-幻想郷・香霖堂-
博霊神社から人間の里を目指して出発したのは良いものの、即刻道に迷ってしまった龍牙。偶々行き着いた一軒の小さな店に立ち寄る事となった。
この店の名前は香霖堂。店主は森近霖之助と名乗る比較的若い容姿の男だった。
「しかし地図を持っていないどころか、地図自体見てないのによく出歩こうなんて思ったね?」
「我ながら何やってんだがって心情です・・・」
そう言いながら、幻想郷の地図を見せてもらい、これをスマホのカメラに写す。すると雑貨屋の店主は好奇心からそれの使用方法を訊いてきた。
「君が持っているそのスマートフォンと言う物、小型の携帯端末で、電話やインターネット等の様々な機能を有しているみたいだけど、具体的にどういった使い方をするんだい?」
「具体的にか・・・例えばこの幻想郷では相手とは直接会って会話をするでしょ?」
「うん、そうだね」
「このスマホは、電話の機能はお互いにこの端末、または電話機を持っていて、かつその他細かい部分を含めて接続環境が整っていれば、お互いそれぞれの家にいながら言葉を交わすことが出来るんだ。顔は見れないけどね」
「なるほど、家にいながら会話が出来る。これは便利だね」
「まあね。にしても色々な物があるね」
龍牙が店内を見回すと、昔懐かしいベーゴマ等の玩具や、誕生当初のアンテナ付きブラウン管テレビなどの家電等もあった。最も電気を使う物はこの幻想郷では意味を成せない様だが。
「今は山の河童達が電気を作る機械を製作らしいんだけど、動力源でかなり手こずってるみたいでね。山には天狗達の新聞発行の機械を動かす分は出来ているらしいけど、まだ人間の里には提供出来る完成度じゃあないんだって。完成したら、里にも電気を通してここにある家電製品とやらを使えるようにしたいらしいんだ」
「へえ、河童って頭が良いんだ?」
「と言うよりは創作意欲がすごいんだ。天狗達が使っているカメラなんかも、外の世界から流れ着いたものを研究して作る位だからね」
そんなこんなで話をしていたら、ふと時間が結構経ってるのに気付いた。
「おっと!そろそろ里に行かないと」
「あ、良かったらその地図あげるよ。お代は結構」
「え、いいの?」
「久し振りに話が出来たし、そのお礼の代わりにさ。それに常連の2人に〝ツケ〟でって言われてよく持ってかれてるし」
「そりゃ災難だね・・・」
「今更さ」
「じゃあこの地図はありがたく頂戴します」
「ああ、気をつけて」
「ありがとう。それじゃあ、お邪魔しました」
霖之助から貰った地図を手に龍牙は店を後にした。
-人間の里-
「ん~~っと、なんとか到着。しかしこの軒並み、江戸時代から明治時代をまとめた様な所だな」
人間の里に無事到着した龍牙は、里の風景を見回していた。今述べた感想の通り、建物は江戸時代から明治時代までのデザインや造りのものが区間ごと(の様に見える)分けられているようだ。
「おや、見慣れない格好だな。もしや迷い込んだのか?」
「ふぇ?」
腑抜けた返事をしながら振り返る。そこには1人の女性が立っていた。
全体青色のセーラー服をそのままワンピースにした様な服にちょっと変わった建物の様なデザインの帽子をかぶった、銀髪に青のメッシュが入った女性だった。
「えっと・・・」
「ああ、失礼した。私は
「俺は御剣龍牙。君たちからする余所者、つまり外来人でとある要件でこの里に立ち寄らせて貰ったんだ」
「なるほど。となるとここについては何も分からないのではか?」
「仰る通りです」
「ならば、私が簡単にではあるがこの里を案内しよう」
「それは助かる。ありがとう上白沢さん」
「慧音でいい。ではまず私の寺子屋に行こう。そこなら色々説明がしやすい」
「ぜひ、お願いします」
人間の里について早々に、こんなに親切な方が現れるとは思ってはなかった龍牙。この世界の物事を知るには良い機会と思い、恩義を受ける事にした。
森近霖之助といい、上白沢慧音といい、親切な半人半妖は多いな。