-妖怪の山・大天狗の業務建屋・外来用宿泊部屋-
「う・・・んん・・・ここは?」
「あ!気が付きましたか?」
「文・・・?」
目を覚ますと、俺は布団に寝ていた。
「そっか・・・あの後、寝ちゃったんだっけ」
「鬼の洞窟の中であなたが倒れていたのを、大天狗様が見つけてここまで連れてきたんですよ」
「はは、それは随分なお手間を掛けさせちゃったな」
すると襖が開き、大天狗こと北条院炎山が部屋に入ってきた。
「気分はどうじゃ?」
「おかげさまで良好です」
身体を起こして質問に答える。そのまま北条院さんは俺の近くに胡座で座る。因みに文はその場から少し後ろに下がった。
「そうか、それは良かった。して、鬼達の修行はどうじゃった?」
「まず疲れました」
「じゃろうてな」
お互いに苦笑した。てか苦笑しか出来ない。
「おお、そうじゃった!お前さんの近くに木箱が置いておってな。どうも普通には開けられん細工が施されておるようなんじゃ。お前さん、何か心当たりはないかのぅ?射命丸や、ちとこちらに持ってきとくれ」
「かしこまりました」
そう答えて、文は部屋の外に出て行く。ものの1分と掛からずに木箱を両手で抱えて持ってきた。
「これです」
「・・・これは」
木箱の上面には、響鬼の太鼓と同じような模様が彫られていた。
「うーん・・・試すか」
そう言って、何となく右手を木箱に向け、指をパチンッ!と鳴らす。
「っ!?」
「なんと・・・!?」
すると共鳴するかの様に彫刻から波紋が広がる。それはすぐに終わったが、この時、ふたがわずかに緩んでいた。そして箱を開ける。
「あ、・・・ふふ」
思わず笑みがこぼれた。木箱の中には、洞窟で出会った鬼達の道具や円盤獣が詰め込まれていたからだ。よく見ると、何か和紙が挟まっていたので取ってみると、そこには鬼達からのそれぞれの応援のメッセージと、各種道具の呼び出し方や取り扱い方、更には一部ではあるが奥義の心得まで説明があった。
「まったく、サービスし過ぎじゃ無いのかな?」
そう言う龍牙ではあったが、嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「音撃を会得したのじゃな?」
「ええ、おかげさまで」
「それは良かった。今回の一件、実は生前のカエデ殿から頼まれておったのじゃ」
「おばあちゃんが?」
「左様、お主には是非とも会得してもらいたいと申しておったからの。これにて、お主への用件は済んだ。わざわざ来てもらってありがとうの」
「いえ、お気になさらず---ああッ!!?」
「ど、どうしたんじゃ!」
「博霊神社に連れの2人を巻き込んで置いて来たまんただった!!」
「なんと!?」
「ヤバい!急いで帰らないと!!」
「龍牙さん、良ければ私が送ります!」
「えっ?いいの、てかできるの?」
「はい!但し少しとばすので空気抵抗が結構堪えます」
「この際構わない!それじゃあ北条院さん、またの機会に!」
「うむ、達者でな」
ドタバタと外へ駆け出し、文が龍牙を抱きかかえる様な姿勢で、大天狗の元を後にした。