-妖怪の山・音撃の洞窟-
3人の鬼達によるそれぞれの修行を始めて、どれだけ時間が経っただろうか。
龍牙は全力で挑み、体力が限界になれば能力を用いて回復し、また全力で挑む。ひたすらこれを繰り返していた。
「はあ・・・はあ・・・ふぅ、もう一丁!!」
次第にそれぞれの動きにも慣れてきた。
〝管〟は息継ぎや吐き出し加減が。
〝弦〟は荒々しくも細やかな引きが。
〝鼓〟は腰をしっかりと入れた力強い一振り一振りが。
それぞれの特性を身体に馴染ませていった。
そして遂には、3つ全ての音撃の力を、技術を実戦で使える程になった所で響鬼が声を掛けた。
「よし、だいぶ良くなった。しかし、ここでこなさなきゃいけないことがある。それは俺たちと〝合わせ〟をやってもらう」
「合わせ?」
「そう。俺とは〝打ち合わせ〟を、斬鬼とは〝弾き合わせ〟を、そして威吹鬼とは〝吹き合わせ〟をやってもらう。ここが修行の正念場だからね、頑張ろうか!」
「ああ!」
「〝合わせ〟で奏でる 音楽は共通している。音色や使うものは違うけど、調子そのものは変わらない。その名は〝
「まずはこの俺、斬鬼からだ!」
熱血漢の斬鬼が勢い良く割り込んだ。
「わかった」
「おし!いくぞぉ!!」
斬鬼との〝弾き合わせ〟が始まった。
豪快かつ繊細にして、激しくも器用に指先を動かし、弦を弾いた。
〝弾き合わせ〟が終わるや、間髪無く威吹鬼が声を掛けてきた。
「次は〝吹き合わせ〟だ。頑張ってついてきてね」
「おう!」
続けて、威吹鬼との〝吹き合わせ〟が始まった。
最初はちっとも出来なかった唇の振動も、今や見事なまでにこなしており、息継ぎも上達していた。
〝吹き合わせ〟が終わると、案の定響鬼が声を掛けた。
「それじゃあ最後に、俺との〝打ち合わせ〟だ。全力で頑張ろう!!」
「はい!!」
最後に〝打ち合わせ〟が始まった。
時に大きく力強く、時に細かく素早く打ち込んでいった。
すると---
「!?斬鬼さん、あれは!」
「ああ、間違いねぇ。---半端ではあるが、覚醒している」
龍牙本人は〝打ち合わせ〟に集中していて気付いていないが、彼の身体は〝霊気〟によってうっすらと赤い武者鎧の様なものに包まれていた。
この光景は、響鬼も気付いていた。
(まさか、今まで俺しか成れなかった〝装甲体〟になる素質があるのか。流石はカエデさんのお孫さんだ!)
驚きと感心を胸に、響鬼は龍牙との〝打ち合わせ〟に集中した。
---最後の〝打ち合わせ〟が終わり、龍牙は3人の鬼達と向かいあうように立っていた。
「お疲れ様。今回の修行で君には音撃戦士としての資格がある事を認めよう。そしてこれがその証だ」
そう言って手渡されたのは、響鬼が持つものと同じ鬼をモチーフとした〝音角〟と〝円盤獣〟と言われる物が3枚だ。
「これは俺達の資格であり、また、分かり易くいう仕事道具だ。大事にしてくれよ?」
「わかった。今回は、色々とあり・・が、とう・・・」
不意に、龍牙は意識を失い、倒れてしまった。
無理もない。彼は普通の人間には耐えられない事を耐え抜いたのだから。
「これで、俺達の役目も終わりかな?」
「ああ、だろうな」
「では、行きましょうか」
対する鬼達は、紫の炎、緑の雷、青の風となって消え去り、真っ暗な空間に龍牙だけが突っ伏していた。