隣に膝を付く。
「さあ、来て下さい。先ほどのお礼も込めて、今日は先輩の体を心行くまで磨き上げちゃいますからね!」
「ああ、やってくれ……隅々まで!」
僕は浴槽から上がると椅子に掛け、奈美子ちゃんと一緒に泡だらけになって、いつまでもじゃれ合っていた。
「それにしても……服、いつごろ乾くかな?」
「いいんですよ、気が済むまでずっと回していれば!」
先ほど乾燥機に放り込み、中で延々と回され続けている、僕たちの衣類のように――