-幻想郷・妖怪の山・山道-
突如として現れた白狼天狗・犬走椛の案内で、たった今妖怪の山の山道を登りだしたところだ。
後ろを付いていて、そこで初めて尻尾の存在を認識した。
不意に彼女が足を止め、振り返る。そして鼻先を少し近づけてくんくんとにおいを嗅ぎ始めた。
「えっ、なに?何か変なにおいするかな?」
「・・・やっぱり」
「えーっと・・・何が?」
「お前は、御剣カエデの孫なのだろう?」
「うん、においで判るんだ」
「もちろん!カエデ様には色々世話になったから!」
嬉しそうな顔をして尻尾を振る椛。・・・手懐けられたのかな?
「怒った時は物凄く恐いけど、それでも、私をちゃんと見てくれた。初めて出会ったときはカエデが勝手にこの山道に入ってきた時だった。あの時は圧倒されたけど、堂々として見下すこともせず私の事を正面から向かい合ってくれたんだ」
彼女にとって、おばあちゃんは憧れの様な存在だったのだろう。目を輝かせながら話をしていた。
て言うか、おばあちゃんが圧倒しちゃったんだ・・・。
「・・・一つ頼みたい事があるんだけどいい?」
「俺に出来る事ならいいよ」
「その・・・頭を撫でて欲しい」
「えっと・・・それだけ?」
「そ、それだけ。・・・だめ?」
「ううん、いいよ」
そっと右手を彼女の頭に持っていく。椛も撫でてもらう為に少し頭を下げ、耳を横に傾ける。
龍牙の手が頭に添えられ、優しく撫で始める。
「・・・わふぅ~♪」
まるで大好きな主人に撫でてもらうかの様に嬉しそうな笑顔をつくる椛。とても幸せそうに尻尾をブンブン振っている。
龍牙もまた、嬉しそうにする椛を見て「可愛いなぁ♪」という気持ちになった。
「もういい、ありがとう」
「ん、どう致しまして」
手を離すと、椛は少し名残惜しそうな顔をした。しかし、立場や今の仕事を考慮するとあまり甘えてはいられないのだ。
「では行こう。先は長い」
「どの位掛かるかな?」
「山頂になるから人の足では日が暮れる。今日は途中にある私達の拠点で一泊してもらってから山頂に向かう予定だ」
「なるほど、分かった。しかしながら本当に高い山だね」
見上げてみれば、それは高い山だと改めてしまう。
富士山に及ばずとも、大体3000メートル程はありそうだ。ドラグレッダーに頼む手もあるが、知り合って間もない相手にそれは失礼だろう。
「それじゃあ椛、案内をよろしくね」
「うん!」
2人はまた山道を進み始めた。目的地に着くまでの道中、椛は上機嫌に尻尾を揺らしていた。
◇
-白狼天狗拠点・居住区-
日が大分暮れて、椛をはじめ白狼天狗達が住まいとしている地域に到着した。今は椛の案内で宿泊先に向かっている。周りには結構な人数の白狼天狗達がこちらを見ている。何でも、この妖怪の山に立ち入る人間はそうそういないかららしい。
ん~、集落って言い方も当てはまりそうな感じの多くも少なくもない建物の数々。江戸時代にタイムスリップしたみたいだ。建物の大半は灯りを着け始め、光が障子から漏れ出していた。
「龍牙様、今夜はここに泊まってもらいます」
「え?あ、分かった」
そんな事を思いながら歩いていて、気が付くと到着していた。
二階建て、
「椛、ここって集会場か何かなの?」
「そう、ここでは会議や私達の生活に関わる管理などをしている。稀に来る来客用の宿泊施設も僅かながら備えている」
「へぇ、便利だね」
「うん、では案内するから付いて来て」
「分かった」
◇
-同刻・博霊神社・居間-
「・・・はぁ」
「蓮子、そんなに溜め息ばかりしてると不幸まで逃げていくわよ」
「そんな事言ったって~、疲れたんだから仕方ないでしょ」
特にやる事もなく、畳敷き居間のテーブルにもたれる蓮子と、それを見ていたメリー。今はルーミアと霊夢が食事の準備をしていた。
昼間に居た魔理沙、アリス、それと妖精達は既に各々の住まいに帰っていた。
「おーい、出来たぞ。運ぶの手伝ってくれないか?」
「あ、はい。ほら蓮子、手伝うわよ」
「うぇ~い」
蓮子は渋々立ち上がり、2人は台所に向かう。
「あ、今夜はきつねうどんなんだ」