-人間の里・寺子屋-
人間の里についた龍牙は、到着早々に上白沢慧音と名乗る女性の親切により当人が営んでいるという寺子屋兼自宅に招待された。
「へぇ、ここが寺子屋か。なかなかいい感じだね」
教室は襖を開けた開放感のある環境だった。家の半分を寺子屋、半分を自宅として機能させている。そして庭と呼ぶには語弊があるだろうが子供達が大いに遊べるであろう広場があった。
「そう言ってもらえると私も嬉しい。ここでいつも私は教鞭を振るっているのだ」
「はは、手厳しそう」
「勿論だ。出来る子は褒め、出来ない子は叱る。教育の基本だ。だが、だからと言って一方的な事はしては可哀想だから、解らないところを解りやすく教えるのもまた、私の役目だ」
「大層立派な心構えで」
「いや、それほどでもないさ。所で、
「ああ、それは---」
龍牙は鬼塚茂にまつわる出来事を話した。
外の世界に放り出された文を狙い、また、その怒りを罪のない少女達に向けられたことも。
「なんて非道な事を・・・」
「そして、そいつがこの世界に逃げ込んだらしいんだ。まだ、不確定ではあるが、あいつの能力はかなり危険だから放っておく訳にもいかない」
「分かった。私の方でも何か情報を得たら伝えよう」
「ありがとう、慧音」
「おーい慧音ー、居るー?」
玄関の方から女性の声がした。我瑠騨は気配を察し、3人いると判断した。
「中にいる、あがっていいぞ」
慧音は大きめの声で返事をした。すると入口の戸が開閉する音と、それに続き廊下を歩く音が近付いてきた。
「お邪魔します。あれ?お客さんいたの」
視界に映ったのは、綺麗な艶のある腰程までに伸びた白い髪に、燃えるような赤い瞳、白い長袖のカッターシャツにサスペンダーを付けた足先が少しだぼっとしたもんぺのような赤いズボンを履いた少女だった。
姿は見えないがあと2人、気配を感じる。どちらも穏やかな感じだ。
「ああ、お気になさらず」
龍牙は視線を向けてきた少女に軽く会釈をした。
「妹紅、よく来たな。龍牙、彼女は
「そう、よろしく」
妹紅は敵意や不信感を向ける事はせず、握手の手を差し出してきたのだ。龍牙は立ち上がり握手をする。
「はじめまして、よろしく。ええっと・・・」
「妹紅でいい。それと変に気を使わなくてもいいから」
「ありがとう、俺の事も龍牙って呼んでくれていいよ。妹紅」
「そうさせてもらうわ、龍牙」
「ところで、後ろの2人は?」
ようやく見えた2人の女性の姿を確認し、質問する。
「はじめまして、私は
手前側にいた女性が名乗った。紫のセミロングの髪に花飾りをつけ、若草色の長袖の着物、下は赤いスカートの背は少し低めの女の子だ。
「私は
次に後ろ側の女性が名乗った。飴色(茶色とオレンジを混ぜたような色)の髪に両サイドに鈴の髪留めでツインテールにし、紅色と薄紅色の市松模様の着物に若草色のスカート、そしてクリーム色のエプロンをかけた姿の、こちらもまた女の子だ。
「はじめまして、御剣龍牙です」
「みんな、私の大切な友人達だ。龍牙も仲良くしては貰えないだろうか?」
「勿論。みんなよろしく」
「そう言えば、御剣って言ってたけど、もしや御剣カエデさんの関係者なの?」
今更ながらという顔で妹紅が苗字に食らいついた。
「うん、御剣カエデは俺のおばあちゃんで、俺はその孫だけど」
「やはり、どことなく似た空気を感じていたんだ」
「えっ、慧音も?」
会話に割り込む形で、今度は慧音が口を開いた。阿求と小鈴の2人は話について来れてないようだ。
「えっと、もしかして、おばあちゃんこっちでなんかやっちゃったかな?」
「「いえっ!滅相もごさいませんっ!!」」
慧音と妹紅はまるで打ち合わせてたと思えるほどの見事なハモりを見せた。
・・・一体何をやったんだか、おばあちゃんは。
「何だろう、デジャヴを起こしてる気がする・・・」