もう4月も終わります。
要するにひと月が経ちました。ひと月、晴さんと致していません。
「紅葉さん...?」
「っは、はい!」
「うわっ!そ、そんな驚かないでください!」
海さんに話しかけられてびっくりしてしまいました。少しボーッとしていたようです。
「大丈夫ですか?熱があるなら保健室行きますか?」
心配そうに私の顔を覗き込んできます。綺麗な瞳が「心配してます」と語っています。本当にごめんなさい。
「いえ、大丈夫ですよ...」
とりあえず無難な答えを返します。本当のことは話せないので。
「本当ですか?凄く辛そうですよ...?」
「大丈夫です...ほんとうに...」
そういえば、春休みはほぼ毎日晴さんとイチャイチャしてました。その反動か、入学してからはかなり辛いです。学校では中々二人きりになりませんし、帰ってもあの約束のせいでお互い自分の家に帰っちゃいますし。
視線を海さんから逸らすと、楽しく談笑している晴さんが映ります。
「...」
「紅葉さん...」
晴さんは私の視線に気づくことなく話し続けます。
暫くするとチャイムがなってしまいました。
晴さんの周りからは人が消え、皆さん席に着かれます。
今日もいつも通り。高校に入ってからの日常が続くようです。
いつも通り。
HRが終わると慌ただしくなる皆。その中、ほとんど動くことなく座っている紅葉さんが目に入りました。よく見ると顔が真っ赤なので、体調が芳しくないのかもしれません。
「紅葉さん、大丈夫ですか?」
近づいて声を掛けますが、返事はありません。憂鬱そうに溜息をついて、髪をいじっています。紅葉さんはお洒落にとても気を遣っているので、不機嫌の原因は髪のセットが上手くいかないとかかもしれません。
「紅葉さん...?」
「っは、はい!」
「うわっ!そ、そんなに驚かないでください!」
急に飛び上がる様に返事をした紅葉さんですが、やはり気怠そうな雰囲気がしています。
心配なので何度も話しかけますが、大丈夫の一点張り。大丈夫だったらどうしてそんなに辛そうなんでしょうか。
すると、紅葉さんが晴くんを見つめ、そのまま動かなくなりました。晴くんは気づくことなく、クラスメイトとお話ししています。
もしかして、寂しいのでしょうか――
結局、チャイムが鳴るまで見つめていましたが、晴くんが紅葉さんの視線に気づくことはありませんでした。
「雪、どうしたら良いと思う?」
夜、ボクは勢いでやってしまうタイプなので雪に相談します。高校入って最初の友達ですし、大事にしたいので慎重に対応しないと。
「晴くん、最近、変」
「?紅葉さんじゃなくて、晴くんが?」
紅葉さんのことを話しているのに、雪がそんなことを言ってます。
「海、見るとき.........」
「私?」
「......胸、見てる......視線...泳いでる...」
「え」
晴くんが、女の子の胸を見てる?自分では分からないけど、雪が言うならきっと正しい。彼女がいて、しかもラブラブなのにどうして――
「入学して、忙しい...とか?」
「イチャイチャ、足りない」
そういうことかもしれません。
入学して忙しくなったせいで、恋人の時間が取れずに距離が離れてしまった。付き合って少しすると『けんたいき』というものがあるらしいので多分それです。
「...改めてどうしよう」
「難しい。私たち、部外者」
「でも、友達だから...」
「.........海の、それ。私、好き...だよ」
「ありがと」
それからボクたちは、何時間も二人で話し合いました。雪は凄く頭が回るので、色々な案を出してくれます。
「明日、これで」
「うん...わかった」
最終的に、1つの案を採用して明日へ臨むことにしました。
「海、泊まる?」
「眠いし泊まる」
「母、言ってくる」
「ありがとう」