-妖怪の山・山道-
「うぅ~、まだ頭が響いてる~」
「流石に文様が悪いですよ」
「あんた割と口軽いからね」
「一応は手加減したからね?」
「でもあれは痛いですよぉ」
龍牙、文、椛、はたての4名は山道伝いに登っていた。文は先程喰らったこめかみグリグリの痛みがまだ残っていて頭を押さえている。
「でも驚きね。この前の異変、博麗の巫女じゃなくてああなたが解決しただなんて」
「偶然だよ。それにあの龍、ドラグレッダーも外の世界とは違う別の世界からたどり着いたって言ってたし。何よりも、他に同じ様な奴も来てるって話なんだ」
「え?会話したんですか?」
「ううん、ドラグレッダーと契約を交わした時に向こうからそう言ってきただけで、質問も何も出来なかったんだ」
「龍牙、そのドラグレッダーとか言う龍は今どこにいるんだ?」
「この中だよ」
龍牙はそう言って歩きながらズボンの左ポケットからドラグレッダーのベントホルダー(デッキケース)からドラグレッダーのアドベントカードを引き抜いた。
「今はこのカードの中に居るんだ」
「この中に、か?」
いまいちしっくり来ない様な顔の椛。まあ当然だろう。俺だって普通じゃ有り得ない事が起これば理解に時間を要する。
「そう、ただし,召喚するにはちょっと手順を追わないとダメらしいんだ。あ、あの建物が目的地?」
「はい、あの建物にて大天狗様がお待ちです」
山の頂上から大体5分の1位の高さに来て、大きくて少し豪華な感じの建物のその入り口らしき門が視界に入った。
門の左右には椛と同じ白狼天狗の青年のような顔立ちの門番がそれぞれ門の外側の手に長い槍を持って立っていた。
「人間、名を名乗れ」
龍牙から見て右側の門番が問い掛ける。
「私の名は御剣龍牙。大天狗と呼ばれる方からのお招きを受け参じました」
「うむ、その旨は大天狗様から伺っている。時に御剣殿。あなたは御剣カエデのお孫さんと訊いたが、本当か?」
「はい、その通りです。あなた方も祖母をご存じで?」
「存じるも何も・・・なぁ?」
「えぇ・・・まぁ・・・」
門番の2人が揃って顔色が僅かだが変わっていった。後ろにいる文と椛とはたても少し顔色が変わった。
「もしかして・・・おばあちゃん、何かした?」
「「「「「いえいえ!!何にもしてませんッッ!!!!」」」」」
揃いに揃ってなんともまあ。
-博麗神社・境内-
「ふぁ~~、退屈ね」
「あ~、退屈だぜ」
「何してるのよ蓮子」
「魔理沙も打ち水手伝いなさいよ」
神社に置いてけぼりの蓮子とメリーの2人。蓮子は魔理沙と縁側にぐったり横たわり、メリーは霊夢とルーミアの打ち水の手伝いをしていた。
「私は暑いし面倒だからイヤだぜ」
「右に同じく」
「お前らしゃんとしないならその四肢を喰い千切るぞ?」
「「打ち水、喜んで実施しますッ!!」」
人喰いオーラ剥き出しのルーミアの鶴の一声でガバッと起き上がり、霊夢とメリーの打ち水道具をかっさらい打ち水を始める2人。
「「「・・・はぁ」」」
3人は呆れて溜め息をついた。
-妖怪の山・大天狗の業務建屋・応接室-
門をくぐり進んで行くと、建屋前に人型の青年風の鴉天狗が1人いて、彼に応接室まで案内して貰った。
この段階で、文は同行、椛とはたてはその場で待機するよう言われ、別行動となった。
応接室はてっきり和室かと思っていたが、そんな事は無く、どちらかと言うと会議室に近い感じで、椅子と大きめの机が部屋の中央に存在していた。
大天狗が来るまで座って待つ様に言われ、扉側の席に就く。少しして、扉が開く。
「いやはや、急にお呼び立てして申し訳ないのぅ」
現れたのは、鼻が握り拳一つ分程長く、酔っているかの様に頬に赤みを帯び、自身の鎖骨位まで伸びた口髭と顎髭の初老の顔立ちの天狗が現れた。
「あ!り、龍牙さん立って!立ってお辞儀を---」
「落ち着きんしゃい射命丸、気にせんでよい」
「は、はあ・・・分かりました」
目上の存在に敬意を示す。まさしく社会構成だ。慌てて態度を改めようとした文を見ればそれは明確だ。
「さて、君が御剣龍牙君じゃな?」
「はい」
質問もしながら、奥の席についた大天狗。
「わしの名は
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「此度はわしらの仲間を助けてもらったのぅ。礼を言わねばならぬな、ありがとう」
「いえ、助けるべきだと思い行動したまでです。それに、今外の世界では、彼女を執拗に追い掛ける危険な存在もいますし」
「なんと・・・して、そやつは今も?」
「ええ、彼女を未だ追っているでしょう。それにその男の力は余りに有害過ぎる。彼女もその者に対しては何も出来ない程に恐怖意識を持つ程です」
「射命丸でさえ臆するとな」
-大天狗の業務建屋・裏の広場-
「して、何の様ですか?」
「人間、お前射命丸に何をした?」
突然だが、大天狗との話を終えて、裏にある広場で休んでいたら、急に先程の案内の鴉天狗が突っかかって来た。
「何って?君の言う何とは、何の事かを明らかにしてくれないと、応えられる質問にも応えられないぞ?」
「お前、文と身を交えただろう」
「ん?ああ、成り行きでね。少なくともこちらから手を出した訳じゃないよ」
「だとしても、お前は彼女を汚した!」
鴉天狗の男は刀を引き抜き、切っ先をこちらに向ける。
「君、文の事が好きなんだね?」
「ッ!当たり前だ!!」
おおぅ・・・素直。
「一目見た時からずっと好きだった。同じ鴉天狗ならまだしも、人間に汚されたとあっては許す訳にはいかない!」
「男の嫉妬、か。よし、なら相手しよう。だけど---」
龍牙は目と纏っている空気を戦闘態勢にした。
「もう、泣き言は聞き入れないからね」