-東京都・奥多摩・龍牙の家・ダイニング・夕刻-
・・・・・・え~っと、皆さんこんばんは。御剣龍牙です。
え?何故改まった態度してるかって?それは・・・その・・・。
「「「「・・・・・・」」」」
今、俺の家には4人の人・・・いや、3人の人間と1匹の鴉天狗がいる。
そう、今この家に2人の来客者がいる。
1人は、肩の少し下位まで伸びた金髪と青い瞳、白い半袖のワイシャツに紫のベスト、
そしてもう1人は、日本人で、黒い癖っ毛のショートヘアに、黒いベレー帽に
2人とも、俺とは高校時代からの付き合いで、蓮子に限っては、・・・俺の、元彼女だ。
この事態はほんの10分程前に遡る。
◇
-10分前-
「あ~さっぱりした~」
タオル一枚姿の文がペタペタと裸足でダイニングに入ってきた。
「どうだった?外の世界のシャワーの感想は?」
「とても使い勝手が良かったです。特に水温を調節出来る機能は、こちらには無かったものなので魅力的でしたね」
「それはよかった・・・でも、文」
「何ですか?」
「タオル一枚は、気まずくなるから・・・服、着てもらっていい?」
「あやっ!すいません」
そう言って文は小走りで脱衣場に戻っていった。
試作銃のテストのあと、シャワーを浴びるため浴室に向かった。
彼女は、『シャワー』という単語は知らなかったが、風呂場に向かって見せると、ああ!と納得したかのような反応をした。
因みにうちの風呂場は床も壁も湯船も全て
話によるとその造りの道具自体は河童が造った物があり、『散湯器』と呼んでるらしい。ただ、温度調節が出来ず、またお湯が切れると水しか出ないなど、まるで初期のシャワーだった。
余談だが、この家はおばあちゃんの生前、俺がまだ小さい頃から住んでおり、当時まだ、『夢幻を現に変える能力』を持っていた時におばあちゃんが力を使い、『如何なる事になろうと、この家、この土地は在り続けよ』と願ったとのこと。それからは自然災害に見舞われても、劣化や破損は一切無い。まあ、けじめみたいな感じで掃除はちゃんとやってるけどね。
不意に、車のエンジン音が聞こえたと思うと、インターホンが来客を報せた。
「ん?はーい」
この時間に来客の予定は無いはずだが・・・
キッチンに備え付けた玄関モニターで確認する。するとそこには・・・
「蓮子?!それにメリーまで!?」
高校時代からの付き合いがある2人の来客に動揺した。長いこと連絡してなかったからなのか?
「こらぁ!龍牙!いるんでしょ!!」
付き合っていた頃に渡したままの合い鍵で鍵を開けられドカンッ!と勢い良く玄関が開けられた。
マズい!今は文がいるんだ!
慌てて玄関に向かう。しかし、神様は割と残酷だと思った。
「蓮子!何もいきなり---」
「龍牙さん!今のは---」
「「「あ・・・」」」
「?」
---鉢合わせてしまったのだ。
◇
-そして今-
4つの麦茶がどれひとつとして飲まれる事無く、汗をかいていた。そして龍牙も冷や汗をかいていた。
「それで?」
「え?」
「え?じゃないわよ!誰その娘!まさかその娘が出来たから別れたの!?」
「違う!彼女とは---」
「この証拠がありながらそれを言うか!!」
「なあッ!!」
彼女の手にはティッシュにくるまれたコンドームだった。
「何時の間に、てか普通ゴミ箱なんか漁る!?」
「言い訳無用!この娘としたの!してないの!どっち!!」
「「・・・しました。ごめんなさい」」
何故か文まで一緒に言った。
「・・・はぁ、もういいわ。カッとなってごめん」
急に熱が引いたかの様に静かになった。
「・・・龍牙」
「・・・はい」
余りに気まず過ぎて下手に出るのが精一杯になってしまった。
「その娘は、背中に羽根あるけど、人間なの?」
「彼女は・・・鴉天狗、なんだ」
「ふーん」
いまいち聴いているかどうか判らないかも反応をする。
「・・・あの、龍牙さん。こちらは?」
「ああ、黒い髪の彼女は宇佐見蓮子、金色の髪の彼女はマエリベリー・ハーン。俺と蓮子はメリーって呼んでるんだ。2人とも高校時代の同級生で、蓮子に限っては俺が前に付き合っていたって言ってた彼女なんだ」
「そう言えば、前に言ってましたね」
文に蓮子とメリーを紹介して、蓮子がようやく話を聴いてくれそうな状態になったのを確認して、2人に文の紹介を始めた。
「蓮子、メリー、彼女は射命丸文、見ての通り人間ではなく鴉天狗と言う妖怪なんだ」
「ヨウカイ?」
「そう、メリーに判り易く言うなら、
「ああ、それなら判りやすいわ。」
「けど、何でそんなに今時少女風な容姿してるの?」
「あやや、それに関しては別に珍しい事では無いんですよ」
「どう言う事?」
「俺もそれは気になるな」
「私も聴きたいわ」
蓮子、龍牙、メリーが興味を示し、文が説明を始めた。
「私達天狗に限らず、幻想郷の妖怪には、私の様にその大半を人間の姿に模したものと、そうでない、まるっきり異形のものの2種類があるんです」
-少女説明中-
「・・・なる程」
「結構不思議だらけね」
「私はいまいち理解に至らないわ」
文曰わく、彼女の様な人型はどの妖怪に置いても
ここで蓮子はまた別の話題を持ち出した。
「やっぱりさ、妖怪って人間を襲ったりするの?」
「一概には同じでは無いです。しかし、人間を捕食対象と見るものは確かにいます。但し、その捕食対象とは外来人、いわば幻想郷に迷い込んだ外の人間が狙われます」
「その幻想郷とは、何なのかしら?」
メリーが説明の中の単語に質問をした。
「それは俺が説明するよ。幻想郷、それは結界を隔てて存在し、そこには人間、妖怪、妖精、神などがそれぞれの集落や住処を持ち、互いに友好的な関係を持ちながらそれぞれが平和に生活している理想郷。あの、アヴァロンとかシャングリ・ラとかってやつ」
「なる程ね」
「龍牙、あなた何で知ってるの?」
「それは、おばあちゃんが若い頃に幻想郷に言った事があって、その話をよく聴いてたからなんだ。絶対に明かしてはならないって事で今まで何も言わなかったんだ」
「そう、龍牙のおばあさんが・・・」
「この際だから、もうひとつ、おばあちゃんから受け継いだ能力も見せるよ」
龍牙は目を閉じ、そして開く。そして能力を使うときの目に変わっていた。
「「!!」」
当然、蓮子とメリーは驚いた。長い付き合いの存在が、異形の如く目を変えていたのだから。
「これが、おばあちゃんから受け継いだ能力《夢幻を現に変える能力》。要は思った事や願った事が全て現実になる
「それが、別れた理由?」
「うん、ただ、決定打となったのは、蓮子とメリー、君ら2人を脅迫材料に使われたからなんだ」
「なら、その能力で---」
「どうにかしようと考えたよ。けどこの能力は、何も感じる事無く一瞬で全てを終わらせる事が出来る、核兵器よりも恐ろしい能力だから使わなかった。最も、研究所では機械を事故の故障に見せかけて壊したり、俺の存在に対して認識阻害して目の前に居るのに見えてない状態にしたり、小さな反抗はしたけどね」
「・・・そう、なんだ」
「うん、その後も散々うるさいものだから、『データが欲しいなら何か仕事させて、その課程で気付いたものを記録すれば?』って言ったんだ。そしたら、国連の対バイオテロ組織のBSAAに放り込まれちゃったんだ。テヘ☆」
「「いやいや、『テヘ☆』じゃないでしょ!」」
「?」
龍牙の突然の言動に2人は冷静にツッ込み、1匹は何のこっちゃと首を傾げた。
因みに国連の対バイオテロ組織BSAAとは、
B:
S:
A:
A:
の頭文字を取っての名称だ。
先程テストしていた銃器も、向こうの依頼で個人でトライアルを行ってくれと、頼まれたものだ。一部は公安機関とかの物だけど。
「て言うか、BSAAって危なくない?今だと中東が結構バイオテロやってるとか」
「大丈夫だよ。俺は前線基地までは行くけど、戦線には出ないし、武器のテスターとかやるくらいだし」
「そう、なら良いんだけど」
「ごめん、2人とも。この話はもっと早くにするべきだったね」
「ううん、気にしないで」
「そうよ、無事で元気そうなのは判ったんだから」
「ありがとう、2人とも。・・・・・・それはそうと、さっきから何書いてるの文?」
隣でやけに静かかと思い、視線を向けると、カリカリと手帳に何か書いていた。
「あ、はい、気になった単語を書き留めてます」
そう言って手帳を見せてくれた。その手帳には、「びいえすえいえい」「ばいおてろ」「てすたあ」と彼女の知らない単語がひらがなで書かれていた。
「今は何やらお取り込み中みたいでしたし、訊くならあとの方が良いと思って、書き留めていたんですよ」
「そっか、ごめんね、訳わかんない事ばかり話してて」
「いえいえ、お気になさらず」
手を小さく振って微笑みながら応える。あとで教えてあげよう。
ふとここでメリーが口を開いた。
「えっと、し・・・しゃめい・・・」
「射命丸文です。呼びにくければ文で構いませんよ」
「あ、それじゃ文さん、ちょっと訊きたいんだけどいい?」
「私に答えられる事なら」
「その背中の羽根、触ってみていいかしら?」
「それぐらいならおやすい御用です。あ、でも引っこ抜かないで下さいね?結構痛いんで」
「はい、分かりました。では、失礼します」
文から許可をもらって、メリーは彼女の右側に寄る。文もメリーが触りやすいように少し右の翼を広げる。
「・・・さらさらしてて、艶々ね。羨ましいわ」
「あや、お褒めに預かり光栄です」
「ねね、文さん。私も触ってみていい?」
「はい、どうぞ」
「やった!ありがと♪」
まるで子供のようにはしゃぐ蓮子。時たまこの様に無邪気にはしゃぐところは、龍牙がこっそり好きだと思っているところ。勿論本人には内緒だ。
「うわホントだ!艶やかでキレイ!」
「あやや、そこまで褒められると、なんだか恥ずかしいですね・・・」
予想以上の評価に頬を赤らめて恥ずかしがり始めた。
「むっ!これは・・・メリー、ちょっと」
「どうしたの?・・・これは!」
「「?」」
突然蓮子の顔付きが変わり、メリーも同じ様な顔付きをする。そして2人はアイコンタクトで同じタイミングで蓮子は左手、メリーは右手をそれぞれ文の頭目掛けて伸ばし---
「きゃわッ!!」
---文の耳先を摘まんだ。
「おお!ちゃんと軟骨ある!」
「さわり心地そのものは私達の耳と変わらないのに、なんだか不思議な感じだわ!」
「あややや!そんな急にさわらないで~~!!」
・・・完全に2人のターンとなってしまった。
文は、それはそれは必死に抵抗(?)したが、虚しくも呑まれてしまった。
「そして---」
「へ?」
「これかぁッ!この胸が龍牙を
「きゃぁあああ!!!!」
「ちょっ!?蓮子待った!いくら何でもやりすぎだって!!」
まるで獲物を捕食するかの様に蓮子の(物理的意味合いで)魔の手が、文の胸を鷲掴み、もみくちゃと本気で潰しそうな位にもみはじめ、突然の事態にメリーは硬直、文は悲鳴、龍牙は制止を試みるといったなんとも近所迷惑な事態となった。
・・・ま、こんな山奥、龍牙の住まうウッドハウス以外の物件は存在しないけどね。