-幻想郷・博霊神社-
相も変わらず静かな時間が---流れる事なく、ここに集合していた誰もが気を立てていた。
「みんなどうだった?」
「悪い霊夢、私の方はダメだったぜ。アリスは?」
「私の方も見つからなかったわ」
「ルーミアは?」
「こちらも収穫なし。霊夢の方も?」
「私も全然」
文の失踪の一報を受けて、彼女と関わりを持つもの達が捜索を開始していたのだ。霊夢については「知り合った仲だし」と少々ドライな感じではあったが、決して見捨てるつもりはない。
「ん?・・・おい、龍牙だぜ!」
ふと、魔理沙が鳥居から聞こえた足音に気づき、視線を向けると此方に駆けてくる龍牙の姿があった。
「龍牙、あなた大怪我したって聞いてたけど大丈夫なの?」
「ああ、心配かけたねアリス。それにみんなも。けど悠長な事はしていられないんだ」
「あんた、それって文のこと?」
霊無は訊いた。
「そう。しかも外の世界に逃げられたみたいだから追わないとならないんだ」
そう言いながら神社裏に向かった。そして少しするとエンジン音が轟きだして、龍牙のハンヴィーが現れた。
「どいて!鳥居をくぐる!」
霊夢達は道をあけた。そしてハンヴィーは鳥居目掛けて速度をあげる。そして鳥居をくぐるところで、波紋にのまれて消えた。
-外の世界・長野県・山中の廃屋-
「ゲハハハハハ!愉快だ!実に愉快だ!あのガキもどう頑張ってもあの怪我を治すにゃ時間がいる。一週間ぐらいかかる大怪我を治しても、すぐには助けに来れる訳がねぇ。到着した頃にゃこの天狗の嬢ちゃんは廃棄物になっているだろうからなぁ!」
文を捕らえて外の世界に出た鬼塚は、以前とは別の山の廃屋に身を潜めていた。また、宮田以外の別の部下も新たに召集し、武装面も強化をしていた。
「龍牙さんは、絶対に助けにきます!」
「ほぅ?どこにそんな根拠があるんだ?てか、今のうちに一発ヌいておこうか。もちろん、お前の身体でなぁ」
「い、いや・・・いやぁ!!」
突然スカートの中に手を突っ込まれ、下着越しに大事な所を一方的に刺激する。
盛っていない文にとっては不快以外の何ものでもないのだが、お構いなしにグリグリと押すように指を動かす。
「旦那!!大変です!!」
不意に宮田が大声を出して駆け込んできた。
「あいつが、あいつが来ました!!」
「んだとぉ!?」
「龍牙さん、やっぱり来てくれたんだ」
外からは手下の悲鳴や銃声、爆発音まで届き、挙げ句には咆哮の様なものも聞こえてきたのだ。
少しして音が静まった直後、入口の扉がゆっくり開いた。そして見えた人影---
「龍牙さん!」
「けっ、しぶとい奴だな」
「それはお前だろ、茹で蛸が」
「あんだと!!」
「・・・龍牙さん?」
この時、文は龍牙の口調に違和感を感じた。しかし、それをうまく説明できず、また、理解もうまくできない。ただ本能的に〝何か〟が引っかかるのだ。
「鬼塚、テメェにはもう容赦はしねぇ。細切れにしてやるよ」
左手に握っていた刀に手をかけて抜刀。恐ろしい程に鋭く、しかし見とれてしまう程に美しい白銀の刀身が輝く。
だが対照的に龍牙から放たれている殺気はどす黒く、まるでブラックホールの様に総てを飲み込んでいきそうだ。
「さあ---」
次に放たれた言葉は---
「地獄を楽しみな!!」
まるで、死刑宣告のようだった。