-紅魔館・玉座の間-
そこは、この紅魔館で地下図書館の次に大きな空間だった。
奥には少々背もたれの高い、いかにも身分の高い貴族が使っていそうな金縁に紅いシートのシンプルだが豪華な椅子があった。
しかし、そこには誰も座っておらず、その座席の後ろ上にあしらわれた円形の大きなステンドグラスのそばに、コウモリの翼を広げた子供がいた。
玉座の間の扉が開かれ、2人の影が入ってきた。片や紅白、片や白黒の2人組だ。それに気付いた子供は背中越しに来訪者2人に声を掛ける。
「・・・あら、随分と早いわね?」
「ええ、まあ手厚い歓迎をしてはもらったけれどね」
子供の質問にはぐらかす様に紅白の少女が応える。
次に白黒の少女が口を開く。
「お前が、レミリア・スカーレットか?」
「あら、そこはあなた達が名乗ってから訊くものでしょう?失礼に当たるわよ?」
「おっと、悪かった。私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ」
「私は博霊霊夢、博霊の巫女よ」
「ふふ、私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主にして、誇り高き吸血鬼よ」
子供と来訪者2人は互いに名乗りあった。
「レミリア・スカーレット。今すぐこの紅い霧を止めなさい」
「あら、私が素直に止めるとでも?」
「止めないなら、力ずくでも止めさせてやるぜ!」
魔理沙はそう言いながら、右手にミニ八卦炉を持ち、レミリアに向けて構える。
「随分と野蛮ね。いいわ、相手をしてあげる」
レミリアは高度を下げ、玉座の前に立つ。
魔理沙は戦闘体制に移ろうとしたとき、霊夢が彼女の肩に手を乗せた。
「霊夢?」
「魔理沙、ここは私がやる」
「あ、おい。・・・ったく」
魔理沙は、制止は無意味だと判断し、霊夢を行かせる。
「お嬢様!!」
「っ!?あんた、まだ動けたの?」
突如、目の前に現れたのは時間を操るメイド、十六夜咲夜だった。
しかし、見た目通りボロボロになっている彼女には、戦うだけの力はほとんど残ってはいなかった。
「お嬢様、ここは私が引き受けます。お嬢様は---」
「何をしてるの?」
「えっ?」
「ここは私が相手をするのよ?それとも、主人である私に刃向かうと言うの?」
「いえ、決してその様な事は---」
「ならどきなさい。それが今の、あなたの運命よ」
「・・・承知しました」
力になれないからか、はたまた、主人に逆らえないからか。いずれにしても、咲夜の顔には悔しさがにじんでいた。
大人しく引き下がり、霊夢とレミリアの間に障害は無くなった。
「さあ、博霊の巫女よ。お前の力を見せてもらおうか!!」
「ふん!言われなくても!!」
2人の戦いの火蓋が切って落とされる。
-紅魔館・地下通路・最奥-
一方龍牙は、謎の狂気の発生元と思われる地下の一番奥の部屋の前まで来ていた。
「ここが大元みたいだな」
龍牙は右手にウィングシューターを握り、ゆっくりと扉を開ける。
「これは・・・」
その部屋の光景は、言うなれば荒れていた。
その部屋は薄暗く、奥にあるカーテン付の豪華なベッドはある程度綺麗だが、周りには引きちぎられた---と言うよりは、まるで破裂したかの様に頭のない人形がたくさん転がっていた。
「誰?」
「ッ!!」
ベッドの奥、暗すぎて認識出来ない箇所から声が聞こえ、とっさにウィングシューターを構え、フラッシュライトを点灯する。
「うっ!?眩しい!」
そこには、両手で顔を覆っていた小さな女の子がいた。
赤い服に白いナイトキャップを被っている。---ところまではいい。
龍牙は彼女の背中から出ているものに目がいった。
それはまるで木の枝の様なものに7つの色の7つのひし形の結晶体の様なものが生えていたのだ。
龍牙はライトを切り、銃を下げる。
「脅かしてごめんね。俺は御剣龍牙。君は?」
「私はフランドール。フランドール・スカーレット」
「スカーレット?つまり君は、レミリア・スカーレットの家族?」
「そう、私はお姉様の妹。そして、お姉様と同じ吸血鬼なの。でも、ずーっとここに閉じ込められていて、今まで生きた人間をほとんど見たことが無いの」
「そうだったのか。(流れとは言え)なんか悪いこと訊いちゃったね」
「いいの、気にしないで。それよりお兄ちゃん」
「ん?何かな?」
「お兄ちゃんは---どんな音をたててコワれるの!?」
「ッ!?」
龍牙は己の身の危険と、突然の殺気と狂気で、即座にフランドールの視界から逃れる。
「えっ!?どこにいったの!?」
「こっちだよ」
フランドールが後ろに振り向くと、龍牙が見えた。その瞬間。
「イタッ!」
龍牙はデコピンを一発おみまいした。
「凄いね、急に消えるなんて。まるで咲夜みたい!」
「残念だけど、あのメイドさんみたいに時間を止めている訳じゃ無いんだ」
「そっか、そうだ!私の能力を見せてアゲル!」
また狂気をまとった発言をするフランドール。すると近くにあった比較的綺麗なクマのぬいぐるみを見るや、右手を広げながらそれに向ける。すると、その右手には小さな白い光の粒のようなものが現れた。そして---
「きゅっとして、どかーん!」
クマのぬいぐるみは破裂した。中に仕掛けがあるわけではない。しかし、破裂したのだ。
「・・・なるほど、確かに凄いね」
「でしょ?」
「でも、どうせならもう少し戦わないか?たまにはじっくり壊すのも楽しいんじゃ無いかな?」
「そうね!それ面白そう!!」
「なら、まずは外に行こう。ここだと上手に戦えないからね」
狂気をまとうフランドールと龍牙の戦いが始まる。