第45話(壱) 幸せを呼ぶ熱中症
ジリジリ、ジリジリ。
「………………」
本当にそんな音が聞こえてきそうな炎天下の中で、かろうじて意識を保ちながら近くの草を引っこ抜く。
今現在、僕たちの学校は『一斉清掃』と称して全教員&全生徒総出で校内の草抜きを取り行っていた。
――全く、どうして夏休み前にこんなことしなくちゃならないんだか……
顔にも口にも出さないまま、僕は心の中で不平不満を並べ立てる。
「あ~たいぎい(=面倒臭い)のぉ~~、こんなことやっちょられるかいや」
その傍らではクラスメートの男子――斉藤が口ばかり動かしていて、ロクに作業もせずにふんぞり返っていた。
「真面目にやれ~~!!」
しかし、すぐさまそれが担任である永戸先生の目に留まり、怒号をぶつけられる。
「いや、やっとったじゃないね。何なんその言い方は」
「嘘つけ! お前さっきから何もせんとずっとしゃべりよったじゃないか、バカタレ!」
口答えをする斎藤の尻をめがけて先生が迷うことなく手持ちの竹刀を振るう。だが斎藤は、反射的に尻の前に両手をかざしてしまったのである。
バチン!
「痛っ!!」
両手の甲に見事な一撃をもらった斎藤が悲鳴を上げる。しかし、それはほとんど自業自得のようなものだった。
「当たり前じゃろうが。黙って尻を叩かれとりゃあええのに、手を入れるけえそういうことになるのいや」
『……』
気が付けばそのやり取りを前にして、僕を含むクラスの全員が笑いをこらえるのに必死になっていた。
「あんたらも何もせんとふざけちょったら斎藤君みたいになるんじゃけえ、気をつけんさいよ!」
『はい!』
先生の注意勧告を受けて、再び各々が大人しく作業に取りかかる。そんな中、僕は横目でチラチラとクラスメートの七葉ちゃんの姿を追っていた。
「…………」
彼女は僕たちのクラスの担当区画の中で、手袋を付けて黙々と草を抜いていた。いつもより、顔を赤くさせながら……
――何か心配だな……
僕は近辺の草を手早く抜き取ると、さり気なく七葉ちゃんの真横に移動して、そこで作業を開始した。
「隣、お邪魔するよ」
「どうぞ☆」
僕が真隣に腰を落とすと、七葉ちゃんは満面の笑顔で迎え入れてくれた。だけど、その表情はどこか辛そうだった。
「……さっきから暑そうにしてるけど、大丈夫なの?」
「だ、大丈夫です……これぐらい、屁でもありません。健二さんこそ、大丈夫なんですか?」
「僕は平気だよ。何たって、意外に丈夫な健康体こそが数少ない取り柄なんだからね」
作業を進行させながら、互いに声をかけ合って健康状態を気にかける。
だけど、口先だけの『大丈夫』など猛暑の前では何の意味さえも持たなかったのである――
「……」
「……七葉ちゃん?」
段々と口数が減り、急に動かなくなってしまった七葉ちゃんに異変を感じて彼女の名前を呼んでみる。
――ドサッ……
しかし、返ってきたのは彼女の可愛らしい声音ではなく、人が地面に倒れ込む無機質な音だった――
「七葉ちゃん!」
周囲がざわめく中、僕はもう一度大きな声で彼女の名前を呼ぶ。
「はぁ……はぁ……」
七葉ちゃんはかろうじて意識を保っていたものの、顔を赤くさせたまま呼吸を繰り返すのが精一杯のようだった。
「……こりゃあ完全に熱中症じゃのぉ」
すぐに永戸先生が容体を確認しながら険しい顔をする。そして、その直後――
「林葉君、あんた男じゃしクラス委員なんじゃけえ、春野を保健室に連れてっちゃれ」
「えっ、僕がですか?」
突然の指令に思わず目を丸くさせながら素っ頓狂な声を上げる。だが、先生の方は冗談や冷やかしなどではなく、真剣そのものだった。
「あんたしかおらんじゃろうがね。クラスで一番春野と仲がええのは他の誰でもない、あんたじゃろう」
「……ですよね、分かりました」
先生の言ってることは最もだったし、七葉ちゃんをこれ以上放置しておくわけにはいかなかったので、僕は指示通り責任を持って七葉ちゃんを保健室に連れて行くことにした。
「じゃあ七葉ちゃん、失礼するよ」
僕は七葉ちゃんを抱きかかえると、クラスメートを筆頭に多くの視線を浴びながら彼女を保健室に連れて行ったのであった――
「ふむふむ、考えるまでもなく暑さにやられたってところかしらね。まぁしばらく安静にしていれば問題ないわ」
ベッドに横たわっている七葉ちゃんに簡単な検診を施しながら、養護教諭の早紀先生が僕を安心させるように告げてくる。
「そうですか、良かったです」
僕は安堵の息を吐きながら、微笑みを浮かべながら眠っている七葉ちゃんに視線をよこす。
――全く、どんな夢を見てるんだか……
よほど疲れていたのか寝不足だったのか、七葉ちゃんは検診の途中で急に眠りこけてしまっていたのである。
「それにしても……熱中症は別として、この子軽い消化不良を起こしちゃってるみたいね。お腹が張っている感じだわ」
そんなことを言いながら、先生が急に七葉ちゃんの腹部に軽い手圧を入れる。
「ほら、健二君も試してみなさい」
「は、はい」
先生に言われるがまま、僕も七葉ちゃんの腹部をおさえてみる。
――あっ……
すると、心なしか張りのような感触が伝わって来て、彼女の腹部にガスが蓄積されていることがうかがえた。
「これは健康衛生的によろしくない兆候ね。健二君がチンポにアレを溜め込んでいるのとは意味が違うわよ」
「心配しなくてもそれは定期的に絞り出してますよ」
先生の卑猥なジョークに苦笑いを浮かべつつ、もう一度七葉ちゃんの腹部を圧迫する。
「……」
やはりその感触は未排出のガスを体内に残している、そんな感じだった。
「ちょっと健二君、そんなに圧をかけてると……」
「えっ?」
先生が僕に注意を促すも、それは既に手遅れだった。
「うっ……う~~ん…………」
七葉ちゃんが寝返りを打ちながら、こちらに背中を向けてくる。そして、次の瞬間――――
ブブゥ~~~~ッ!! ブビビ、ブスゥゥッ!!
「うっ……」
「だから言ったでしょ。そんなに刺激したらガスが体外に出て行くのは当たり前じゃないの……」
あろうことか、七葉ちゃんは眠ったまま腹部に蓄積していたオナラをここぞとばかりに排出したのである。
「あはぁ~ん……」
七葉ちゃんがまた寝返りを打ちながら、再び仰向けの体勢に戻る。
その笑顔は先ほど以上に幸せそうで、ほんの十数分前に熱中症を起こしていたとは思えないほどに安らぎに満ち溢れているかのようだった。
――良かったね、七葉ちゃん。かなり臭かったけど、そんな嬉しそうな君が見られたのなら本望だよ……
僕は三たび七葉ちゃんの腹部に手を添えて、その張り具合を確認する。
「…………」
そこにはもう張りのようなものは感じられず、健全な少女の肉体の感触がひしひしと伝わってくるかのようだった。
「全く。あんな臭いオナラを喰らっておきながら、どうしてニヤニヤしてるんだか」
ギュム。
気持ち頬が緩んでいた僕のペニスを先生が強く握ってくる。
「えっと、先生?」
「……掃除時間はまだ終わってないんでしょ? 七葉さんは私が見ておくから、あなたはさっさと持ち場に戻りなさい」
「は、はい……」
僕は先生に釘を刺されると、名残惜しくはあったものの保健室を後にして、速やかに校庭へと直帰した。
一度だけ、七葉ちゃんの寝顔に熱い視線を送って――
「おい林葉。お前、あのお花畑と付き合っちょるんか?」
自分のクラスの掃除区画に戻った僕を最初に待っていたのは、斎藤からのそんな質問だった。
「誰だよ、お花畑って」
大体の見当はついているものの、僕は敢えて分からないフリをする。
「ほら、アイツっちゃ。さっき倒れてお前が運んで行った、あの女」
「……七葉ちゃんのことかよ」
ここでようやく理解したような素振りを見せて本題に入り込む。
「確かに彼女とは仲が良いけど、そこまでの関係じゃあないよ。残念だけどね」
「そうなんじゃ……ほいじゃがもう高3なんじゃし、お前も彼女の一人ぐらいは作っちょけよ」
そう言って僕の肩を軽く叩くと、斎藤は永戸先生の目を盗んでこっそりと水飲み場へと消えて行った。
――全く、先生の愛のムチが全然伝わってない奴だよな……
そんな斎藤に苦笑いを浮かべると、僕は気持ちを切り替えて再び炎天下の清掃作業へと突入する。
――七葉ちゃん……君の分まで、しっかりキレイにするからね!
底知れぬ暑さが容赦なく全身を責め立ててはいたけれど、それでも僕は幸せな気持ちで満ちあふれていた。
第45話(弐) 因果の巡りの食あたり
終業式を終えた日の夕方。僕は以前からスカトロ仲間の奈美子ちゃんと約束していた食事会のために、駅前の中華料理店『珍宝軒』にいた。
「いよいよ明日から夏休みですね、先輩☆ 私、嬉しくて朝から牛乳1パック飲んじゃったもんだから、学校で大下痢したんですよ」
「それは災難だったね。でも、女の子なんだし暴飲暴食は控えないと」
「そんなこと言っといて、先輩私のウンチ姿を想像しながらしっかりオチンチン勃たせてたりするんでしょ?」
「あれっ、分かる?」
テーブル席に向かい合いながら、いつもと変わらぬ会話を繰り広げながら夕刻の一時を盛り上がる。
しかし、そんな憩いの時間に横槍を突き刺すかのように、店内に無粋な来客たちがドカドカと押し入って来たのである。
「あれ、林葉じゃん。こんなところで何しよるん?」
それは、かつてのクラスメートでこれまでに何度となく僕をいじめてきた同級生――石岡とその不愉快な仲間たちだった。
「何って……夕飯を食べに来てるに決まってるでしょ」
「お前さぁ、林葉の分際で一丁前に女連れて外食とか生意気にも程があるじゃろ?」
「ねー林ババ君、まさかソイツに俺ら―の悪口とか言いよったりせんじゃろうね?」
僕は無難な返答をしたつもりだったのだが、それでも彼らは見下すかのようにそんな言葉を向けてくる。
「あ、あの……」
そんな光景を目の当たりにして、奈美子ちゃんはただ困惑をするばかりだった。
「あなたたち、なにお店の中で騒いでるか!」
そんな中、一喝とともに場を鎮めてくれたのは珍宝軒のウェイトレス――橙蘭(チェン・ラン)だった。
『…………』
橙蘭の怒声と鋭い目つきが効いたのか、石岡たちはすっかり黙りこくって僕に絡んでくるのを中断する。
「おい、店の中なんじゃけえ騒ぐのはやめちょこうで。林葉なんかいつでもいじめることが出来るんじゃしの」
そして2つのテーブルをくっ付けると、そこを囲って面々(×6)は席に着いたのである。
「あなたたち、ごちゅ文は?」
橙蘭が先に入店した僕たちにオーダーを取りに来る。
「ネギラーメンのちょい盛りをお願いします」
「私はネギラーメンの大盛りと、チャーハンの特盛でお願いします」
僕たちは思い思いの料理を橙蘭に要望する。
「…………」
しかし、それさえも石岡たちは一瞥とともに鼻で笑い続けていた。
――全く……ネギラーメンとチャーハンの何が面白いんだかね…………
彼らのそう言った行動には慣れていたとはいえ、やはりやられる立場としては良い気のするようなものではなかった。
「あなたたち、ごちゅ文は!?」
橙蘭が今度は石岡たちのテーブルに注文を取りに行く。心なしか、その声は少し怒気を含んでいるかのようだった。
「……先輩、何なんですかあの人たちは? 私、すっごく気分が悪いです」
奈美子ちゃんが小声で僕に不快な気持ちを告げてくる。この声は、間違いなく明確な怒気を孕(はら)んだものだった。
「気にしない方がいいよ。適当にあしらっていれば、そのうち飽きると思うから」
僕のために怒りを露にしてくれる奈美子ちゃんの優しさは嬉しかったけれど、僕にはそう言ってなだめておくのが精一杯だった。
「…………」
もちろん僕だって、内心かなりご立腹だったわけだけど――
「ほいじゃあ『林葉健二を殺す会』結成2周年を祝って、カンパーイ!」
『カンパーイ!!』
一足先に届けられた大ジョッキの生ビールを片手に、石岡が聞こえよがしに物騒な音頭を取りながら乾杯する。
――やれやれ、石岡も大概だけど周りの連中もそれがおかしいとは思えないのかね……
僕はため息を吐きながら、ヤケ酒のようにグラスの水を一気に喉の奥へと流し込む。
「健二先輩、あんな人たちの言ってることなんて気にしちゃダメですよ。あんな人たちなんかより、先輩の方が男の子として何十倍も価値があるんですから」
「奈美子ちゃん……」
だけど、そんな僕を奈美子ちゃんは絶対的なまでに擁護してくれた。せっかくの食事会が僕の影響でこんな空気になっているというのに、である。
「ありがとう。大分心が軽くなったよ」
「えへへ。やっぱり先輩には笑顔が一番似合ってます」
僕たちは見つめ合いながら、どちらからと言うこともなくクスリと笑い合う。
だが、そんな時でもゲスな奴らは妨害の手を緩めようとはしなかった。
「ねえ、このビール何か変な臭いがせん? しょっぱいって言うか、アンモニアみたいな臭いがするんじゃけど」
「そんなわけがあるかっちゃ、お前の鼻が詰まっちょるのいや……林葉! お前の鼻炎を俺らに感染させんなよ」
ビールの味がおかしかったらしく、その言いがかりがどういうわけだか僕の方へと飛んでくる。
「そんなことまで知らないよ、大体そんなの僕じゃなくて店員に言うことだろ」
「うるさいっちゃ」「黙れっちゃ」「うざいのっちゃ」
当たり前のことを言ったつもりだったのに、次々と汚い罵声が返されてくる。
「お前、あんまり調子こいとったら俺らが頼んだ分、全部払わしちゃるけえの」
極めつけは石岡のそのセリフと、僕の横を飛んで行ったラー油のボトルだった。
「……危ないじゃないか。僕はともかく、うっかり彼女にあたりでもしたらどうするつもりだったんだ」
「知るかいや。お前に肩入れしちょる奴のことなんか」
石岡の横柄な物言いがますます場の険悪化に拍車をかける。
「は~い、ごちゅ文の品、届けるよ~」
そんな中、一声とともに場を鎮めてくれたのはまたしても橙蘭だった。
「は~い、ネギラーメン二丁にチャーハン大盛り、お待たせね~」
爽やかな笑顔と軽やかな足取りで、手持ちの大盆から僕たちのテーブルに注文の品をテキパキと置いていく。
「あなたたちのも出来てるから、すぐ持てくるよ~~」
そして一旦厨房に引き上げると、すぐに戻って来て石岡たちのテーブルにも注文の品を置いていく。
どうやら連中は、パーティメニューのようなものを頼んでいたみたいだった。
「うまそうじゃろ? じゃがお前には一口も食わさんけえの」
「どうせ味オンチのお前にゃ俺らが食うような料理の価値なんか分からんじゃろうけえの」
「あ、でも床に落としたらお前にやるけえありがたく食えよ」
橙蘭が完全に厨房へと引き上げた頃合いを見計らって連中が次々に減らず口を叩いてくる。
「君たちの頼んだ物なんていらないよ。と言うか欲しくなったら自分で頼むさ」
だけど、僕は気に留めずに自分の頼んだ料理を食べることに気持ちを切り替えた。
「食べようよ、奈美子ちゃん。温かいうちにさ」
「そうですね」
僕は奈美子ちゃんにも食べることを促すと、連中を完全にスルーしてラーメンを食べることにした。
『いただきます』
もちろん、食前の挨拶もキッチリと欠かさずに。
「おい、俺らも食おうで。大貧民林葉のケチ臭いラーメンよりもよっぽどうまいヤツをの」
「そうじゃの、食おうで」
石岡たちも冷めた料理を食べるのは嫌だったらしく、僕に絡むのを中断するとガツガツと乱雑にテーブルの上のご馳走たちを食い散らかし始めたのであった。
食事を始めてから十数分後。僕たちの耳に、虫が潰れたような汚い悲鳴が響き渡って来た。
「ぶはぁっ!」「げぼぉっ!」「ぐふぅっ!」「げはぁっ!」「がはぁっ!」「ごはぁっ!」
僕と奈美子ちゃんは食べる手を止めると、悲鳴が上がっている方向――石岡たちのテーブル席に視線をよこす。
「えっ……?」
「ど、どうなっちゃってるんですか?」
あろうことか、食事の途中で石岡たちは次々に吐血して、痙攣(けいれん)を起こしながらその場に倒れ込んでしまったのである。
『グガッ、グギギギギ…………』
しかも全員完全に青ざめていて、激しい痛みにもだえ苦しみながら。
「アイヤ―、私の特製料理がしっかり効いてるね」
呆気に取られている僕たちのところに橙蘭がドヤ顔で姿を見せる。どうやら、目の前の滑稽な惨事には彼女が一枚噛んでいると考えて間違いなさそうである。
「……何をしたのかは後で聞くとして、とりあえず救急車呼んどきますか?」
「大丈夫ね。然るべきところ連絡しておいたから、この子たちの身柄はそっち任せるよ」
ギュム。
橙蘭がニヤリと笑いながら僕のペニスをソフトに揉んでくる。
すると、程なくして屈強な大男たち(×6)がドカドカと店内になだれ込んで来た。
「わっはっは、俺たちの治療が必要だと言う小僧どもはコイツらだな?」
大男軍団のリーダと思しきセミロングのゴリマッチョ男が石岡たちを指差して橙蘭に確認する。
「その通りね。あなたたち、このクサレチンポどもをしかり頼むよ」
「任せておけ。俺たちがベッドの上でたっぷりと治療してやるからノープロブレムだ……お前ら、行くぞ!」
『ヘイ!!』
大男たちはそれぞれが石岡たちを肩に担ぎ上げると、低音の怪しい笑い声を立てながら店から出て行った。
「……どうしてあの人たち、赤パンツ一枚で外歩いていたんですか?」
「僕もよく分からないけど……多分、獲物を求めているからじゃないのかな」
僕と奈美子ちゃんは互いの顔を見合わせながら、食べかけの料理に視線を落とす。
「あなたたちのは普通につくてるよ、心配しないで食べるよろし」
「……ですよね」「は、はは」
僕たちは橙蘭の言葉を信じると、人払いを済ませた店内で安くとも美味しい中華料理をたっぷりと満喫したのであった。
後から聞いた話によると、橙蘭は石岡たちの料理の原材料に段ボールとプラスチックとアルミを使った上で、隠し味に病原菌『モロウィルス』をたっぷりと仕込んだとのことだった。
どうやら連中の僕に対する悪態の数々には彼女も気付いていて、ささやかなお仕置きの意味で致死量に至らない程度の食中毒にさせてやったのだと言う。
一方で、僕たちの料理には普通の原材料を使ってくれたものの、それでも奈美子ちゃんは食べ終えた後で腹痛を起こしてしまうのであった――
完食後、有無を言わさずトイレに連れ込まれた僕は、これまた有無を言わさず奈美子ちゃんの排泄介助をする運びとなった。
「先輩。今日も頼みますからね」
奈美子ちゃんが当然のように段差型の和式便所に跨って、ミドルサイズのお尻を出しながら屈む。
「えへ。お昼にもいっぱいカレー食べちゃってるから、今日は沢山ウンチが出せそうです」
「……期待してるよ」
僕はそんな奈美子ちゃんに近寄ると、むき出しのお尻を愛撫しながらそのまま指で彼女の局部と割れ目を優しくなぞってあげた。
「もう、健二先輩ったら大胆エッチなんだから……」
奈美子ちゃんは一つ息を吐くと力強く気張り始め、そのつぼみのような肛門から大きな塊をひり出したのであった。
ムリムリムリムリムリムリュリュッ……ビチャン!! メリメリメリメリ、ブリュリュリュッ!!
「はぁ~~……」
プシャァァァァァァ…………ブッ、ブブブッ!
大きな1本糞と緩めのウンチを出しながら、奈美子ちゃんが気持ち良さそうな声を上げて放尿と放屁をする。
――この子は本当に排泄が好きなんだなぁ……
僕は勃起をさせながら、その姿にただ見惚れるばかりだった。
「わっ、おっきいウンチが出ちゃったんですね☆ このサイズは柿津さんもオシッコ乱射モノのデカウンチですよ、先輩」
「柿津さんのクダリは知らないけど、確かに大きなの出しちゃったね」
便器の中の自分のウンチを見つめて嬉々とする奈美子ちゃんに、僕も部分的に賛同する。
「やられたね。こんな良いウンチ、私も出せないよ。あなた良い尻、良いウンチ」
気が付けばいつの間にか橙蘭もトイレに入っていて、奈美子ちゃんのお尻をしっかりと撫で回していた。
「そしてあなたは良い男、良いチンポ」
ギュム!
奈美子ちゃんのお尻に続いて僕のペニスもしっかりと橙蘭につかまれる。
「あなたたちならいつでも大歓迎よ。また珍宝軒来るよろし」
「は、はい!」「もちろんです!」
「良い返事ね。それじゃ、後は二人でごゆくり~」
橙蘭は満面の笑顔とともにトイレから出て行った。そして、僕たちは再び二人きりになった。
「……橙蘭さんは爽やかにお尻を触ってきちゃう素敵な人ですね。誰かさんのようなエッチな気持ち丸出しで触ってくるお尻タッチマンとは大違いです」
「何だよ、そう言う誰かさんだって下心丸出しでペニスを触ってくる揉みチンガールじゃないか」
何故だか互いに皮肉を飛ばし合いながら、そのあまりな内容に思わず笑い声が漏れてくる。
「……ま、色々あったけど結果的には良い食事会だったってことだよね」
「はい。私、今回の食事会を通じてますます健二先輩と距離が縮まったような気がします☆」
結局のところ、どこで何が起ころうとも僕たちは似た者同士のようだった。
「ほらほら、早くお尻を拭いて下さい。さっきからムズムズしてるんですからね」
「分かってるよ。しっかりフキフキしてやるから感謝してくれよ」
僕はペーパーを抜き取ると、奈美子ちゃんのお尻に息を吹きかけながらその汚れを丁寧に拭い去る。
「えへへ。私、夏休み前に最高の思い出を作っちゃいました☆」
「僕もだよ」
便臭漂うトイレの中。僕たちの心は、どこまでも晴れやかな気持ちで満たされていた――――