-東京都・奥多摩・龍牙の家・早朝-
「ん・・・」
日の光がカーテンの隙間から差し込み、ソファーに寝ていた龍牙は、自分の腕の中に寝ている文に視線を向けた。
「・・・ん・・・あ、おはようございます」
「おはよう。起こしちゃった?」
「いいえ、大丈夫ですよ」
寝起きの醒めきれない顔でにっこり微笑む。
「朝ご飯、食べる?」
「んー、もう少しこのままで♪」
そう言って甘える様に身体を密着させてきた。この時、文がものすごくかわいく見えたのは余談である。
◇
しばらくくっついたあと、あり合わせで作った朝食を2人で食べて、今後片付けの真っ最中だ。
「・・・だけどやっぱり共食いだよね?」
「まあ・・・そうですね、はは・・・」
2人の話の話題はついさっき食べた朝食についてだった。
今朝のメニューは、バターを塗ったトースト、レタスとトマト、それにクルトンをのせ、シーザードレッシングをかけたサラダ、そして・・・目玉焼きだ。
当然ながら目玉焼きの材料は鶏卵、そして文は元鴉だ。
要は共食いだと、龍牙が今になって気付いたのだった。
「でも、鴉って雑食だって聴いた事あるけど、それは事実?」
「あややや、何だか答え辛い質問ですね・・・。まあ、間違いでは無いですね。私もお肉や野菜は普通に食べてましたし」
「ふ~ん」
それからしばらくは、食べ物や食事に関する話で盛り上がった。幻想郷で人間が何を食べているかとか、他の妖怪はどんなやつが何を食べているのか等々。
「その、ルーミアって妖怪は幻想郷の人間を食べてるの?」
「いえ、彼女の捕食対象は外来人だけですね」
「外来人?・・・ああ、幻想郷に入った人間の事か」
「はい、そうです」
「ん?待てよ。仮に外来人が来ない時が続いたときは何を食べているんだ?」
「さあ?でも、人間の食べ物は食べられるそうですよ」
「へぇ。まあ、気を付けないと。食べられちゃうからには油断出来ないな」
「そうですね」
内容は明らかにブラックだが、2人の会話は他愛のない世間話のようだった。
「おっと、もうこんな時間か」
「何か用事でもあるんですか?」
「うん、実は国連って組織向けにが作った試作型の銃の試験をしなきゃいけないんだ」
「銃・・・ですか」
少し文の表情が曇った。現代におけるこちらの銃に苦手意識を持っているからだろうか?ならばその反応で間違いはない。
「どうする?見てみる?」
「・・・是非とも、お願いします」
龍牙はあえて文を誘った。そして文は、少し悩み、同行を決意する。
◇
-龍牙の家・地下射撃場-
私は龍牙さんの誘いを敢えて受けた。確かに今の外の世界の銃は恐い。けど、どれ程恐いものか。どれ程危険なものか。それを知るのはこの先何かの役に立つはずだ。
そして彼に言われるまま靴を手に家の奥にある下に続く階段を下り、少し薄暗い無骨な空間に辿り着いた。
周りの壁は灰色で、岩に似た感触だった。龍牙さんの話だと、これは《コンクリート》と言われるもので出来ているとのこと。詳しい話はあとでやることを終えてからと言われた。
その空間に入って左右にはそれぞれ大きな鉄製と思う両開き引き戸式の扉、正面には横に広い大きな厚い硝子窓があり、その左脇に今度は蝶番で止められたら鉄製の扉があった。
気になるものが山のようにある。忘れないように書き留めないと。
「うんしょっと、ふぃ~、これでよしっと」
そう言って、右側の鉄の扉を開けた先の空間から、龍牙さんは大きくて重そうな箱を持ってきた。他にも縦長や小振りなもの等様々な箱を何往復かして持ってきていた。
それと、この箱は私の知らない材質で出来ており、興味と好奇心が刺激された。
「龍牙さん、この箱って鉄や木で出来てる訳じゃ無さそうですが、これは一体何で出来ているんですか?」
「これはプラスチックっていう素材を使っているんだ。鉄みたいに錆びたり、木みたいに腐ったりしない、それでいて強度は勝るとも劣らないものなんだよ」
「へぇ~便利ですね。あ、大きさが合えば私のカメラも?」
「うん、入るよ。でも、今は持ち合わせていないからまた今度ね」
そう言いつつ、小さめの箱に手を伸ばし開け始める。中からは、少し丸みのある拳銃が現れた。
「これは・・・拳銃の類ですか?」
「そ。ドイツって国の銃器製造会社、ヘックラーウントコッホ社の《ウィングシューター》って言うんだ」
「ういんぐ?」
「ウィングシューター。《羽の様に従来のものより軽く》を目標に造られた拳銃だよ。そして、使う弾薬とその装弾数に対して十分に軽く出来たんだ」
「・・・・・・」
当然、文は何の話やらと言わんばかりに頭の中がチンプンカンプンな状態だった。
「あ~っと、判らないよね・・・。ちょっと待ってて」
そう言ってまた隣の空間に向かった。少しして戻って来た龍牙さんの手には、先程のウィングシューターに似た形の拳銃が握られていた。
「これが原形となった同じ会社の拳銃《VP70》。取り敢えず持ってみて」
「はい」
言われるまま拳銃を手に取る。
「・・・割と重いですね」
見た目が大きいから多少の重さは予想していたが、それよりも少し重かった。
「次にこっちを持ってみて」
そう言われ、次にウィングシューターを手に取る。
「あ!結構軽いですね!」
「そ。これがウィングシューターの名の由来さ」
ウィングシューターは、先程の拳銃より3分の1か4分の1位軽かった。納得納得。
「んじゃ、俺はこいつの試験評価するから、そこに座って少し待っててね」
そう言って龍牙さん硝子窓の左脇の扉を奥に押して開けて、中に入り扉を閉めた。そして硝子窓の向こうに現れ、こちらに背を向けてる。
硝子窓の向こうには横一列に仕切りで6つに隔てられた腰ほどの高さの台があった。そしてその先、暗くて先が見えない空間があった。龍牙さんはその真ん中2つの左の台に立ち、手元で何か作業を始めた。すると台より先の空間の天井から大きな白い正方形の板が現れた。
◇
シューティングレンジのポストに入り、手元のタッチパネル式の操作盤のカバーを開き、拳銃の有効射程圏である25mの位置の的を展開。25m地点の天井から正方形の大きな白い板が現れ、その中には黒い五重の輪っかがあり、真ん中にはゴルフボール程の黒い点があった。
的の展開を確認して、次に操作盤で弾薬を要請。左脇の業務用大型電子レンジみたいな大きな扉が枠の下を軸に手前に開く。その中には、9x19mm強装徹甲弾が50発入ったプラケースが2箱出て来た。
ポストを離れ、弾薬を取りに行く。ケースを手に取り、開けて、中身を確認する。
「・・・・・・よし、問題無いな」
弾に変形や錆などの異常が無いことを確認し、弾を持ってポストに戻る。そこでウィングシューターの
そして本体に装填し、解放状態のスライドを引き金を引き前進させ1発目を装弾する。
そして両手で構え、狙いを定めて・・・トリガー!
バァンッ!!
少し重い銃声がシューティングレンジに響く。
こんな空間で発砲したら、普通なら鼓膜に支障或いは破損をしかねないが、俺の場合は元々身体が頑丈でありながらおばあちゃんから受け継いだ力《夢幻を現に変える能力》で、血管や神経まで強化している為、戦車の主砲の発砲音を至近距離で食らっても大丈夫なのだ。
いや、勿論痺れたり痛かったりはするよ?
的には狙った通りに中心の点のど真ん中を射抜いていた。
間隔を置いて2発目、3発目と確実に狙いを定めてからトリガー。
照準と弾痕のズレは無しっと。
◇
その後も、龍牙は他にも様々な銃器の
その間、文はずっとその光景を眺め、時々気になった事があればその都度龍牙に質問をした。
「ふぃ~、やっと終わったよ」
「お疲れ様です。・・・火薬の匂い、すごいですね」
「まあね、あれだけ沢山撃ったんだから当然だよ」
龍牙が今回撃った弾の数は全部合わせて約100発あたりだ。当然、火薬の匂いもする。
「さてと、今日はもう上がろう。シャワーも浴びたいしね」
「?何ですか、そのしゃわぁと言うのは」
「ああ、そう言えば、まだ教えてなかったね。まあ、取り敢えず上がろう」
「はい。・・・龍牙さん」
「何?」
「あちらの銃は、しまわなくていいんですか?」
文の言う通り、先程まで使っていた銃器がそれぞれのケースの上に乗せて置いてあった。
「ああ、あれは良いんだよ。まだ熱が冷めてないから。それに盗める環境には無いよ。仮に盗もうなら---」
そして、今まで見せることの無かった物凄く『イイ』笑顔でこう言った。
「---ツブせばいいからね☆」
「ピッッ!!!」
条件反射でビビる文。この時、文はこう思った。
(そう言えば、カエデさんもこんな風だったっけ・・・)
彼女の知る若かりし頃の御剣カエデを、龍牙は知らない。そして文は知っている。故に---
(こんな所まで似ているなんて・・・コワい)
表に出さずにガクブルっているのは彼女だけの秘密だ。
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