A出せられませんでした……
アタランテとの交配は延々と続き、小さな隙間から這入り込まれて乱される。
あられもない痴態を晒しながら私は〝声〟を聞いていた。
それは信仰する神の〝声〟ではなく、
〝おかあさん――おかあさん、おかあさん、おかあさん〟
名も無き子供たちの甘えるような呼び声。
狩人から魔獣に堕ちたアタランテという少女に巣食う怨霊の集合体。
霧が立ち込める魔都ロンドンで捨てられた数多くの胎児。
彼等彼女等が私に囁きかける。
〝わたしたちのおかあさんになって、せいじょさま〟
侵された心から大切なモノが切り取られるように喪失する。
ある一人の人影が――ホムンクルスの少年が――バラバラに解体されていく。胸の奥に鍵をかけて大切に閉まっておいた彼の姿が消えるのを恐れる私がいれば、薄暗い影の淵で安堵する私もいた。みっともなく泣きながらも重圧感がなくなるのをどこか感じていた。
どんなに抗っても抜け出せない。旗があっても苦戦し敗北したのだ。徒手ではアタランテとの力の差がますます広がり相手にもならない。実際、何度か挑んではみたが軽くあしらわれるだけだった。不意打ちを狙っても寝込みを襲っても逆に組み伏せられた。それでも諦めずに挑んでいれば……レティシアが巻き込まれた。密かに、けれど確かに支えとなっていた彼女が。あの魔の三日間で私の反抗心には罅が入ったのだろう。
そして啓示も得られないまま時間が経ち、繋がりができたアタランテに生前の凌辱の一部を見られてしまった。彼女がどう思ったのかは言われたから知っている。憎悪しているのに同情するだなんて酷い矛盾だ。だけど同情したのは本当で、彼女なりに忘れさせようとしてきた。
あの男達とは違う、奴等みたいに犯しはしない、最後に火炙りにもしない、子供たちを一緒に育てるから。……心に比べてずっと素直な身体はアタランテの言葉を喜んで受け入れた。心が感化されるのも時間の問題だった。英雄とも聖女とも呼ばれることなく、ジャンヌ・ダルクも一人の女として生きていけるのではないか。
全てを忘れ去り、全てを受け入れさえすれば――愚かにもそう考えてしまう。
「汝では私には勝てない。勝てたとしてもカルナが、セミラミスが、天草四郎時貞が立ち塞がる。彼等相手にも起こらぬ奇跡を起こし、退けて大聖杯の下に到達したとしてもだ。汝は破壊できるのか。既にあれは全人類を不老不死へと昇華した。それを破壊するということがどういうことかは解るであろう?」
この星の上に生きる六十億もの人命を奪うのと同意義。
神が執り行う最後の審判どころではない。
そんなことぐらい、私にだって理解できる。でも……でも……それでも……!
「生前の比ではないぞ。汝を悲しむ者は一人としていないだろう」
「――――ぁ、ぅ」
アタランテに言われて。
全人類に囲われ、暴力と罵倒の限りを尽くされる光景を想像した。
男も女も少年も少女も老爺も老婆も、ありとあらゆる人種に責められる自分を想像した。
それは――――あまりにも恐ろしい風景だった。
「……だから言っただろうに。もう、よいであろう? 世界を乱すほど愚か者でもあるまい」
前の穴も後ろの穴も犯していた二本の尻尾が抜かれる。それらを元に戻したアタランテが手枷を外して抱き締めてくる。嗚咽をもらす私は彼女に抱きついた。
「普通とは呼べぬ間柄だが。私は汝を妻として迎え入れ、子供たちを救うつもりだ」
「そんなに……そんなに救いたければ、貴女が母親になればいいではありませんか……!」
泣きながらアタランテの胸に顔を押し当てて吐いても、
「できぬ相談だ。私は汝を孕ませたいと思い、そして子供たちは汝を選んだ」
微塵の迷いもなく言い返される。
堂々としすぎていて罪悪感が泡沫のように弾けてなくなり、世界が広がったような解放感に覆われる。
どうしようもなくなってアタランテを押し倒す。
「追い抜かれたあとの事を覚悟しておけよ」
彼女はそう言ったが聞こえていない振りをした。
今はただもう只管に――――全部置き去りにしたいぐらい乱れたかったのだから。
◆
寝台に仰向けになったアタランテ。
彼女の腰の上にジャンヌ・ダルクは躊躇のない身のこなしで跨る。まだ消していなかった一物を騎乗位で飲み込み――それも一息に根元までである――アタランテは獣の如く獰猛に唸り、受けて立つという意思を誇示する。
光明が僅かしかない暗室の中で二人の影が動き出した。すぐさま肉がぶつかり合う鈍い打音が続く。加減をするつもりはなく、お互いに始めから全力だった。
女らしさのある肉感的な肢体を揺らし、太腿まである金髪を振り乱しながら気持ちの良さそうな甲高い嬌声を上げるジャンヌ。これまでにない勢いの良さにアタランテも己が奮い立つのを知覚していた。その証拠に彼女の雄としての象徴は狭まる膣の中でも膨張し、血を集めて管を浮き上がらせている。
告白を受けた童女のように目を瞑り、長さと太さと硬さを増した肉棒の存在感を味わったジャンヌは女としての幸福を知らされた。ゆっくりと瞳を開き、膣圧を高めて腰を大きく上下する。のみならず股間を擦りつけるようにもグラインドさせる。どちらかと言えばそれは視覚に訴える動きで、相手を魅せるための舞いだった。
遊蕩に踊られるうちにアタランテの呼吸がジャンヌよりも荒くなる。するとジャンヌは上体を倒す。豊満な乳房がたわむのを気にせず口づけ、アタランテの舌を誘い出した。自分のそれと濃厚に絡み合わせ、薄っすらと林檎の味がする唾液を吸い取っては飲み込む。
騎乗位という体位もあって主導権はジャンヌが握ろうとしていた。
亀頭部分で堪えきれないほど射精感が高まり、アタランテは表情を歪める。
吐息があたる至近距離で眺め、根元から先端にかけて順立てて締め付けた。息が詰まるような快感にアタランテの精液が搾り出される。
「あふっふぅっ……!」
大量の白濁液を流し込まれ、子宮の隅から隅まで満たされる充実感にジャンヌも遅れて達する。これがまた欲しかったのだと身体が打ち震え、絶頂の余韻が甘く消えるころには二人ともが再び動き出していた。体位は変えられなかった。
このまま続けてもいいのですかと目線で問いかけるジャンヌに、してやられたままでは終われないとアタランテは意気込む。
二人の意思は噛みあっていた。
ジャンヌはこれまでの経験と体位を思うがまま活かす。大胆にも背中を反り返し、惜しげもなく女体美と結合部を晒す。一拍遅れて上下する乳房と、打ちつけられる臀部の柔らかさも勿論のこと、自らの一物が抜き差しされる光景は刺激的だった。これでは二度目の射精も遠くない。
好き放題にやられるのは気に喰わなかった。奉仕するのならまだしも支配したがっているのなら話は別である。ジャンヌ・ダルクに負けるつもりなど毛頭ないのだから。
「んっ、はぁっ、はぁっ――――っ!」
しっかり聖女のウエストを掴んだ魔獣が落ちてくるタイミングを見計らって突き刺す。亀頭は狙い違わず子宮口に食い込み、弓なりに反っていたジャンヌがくぐもった喘ぎを漏らす。そのまま臀部が潰れるほどに力強く突き続けると前のめりになっていく。
やがて蹲ったジャンヌの両手がアタランテの頬に流れ、厚めの唇と薄い唇が重なり合う。
当然ながら軽い接吻ではない。
唾液のみならず酸素まで奪おうと深く濃いキスをする。炎のように熱烈なベーゼだった。
その間にもジャンヌの括れた腰は止まらない。より跳ねる、前後する、捻られる……生半可な娼婦よりも断然多く回数を積んだ彼女の腰使いは熟達していた。これが素朴な少女だと、清廉な聖女だと誰が信じられようか。枷を外された彼女は魔女でありケダモノであった。恥じることはなく、それ故に止まることもない。誰が見ていようと関係ない。
自分と同じく額に汗を浮かべ、顔を赤くしたアタランテに感謝するように、憎悪するように笑いかけ――上も下も好き放題に吸いつき、食らいつく。
だが、そんな彼女の独り善がりな性行為も長くは続かない。臀部を鷲掴んでいたアタランテの両手が滑り、左右の人差し指と中指が窄まった尻穴に刺し込まれる。つい先ほどまで幾度となく掘り起こされていた肛門も腸内もほぐれたままだった。
「んっうぅぅ……はひっ……あっあっ!」
四本の指に穿り回されたジャンヌが目を見開き、背中を小刻みに震わす。堪らず唇を離したところをアタランテは腰だけで突く。膣道の上側にあるざらりとした箇所を擦り、子宮口の性感帯であるポルチオを押し上げる。的確に力強く、何よりしつこく突き続ける。
頭が真っ白になってしまうような多幸感――聖女の噤んだ口はあっという間に開き、紫水晶の瞳はポロポロと滴を流す。絶頂を迎えた膣内はこれ以上なく収縮していた。
美しくも淫らな逝き顔を堪能したアタランテが、その逞しい逸物を蜜壺に打ちつける。抽迭は速くなり、打ち合わせる音が高らかに響き渡る。
「あ゛あぁ――――!!」
アタランテが二度目の射精に至る直前、深い接吻をしたままジャンヌが掻くように抱きつく。汗ばんだ二人の少女の肢体が蛇や蛞蝓のように絡み合い、身も心も溶けてしまいそうな絶頂の悦楽を共有した。
ジャンヌは脈動する逸物が送り出す精液の感触を、アタランテは潮を飛ばして繰り返し収縮する膣内の感触を。情事として甘く幸せなひと時を分かち合う。
アタランテが自分の肩に鼻先をつけていたジャンヌを抱いたまま上半身を起こし、今度は上になろうとする。起き上がった拍子に亀頭がめり込んだ。それが気付けになったらしいジャンヌの両腕が首に巻きつく。
「……ふん」
引き止めるように束縛されたアタランテが鼻を鳴らし、顔を寄せてきたジャンヌとの接吻に付き合う。仕方がないと如何にも言いたげな表情で尻尾も揺れていたが、内心悪い気分ではなかった。ジャンヌの腰に回された両手は支える為であり、抽送を補助する為でもある。無我夢中で裸身を踊らせるジャンヌの艶姿は実に好ましい。あまり派手には動かず「これで圧さなければ辛くなるであろうな」と煽り立てれば、面白いように反応してくれる。
「はぁ、あっ、んうぅ!」
蕩けながらもジャンヌも必死だった。
騎乗位に対面座位……女にとって有利な体位でこれなのだ。
正常位、側位、後背位、やぐら立ち等になってしまったら仕切り直せない。
散々犯されてきたから容易に想像できる――できて、しまう。
四つん這いで尻を突き上げ、アタランテに後ろから突き崩される。乳房を揉まれたり、臀部を掴まれたり叩かれたり、両手を手綱みたいに引っ張られながら種付けされてしまうのだ。
音を上げても許さず、懇願するようになったところを更に追い詰めて啼かせる。
失神しても終わらない――獣欲が収まるまで終わらない交尾そのもののセックス。
その光景を浮かべるだけで胸が高鳴り、子宮が熱くなる。
愛液を湛えた膣壁が複雑に蠕動し、アタランテの逸物に擦り寄ってしまう。
「じゅぅ……ちゅく、ぁむ……はん……ちゅ……」
気分が際限なく高まり、自分から口づけを交わしながら情熱的に求めた。一度一度のキスが長く深く、少し離れたかと思えば直ぐに重なった。
頑張れば頑張るほど後の反動が大きくなる。そんな風に想ってしまえばジャンヌは止まれなくなった。彼女の興奮はアタランテのそれも呼び、二人は何度もオーガズムに達していく。
とはいえ男側のアタランテと、続けざまに絶頂できる女側のジャンヌとでは体力の消費が異なる。アタランテが一度出すまでに二度イクようになり、やがて三度イクようになる。
ジャンヌ・ダルクの精神的な頑強さは星の数ほどいる英霊の中でも抜きん出ているが、崩れれば十代後半の村娘である。
(不公平、です……こんなにしているのに……私ばかりが……)
身体に力が入らくなってくる。気力で振り絞るのも限界だった。
カーテンの隙間から差し込む光の加減と、時計を見れば時間は思っていた以上に進んでいたが、アタランテは溢れんばかりの精力を漲らしたままだ。
最後には糸が切れた人形のようにもたれ掛かり――放心して身を預けた。
聖女がシーツに横たわったのは何かしらの果実味の液体を飲んでからで。
「もう動けないか」
サイドテーブルに水差しを置いた魔獣が聖女の頭の左右に掌をつく。
既にジャンヌの中にはアタランテの逸物が存在を主張していた。
迷ったうちに頷いたジャンヌが両手を伸ばすが抱き寄せることは叶わず、手首を握られて引っ張られる。両腕の間に挟まれた乳房が窮屈げに歪んだ。
「キスならば十分したであろう。泣き顔をじっくり見させろ」
嗜虐心も顕わに言い、背筋が浮き上がるような突き込みを喰らわす。
「はふあっあああぁぁ――――ぁぁぁ」
白い喉を、形の良い顎を反らしたジャンヌは天使もかくやという歌声のような嬌声を漏らした。膣内の弱いところ……柔らかく熟れたポルチオに容赦なく叩き込まれる衝撃は、ジャンヌにとって天上にも昇る心地だった。極度の快楽からくる涙が止まらなかった。
「あんっ、ひああっ! あっ……! うあっ! いい……いいですぅ!」
蕩けた顔を眺められても恥ずかしいとは思えない、考えられない。
頭を振り、身体を捩るジャンヌ。彼女を見下ろすアタランテの唇は綻んでいる。聖女の反応の一つ一つが色彩に富んでいるからだ。正常位のこの距離であればよく観察できた。
アタランテは思う。
痛みに悶える姿も悪くない。暴れるのを取り押さえるのは決して面倒でなかった。――しかし〝子供たち〟の事もあり、ジャンヌの肉体が傷つくような拷問をするつもりはなかった。そんな痛々しい事よりもジャンヌ・ダルクの女の一面を引き出す方が有意義であり、有効的だと思い至ったのだ。
けれど、まさかこんなに愉しくなるとは思わなかった。
全然飽きない。飽きる気がしない。何時までも続けたい。
反抗的だった女が、縋るような眼差しを向けてくるとなれば、ついつい虐めたくなる。
「そ、そこじゃ……ふぁ……っんんぅ」
性感帯を突くばかりではなくワザと外しながらする。すると、もどかしくなるのだろう。向けられる視線と表情の切なさと言ったらなかった。
恥骨の裏の辺りにある僅かながらザラついた範囲と、精液欲しさに下りてきた子宮口を押し上げて欲しいと、すらりとした美脚が腰に絡んでくる。
そうしてきても無視を続ければ――瞳が見えるか見えないかまで瞼が閉じられ――卑猥な言葉の数々を口にしてでも強請るようになった。
どこをなにで掻き回して、どこで出してもらいたいのかを口走る。
やや前傾姿勢になったアタランテが動く。魔獣に相応しい膂力を発揮し、大きく素早く力強く突きまくる。ジャンヌが望んでいた通りの荒々しい律動であった。
こうして欲しかったのだろうと嘯くアタランテに、ジャンヌはこくこくと何度も頷く。
(すご、い……勢い……あつい……)
熱意を滾らし、汗を滴らせながら自分を犯す獣の何と逞しいことか。これでまだ本格的な情事ではないのだ。少なくともアタランテにとってはそうに違いなかった。
惚けて見つめるのも無理はなく、名前を呼びかける声は甘く媚びたものになっている。
次第に、腰を打ち付ける叩音が短くなる。膣奥を何度もノックされる。もう何度絶頂したかも分からないジャンヌの子宮は迎え入れる準備をとっくに済ませていた。
あとはこれまでのように欲望を注がれるのを待つだけ。
その時が一秒一瞬でも速く訪れるよう願い、反り上がった逸物が最奥に到達した。
「 !!」
ジャンヌが快楽の絶頂を叫び、アタランテが溜めていた精液をたっぷり馳走する。
そして赤黒い亀頭を咥えた子宮口が吸い終わると再度動き出すのだった。
それから正常位で幾度出したかをアタランテは数えていない。
最後はどうしてか両手を繋ぎ、指を交互に絡め合った上で求めたことだけは覚えている。ジャンヌ・ダルクの表情が印象的だったのである。
愛おしいと感じた――――その顔は見えなくなっていた。
見えたとしても変わっているだろう。
惜しいとは別段感じない。
自ら四つん這いになって誘ってきた聖女の表情もまた格別だったからだ。
本能に火がつき、本領を発揮するには充分すぎた。
「ひっうっ! ああぁ! もっと激しく……! アタランテ、もっと激しくぅ……!!」
後ろから責め立てられるジャンヌは身悶えている。
豊潤な身体を支える両腕は今にも折れそうで頼りない。
三回も出すころにはうつ伏せになり、突き出た尻を握ったアタランテは手加減せず犯し続けた。
腰をぶつける打擲音を鳴らし、蜜壺を掻き混ぜる水音を立て、嬌声を張り上げさせる。
凶悪なまでに肥大化した逸物を出し入れするアタランテの姿は獣だった。
だが、悦んで受け入れるジャンヌもまた発情した獣であり、従順な雌であった。
アタランテの欲望を感じ取って締めつける。時折引き抜かれて綺麗にしろと命じられれば従った。白濁液と愛液の膜を張った男性器はご馳走にしか見えず、感じられなかった。
濃厚に漂う匂いを嗅ぐだけでイキそうになり、股間に顔を埋めて舐め取り、吸い取り、しゃぶるのを少しも躊躇しない。馬乗りになったアタランテの肉棒をその豊満な乳房で挟んで射精を促したりもした。
あるときは寝台から下ろされて、ベッドに突っ伏した体勢でセックスを続けられた。シーツを握り締める手を引っ手繰られ、膝が笑っているのに無理矢理立たせられもした。
櫓立ちも、逆である背面立位も、側位もやった。
それにも満足すれば――――寝台の上で獣欲に従い、後背位で只管まぐわう。
隙間なく密着して二つの膨らみを揉み潰す。
少し離れてウエストを支え、言葉数も少なく律動する。
乾いた打擲音はひっきりなしに続く。ジャンヌは常に揺さぶられる。射精間近のピストン運動は激しすぎて息が詰まる思いだった。奥深くで精を放出している時でさえ、胎内に飲み込ませるように小突いてくるのだから堪らなかった。
ジャンヌの腰背部に両手を置いて猫のような伸びをしたアタランテは満足気で、だがこれでは足りないと、まだまだ聖女の蜜壺を味わいたいと動き出すのだった。
肛門に突き込み、アナルセックスを愉しむ一時もあった。散歩でもして気分転換でもするかのような気軽さで、唐突に思い出したかのような感覚で腸内を掘り返した。
時間の経過など知らない。今が朝なのか昼なのか夜なのかなど頭にはない。
日が昇って下り
月が昇って下り。
幾日か経とうと気にも留めなかった。
二人は必要最低限の休眠と食事だけで獣のように情事に耽り続けた。
ジャンヌが想像した通り、アタランテは聖女が快楽のあまり失神しても止めようとはしなかった。それどころか起こす為に続け、意識を拾い直したジャンヌに「誰が寝てよいと言った?」と嗜虐的に乳首を引っ張り、或いは尻たぶを引っ叩く有様である。
「だって、だって……もうずっとアタランテのが入ったままで……!」
林檎のように赤くなった顔をシーツに押しつけた聖女が言った。
そうかと呟いたアタランテが逸物をあっさり抜き出す。文字通り自分の中を満たしていた物が消える喪失感に一分も耐えられず、ジャンヌは泣きながら態度を翻した。
挿れて、突いて、出してと恥知らずに火照った身体を震わす。
口角を吊り上げたアタランテが挿入してくれば、それはもう嬉しんで喜んだ。ジャンヌも彼女の性器も獣の肉棒に魅了されていた。中毒と言っても間違いではない。
最後だと言われても、もう一度だけとその都度繰り返し願った。
元よりアタランテに終わらせる気などさらさらないのだが、正常な判断能力を失ったジャンヌでは見抜けず、娼婦さながらに尻を掲げて欲しがるのだった。
「ぐちゃぐちゃにして……はしたない私と交わってください……あはっ、大きいのきましたぁ……」
本当に終わりという頃にはジャンヌも心底満たされ、強請ることはなくなっていた。
どれだけ射精されたのか、彼女の身体は中どころか外も白濁液に塗れている。
延々と続いたケダモノ同士の交尾の飛沫は寝台のそこら中に。鼻腔を満たす香りは噎せ返るように濃い。
あらん限りの力で突き入れ、ジャンヌの膣内を何十と往復して吐精に至る。連動して聖女の身体が痙攣するも腕ごと抱え込んで押さえ付けた。
「孕めっ、孕めっ……我が子を孕め、ジャンヌ・ダルク……!」
そのようにして最後のひとしずくまで出し切ったアタランテが長距離を走り切ったように溜め息を吐く。
彼女が逸物を抜くと、ぽっかり開いたままの陰裂から精液の塊が流れ出す。全身が性感帯になったジャンヌはその感覚にさえ軽く達しているようだった。
うつ伏せでだらしなく精液を溢す聖女。そんな淫猥な光景を暫く見つめていたアタランテは共に横になって緩く抱き締める。既に寝息を立てるジャンヌの額に口づけ、心地良い疲労感の中で自分も微睡み始めた。
――はしゃぐ子供たちに〝声〟が届き始めたと知らされたのは目覚めてからだった。
◆
自分たちの声が届き始めた。数分前に子供たちから伝えられた事だ。
着実に願いへと近づいている。
見定めた女に我が子を孕ませられる。
「くふふ」
まだ眠っているジャンヌの髪を撫ぜながら、アタランテは小さく笑い出してしまう。
並々ならぬ人間性を宿す聖女が――獣性と母性を受け入れて堕ちたとき――どんな姿に成り果てるのかを想像するだけで無限にも思える愛欲が沸きあがってくる。
耐えた分だけ、抑えつけた分だけ、解放された際の反動が大きくなるのは必然。
黄金の林檎を食むよりもきっと甘露だろう。
「繰り返すようだが汝には感謝せねばなるまい」
アタランテが寝台の横に目を向ける。その空間には一見して誰もいないように見えるが――レティシアの視点が置かれていた。
聖女の依代たる少女はずっとそこにいたのだ。
「汝のお陰で私はこの女を孕ませることができる。哀れな〝子供たち〟を救える。この子たちは今度こそ正しい形で生まれてこられるんだ」
言葉を発せず、念話も送れないレティシアは沈黙するしかなかった。
「……悪いとは思っている。元はと言えば汝の躰だ。それを勝手にされるというのは辛く苦しかろう」
アタランテは暫く考え、行動を前倒しにすることを選んだ。
レティシアが出てくれば言うつもりであったが、私にも罪悪感はある。
「だからな? 汝さえよければ地上に――家族や友人の元に帰そう。大聖杯にバックアップされていた汝の情報を用い、純潔の肉体を用意してもらっている。聖杯大戦から今に繋がるまでの記憶を処理・整理し、魂を定着させた上で返すことが可能なんだ」
視線から戸惑っているのが伺えた。
「今すぐ決断しろとは言わない。自分が望む答えを考え出せ。戻りたいというなら止めぬし、残りたいと願っても構わぬ。私は汝の意思を尊重しよう。肉体の有無に関わらず、残ったとしてもあの時のように手は出さん。できる限り丁重に扱うと誓う。言い訳をするようだが……あのときの私は逸っていた。ジャンヌ・ダルクを陥落させることしか考えていなかった。
正直に言おう、レティシア。私はその目的のために汝を利用した。なにを言っても戯言にしか聞こえないだろうが、申し訳ないことをしたと言わせて欲しい」
偽りならざる本心である。
「……汝も思うであろうが『最初からしろ』という話だな。我ながら呆れる」
軽く身支度を済ませ。
聖女にシーツを掛け直してから扉に向かい、ドアノブに手を付けたところで言う。
「暫く戻らん。四、五時間もすればジャンヌ・ダルクも目覚めるだろう。そのとき私が言ったことをそのまま伝え、どうするかを決めるんだ」
引き止めるような視線が刺さりつつもアタランテは部屋を後にした。
当然だがレティシアは混乱の極みにあった。
これまでの全ての経験を白紙に戻し、綺麗なままの状態で地上に戻れる?
あまりにも都合が良すぎる提案ではないか。
だが、嘘だとしてもアタランテに利点が生じるとも思えなかった。
騙す意味がないのだ。
騙してもレティシアともどもジャンヌ・ダルクに嫌悪されるだけだ。
せっかく聖女との距離が縮まってきているのに――そこで一つの答えを考え出す。
本当に必要なのは聖女様だけで、
それ以上でも以下でもないのだ。
そして帰すという事は、もう必要ではなくなったという事だろう。
私は聖女様が暴れたり自決するのを止める枷だったのだろうが、今の聖女様は私がいなくなっても死んだりしない……絶対とは言えないが、そんな気がする。
情事の最中とはいえ、あんなお顔とお言葉を向けてしまったのだから。見えない関係線を通って流れ込んできた感情は、泥のような感触だったけれどまだ飲み込めた。
そもそも――アタランテさんの願いは絶対に『悪』だと言い切れるのだろうか?
名前さえ付けられず、掃いて捨てられた子供たちを救おうとするのは間違っているのだろうか?
人を殺してしまったのは勿論いけない罪だけれど、それを言ってしまえば一体どれだけ多くの人間が認められなくなるのか。
『その子らは救えない。彼らが生きるということは、仲間を増やすという意味に他ならない。そもそも、その子ら自体――安らかな場所に魂を帰還させることが慈愛です』
〝切り裂きジャック〟の悪夢の中で聖女は狩人にそう言った。
レティシアは同じ側にいた。しかし、ジャンヌ・ダルクと同じ位置には立てていなかった。少女は聖女ほど強固な心をしておらず、また善悪の区別を断てるほど世界への理解が深くなかった。この場合ジャンヌ・ダルクが異常なのであり、レティシアは普通であった。
『しにたくないな――』
絶望的な表情をした狩人の目の前で、聖女は迷える子供たちを〝処理〟し続けた。
救える術は本当にないのかと、なかったのかと、伝えたくなった瞬間はあった。
〝……あの、聖女様〟
「レティシア!? ああよかった……話せるようになったのですね」
アタランテが言った通りの時間帯でジャンヌは身体を起こした。
いかなる魔術によるものなのか、寝台ともども情事の痕跡は見受けられない。少なくとも外見上は整っている。
懐かしさすら覚える呼び掛けにジャンヌは一気に目を醒まし、微笑んだ。
〝ずっと無視をしていて申し訳ありませんでした〟
「あんなことをされたのですから無理もありません。……ごめんなさい、思い出させるようなことを言ってしまいましたね」
〝大丈夫です……私なりに受け止めたつもりですから……〟
「レティシア……」
〝それよりもジャンヌ様。私、アタランテさんに伝えられたことがあります〟
訝しげに顔を顰める聖女に、少女は噛み砕いて話す。
――私が望むなら記憶を改竄し、純粋無垢の新しい身体で地上に帰すつもりでいる。
――残るにしても以前のように手は出さない。可能な限り丁重に扱うと約束する。
頷くばかりで口を挟まなかったジャンヌはまず、「あまり嬉しそうではありませんね?」とレティシアに問いを投げかけた。
沈黙は長くなかった。少女に考える時間はあった。
〝質問に質問を返すようですいません。私がいなくなったあとの聖女様が心配なんです。私がいなくなったら聖女様はどうするおつもりなのですか……?〟
「どうすれば、いいのでしょうね」
シーツにくるまったジャンヌは膝に顔をうずめた。
自分が教えて欲しいぐらいだと訴えたいのを抑えているように。
聖杯大戦の最中でさえ目にしなかった弱弱しい姿。
「自害すれば楽になれるのでしょう。……簡単に死なせてくれるとは思えませんが」
自殺しようとすれば何かしらの機構が発動するのは目に見えている。その程度の備えをセミラミスがしていないとは思いにくい。召喚獣なり鎖なり毒なりで止めてくるだろう。
〝アタランテさんは間違っているのでしょうか……?〟
レティシアが呟き、ジャンヌは固まった。当惑からか何度も瞬きをする。
心臓に針を刺されたような痛みを覚える。けれど言ってしまった。もう後には退けない。
〝私は聖女様ほど強く思えないのです。あの子供たちは救えないのではなくて、救い難いと思ってしまうのです。ちゃんと話し合えば分かり合えると信じたくなっています〟
「――ッ!? 待って……待って、ください……そんな、レティシア……」
こちらに顔を向けたジャンヌは暗闇に迷ってしまった子供のように怯えていた。
少女は、この聖女が少なからず自分を拠り所にしていたのを知った。相反する言葉を紡げば傷つけることになる。でも、傷ついているのは私も同じだ。貴女の身体は元々私の身体だ。自分のモノのように思われるのは不本意だ。
〝母親が分からないなら成れば、名前がないなら付けてあげれば――そうしてあげれば上手くいくのではありませんか〟
彼等はただ生きたいだけ。
信徒は聖女に問いかける。
〝生きたい、そう願うことが悪だと仰るのですか?〟
その言葉は禁句だった。
「貴女に何が……!」
焔のように、苛烈なる激情を燃やした瞳が信徒を睨む。
「――――っ」
けれど反論はない。否定できない。時と場合によるなどと都合の良い言い訳を述べられるほど、ジャンヌ・ダルクの信念は柔くなかった。
〝私、戻りませんから〟
「……レティシアには帰る場所があるでしょう」
〝やるべき事が見つかった気がしますので。ジャンヌ様と同じです〟
痛烈な皮肉は自覚がないにしても辛かった。
すべては己の不甲斐なさが招いた展開だ。碌に対抗策を用意できず、アタランテに犯される日々を過ごしていればレティシアが反意を抱くのも仕方がない。
私は本当に、どうすれば――聖女がうずくまる。
「お話は終わりましたか?」
耳元で囁かれた。思考よりも速く反射で飛びぬく。即座に防具を身に纏った。
瞬間、異なる場所へと移り変わる。
『虚栄の空中庭園』の豪華絢爛にして退廃的なる王の間。目に痛いほど赤い薔薇が各所に植えられ、散った花弁は石床に設けられた水路と天井の湖を絶えず流れている。
ジャンヌは周囲を見回し――先程の声の主は丁度、玉座に続く階段の下に立っていた。
『――――』
レティシア共々、我を喪失しなかったのは奇跡に違いなかった。
それが獅子の耳を生やし、腰背部より蛇の尻尾を伸ばし、足先が山羊の蹄でなければ。
あからさまに自らを魔境に落とし込んで■を損なっていなければ魅了されていた。
瞬きを、呼吸を、心臓の鼓動の仕方さえ忘れ去るところだっただろう。
生命活動を放棄してまで一瞬一秒、刹那の時さえ惜しんで見つめただろう。
この世界に、途方もない年月と願望を掛けて美しさを極めた姫がいたとしても、果たしてあの少女に勝るだろうか?
人知を超越し、理解不能となった■は見るだけでこちらのを正気を奪いかねない。
本来の姿……聖域や神域だったのならどうなっていたか。
「あなたは」
掠れた声は自分のものではないように聞こえた。
少女がことりと首を傾げる。処女雪のように穢れのない白髪と、宵闇のドレスを纏った肢体も微かに揺れる。男女の性差など関係なく惑わしてくる身体付きにジャンヌは知らず知らず足裏に力を込めた。
「シメール、シメール、シメール。聖女様の国の言葉ではワタシをそう呼ぶのでしょう?」
「……キマイラ……複合魔獣ですか」
ヒュドラ、ケルベロス、ネメアの獅子を代表に、オルトロス、金羊毛の番竜、デルピュネー、パイア、スキュラ、ケートス、ラドゥーン、スピンクス、カルキノスなどあまりにも多くのを
ただし、人型ではない筈だ。
「……伝説の姿とは異なるようですね」
「御覧の通り。
蛇の頭を撫でつける仕草は艶めかしく、黒曜石のように輝く黒瞳は親しみに満ちている。
しかしそれは底知れない好奇心の表れであり、
「ずっと貴女たちを見ていました。アタランテとジャンヌ・ダルクの、魔獣と聖女の営みを」
シメールの正体がわかった人にはとても申し訳なくもあり、ちょっと嬉しい気持ちです。