次話からが本番じゃぞ。
「私の勝ちだな。ルーラー」
忌み嫌った魔獣に成り果ててまで斃すと誓った女が伏している。
鋼鉄の巨鳥の上で――現代の知識ではジャンボジェットと呼ばれるらしいが、そんな使いもしない知識など今はどうでもいい――〝赤〟のアーチャーは怨敵を睨めながら近づく。
距離は約十メートル。超常存在たる英霊の中においても俊足を謳われる己ならば、一息どころか瞬きも終わらない内に詰められる程度の短さ。しかし、しない。確実に『仕留めた』という確信がある。狩人としての直感か、魔獣としての本能のどちらかは定かではなかった。
あるいは、この身に巣食う哀れで愛おしい子供たちの知らせか――黒く染まった右腕を労わるように撫でさすり、〝赤〟のアーチャーは足をゆっくり進めていく。
弱った獲物を前に悠長に近づくとは三流のすることだが、倒れた躰を起き上がらせようとするルーラーに矢を撃ち込むのは想像以上に昂る行為だった。
最初は聖旗を手の届かない場所に飛ばしてやった。彼方へと遠ざかり、地上へと落下する旗を目に取ったルーラーが歯噛みする。刹那、茫然としたのは見逃さなかった。……躰を起き上がらせようとしたヤツの手を磔にしてやったり、死に物狂いで抜けば肩や脚を射抜いてやった。……衝撃で後方に吹っ飛んでいく。僅かばかり力の調整を誤ってしまったらしい。これでは旗のように落ちてしまう。それは駄目だ。面白くない。満たされない。死ぬにしても、ちゃんとこの手で殺してやらないと気が済まない。
私も、魔猪も、子供たちも――だから落ちる直前で首根っこを掴み、巨鳥に一度叩きつけたあと顔と顔を突き合わせる。
「アタランテッ……まだ私は……ッ」
この期に及んでも
このまま息の根を止める、首を折るなどしてルーラーの命を絶つことは容易い。それこそ赤子の手を捻るようなもの。〝赤〟の陣営の勝利、天草四郎時貞の願望成就において最たる障害となるのがこの女……ジャンヌ・ダルクであるのなら、今すぐに殺した方が良いのは明白だ。
人類救済の目論見が破綻させられてはアタランテの希望も潰える。
《何をしているアーチャー? 戯れるのも大概にし、早くそやつに止めを刺せ》
遠く背後に浮かぶ空中庭園の玉座の主、〝赤〟のアサシンが念話で命じてくる。苛立っているように聞こえたのは間違えではあるまい。最古の毒使いであるアッシリアの女帝セミラミスにとってもルーラーが危険因子なのは変わらないのだ。
《万が一にもやらぬというなら諸共に焼き払うぞ》
「汝は毒使いであったな、アッシリアの女帝」同胞に共謀を持ちかける悪人のように言う。策略と権謀術数に生きた〝赤〟のアサシンは即座に意図を察する。「殺す殺すとは叫んだが、ただ殺してやるだけでは足りなくなった。私はこの女をどんな方法を使ってでも堕としてやりたい」
《……正気か?》
その言葉に〝赤〟のアーチャーは哄笑した。
夜空に、闇夜に、美しき女狩人の狂ったような笑いが奔る。
「クハッ、ハハハ、アハハハハハハッ!! 正気、正気だと……!? なあアサシンよ。今の私のどこを見れば正気があるように見えるのだ? 狩るべき魔獣になりかけている狩人だぞ!」
ルーラーの細い首を絞めている手に力を入れる。顔は苦しげに歪む。今ここで殺してしまったらこれがもう見られなくなり、生かせばこれ以上に悲痛かつ屈辱的な顔をさせられるのに、どうして容易く殺せようか? 勿体ないではないか。そう想うのが必然ではないか。
そうだろう、愛しい愛しい子供たち。
〝……〟〝……〟〝…………雌……女……聖女〟〝このひと生きてる〟〝ちゃんと肉がある〟〝……温かそう〟〝……柔らかそう〟〝お腹の中〟〝お腹〟〝お腹〟〝お腹〟〝お腹〟
〝子宮……………………………………………………………………入りたい。帰りたい〟
〝入りたい〟〝帰りたい〟〝入りたい〟〝帰りたい〟〝入りたい〟〝帰りたい〟
〝入りたい〟〝帰りたい〟〝入りたい〟〝帰りたい〟〝入りたい〟〝帰りたい〟
〝産まれたい―――――――――――――――――――――――――生きたいよ〟
怨霊や悪霊と呼ばれた子供たちが口々を揃えて囁き、アタランテは慈愛にて頷く。
そうだ、そうだろう、そうだろうとも。
あなた達は世界の機構の犠牲者。悪くなんてない。あなた達がそう願うのは当たり前のこと。そして叶えられて然るべき願いだ。
今なら言える。教えてあげられる。助けてあげられる。
残酷な世界しか知らないあなた達に、美しい世界を見せてあげられる。そう世界とは、自然とは、厳しくはあるけれど確かな優しさがあるのだ。
産まれることの喜びを、生きることの楽しさを、名前を呼ばれることの嬉しさを。
「貴女は……いったい、いったいなにを考えて……!?」
困惑したルーラーが問いただす。堪らずといった様子であった。彼女には悪霊の囁きが聞こえていなかった。ただ恐ろしく嫌な予感が頭の中で警鐘を鳴らしていた。生前にも死後にも感じたことのない悪寒に冷たい汗が止まらなくなる。
「この子たちが得られる筈だった命、過ごせる筈だった人生」
〝赤〟のアーチャーの憎悪しかなかった瞳に■■が宿っていた。だが致命的に歪んでいる。似て非なるモノだ。こんなモノを■■だなんて言えない。
「ジャンヌ・ダルク、悦べ。汝を聖女から聖母にしてやろう」
理解が追いつかない。意味が解らない。〝赤〟のアーチャーは明らかに正気の沙汰ではなかった。胸部と腹部と臀部を眇め見られる。それがまるで雄が雌を品定めするかのような視線で、ジャンヌ・ダルクは聖杯大戦のルーラーとしての使命をこの瞬間ばかりは忘却し、危機感と忌避感だけで腰の剣を手に取ろうとした。
「いつ抜くのかと思えば」
「あっ、なっ」
だが遅い。甘い考えだ。元から獣の如き鋭敏性を持ち、今や魔獣の皮と一体化したアタランテは獣そのものである。手足の一挙一挙、呼吸から視線の動きまで、たとえ視界外であろうと感知してみせる。今ならあの韋駄天すら完璧に捉えられるだろう。
自分の手より何倍も素早く尻尾に絡め取られた聖剣。思わず手を伸ばすが届かず、あろうことか両足のアキレス腱を自身の剣で断ち切られる。痛みに悶えれば嗤われ、ジャンボジェット機に一度二度叩きつけられた。刺さっていた矢の鏃がさらに深く抉る。額の装飾に亀裂が入る。血で視界が赤く染まる。
それでも何とか立ち上がろうとして――両腕の関節を踏み砕かれ、両肩を力ずくで外された。
そしてアタランテは聖女の項に手刀ではなく拳を振るい、意識を叩き潰す。
「ここまでやればまともに動けまいよ。私はルーラーと共に一度そちらに戻らせてもらう。ランサーとライダーの援護ならばその後で構うまい。あの二騎は勝ちこそしても簡単に負けはせん」
《……本気で連れてくるつもりなのだな》
「無論だ。この女には利用価値が大いにある。どういう原理かは知らんが肉体を持っている。欺瞞の聖女ではあるが豊満で母体としては優秀だ。ただ殺すには惜しい。さて、セミラミス……受け入れないというなら私にも考えがあるぞ」
《貴様に正気の沙汰を問うた我が阿呆であった。……よかろう、そやつを連れて戻ることを赦す。救った故国に見捨てられ、薄汚い男共に凌辱され、異端の魔女として火炙りにされても尚、堕ちなかったジャンヌ・ダルクを穢しつくすのも一興であろうさ。世界を統べたあとの手遊びとしては上等よな》
「己に言い聞かせるような口振りだな」
《まかり間違っても我の空中庭園を童子で満たすような愚行はするなよ》
「悪いが断言は難しい」
《お主……まあ今はよい。戻ったあとは〝黒〟のライダーを射落とせ。…………うん?》
「どうしたアサシン」
《些事だ。隠れ潜みながら庭園に近づく小鳥がいたようだが落としてやった》
「私が向かう必要はないか?」
ルーラーを担いだ〝赤〟のアーチャーは空中庭園へと飛翔し、〝赤〟のランサーに追われている〝黒〟のライダーを捉えながら言う。先ほどから当たっている筈のランサーの槍撃がすり抜けているように見えるのは気のせいではないだろう。
……なるほど、ライダーが騎乗する
だが、獣であるのなら何であれ狩ってみせよう。
《必要なかろうて。乗っていた者共は既にもう死んでおる》
「では汝の命の通り、〝黒〟のライダーを射落とそう」
空中庭園に降り立ち、空間転移によって現れた竜牙兵にルーラーを持たせる。雑兵に任せるのかと睨んでいれば白銀の鎖がルーラーの肢体を拘束し、ついでのように召喚された魔獣が番犬のように吠えた。
ふむ、これなら後顧の憂いなく戦場に向かえるな。
満足げに首肯を返したアタランテに、セミラミスはため息にも似た吐息をつき、額を撫でた。
〝赤〟のランサーに次いで真面だと思っていた狩人がよもやこうなってしまうとは……
「世界とはままならぬものよな」
玉座の黒き女帝は呟く。
「故に支配するべきなのだ」
〝赤〟の陣営と〝黒〟の陣営の最終決戦は〝赤〟の勝利で終わりを告げた。
〝赤〟のライダーが〝黒〟のアーチャーに敗れてしまったことは予想外ではあったが、マスターを喪い限界まで疲弊させられたアーチャーを仕留めるのは難しくはなかった。乾坤一擲を狙った〝赤〟のセイバーの奇襲も残存していた『
最後に、最後の最後まで抗い続けたホムンクルスは――――何かを見抜いたアタランテが生かすよう進言し、セミラミスの魔術によって生かされ続けられている。
そして必要になる時が来るまでは、造られたときと同じように槽へ閉じ込めるコトとした。
――以上にて聖杯大戦は幕を閉じた。
幾ばくかの月日は流れたが、天草四郎時貞の願望、大聖杯による第三魔法の発動は滞りなく続いている。不老不死を得られた人類の反応は十人十色ではあったものの、概ね良い方向に進んでいるようだ。
遠くない未来、人類は手を取り合う。そのとき彼等が間違った方向に進まないように私は努めます――と天草四郎時貞は〝赤〟のアーチャー……否、アタランテに語った。『
セミラミスはともかく、施しの英雄カルナがいれば決定的に間違うことはない筈だ。セミラミスにしても天草四郎の言うことは渋りながらも聞き届ける。
完璧とは呼べないかも知れないけれど、万事は上手くいっているように思える。
アタランテの、その深緑の瞳に映るのは多くの子供たちが仲良く遊ぶ光景だった。それを見て彼女は微笑む。やはり彼等はこうでなくてはならないのだと。
外の世界では不安や不幸は消えつつある。
「感謝する、天草四郎時貞。汝の願望は私の願いをも叶えてくれたようだ」
嘘偽りなく言い、部屋へと踵を返すアタランテに天草四郎は言葉を投げかける。
「……その子たちは浄化しなくとも宜しいのですか」
「すまないな。いくら汝の言であっても受け入れられないモノはあるのだ」
「……わかりました」
「無理を承知で頼むが、産まれたときは祝福やって欲しい」
「……はい」
「ありがとう」
笑顔。晴天のように曇りなき笑顔だった。……現時点では止められる言葉が思いつかない。故に見送ることしかできなかった。
天草四郎時貞の眼には、おぞましい数の子供たちの怨霊がアタランテの中で蠢いているのが確かに見えていた。
「アタランテ……私には、貴女の目的と手段が入れ替わっているように感じられます」
〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟
〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟〝はやく〟
子供たちが囁く。急かしている。部屋の扉の前につく頃には泣きそうな声になっていた。右腕に接吻して「もう少しだけ待つんだ」とあやす。
ただの人間では開けることもままならない重厚な造りの扉を開き、中に入る。草木の爽やかな匂いと花の甘い匂いが躰を包む。そこは自然の美しさと人工物の住みやすさを両立した、見事としか言いようがない部屋だった。双方は交わりつつも必要以上に関わらず、お互いの要素を損なわない程度に自身を主張していた。
「……帰ってきたのですか」
窓辺の椅子に座り、硝子に映し出される偽りの風景をボウっと眺めていたジャンヌ・ダルク。額を除き、各部分の装甲や装飾などが外された戦闘服を着用している彼女は、部屋の主が戻ってきたのを確認すると膝に置いていた両手を握りしめた。
自分を奮い立たせるために。自分の中にいる少女を勇気づけるために。
祈るかのような懸命なその姿が、自分を見下ろしているケモノを昂らせている事実にジャンヌは気付いているのか。
粗雑に抱き上げられ、乱暴に寝所に押し倒されても、抵抗らしい抵抗はしない。もちろん抗ったことはある。けれどある時、自分に身体を貸している少女……レティシアの人格が強制的に出され、そのまま三日三晩犯された。
時折、本当に時折――ジャンヌ・ダルクでも流される獣の交わりに、信心深いとはいえ普通の少女でしかないレティシアが耐えきるのは不可能な話である。
奇跡でも起こらない限りは……だがそれは望めるものではなかった。
アッシリアの女帝が生成した薬を飲まされ、躰を散々に弄られ、女にはある筈のない雄の象徴を突き込まれ……しかもそれは凶悪なまでに長く、太く、硬く、熱い剣や槍のような肉棒で……何度も何度も何度も、アタランテが満足するまで交配は続けられる。
魔獣の皮が剥がされようとケダモノの意思は微塵も揺らいだりしなかったのだ。恐らくは因子が根付いているのだろう。
――はぁっ、あうっ、だ、だめっ、だめっ……やめてくださいっ、こんなの間違ってますっ。アタランテさん、これは絶対にしてはいけないことで、んうぅ……あっあっ!――
こじ開けられた両脚に割り込んだアタランテが腰を振るたびに、最奥に熱く白い粘液を注がれるたびに、レティシアの抵抗はだんだん弱まっていく。身も心も自分から開いていった。
それが一日目の夜が明ける頃だった。獣の凌辱は始まったばかり。
――んちゅっ、ちゅるっ、ちゅ、ちゅ、ちゅっ、んんんっ、はっ……アタ、ランテさん。だめですっ……こんなことっ……ああっ、あっ、あっ……なんでっなんでっ、どうしてですかぁっ……! やっ、くあっ、あっんっ、あんんんっ!!――
いつしかアタランテの首に両腕が巻きつき、腰に両脚が回された。熱っぽく抱き合う二人が唇と唇を押し付け合う。唾液が零れるのも構わず舌と舌を触れ合わせる。肉棒が抜き差しされると粘っこく白濁とした糸が何重にも糸を引いた。ねっとりとしつこく、全身が絡み合うかのような姿は蛇の交尾そのもの。
――聖女様、聖女様、聖女様ぁっ。ごめんなさい、ごめんなさいぃっ。私、こんなにはしたなく身体を動かして、腰を動かして……んっ、あんっ……はあっ、はあっ、はあっ――
――汝の懺悔は心地よいな。フム……そうだな。汝がこのまま気をやらずにいれば、その分だけ次にジャンヌ・ダルクを犯す時間を短くしてやろう――
――本当っですかっ。嘘ではないのですねっ――
――ああ、だから、もっと激しくな? 声は良いが動きが足りん。私を愉しませろ――
数秒の沈黙。はい、とか細く応えたレティシアがアタランテの上で跳ねる。両手を腹部について全身を上下に、左右に、前後に振るった。一拍遅れて揺れる豊かな乳房。二つの巨峰。柔らかな果肉がたっぷりつまっているそれを揉みしだく。触られる快感と触る感触は二人にとって余程よいものなのか、レティシアは大胆にも背中を反らし、アタランテは惜しみなく押し出された乳房の弾力と質量感を味わう。
宣言した数時間後――騎乗位の何度目かの絶頂で、聖女を身に宿した少女は前のめりで倒れた。けれど休む暇など与えられない。彼女の白桃のように瑞々しく丸い臀部を、やや長く爪を生やした五指が引っ掴み、荒々しく腰を突き上げられる。
――っ! っ! うっぅぅぅ……っっ!!
どうした? 私はまだ達していないぞ? そんな風に罵られれば「わかりました、わかりましたからぁ……!」と残された力を振り絞って肉棒を締めつけ、射精を精一杯促す。
アタランテが満足げに喉を鳴らした次の瞬間、子宮口を押し上げていた亀頭がブクリと膨張し、大量の精液が無遠慮に胎内を満たす。精子たちが我先に孕ませようとしていた。
まだまだ余力を残したままの竿が抜かれ、泥じみた白濁液が太い糸を垂らしていく。寝所のシーツは最早濡れていない部分を探す方が難しい有様だった。
――これで、終わり、ですか……?――
水差しの水を口移しで飲まされたあと、どうにか息を整えたレティシアが訊いた。
二日目の夜が明けて三日目の朝を迎えたころだ。……三日三晩犯され続けたと述べた通り、アタランテの凌辱はここで終わらなかった。
口角を醜悪に大きく歪ませたケモノの尻尾がゆらゆら揺れ、怯える少女は生唾を飲み込んだ。
そこから先の記憶をレティシアは決して思い出そうとはしない。
何故ならば。
――あっ! あっ! あっ! あっ! はぁっ……!
雄と雌の交配。獣の交尾。四つん這い。原始的で暴力的で嗜虐的なセックス。
視界が常に揺さぶられ、息ができないくらいの速く深い抽迭。
パンッパンッという乾いた打擲音にぐちぐちと湿った水音。
絶え間なく下半身をぶつけられた桃尻は熟れたように薄紅に染まり、乳房もまた赤い痕が残るほど愛撫された。
意識は沸騰しているのに感覚だけがはっきりとしていた。
お腹の中が重く熱い。膨らんだような気さえする。
抽迭、射精、抽迭、射精、抽迭、射精……途中からは射精をしながらも突かれ続け、背中にぶっかけられ、射精直前の肉棒を口に突っ込まれて流し込まれたりもした。
――くうんっ、はふっ、あっはっ、はっ、はっ、はっ……!――
途切れ途切れに、鼻にかかった甘い声は誰が発していたのか。
――あはあっ……。んんっ、いい、いいです、アタランテさん……後ろから犯されるの気持ちいいですっ……。やっ、あん、あんっ、あっ!――
嬌声を上げ、ついには媚びた言葉を口走るようになってしまったのは誰だったか。
――アタランテさんの精液温かいです……んぅ、お腹の中もういっぱいですよ……?――
上半身を捻って獣の頬に愛おしく触れ、幾度となく種付けをされて悦んでいたのは誰だったか。
――はふ、じゅる、ぢゅるぢゅる、んじゅ、じゅず、ぐじゅ――
――随分とだらしのない顔で吸いつくのだな――
――ごめんなひゃあい……じゅうんんっ、んあ、っぷは。でもこれで……綺麗になりましたぁ――
――奉仕が終われば言われずとも尻を出すか。聖人としての格はジャンヌ・ダルクが上なのだろうが、雌としては汝の方が上々よ。余程な。ああ、それ故に嫌いではないぞ? 雄の本能が滾ってくる――
――嬉しいです……アタランテさん、どうかご遠慮なさらずに。思いのままに……はあんンンっっ――
体液で汚れた肉竿を口の中に含み、丁寧に丁寧に時間をかけて綺麗にし、命じられるまでもなく臀部を差し出して繁殖行為を強請ったのは汝だと――四日目の朝を迎えて正気に戻り、泣きじゃくり否定する少女の耳元でアタランテは囁いた。勿論それはそれは優しい声色で、肩を抱きながらである。
――違う、違うんです聖女様……違う違う違うっ、あんなの私じゃありませんっ!!――
あの日以来、ジャンヌ・ダルクとレティシアの会話は成り立っていない。
どんなに真摯に語りかけても「ごめんなさい」の一言で拒絶される。
尊き聖女を身に宿しながら色欲に染まり溺れた。身体の内側を抉られる快楽に屈し、凌辱の限りを尽くそうとしてきた獣を求め、甘く高い嬌声を張り上げ、お互いの唇を重ね合った。狂ったケダモノに貪られる時間を悦んでしまった。
大罪の一つを侵したのだ。レティシアは信心深い少女である。凌辱の記憶は、耐え難き苦悩として残り続けるだろう。心を閉ざし、固い殻の内側に籠る事で自我を保とうとするのを誰が責められようか。
通常のサーヴァントとして召喚されなかった事を酷く悔やんだ。自分の後先を考えない行動で一人の少女が傷ついてしまった。自分が犯されるよりも遥かに辛く、痛いとジャンヌ・ダルクは思う。
確実な反撃・脱出の目途を感じ取るまでは耐えるしかない。
それまでは仮令、天使の祝福を受けた聖旗が手になくとも護り通してみせる。
もう二度と少女に手は出させないと聖女は誓う。
「アタランテ、話があります」
同胞は斃れ、あの少年もいない。私は天草四郎時貞を止められなかった。
だけれど……せめて、せめて……レティシアだけは。