-紅魔館・地下図書館-
「よっこいしょっと、ここでいいかな」
先程の魔理沙の一撃でノックダウンしたパチュリーを龍牙は近くのソファーへと寝かせていた。
「あんたも律儀ねぇ」
「まあね、否定はしない」
霊夢がこう言うのも、エントランスで合流した際に、ノックダウンしていた咲夜に気付いた時にも同じ様に寝かせて大丈夫そうな所に運んだからである。勿論、外の美鈴も例外ではない。その後、空間を歪ませて、非常に肌触りの良い水色のタオルケットをかけていた。
それを今、パチュリーにも同じ様にタオルケットをかけた。
「そんな奴、気遣う必要なんか無いぜ!それに魔法使いのクセに病弱とか、一体何なんだよ」
「魔理沙、いくら嫌な思いしたからって、そう言う口の聞き方はだめだろ?彼女だって、好きで病弱な身体になった訳じゃないんだろうし。何より、無闇に殺していい命じゃないだろ?」
「けど、・・・分かった」
「うん、いい子だ」
「さてと、そろそろ行きましょうか」
「おう!」
「オッケー。じゃ小悪魔さん、案内よろしくね」
「って、こんなにぐるぐる巻きに縛られていたら動けませんよ!?」
龍牙の左手には綱が握られ、その綱の先には胴体を腕ごとぐるぐる巻きにして自由が奪われた背中の中間程まで伸びた赤毛の小悪魔がいた。
「ふーん、口答えかぁ。それじゃあ仕方ない。ソードベント」
空いていた右手でソードベントのカードを持ち、ドラグレッダーの尻尾を模した青竜刀『ドラグセイバー』を手にする。
「ヒッ!?」
「こうしよっか」
腕は一振りだけ。しかし、空気の揺れ方から数回斬撃が繰り出されたのは言うまでもなく、小悪魔は自らの絶命を覚悟したが---
「・・・あ、あれ?死んで、ない?」
「当然。斬ったのは縄だけ」
そう言うと小悪魔を戒めていた縄ははらりと落下した。
「さっきさ、無闇に殺していい命は無い、てな事を言ったはずだよ?怖い思いをさせるのは自分が現時点で有利な立場にあることを示す為さ。君には悪いけど、どうしても案内人が必要だから脅したんだ。申し訳無いけど、案内してもらうよ?万が一主のえっと、レミリアだっけ?そいつに殺されそうになったら助けてあげるから、そこは心配しないで」
「うう~・・・絶対ですよ?」
「ああ、勿論さ」
「・・・では、こちらからご案内します。ついて来て下さい」
こうして小悪魔の誘導で、この紅魔館の主たる吸血鬼レミリア・スカーレットの元へと足を運ぶ一行であった。
((え、えげつない・・・))
-紅魔館・廊下-
小悪魔の案内で、レミリア・スカーレットのいるという玉座の間に向かう一行。しかし、途中で龍牙は足を止めた。
「ん?どうしたのよ龍牙。急に止まって」
「ははぁん?さては怖じ気付いたな」
「・・・ちょっと黙れ」
さっきまでと違う口調で答えを返され、違和感を覚える霊夢と魔理沙。よく見るとその視線は鋭く、また、彼の右側にある全身を写すほどの縦長の鏡に向けられていた。
「霊夢、魔理沙、2人は先に行け。やることが増えた」
「えっ・・・あ、ああ、分かったぜ。行こう霊夢」
「ええ・・・」
霊夢と魔理沙は再び小悪魔と共に玉座の間に向かい足を進めた。
廊下の角を右に曲がって、みんなの姿が見えなくなったのを確認して、鏡に正対する。
「・・・お前が、ドラグレッダーの生みの親か?」
その鏡には、龍牙の姿は写っておらず、代わりにデザートタンと言われる砂漠の砂のような色の膝下程まで丈のあるコートを着た黒い髪の男が立っていた。
「ああ、その通りだ」
「ひとまずは自己紹介だな。俺は御剣龍牙、知っての通り、ドラグレッダーの契約者だ」
「私は神崎士郎。ドラグレッダー・・・いや、ドラグレッダーを含むミラーモンスターの生みの親にして、彼らの住まうミラーワールドを誰よりも初めて発見した者だ」
「ほう、それで?そんな大層なお前が何故ここに?」
「大した事ではない。君に私の残った力の一部を提供しに来たのだ」
そう言ってコートのポケットに手を忍ばせ、我瑠騨が持つベントホルダーと同じデッキケースが色違いで3つ握られていた。そしてそれらを龍牙に投げる。少し散らばりはするも龍牙はひとふりで全てキャッチした。
そして渡された3つのデッキケースを見る。
1つは、ドラグレッダーのケースと同じ黒地で、
1つは、緑色のケースで、牛の頭のようなレリーフ。
1つは、茶色のケースで、鳥の姿をしたレリーフ。
「・・・何故俺にこれを?」
「単純だ。まず、私にはもう必要無いからだ。そして、君ならば、正しく使うことが出来ると思ったからだ」
「つまりはなんだ?俺に代わりにこの力で何かと戦えと?」
「いや、そうではない。それにミラーモンスターは、もうそのカードの中にいる彼らだけだ」
「・・・」
「悪いが、私はもう失礼させてもらおう。君も、今やらねばならない事があるのだろう?彼らがその助力となるだろう」
「こいつらが?・・・っ!」
一瞬だけ手元のベントホルダーに視線を落とし、すぐに鏡を見るも、すでに神崎士郎たる姿は無く、本来の鏡として、目の前の龍牙を写していた。
神崎士郎の気配が完全に消え、龍牙は何時もの態度に戻る。
「まったく、不思議な人だな。さてと、そろそろ行きますか。レディを待たせるのは良くないし。・・・でも俺って何回蓮子に待たされたんだっけ?ん~・・・まいっか」
どうでも良い思考を止め、先へ向かうことにした龍牙。廊下の角を右に曲がった先で、さらにT字の分かれ道にぶつかり、足跡を辿ろうと能力を機能させた。すると---
「ん?なんだ?この空気」
左に行けば霊夢達と合流出来る。しかし、反対に右には、得体の知れない空気が漂っていた。それはまるで---
「まるで〝狂気〟だな。それも極端に大きい」
霊夢達が罠のある部屋に連れて行かれたか、それとも本当にこの狂気が無関係か。知る由もないが、流石に無視は出来ない。
「嫌な空気だけど、行ってみますか」
龍牙は霊夢達とは逆に右に進んでいった。
-紅魔館・???-
「・・・誰か来る。お姉様じゃないし、他のみんなでも無い。でも何だろう?・・・ワクワクしてきた。うふふ、早く壊してみたいなあ♪」