-博霊神社裏・龍牙のベースキャンプ-
早朝、朝日が差し込む心地良い時間。龍牙は既に起きており人間の里に向かう荷造りをしていた。
「2日程の食糧と・・・武器は・・・あ、これも持ってこ・・・」
絶賛仕分け中だった。横からひょこっと文がのぞき込んできた。
「何をしているんですか?」
「んー?今日人間の里に行く事にしてたから荷物の準備をね」
「あやや、なんだか重たそうですね」
「背負ってみる?」
「そうですね、試してみましょう」
龍牙の手伝い付きで黒の登山リュックを背負ってみた文。
「ふぉっ、結構重たいで---って、何加重してるんですか?!」
「なんとなくやってみたかっただけ」
「いくら私でも地味につらいですよ!」
どさくさに紛れて文の背負った登山リュックに手を引っ掛け、下向きに力を入れていた。天狗である文は身体的には人間より丈夫で強いがそれでも重たいものは重たいのだ。
「朝っぱらから賑やかね」
「あやや、おはようございます霊夢さん」
「おはよう霊夢」
「おはよう」
神社から霊夢が出てきた。相変わらずぶっきらぼうな態度である。
「て言うか、文はいつの間にか来たのよ?」
「昨夜です。偶々ここに飛んできたら龍牙さんがいたので泊まってました」
「あっそ、あんたの分の朝ご飯ないから、龍牙にでも分けてもらいなさい」
「相変わらずですねぇ」
「はは、じゃあ霊夢には分けなくていいね」
そう言いながら缶詰オレンジパンを見せびらかす。
「ふ、ふん!別に!」
「わぁ、甘い香りが食欲をそそりますねぇ♪」
「はい、文の分」
「やった!いただきまーす。はむっ・・・ん~~おいしいぃ~~♪」
「・・・・・・」
オレンジパンを美味しそうに頬張る文を見て、複雑そうな顔をしだした霊夢。
「意地悪無しに聞くけど、食べてみる?」
「いいの?」
「さっきのはちょっとからかっただけだよ。普段素朴なものを食べてるらしいし、たまには贅沢出来でもいいんじゃない?」
「なら、いただくわ」
霊夢は龍牙からオレンジパンを受け取り一口。
「はむっ・・・おいしい!」
文と同じ様にそのおいしさに夢中になりだした。
「さてと、俺は先に里に向かうかな」
「あ、道中は色んな妖怪がいるから気をつけてくださいね。何せここは別名妖怪神社と呼ばれてますからね」
「ちょっと!何余計なこと言ってんのよ!」
パンをもふもふと口にしながら注意をしてくれた文とキレ気味の霊夢。その光景を龍牙はどことなく微笑ましく見ていた。
「ご忠告ありがとう。それじゃあ、行って来ます」
「行ってらっしゃーい!」
「せいぜい死なないようにね」
「縁起でもないなぁ」
はは、と乾いた笑いをする龍牙は徒歩にて人間の里を目指して足を進める。
「---で、早速迷っちった」
神社への一本道を抜けた先、分かれ道を適当に進んでしまったため、当然迷った。
「ん?あれは・・・家?いや店か?」
龍牙の目に映ったのは、一軒の建物だ。看板の様なものがあったため何かの店のようだった。
「えっと・・・こう、りん、どう・・・香霖堂?」
「そう、ここは香霖堂。いわゆる雑貨店だ」
「ふぉ!?」
いつの間にか横に人が立っていた。銀髪に楕円形の眼鏡、青と黒のツートーンの服に鳩尾の高さにカバンを首から下げた男だった。
「ああ、脅かしてすまない。僕は森近霖之助、香霖堂の店主をやっているんだ」