※この作品はR-18です。

幻想見聞録   作:コンコルド

31 / 55
第三十一項:下山

 -妖怪の山・大天狗の業務建屋・外来用宿泊部屋-

 

「う・・・んん・・・ここは?」

 

「あ!気が付きましたか?」

 

「文・・・?」

 

 目を覚ますと、俺は布団に寝ていた。

 

「そっか・・・あの後、寝ちゃったんだっけ」

 

「鬼の洞窟の中であなたが倒れていたのを、大天狗様が見つけてここまで連れてきたんですよ」

 

「はは、それは随分なお手間を掛けさせちゃったな」

 

 すると襖が開き、大天狗こと北条院炎山が部屋に入ってきた。

 

「気分はどうじゃ?」

 

「おかげさまで良好です」

 

 身体を起こして質問に答える。そのまま北条院さんは俺の近くに胡座で座る。因みに文はその場から少し後ろに下がった。

 

「そうか、それは良かった。して、鬼達の修行はどうじゃった?」

 

「まず疲れました」

 

「じゃろうてな」

 

 お互いに苦笑した。てか苦笑しか出来ない。

 

「おお、そうじゃった!お前さんの近くに木箱が置いておってな。どうも普通には開けられん細工が施されておるようなんじゃ。お前さん、何か心当たりはないかのぅ?射命丸や、ちとこちらに持ってきとくれ」

 

「かしこまりました」

 

 そう答えて、文は部屋の外に出て行く。ものの1分と掛からずに木箱を両手で抱えて持ってきた。

 

「これです」

 

「・・・これは」

 

 木箱の上面には、響鬼の太鼓と同じような模様が彫られていた。

 

「うーん・・・試すか」

 

 そう言って、何となく右手を木箱に向け、指をパチンッ!と鳴らす。

 

「っ!?」

 

「なんと・・・!?」

 

 すると共鳴するかの様に彫刻から波紋が広がる。それはすぐに終わったが、この時、ふたがわずかに緩んでいた。そして箱を開ける。

 

「あ、・・・ふふ」

 

 思わず笑みがこぼれた。木箱の中には、洞窟で出会った鬼達の道具や円盤獣が詰め込まれていたからだ。よく見ると、何か和紙が挟まっていたので取ってみると、そこには鬼達からのそれぞれの応援のメッセージと、各種道具の呼び出し方や取り扱い方、更には一部ではあるが奥義の心得まで説明があった。

 

「まったく、サービスし過ぎじゃ無いのかな?」

 

 そう言う龍牙ではあったが、嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

「音撃を会得したのじゃな?」

 

「ええ、おかげさまで」

 

「それは良かった。今回の一件、実は生前のカエデ殿から頼まれておったのじゃ」

 

「おばあちゃんが?」

 

「左様、お主には是非とも会得してもらいたいと申しておったからの。これにて、お主への用件は済んだ。わざわざ来てもらってありがとうの」

 

「いえ、お気になさらず---ああッ!!?」

 

「ど、どうしたんじゃ!」

 

「博霊神社に連れの2人を巻き込んで置いて来たまんただった!!」

 

「なんと!?」

 

「ヤバい!急いで帰らないと!!」

 

「龍牙さん、良ければ私が送ります!」

 

「えっ?いいの、てかできるの?」

 

「はい!但し少しとばすので空気抵抗が結構堪えます」

 

「この際構わない!それじゃあ北条院さん、またの機会に!」

 

「うむ、達者でな」

 

 ドタバタと外へ駆け出し、文が龍牙を抱きかかえる様な姿勢で、大天狗の元を後にした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。