第三十七項:再準備
-長野県山中・廃屋前-
龍牙からの情報を元に長野県警、並びに警視庁の特殊急襲部隊SAT、並びに消防や救急が現場で作業をしていた。
「これは酷いですね」
「ああ、だが、御剣君もご立腹だったんだろう。俺だって腹立たしいと思ってるしな」
そう話しているのは、警視庁所属の2人の刑事だ。
ひとりは、正義感が強そうな若者。
ひとりはベテランオーラをまとう少し頭に〝淋しさ〟を感じ始めたような男。
「誰がハゲだって!」
「言ってません!誰一人として言ってませんよ!」
「すまん。空耳だったみたいだ」
「もう、しっかりしてくださいよ」
「分かっている。それで、今回の死者数は?」
「はい。まず拉致被害にあった女子学生11人の内5名、武装集団側は28名、計33名が死亡です」
「・・・足りないな」
「え?」
「御剣君の話だと、武装集団側の死者数は29のはずだ。この程度の数え違いをする男でもない」
「というと・・・」
「ああ、1人だけ息を吹き返して逃げたんだろう。または、その死体に限って調べられてはまずい何かがあったんだろう」
「その何かって?」
「分かりゃ苦労しないよ」
そう、この時あったはずの1人の死体が無かったのだ。
---鬼塚茂の死体だけが---
-東京都奥多摩・龍牙宅-
「---そうですか。分かりました、ありがとうございます」
先の戦いで鬼塚茂の死体だけが無い事の連絡を受けた龍牙は、電話を切り、地下の格納庫へ向かう。
「あって欲しく無いけど、あり得る事だからな」
格納庫に着いた龍牙は、まず武器の確認した。
「あいつ、もしかしたら、幻想郷に逃げ込んだかも知れない」
そう言えるのには、ある仮説が頭にあるからだ。鬼塚と戦っていた時に、龍牙は妙な空気の乱れを感じたからだ。それも、あの辺りを覆い尽くす様な形であったため、鬼塚本人によるものか、または第三者の存在か。
「いずれにしても、幻想郷が危ないな」
ウイングシューターやG36STG、他にも多数の個人火器や爆薬、更には数日分の携帯飲食物をストライカー装甲車に積み込む。
「・・・・・・」
ここでふと、龍牙の動きを止めた。
「・・・別にストライカーじゃなくていいよね?」
一体誰に訊いているのかは置いといて、確かに田舎道を軍用車が通るのはおかしい。
「やっぱりここはオスプレイでしょ♪」
それはもっとおかしいぞ龍牙よ!?
しかし、この場には彼以外は誰もいないため、静かにせっせとオスプレイに荷物を移し始めた。
異変と間違われても知らないぞ?